反日デモで中国ツアー中止相次ぐ 日中交流・観光に影
中国での反日デモが拡大するなか、日本国内では「留学中の友人が心配」などと現地の安全への懸念の声が上がる。中国からの観光客が急減するなど、日中関係悪化の影響が広がっている。
「気持ちの高ぶっている中国人から暴行や嫌がらせを受けないか心配」。友人の女性が北京に留学中という千葉県市川市の会社員、藤原さおりさん(23)は不安そうな様子で話す。
報道では北京の日本大使館に若者が押し入ろうとするなど、激しいデモの様子が伝えられており、「友人はデモの様子を見たいと思って近づくこともあるかもしれない。行動には十分気をつけてほしい」と気遣う。
栃木県内のある旅行会社は、23日から予定していた四川省成都市への5泊6日のツアーを取りやめた。「参加者から安全面の不安の声が上がり、中止せざるを得なかった」と男性経営者(49)は話す。今後も数件のツアー企画があり、「これ以上日中関係が悪化しないように期待するしかない」とため息をついた。
富士山が一望できるのが人気で宿泊客の4割を中国人が占める富ノ湖ホテル(山梨県富士河口湖町)では、この3日間だけで計500人分の宿泊予約がキャンセルされた。
天野隆総支配人は「新規の申し込みも途絶えるだろう」と声を落とした。「2010年の漁船衝突事件の後は客足が回復するまで4カ月かかったが、今回は国民感情が一層悪化している様子で先が見えない」
千葉市日中友好協会は、中国人留学生と協会員が交流する旅行などを定期的に企画しており、白井忠博理事長は「中国人留学生が帰国するような事態にはならないだろうが、政治が民間の交流に水を差すのだけは避けてほしい」と訴えていた。