待ちに待った教科書だが1巻は不要TPQ形式は続刊での説明とのことであるそこを期待して購入すると痛い目を見るのでまずはそこを明記しておくそのためで本書の価値は実質的に18.3節 等重率と平衡状態の典型性 に記載の等重率の原理を根拠とする統計力学への批判のみに制限されてしまうのだが、この18.3節がまた曲者で清水氏らしく言い回しが持って回った感じでアカデミックなだけで同等の内容が記載された教科書が2017年に出版済みなのであるそれは村上のなるほど統計力学というテキストである村上は等重率の原理から統計力学が構築できる根拠を粒子2個の場合の2準位系の具体的な状態の列挙という非常にわかりやすい方法で説明しているのだが(実際に書けばわかるが1励起1基底が状態数としては50%出現するので一番多い)、説明を具体例だけで終わらせているかもっと詳細に考察しているのかの差はあれど、本書のような典型性を根拠とする形式での統計力学のテキストは7年前に出版済みなのである。実際に状態を列挙し、確かにこの状態が一番多く現れているとする論理はまさに本書が用いた典型性を根拠とする手法と完全に等価である更に、何故古いエルゴート性に基づく統計力学と現代的な統計力学が接続するのかも続刊に回されてしまった様子であるため、残念ながら本書の価値は低いと言わざるを得ないどう控えめに言ってもこれだけ待たされただけの価値を私は本書には見いだせなかった2024/12/22 追記本書は等重率の原理ではなく典型性を根拠としているがその説明にも問題があると気づいたので追記する清水氏のテキストがやや数学的になりすぎる傾向があるのはよく知られた話だがそのために典型性を使い統計力学を構築する部分の根拠がわかりにくく結局村上を読んだほうが良くないかと思った理由は単純でその部分が言葉や論理や数学だけで説明されており物理的な具体例が欠落しているの一点である粒子A, Bだけがある2準位系の場合1励起1基底が状態数としては一番多いのでこれが典型状態となる。具体的には粒子A(励起)、粒子B(基底)または粒子A(基底)、粒子B(励起)のどちらかである。つまり1励起1基底という典型状態が示す真の粒子の状態は複数あるということである(典型状態により指定される物理的な状態は複数あり写像は1対多となる)本書の当該箇所が読んでいて非常にわかりにくく清水氏は等重率の原理の話をしているのか典型性の話をしているのかさっぱりわからなかったのだが、思考の整理がついた今なら清水氏の説明の仕方に問題があるといえる正直本書の用途がよく見えてこない。村上は典型性を根拠として「これって等重率の原理じゃん」と話を終わらせて分配関数作って分配関数が統計力学の母関数だからそこからすべての情報を取り出せるまで書いてあるし話も具体例が使われておりわかりやすいので初学者から上級者までおすすめできるし、研究用途ならランダウとかファインマン統計とかの方が有用だろう。熱統計の計算練習ならグライナーがあるし…本書にはTPQ形式の準備のような部分も特にないように見えたうーん…5