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野辺山宇宙電波観測所・夏のイベント

著者近影西村淳(国立天文台野辺山宇宙電波観測所)

八ヶ岳と45メートル電波望遠鏡
八ヶ岳と45メートル電波望遠鏡(クレジット:国立天文台)

長野県の野辺山。標高1400メートルの高原です。冬はとても寒く、最低気温がマイナス20℃を下回ることもしばしば。そのいてつくような寒さとカラッカラの湿度の低さから、人が住むにはやや厳しいのですが、その代わりにミリ波電波観測にはこの上なく最適です。そのため45メートル電波望遠鏡の設置場所として国内の他の候補を抑えて選ばれました。その地の利と、絶え間ない技術開発の努力により、世界のミリ波電波天文学を40年以上に渡ってリードし続ける、日本の電波天文学の聖地でもあります。夏はとても涼しく、高原野菜の一大産地であるとともに、人にとってももちろん過ごしやすく、避暑におすすめのロケーションです。

そんな夏の野辺山宇宙電波観測所では、毎年イベントが開催されています。この夏、雄大な山々と広大なレタス畑に囲まれた、世界最大級のパラボラアンテナを見に、野辺山まで足を運んでみてはいかがでしょうか。以下では、昨年のイベントの様子を交えて、今年のイベントをご紹介します。

特別公開(現地開催)

昨年の特別公開2023の様子
昨年の特別公開2023の様子(クレジット:国立天文台)

野辺山宇宙電波観測所は、一年を通して、自由に見学することができます。巨大なパラボラアンテナも、四季を通して近くで見ることができます。ですが、やはりオススメは、年に1度だけ行われる夏の特別公開です。この日は、観測所の職員が総動員なのはもちろん、国立天文台の他部門から派遣されてきた職員、いつも観測所の望遠鏡を利用している大学教員や大学院生などの研究者、はたまた、観測所のOBなどなど、たくさんの人が集まって、普段では体験できない、さまざまなイベントが企画されます。世界最大級のミリ波アンテナである45メートル電波望遠鏡(通称「ヨンゴー」)の表面に触れられる体験、パラボラアンテナを自作できるブース、電波観測を体験できるコーナー、研究者による最新の宇宙研究を紹介するミニ講演会などなど。

昨年は、10の企画に1353人が参加しました。今年も多くの企画を準備中です。さらに今年は、南牧村と商工会が野辺山駅前でお祭りを同時開催します。村中がお祭り一色になるこの特別な日に、ぜひみなさんお越しください。開催日は8月24日(土曜日)です。企画内容、駐車場・交通手段などの詳細は、公式ウェブサイト で順次公開しますのでご確認ください。

特別公開(オンライン)

特別公開2023オンラインでの仮想空間会場の様子
昨年の特別公開2023オンラインでの仮想空間会場の様子(クレジット:国立天文台)

現地で見る巨大アンテナは大迫力ですし、対面で直接聞く電波天文の話はとてもワクワクします。ですが、長野県はちょっと遠くてなかなか現地まで行けないなぁ、とお考えのあなた! そんな皆さんにご用意しているのが、特別公開オンラインです。特別公開オンラインでは、野辺山宇宙電波観測所で発見された最新成果を紹介する講演会や、全国の大学からたくさん集まった研究者から色々な話が聞ける仮想空間会場(ギャザー会場)があります。昨年は13件の研究成果紹介に加え、19の大学が電波天文学研究室の紹介をしました。今年も、まるで実際に野辺山に来たかのような体験ができるような、YouTube配信での講演会と、ギャザー会場でのミニ講演会を準備しています。特別公開オンラインは7月20日(土曜日)の開催です。接続情報など詳細は公式ウェブサイト をご確認ください。

「ヨンゴー」ペンキ塗り体験イベント

2023年の45メートル電波望遠鏡のレール塗装体験会の様子
2023年の45メートル電波望遠鏡のレール塗装体験会の様子(クレジット:国立天文台)

45メートル望遠鏡(ヨンゴー)はとても巨大で、重さは700トンもあります。その重量を支えているのが、足元のアジマスレールです。近年、このレールにサビが目立ってきてしまいました。ですが、サビが出来ても観測性能は悪くはならないので、サビはほったらかしでした。でも、赤茶けた見た目はどこか寂しそう。そこで、普段は入れない、科学技術の結晶である 45メートル電波望遠鏡に間近に迫ることができる機会を兼ねて、レールの塗装体験会を昨年初めて実施しました。塗装体験者にはアンテナの見学も体験いただきました。今年も7月29日(月曜日)に実施予定で準備を進めています。募集についての詳細は、ペンキ塗り体験2024ウェブサイト をご覧ください。

その他のイベント(ナイトツアー、有料ガイドなど)

南牧村により実施されているナイトツアーの様子
南牧村により実施されているナイトツアーの様子(クレジット:南牧村振興公社)

国立天文台野辺山宇宙電波観測所では、南牧村と観光・教育事業で連携を進めており、有料での提供とはなりますが、従来は体験できなかった企画を用意しています。中でも、週末を中心に開催している夜の観測所を探検できる「ナイトツアー」は、昼とはまた違った姿を見せるパラボラに、抜群の星空も相まって、非常に好評です。また、観測所OBなどの電波天文学の専門家がガイドを務める「有料ガイドツアー」も好評です。ガイドの解説を聞きながら、うかんだ疑問をその場で質問しながら、観測所内のアンテナやパネル展示を見学します。これらのイベントは、野辺山宇宙電波観測所のイベント情報ページ に開催状況をまとめているので、ぜひご覧ください。

終わりに

野辺山宇宙電波観測所は、夏の避暑にも最適な野辺山高原にあります。そこでは、活動は停止したものの、40年を超える歴史に裏打ちされた荘厳なたたずまいのアンテナ群と、いまだ世界をリードする現役の最先端科学の結晶が混在しています。さらには、八ヶ岳をはじめとする雄大な自然も同居する、まるでSFのような非日常的な空間が広がります。ぜひこの夏、皆さんもそんな野辺山高原で、宇宙の神秘を感じてみませんか?

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