藤田絢子
一つの競技に偏りがちな日本の部活動と比べて、シーズンによって取り組むスポーツが異なる欧米では「マルチスポーツ」の考え方が人々に根付いている。
米国では秋、冬、春と3シーズンに分けて学生たちのスポーツ活動が行われている。
また、未就学児と小学校低学年には「スポーツサンプリング」というプログラムが提供される。
一つの競技を週1回などのペースで学ぶ場だが、多くは1~2カ月の短期間で終了するため複数の競技に挑戦しやすい。米国在住で子どもたちのスポーツ環境について取材しているジャーナリストの谷口輝世子さんは、「プログラムがすぐに終わるので、途中で投げ出してしまったという感覚に陥りにくい」という。谷口さんは、幼少期から多くのスポーツに触れる機会が充実していることが、米国のスポーツ文化の基盤になっていると見る。
そんな米国でも、子どもたちが早い段階で一つの競技に特化する「早期専門化」の流れが進んでいると谷口さんは指摘する。
米国のシンクタンクが発表した2024年の報告書によると、6歳~17歳が日常的に行うスポーツ種目数の平均は、19年から1割以上減って1・63だった。10年以上前は子どもたちが平均して二つ以上のスポーツを行っていた、とされる。
背景には、米国の高校では希望する部活動に入るために選抜試験に合格する必要があること、高いレベルの技能を早く身につけるためにシーズンオフも民間クラブなどで同じスポーツを選択する生徒が増えていることなどが挙げられるという。
ただし、同じ競技に取り組んでも、学校と民間クラブなど複数の組織に所属し、異なる指導者に接することができることは大きい。「1人のコーチの評価に縛られることがない。チームが変われば、仲間も、求められる役割も変わる」。受け皿が多く、多様な価値観を学べるシステムになっている。
谷口さんは、日本でマルチスポーツを定着させる際には「線引きが重要」と話す。
複数の競技にそれぞれ真剣に打…