【6月5日 AFP】ドイツのナンシー・フェーザー(Nancy Faeser)内相は4日、アフガニスタン出身の男(25)が反イスラム集会を刃物で襲撃し、警察官1人を殺害、5人を負傷させた事件を受け、アフガンへの強制送還の再開を検討していることを明らかにした。

 ドイツ政府は、イスラム主義組織タリバン(Taliban)が2021年にアフガンの政権を奪還して以降、同国への強制送還を停止していた。

 だが、フェーザー氏は会見で「この数か月、重犯罪者や危険人物をアフガンに強制送還するため、集中的な協議を重ねてきた」と説明。

「わが国の治安を脅かす可能性のある人物については、直ちに国外退去させなければならないのは明らかだ」「だからこそ、犯罪者や危険人物をシリアとアフガン両国に強制送還する方策を見つけるため、手を尽くしている」と述べた。

 アフガン出身の男は5月31日、ドイツ西部マンハイム(Mannheim)イスラム過激派に反対する団体「パクス・エウロパ(Pax Europa)」が主催した集会で、ナイフで次々に人を襲ったとされる。襲撃を阻止しようとした警官(29)が繰り返し刺され、その時のけがが原因で2日に死亡。参加者5人も負傷した。

 この事件を機に、アフガンへの強制送還の再開をめぐる議論が再燃している。

 報道によれば、スライマン・アティ(Sulaiman Ataee)容疑者は2013年3月、14歳の時に庇護を求めてドイツに入国。独日刊紙ビルトによれば、難民とは認定されなかったが、年齢を理由に国内滞在を認められた。

 独ニュース誌シュピーゲルによれば、その後ドイツで学校に通い、2019年にはトルコ系ドイツ人女性と結婚、2人の子どもをもうけていた。

 当局からは危険人物としてマークされておらず、近隣住民も過激派には見えなかったと話しているという。

 検察のテロ対策部門が3日、捜査を引き継ぎ、動機の解明を進めている。(c)AFP