オリンピック金メダリストのエリア・グリーンがその名を歴史に残そうとしている。
2016年のリオデジャネイロオリンピックでオーストラリア女子ラグビーチームのメンバーとして金メダルを獲得してから6年、エリアがAP通信社に現在“トランスジェンダーの男性”であることを認めた。
エリアは、スポーツ界のトランス嫌悪や同性愛嫌悪と闘うためにビンガム・カップ・インターナショナル・サミットの動画で性別移行したことを公表。
その後、AP通信との電話インタビューで、性別移行は「人生最良の選択」で、子どもの頃から自分は男性だと認識していたと明かした。
「子どもの頃、自分は人前で男の子だと思っていた。短髪だったので、初めて会った人は私を男の子だと間違える人もいたよ。常に兄の服を着て、おもちゃで遊び、シャツを着ないで走り回っていた。でも、胸が大きくなってきて、『ウソだろ』と思って」
幼児期にヨランダ&エヴァン・グリーン夫妻の養子になったエリア。当時、母親は「私に常に女の子の服を着せていた……。彼女を喜ばせたかったから、彼女が着せたいものを着ていた」という。
ターニングポイントを迎えたのは、2021年11月にラグビーを引退した後のこと。東京オリンピックのオーストラリア代表女子チームに選ばれなかった彼は、「オーストラリアのラグビー界でのキャリアを終え、家の暗い部屋にずっと閉じこもった。誰にも会う自信がなかった」という。
辛い時期を過ごしたが、新しいアイデンティティになることが自分を鼓舞してくれたという。
「私が前向きでいられたのは、性別移行に向けた手術と治療の予定を既に決めていたから。パートナーとその日をカウントダウンしていたほど」とビデオで明かしている。
アメリカでトランスジェンダーや多様な性を持つ人々を締め出す法律が制定されつつある今、エリアは自身が性別移行したことで、他のアスリートを励まそうとしている。
「トランスジェンダーのスポーツ参加を禁止するのは恥ずべきで人を傷つける行為だ」と彼。
ヴァネッサ・ターンブル=ロバーツのパートナーで、娘ワイトゥイの父親になったエリアは、これまでの道のりを振り返って、こう語る。
「手術を受け、自分のあるべき体に向かって歩み始めたら最高に解放された気分になるだろうとわかっていた。苦しい時期に、それが心の中に明るい火を灯していたのは間違いない」
トランスジェンダーであることをカミングアウトしたオリンピック選手は数少ない。
アメリカの陸上競技選手、ケイトリン・ジェンナー(2022年現在、72歳)は2015年に、トランスジェンダーの女性になったと明かした。1976年のモントリオールオリンピックで金メダルを獲得してから40年以上経っての告白だった。
2021年8月にはカナダの女子サッカーチームのクィンが、トランスジェンダーでノンバイナリーであるとカミングアウトしている。
Translation: Mitsuko Kanno From Seventeen