いーふらん 渡辺喜久男会長が考える「社員幸福満足度日本一」企業とは

全国1,300店舗(2025年1月時点)を誇る買い取り専門店「おたからや」をフランチャイズ展開する株式会社いーふらんの渡辺喜久男会長は50歳代になってから一代で巨大買い取り専門店チェーンを築き上げた立志伝中の人物だ。どのような生い立ちから発想を得て、年間売り上げ840億円を達成する大企業を作り上げたのか。「目指せ年間売上1兆円」「目指せ社員幸福満足度日本一」を旗印に、25期連続増収増益の躍進を続けるいーふらんの今後の展望と、さらなる成長を狙っていーふらんが求める人物像を稀代の創業者に語ってもらった。

好きな仕事でメシを食いたい

――どんな生い立ちや経験から買い取りフランチャイズチェーンを起業することになったのですか。

渡辺喜久男

渡辺喜久男会長

私は1947年、茨城県石岡市で生まれました。土木工事会社の現場監督だった父親の仕事に付いていくかたちで三重県四日市市や神奈川県川崎市に引っ越しをしました。たまに帰る茨城の祖父の家には古銭や刀剣があり、幼少期から骨董に関心を持つきっかけになったのだと思います。中高時代は柔道に打ち込みました。

大学を出たものの、何もないところから大きなお金を稼ぎたいと考えていたので、公務員やサラリーマンになる気にはなれず、起業するしかないと思いました。まずは百円均一販売を始めましたが、単価が安いので大きなビジネスにはなりにくかった。当時からリサイクルショップもありましたが、冷蔵庫や洗濯機は単価が低いわりに場所代や保管費がかかる。好きな仕事でメシを食いたいという考えもあり、一人で運べる大きさで単価の高い骨董品の買い取り専門店を始めることにしました。好きなことなら一生懸命やれる。疲れないし、飽きません。継続は力なりです。

事業で成功するコツは

――おたからやを始めたのは会長が50歳前後になってからですね。成功するまでくじけることはなかったのでしょうか。

渡辺喜久男

いろいろな事業に手を出し、それまでは結婚仲介業のフランチャイズや調査業もやっていました。いろいろな事業に挑戦する過程で資金繰りがうまくいかず、生命保険を解約したこともありました。自分で事業をやるということは「やるかやらないか」ではなく「やるか死ぬか」です。失敗しないコツは成功するまでやり続けることです。

失敗から学ぶこともあります。若い頃には骨董商もやったことがありますが、不良在庫を抱えて資金繰りに苦しんで会社を閉じました。その経験から、一般のお客様から買い取り、在庫に苦しむリスクが少ない今の業態が良いと考え、現在の事業拡大につながりました。

おたからやには、お客様はそれぞれに思い入れのある品物を売りに持ってこられます。お客様にご満足いただくには買い取り価格はもちろんですが、しっかりとコミュニケーションを取って思い入れのある品物にまつわるお話をうかがって理解することが大切です。心の通じる会話をすることによって、「おたからやに売って良かった」と思っていただけるお客様を一人でも多く増やすことが業界最大手としての心意気であり、経営理念だと考えています。

当社は「目指せ1兆円」と目標に掲げていますが、一緒にやってくれる社員たちと実現することが私自身の目標でもあります。

若くても出世する人とは

――勢いのある会社で採用人数も多く、若い社員が多い中、人材育成の面ではどのような信念をお持ちでしょうか。また、御社に入って成功する人はどういう人ですか。

新卒採用の人は私にとっては孫の年齢以下の人たちです。終身雇用という考え方が薄まり、転職することが当たり前の時代になってきていますが、人生は一度きりです。自分がどのような人間になりたいかを考え、目先のことではなく、自分の将来に向けて信念を持って働いてもらいたい。いーふらんはそのような社員が活躍できる会社です。

一般論として、会社で出世する人は仕事に対して前向きで会社思いの人たちです。当社も同じで、社員と話をしていて仕事に前向きな部分を見つけるとうれしく思います。立場上、全ての社員と業務で関わることは難しいので、社員とゴルフに行き、食事を共にしてコミュニケーションを取るようにしています。普段ほとんど話ができない新卒社員とも一緒に行きます。今では、77歳になった私の体力と健康維持にも一役買っています。

渡辺喜久男

加えて当社では、若い社員を大切にしながら活躍の場を創出すべく「社員幸福満足度日本一」を目指しています。実力主義の給与待遇や残業禁止はもちろんですが、福利厚生を約50種類も用意しています。社内にマッサージ室があったり、私用でも使える大型バスを用意していたり、社内懇親会のためのクルーザーも2隻あります。

このような環境や社風に共感して入社してくれる社員が増える一方で、課題もあります。当社は会社の成長が速く、若手人材の採用を強化しているので、管理職の人材育成も同じ速度で進める必要があります。そのため、管理職志望の方も歓迎します。現社長の鹿村は、約20年前に契約社員として入社しました。年齢は私の半分ぐらいですが、頭の回転がとても速く、今では心の大きな支えになっています。鹿村社長のように、人の上に立って会社の意思を社員に伝えてくれるマネジメント層の教育は、私自身の仕事だと思っています。

海外でも100%成功する

――今後、いーふらんはどうなっていきますか。

国内の買い取り事業は参入が増え、企業の合併・買収(M&A)が続いていて、飽和状態に近いと考えています。国内市場は先が見えてきたので海外展開を進めています。海外では、貴金属やブランドバッグ、時計の買い取りだけでなく、販売も行なっていきます。「世界フランチャイズ」展開を目指して、まずはアジアに注力し、香港とシンガポール、台湾、タイ、インドネシアで出店を準備しています。日本流のおもてなしを武器に、海外でも「OTAKARAYA」ブランドで成功すると確信しています。

渡辺喜久男

国内事業ではおたからやの運営以外にも、インドアゴルフ事業やフィットネス事業のフランチャイズ化、不動産子会社の拡大を進め、ホールディングス化を実現したいです。新規事業では、インバウンド(訪日客)需要を見込んだ大型バス事業や、少子化で学生の奪い合いになっている現状を鑑みた人材紹介会社の運営などに注目しています。

「目指せ1兆円」を旗印にしているのは、この会社を売却することなく、生涯この仕事に関わり、社員に残したいと考えているからです。「社員幸福満足度日本一」だけではなく、既に、フィリピンのセブ島や横浜市内で子ども食堂を運営したり、毎週弁当を配布したりしていますが、企業としての社会的責任も拡大しながら、後の人にこの会社を存続できるよう努めていきたいと考えています。