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未利用魚とは 行き場のない魚をサブスクで有効活用

「未利用魚」と呼ばれる魚たち。
サイズが規格外だったり、一般に知られていないことで買われないといった理由で市場にあまり出ない魚のことを指します。気候変動による海水温上昇などの影響で日本の漁獲量が年々減少している中、解決策のひとつとしてこれまであまり食べてこられなかった「未利用魚」に注目が集まっています。
(クローズアップ現代取材班)

「未利用魚」とは

「未利用魚」と呼ばれる魚とは、どういったもののことを指すのでしょうか。
実は、明確な定義は定められていません。

地域によっては食べられたり、ある時期だけは取り引きされる「低利用魚」も含めると
一般的には次のような特徴が挙げられます。

【「未利用魚」と呼ばれる魚の特徴】
・サイズが規格外のもの
・漁獲量が十分でないもの、反対に獲れすぎて売れ残る可能性が高いもの
・一般に知られていないために不人気で売れないもの
・骨が多かったり、毒やトゲなどがあり調理が面倒なもの
・特定の地域でしか食べられないもの など

こうした魚は市場に出回っても、買い手がなかなかつかないために低価格で取り引きされます。
希望する値段で売ることが出来ずに、売り手である漁業者や水産業者が損する可能性が高くなる魚は漁の時点で獲らないようにしたり、廃棄されるなど、自然と市場に出回らなくなるのです。

また、かつてはよく食べられていた魚も数がそろわなかったり、規格がばらばらといった理由で大規模な流通に向かず、「未利用魚」と呼ばれるようになったものも多いといいます。

「未利用魚」が注目される理由 日本漁業の危機

いわゆるワケアリ商品だった「未利用魚」が、近年注目を集めるようになった背景には、日本漁業の長年の課題があります。

日本の漁獲量は1990年に約957万トンを記録。
しかし、その後減少を続け、2021年にはおよそ319万ほどにまで落ち込んでいます。

一方で、「未利用魚」について正確な統計はないものの、FAO(国際連合食糧農業機関)が2020年に出した報告書によると、世界の大半の地域では全漁獲量の約30~35%が廃棄されているといいます。

これを日本の漁獲量で換算すると、およそ100万トンもの魚が廃棄されている可能性があるというのです。

これまで捨てられていた「未利用魚」を食べるということは、食品ロスを減らすことにつながります。さらに、漁業従事者から見れば、これまで廃棄していた魚から収益を得ることが出来るようにもなります。

「未利用魚」を積極的に活用することで、日本漁業の活性化も期待できるというのです。

「未利用魚」を楽しく食べて学べるレストラン

日本の食卓と漁業の将来を守るため、「未利用魚」を積極的に利用しようと料理人たちが動き出しています。

2017年に立ち上がった、東京のレストランで働くシェフや食に関わる仕事をする人たちで構成された団体では、政府機関や研究機関と連携して勉強会やイベントを開催。
減少が続く水産資源を食に携わる者としてどのように守っていくかを考える場を作り出してきました。

そのメンバーの一人、石井真介さんが2020年に立ち上げたフレンチレストランでは、「未利用魚」や環境に配慮した方法で漁獲されていると認証された海産物のみを使用しています。

こうした店を開こうと思ったきっかけは、料理人としての責任を感じたから。
最高級の食材や人気のある食材ばかりを求めるという自分たちの行動が、限られた魚種ばかりが並ぶ市場を生み出し、水産資源の枯渇を招いてきたのではないかという危機感がお店を始めるきっかけとなったといいます。

未利用魚イネゴチを使ったメニュー

お店ではお客さんにも楽しく「未利用魚」に親しんでもらいたいと、料理をただ提供するだけではなく、使っている魚そのものを見せながらどういった魚なのかも説明。

お客さんからの反応もよく、「未利用魚」を使った料理のリクエストが一番多いといいます。

漁師から新鮮な「未利用魚」が届く

なかなか近所のスーパーマーケットでは見つけられない「未利用魚」ですが、近年では漁師から直接購入できるオンライン産直サービスが複数展開されています。

農家や漁師などの生産者から新鮮な食材を購入できるオンライン直売所のサービスを展開している企業では、「未利用魚」に特化した商品販売も展開しています。

プラスチックフリーや食品ロス削減などをテーマに環境に配慮した食材を特集化したコーナーに、今年4月から「未利用魚」のテーマを新設しました。

こちらのウェブサイトでは漁師が直接販売、やりとりも直接できるため、食べ方がイメージしづらい「未利用魚」のおすすめの調理方法などを教えてくれることもあります。

産直サービスで届く「未利用魚」セット

梱包などの作業は発生するものの、これまでは捨てていた魚が商品として利益を生むようになったため、出品している漁師からも喜びの声が聞かれているといいます。

家庭で一手間だけ 簡単で美味しい「未利用魚」料理

未利用魚・低利用魚 季節ごとのおすすめ&レシピはこちら☟
https://www.nhk.or.jp/minplus/0019/topic078.html

音楽配信や動画配信などあらゆる業界で続々と広がっているサービス「サブスク」。
定期的・定額制で商品を届けるそのサービスが「未利用魚」の世界でも登場しています。

水産物の流通サービスなどを手がける会社が2021年に始めたのが、
「未利用魚」に特化したサブスクサービス。
こちらでは、調理が難しいとされる「未利用魚」が調理された状態で届きます。

「未利用魚」のサブスクセット

すでに調理済みのため、解凍するだけ・焼くだけなど一手間加えるだけで食べることが出来るようになっています。
メニューは季節に合わせて、現在20種類以上を展開しています。

定期的に購入するサービスを展開したことで、「未利用魚」を提供する漁業者も安定した収入を見込むことが出来るようになっているといいます。

マイナーな魚をもっと身近に

決まった種類の魚だけでなくマイナーな魚にも親しみを持ってほしいと、珍しい魚の仕入れに積極的に取り組む鮮魚店も登場しています。

そもそも魚離れが進んでいる日本。
国内における魚の消費量は20年近く減少が続いており、鮮魚類を専門とした小売店の数も1994年からの20年間でおよそ3割にまで落ち込んでいます。

そうした中、都内を中心に展開する鮮魚店では特に魚離れが進む若い世代にも鮮魚店に立ち寄ってもらいたいと、内装を一見雑貨店やカフェのように見えるデザインにしています。

その一方で、昔ながらの対面販売で店頭に並んだ珍しい魚のおすすめ調理方法を直接伝えることで、お客さんが魚そのものに親しめるよう取り組んでいます。

鮮魚店店内

「未利用魚」が起こす地域の活性化

この他にも、あらゆるところで「未利用魚」の活用が広がっています。

福岡県宗像市にある道の駅では、「未利用魚」を含め、獲ったものの市場では価値がつかない魚を積極的に漁師から受け入れています。

漁師に売り場を貸し出し、漁師自身が売りたい魚を売りたい値段で販売できる仕組みにすることで、普段は捨ててしまう「未利用魚」などの魚の販売を可能にしました。
漁業者の収入アップにつながっています。

道の駅むなかた

海と漁港に隣接している福井県高浜町の商業施設では、「未利用魚」を利用した商品開発に力を入れています。施設の隣にある若狭高浜漁港では、近年ブリやイワシの漁獲量が減る一方で、シイラをはじめとした「未利用魚」の漁獲量が上位を占めるようになったといいます。

こうした「未利用魚」を串焼きやバーガーに加工して販売。
その他にも、加工に手間とコストがかかるために廃棄されてきたエソなど、多様な「未利用魚」をブレンドしたすり身団子を商品開発してきました。

独自に開発した商品が人気を呼び、商品開発に携わりたいと希望するスタッフが増えたりと、漁港を含む地域の活発化にもつながっているといいます。

元々、昔は食べられていたものも多い「未利用魚」。
時代が変わるにつれて工業化が進み、魚も切り身で販売されることが多くなった一方で、「未利用魚」は調理の難しさなどを理由に食卓から遠ざかっていきました。

魚が安定して獲れなくなってきたいま、私たちの食卓だけでなく日本の漁業を助けるためにも、「未利用魚」を積極的に食べて、食卓を彩る魚の種類を増やしてみてはいかがでしょうか。

クローズアップ現代 2022年7月4日

“もったいない魚”未利用魚で食卓を豊かに!安くてうまい簡単レシピも!
※7月11日まで見逃し配信

みんなのコメント(45件)

感想
fuka
19歳以下 男性
2023年11月14日
これははじめてしった
感想
じいじ
60代 男性
2022年7月5日
素晴らしい
感想
あっきー
40代 女性
2022年7月5日
30%も破棄されているとは知りませんでした。とてももったいない。早速、ネットで注文してみました。
提言
ちゃちょ
60代 男性
2022年7月4日
魚は、健康食です。20年で3割の漁獲高になって、3割の100万トンも廃棄されているなんて知らなかった。未利用魚のオンライン産直サービスで、皆が喜べるよう、捌きかたや作り方の番組や本を出してほしい。
提言
ヒロちゃん
60代 女性
2022年7月4日
未利用魚と海に捨てられている現状を見て、唖然としました。日本の飽食、使い捨て時代から「地球危機回避」持続可能な再生、リサイクルでより良い社会に向けている今余りにも逆行。皆んなでどんどん注目する必要性を強く感じます。
感想
ゆうきゃん
70歳以上 男性
2022年7月4日
日本の近海に3000種類の魚あり約10%より食していないと聞いて本当におどろきました。私自身ほとんどの名前も知らず決まったものばかり食しているのがわかりました。
これから早速ネット注文でレシピも付属して料理してみたいと改めて感じました
感想
なかやん
70歳以上 男性
2022年7月4日
さかなだいすき
珍しい魚を食べてみたいです
感想
中ちゃん
60代 男性
2022年7月4日
このコロナ禍で食料品のロスが問題になっていますが、未利用漁の廃棄は知られていない中、このような取り組みをいただいたことに感謝しています。
もっと流通できるように広めてください。
提言
修ちゃん
60代 男性
2022年7月4日
未利用魚の、利用方!私は、農業をしています。魚を、肥料にしては、どうでしょうか?地元の、農協では、全く魚の入った肥料は、売っていません。効能良く、原料安く、無駄無く、漁師さんも、農家も喜びます。いかがでしょう?
感想
女性
2022年7月4日
とてもいい事だと思います。1人暮らし、忙しい人、調理してあるのはとても助かります。冷凍になっていると何時でも食べられて嬉しいです。どうやって注文したらいいですか?

担当 地球のミライの
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