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米政権、パリ協定離脱を決定 諸富徹さんらとThink!

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日経電子版「Think!」は、各界のエキスパートが注目ニュースにひとこと解説を投稿する機能です。1月17日〜24日の記事では、京都大学大学院経済学研究科教授の諸富徹さんが「米政権、パリ協定離脱を決定」を読み解きました。このほか「マスク氏、SBGの巨額AI投資に疑念」「働くシニア、月収62万円まで年金カットせず」といったテーマの記事に投稿が寄せられました。振り返ってみましょう。(投稿の引用部分はエキスパートの原文のままです)

「米政権、パリ協定離脱を決定」をThink!

米政権、パリ協定離脱を決定 エネルギー緊急事態宣言(1月21日)
トランプ米政権は20日、気候変動対策の国際枠組み「パリ協定」から再び離脱すると発表し、大統領令に即日署名した。これまで約束した資金拠出も撤回する。就任演説で「エネルギー緊急事態を宣言する」と表明し、石油などの掘削を進める考えを表明した。温暖化を防ぐ国際的な機運は大きく後退する懸念がある。

【諸富徹さんの投稿就任と同時のパリ協定離脱宣言は公約通りで、驚きはありません。インフレ抑制法の廃止を始めとする衝撃的な政策転換で、脱炭素化からの逆行も予想されます。しかし注目点は実際、どれほどトランプ政権の意図が実現するのかにあります。米国では2010年以降、再エネが127%増と飛躍的に増加する一方、火力はマイナス11%の大幅減です。背景には再エネ支援政策などの政策要因もありますが、大きいのは経済性です。蓄電池と組み合わせた再エネ導入コストが大きく低下、環境規制よりも経済性を理由として米国のエネルギー転換は進んでおり、企業も再エネ調達に向かっています。果たしてこの奔流をトランプ政権が4年間で覆せるのでしょうか。

「マスク氏、SBGの巨額AI投資に疑念」をThink!

マスク氏、SBGの巨額AI投資に疑念 トランプ氏とずれ(1月23日)
米起業家のイーロン・マスク氏は21日、ソフトバンクグループ(SBG)や米オープンAIが発表した人工知能(AI)への最大5000億ドル(約78兆円)の巨額投資について、資金面で計画通りにいくのか疑念を投げかけた。トランプ大統領が公に支持したばかりの計画を、トランプ氏の実質的な側近とされるマスク氏が批判する異例の展開となった。

【蛯原健さんの投稿OpenAIの共同創業の後に根本的な思想的対立を契機に完全に袂を分かってしまったマスク氏とアルトマン氏、後者をトランプ大統領が担げば前者がへそを曲げるというのは火を見るより明らかで、むしろ普段は激烈な表現のXポストも多々あるマスク氏にしては抑えた表現という印象です。直情型で朝令暮改のマスク氏とトランプ大統領のいわゆる「ブロマンス」はもとよりいつ終わってもおかしくないでしょうし、そもそも先のトランプ政権で短期で辞めなかった閣僚、側近はほとんどいませんでした。

「働くシニア、月収62万円まで年金カットせず」をThink!

働くシニア、月収62万円まで年金カットせず 法案判明(1月17日)
政府が24日召集の通常国会に提出を予定する年金改革法案の全容が17日、明らかになった。働く高齢者の年金をカットする基準額を現行の月収50万円から62万円に上げる。高所得の会社員の保険料負担を最大で月9000円上げる。将来の基礎年金を底上げする改革も明記した。

【竹内舞子さんの投稿月に年金と合わせて50万円以上を得る高齢者に対して年金減額をやめる理由が「働く意欲を削ぐ」ということですが、その財源確保のために、現役世代の高所得者会社員の保険料を上げるというのでは、現役世代の方の働く意欲を削いだり、人材の海外流出を招いたりすることにならないのでしょうか。会社員の賃金には幅があるので、月収の上限等級を引き上げる必要性があるのは理解しますし、その分(今のところは)将来受け取る厚生年金が増えるということですが、その理由が、月収50万円以上の高齢者への給付増のためというのでは、現役世代にさらに不満と諦めが募るように思います。

「みずほ銀、貸金庫の新規受付停止」をThink!

みずほ銀、貸金庫の新規受付停止 三井住友は鍵管理強化(1月18日)
三菱UFJ銀行の元行員が貸金庫から顧客の資産を窃盗した事件を踏まえ、銀行が貸金庫を貸し出すビジネスの見直しを急いでいる。みずほ銀行は16日から新規契約の受け付けを原則停止した。三井住友銀行や多くの地方銀行は貸金庫の予備鍵の管理強化に踏み切った。

【野崎浩成さんの投稿メガバンクが新規受付を停止するなどの動きに出ていることは、極めて合理的判断だと思います。今回の事案で、各行が管理体制強化を迫られることは必至でしょう。これに伴い管理コスト負担が増えるほか、事件発生時のレピュテーション毀損のテールリスクを考えれば、ビジネスとして成立しにくくなる可能性があります。因みにアメリカの大銀行ウエルスファーゴは、予備鍵を銀行が保管しないため顧客による鍵紛失の際は顧客負担によるドリル対応となるほか、顧客に1万ドル以上の価値のある資産を入れないことを宣誓させるなどの契約構成としています。銀行都合で突然撤退することは適切ではないので、新規停止は妥当な対処かなと思います。

「共通テスト、AIの得点率91%」をThink!

共通テスト、AIの得点率91% 東大文1のボーダー超える(1月22日)
18、19日実施の大学入学共通テストを生成AI(人工知能)に解かせると、得点率は約91%になったと、AIベンチャーのライフプロンプト(東京)が21日までに、明らかにした。東京大文科1類の受験生の多くが選択すると予想される科目を対象にした。

【新井紀子さんの投稿「ロボットは東大には入れるか」というプロジェクトを2011年から行った経験から一言。生成AIと東ロボとの最大の違いは、生成AIがEnd-to-Endで解くことができるということだ。東ロボの頃は見たままの問題からアノテーションなしで解かせることは不可能だった。ChatGPTを始めとする生成AIが、AIの民主化と言われる所以だ。英語と歴史の高得点は想定内だが、国語が意外なほど高い。教師データの少ない古文漢文は苦手なはずだが、今年は出題が源氏物語と論語だったのが奏功したか?数学のIIBCよりIAの方が低いのは(東ロボでも直面した)現象。人間には有用な情報がAIにとっては雑音なのだろう。

「NVIDIA『1強』に挑む」をThink!

NVIDIA「1強」に挑む 米AI半導体ユニコーンに勢い(1月22日)
人工知能(AI)半導体の勢力図の塗り替えを目指すスタートアップが米国で続々と登場している。世界で8割超のシェアを握るエヌビディアの「1強」状態に風穴を開けようと、各社は独自の技術と戦略を打ち出す。AI時代の盟主に挑戦する企業群が勢いを増す構図は、技術革新を生む米国の土壌の豊かさを示している。

【大山聡さんの投稿NVIDIAの対抗馬としてはIntel、AMDなどの大手企業が注目されていたが、これら大手企業にも守るべき牙城があるためか、「打倒NVIDIA」といった姿勢はあまり感じられない。独走を続けるNVIDIAに正面から挑むのは、ここで紹介されているようなベンチャー・スタートアップ企業がこれから台頭してくる可能性が高いだろう。NVIDIA自身も1993年に設立された若い企業であり、AIに注力し始めてから10数年しか経過していない。NVIDIAを脅かすような新興企業の台頭は、半導体業界・AI業界を活性化してくれると期待している。


Think!
ニュースに投稿がつく「Think!」。これまでの投稿一覧と、エキスパートのみなさんのご紹介は次のページから。

【投稿一覧】
https://www.nikkei.com/topics/EVP00000
【エキスパート紹介】
https://www.nikkei.com/think-all-experts

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