執筆者 |
伍 曉鷹 (一橋大学経済研究所) 岳 希明 (中国人民大学財政金融学院) 張 光 (ウィスコンシン大学マディソン校) |
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研究プロジェクト | 東アジア産業生産性 |
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このノンテクニカルサマリーは、分析結果を踏まえつつ、政策的含意を中心に大胆に記述したもので、DP・PDPの一部分ではありません。分析内容の詳細はDP・PDP本文をお読みください。また、ここに述べられている見解は執筆者個人の責任で発表するものであり、所属する組織および(独)経済産業研究所としての見解を示すものではありません。
産業・企業生産性向上プログラム (第三期:2011~2015年度)
「東アジア産業生産性」プロジェクト
ここ30年間、中国の経済改革は世界で一番人口の多いこの国を低所得国から脱却させただけでなく、おそらく人類史上空前の量と質の両面における労働力の変化をも引き起こした。この著しい変化を説明するため、そして、主な人口統計上、教育上、産業上のこの変化に対する影響を推定するために、本稿は中国の雇用と報酬マトリックスを構築し、中国の労働投入量を計測した。下記の図は本稿の主な結果を要約している。
本論文の結果によると、1980~2010年の間、中国の労働投入量が年ごとに4.1%増加していることがわかった。この変化には、労働力の質と労働時間が同程度(およそ2%)寄与していることが明らかになった。さらに、2%を占める労働力の質の改善の半分が産業構造の変化に帰属し、残りの半分が教育水準と年齢構造の変化によることが示された。また、観測された労働力の質の変化に対する一番強い産業上の影響は、労働者が労働生産性のより高い産業、あるいは労働生産性の成長がより速い産業に移動していることがわかった。このことは年齢にともなう経験が改革の初期段階においてよりよく対応できることを示しており、年齢構造の変化が改革の初期段階に重要な貢献をしているといえよう。その一方で、教育水準上の構造の変化は中国の世界貿易機構加入後、および世界金融危機の後に、他の人的要因よりさらに大きな影響を与えた。これは貿易経済でよりよく対応できる高い教育水準とおそらくは競争に起因する技術進歩を示唆しているだろう。この時期を通して、労働時間が労働人口より急速に成長していることも明らかになった。これは労働集約的製造業が中国経済において継続的に支配することを示している。