大人の評価が決まる「お礼のマナー」 意外なポイント
お世話になったり、ちょっとした厚意を受けたりしたとき、お礼の仕方はさまざまです。礼儀としての正統的なお礼だけでなく、大人なら臨機応変に感謝を伝えたいもの。忙しいとつい手薄になりがちな「お礼のマナー」を、企業での研修や人材教育、メディア等で活躍中のマナーコンサルタント、西出ひろ子さんにお聞きしました。
「お礼は3日以内に」がやはり正しい理由
一般的に、何かをしていただいたら「3日以内にお礼状をお送りする」のが礼儀とされています。ただ、仕事などで忙しいとその通りにできないこともあるでしょう。お恥ずかしながら、私自身もなかなかできてはおりません。しかし先日、TVのお仕事で、芸能界では大御所でいらっしゃる女性の方とご一緒した際に、あらためてお礼の大切さを認識させていただきました。
収録が終わって、私が先に失礼する際にちょっとした手土産と自分の新刊を差し上げました。すると、その翌々日に、美しいお礼状を送ってきてくださったのです。しかも、お忙しいにもかかわらず新刊を読んでくださった感想までしたためてあって、本当に感動いたしました。お礼状は3日以内にということがいかにすばらしいかをあらためて感じ、いっそうその方のファンになりましたし、私ももっと頑張らなくてはと反省しきりの経験でした。
こうしたことをいま一度認識した上で、仕方については、ご自分にとって無理のないお礼の対応を臨機応変に考えるのがよろしいかと思います。特に今の時代はネットやメールが当たり前になっていますから、もしメールで連絡ができる場合であれば、まずはすぐにメールで「ありがとうございました」とお伝えするのが必須でしょう。特に、仕事上で何かをしていただいたときは、できるだけ早くメールでお礼を伝えることです。これから信頼関係を構築しようという相手、今後も一緒にお仕事をしていきたい相手には、特にこまめに感謝を伝えることで、より緊密な協力関係が築けることでしょう。
強く印象に残る感謝の伝え方
「日ごろお世話になっていることへのお礼」は、普通はお中元・お歳暮などの贈答を考えがちですが、慣習にこだわらずに予想外のタイミングでお贈りするほうが喜んでいただけることもあります。思ってもいなかったときに「感謝の気持ちです」といただく贈り物はうれしいものです。日ごろお目にかかる方だけでなく、ちょっとご無沙汰しているけれどこれからも親しくお付き合いしたいという方へは、あまりタイミングにこだわらず、何かの機会に喜んでいただけそうなものをお贈りするとよろしいのではないでしょうか。
お礼を伝える方法として、ちょっと意外かもしれませんがおすすめなのが「電報」です。電報というと冠婚葬祭のイメージが強いですが、花などギフトと併せて届けてくれるものもあり、お礼はもちろんお誕生日のお祝いやお見舞いなど、さまざまなシーンに使えます。「もうすぐ〇〇さんのお誕生日」というときにもすぐ届けてくれるのでとてもありがたいですし、メールや手紙のように文面をいろいろ考えなくても、シンプルなメッセージで十分なのも良いところです。
普段、電報を受け取る機会はあまりないかと思います。それゆえに受け取った方の印象に残る上に、数千円程度の金額もかかりますので、あなたのお礼や感謝の気持ちもいっそう伝わると思います。最近は台紙の種類が豊富で、ネットから手軽に申し込むことができます。私が個人的に気に入っているのは、クレジットカード大のプレートにメッセージを入れてくれるタイプの電報です。じゃまにならない大きさなので、受け取った後「お守りのようにお財布に入れています」との連絡を多く頂戴します。お贈りしたものをその後に活用いただけるお礼状は一石二鳥となり、さらに喜んでいただけるようです。
敬称の使い方は気を抜かずに
お礼状に関連して、意外に重要なのが「敬称」です。敬称の使い方ひとつでその人への評価が分かれることもありますので、注意なさることをおすすめいたします。
相手のお名前につける敬称は、一般的には「様」です。しかし、医師や教師など、通常「先生」と呼ばれるような職業の方に対しては「先生」を使いましょう。「様」か「先生」かによって、相手の方が受ける印象は大きく異なるものです。
また、「様」の字にもランクがあります。「様」には異体字がいくつかあって、昔は相手に合わせて書き分けていました。通常の「様」のほか、つくりの下の部分を「永」、「次」と書く字もあります(それぞれ「えいさま」「つぎさま」と呼ぶこともあります)。
このうち特に目上の方に対する敬称が、つくりの下が「永」の「樣」です。年配の方にはこの字をお書きになる方も多いです。目上の方で、なおかつ「先生」と呼ばれる職業ではない方には、この字をお使いになるとさらに厚く敬う気持ちを表すことができますので、知っておかれるのもよいのではないでしょうか。
マナーコンサルタント・美道家。英国の民間企業WitH Ltd.ウイズ・リミテッド日本支社代表を務めたのち、ヒロコマナーグループの代表として、ウイズ株式会社、HIROKO ROSE株式会社、一般社団法人マナー教育推進協会を設立。企業などでの研修・コンサルティング、マナーを軸に健康、美容、ファッションなどトータルな人材育成、人材プロデュースも行う。「日本文化を気軽に日常に!」をコンセプトにMade in JAPANのフォーマルバッグをプロデュース。著書は70冊以上、累計100万部以上。近著は『運のいい人のマナー』(清流出版)。
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