「国難」への備え求める 巨大地震対策中間報告
財源や政治判断など課題
首都直下、南海トラフの2つの巨大地震について中央防災会議は19日、当面取り組むべき応急対策を公表した。東日本大震災の教訓から、首都機能まひなど最悪の事態を前提に地震・津波に備える必要性を強調した。対策を進める上では、限られた財源の配分や政府機能の代替拠点をどこに置くかなど政治決断が課題となる。
中央防災会議が公表した中間報告は、首都直下地震の発生で政治経済の中枢機能がまひすれば「我が国の存亡に関わる」、南海トラフ地震については「国難ともいえる巨大災害になる」と危機感をあらわにした。
中間報告を受け、19日記者会見した中川正春防災担当相は「東日本大震災などこれまでの反省から災害は想定を超えてくるということを前提に、減災計画を作らなければならない」と述べた。
不安に応える
政府の地震調査研究推進本部によると、30年以内に首都直下地震が起こる確率は70%。南海トラフ沿いの地震も、東海88%、東南海70%、南海60%で、3つが連動する可能性もある。
首都直下地震への備えで、中央防災会議が特に急を要すると判断したのは政府の代替拠点の準備。東京都心から30キロしか離れておらず、同時被災の可能性がある東京都立川市の広域防災基地などにとどまっていることに対し、早めに警鐘を鳴らす必要があった。
南海トラフ地震を巡っては、同作業部会主査の河田恵昭関西大教授が今月6日、「在宅率が高い深夜に発生すれば、死者は40万人に達するかもしれない」と大阪市内の講演会で発言。最大級の津波への対応を早めに提示し住民らの不安に応えることが求められていた。
予算の8倍
課題はいくつもある。一つは唯一予知が可能とされている東海地震の強化地域に絞って、施設整備費などを手厚く補助している現行の仕組みの見直しだ。中間報告は、首都機能の代替策や津波対策の強化などとともに、首都直下、南海トラフの両地震対策について特別法の制定を検討するよう提言。対策に必要な財源の手当てなど、制度的裏付けが必要と指摘した。
また東日本大震災で明らかになったように、全ての津波に海岸堤防などのハード整備で対応することはできない。高知県の推計によると、防潮堤などの整備に必要な費用は太平洋沿いの9県だけで8兆円と、国の年間防災予算の8倍にのぼる。財源をどう振り向け、どう優先順位を付けるかの判断も必要だ。
政府の代替拠点をどこにどのように置くかなどを巡っても利害調整が不可欠となる。巨大地震に備えるために国民的な議論をどう醸成し、迅速に対応していくか。政府の防災力が問われている。