全国で1千店舗超を出店する、ブランド品・高級宝飾などの買取専門店「おたからや」。業界大手の一つに数えられるブランドを運営する「いーふらん」(神奈川県横浜市西区)は、2024年に初海外店舗の開業を予定しており、「おたからや」ブランドを日本から海外に拡大していく。同社がいま海外市場を見据える理由と、それを動かす組織のあり方、そして今後描いていく戦略について、鹿村大志社長と、海外事業を手掛けるE-fran SG PTE. LTD.(シンガポール共和国)の田中僚介代表に聞いた。
日本での実績を糧に海外へ
――2024年の海外進出が決定しているおたからやですが、今後の出店の状況と、ビジネスにおける強みについて教えてください。
![](https://img.cf.47news.jp/public/photo/0b248b2748d9503b05741498bc9be0e2/photo.jpg)
鹿村大志社長
鹿村社長:おたからやは現在、香港やシンガポールで出店の準備を進めています。2024年内には、インドネシアなどでも出店を進めていく予定です。同時に、日本国内でも100店舗ほどの新規出店を見込んでいます。
買取専門店であるおたからやの強みは、在庫リスクが少なく、雇用も少なく済むコンパクトなビジネスモデルであることです。その分、社員教育に力を入れる必要がありますが、国内で直営店を150店舗、加盟店を約1千店舗展開するなど、店舗や人材のネットワークを大きく拡大してきた我々には、膨大な教育のノウハウがあります。
また、海外市場では国内以上に偽ブランド品が出回っているため、従業員には真贋を見極めるスキルも必要になってきます。これについては教育ももちろんですが、AI診断を使ったシステム開発を進めており、3月中には写真数枚で時計が偽物か本物か判定できるツールの導入を予定しています。こうしたツールの導入は、業務負荷の軽減にもつながり、海外展開の大きな後押しとなります。
――おたからやの海外進出によって、現地社会にどのような影響を与えたいですか。
鹿村社長:おたからやの業務は、時計やブランドバッグなど、扱う商材が小さいため、力仕事ではないのも特徴の一つです。こうしたことから、おたからやというビジネスモデルを輸出することが、海外の女性の活躍、地位向上や、貧困の解決に繋がるのではないかと考えています。実際に、現在海外法人で採用面接をすすめていますが、応募の9割は女性の方です。
![](https://img.cf.47news.jp/public/photo/3f0ef3a0fdc3cd22f7fe4224afddf272/photo.jpg)
これに加え、いーふらんでは、社会貢献活動として、フィリピン・セブ島の台風被害をきっかけに2021年より子ども食堂を開催するなど、東南アジアの被災者支援の取り組みを継続して行っています。ビジネスではないですが、今後進出する国や地域でも、こうした社会貢献の取り組みを検討していきたいです。
――海外事業を展開するにあたって、いーふらんではシンガポールに現地法人を立ち上げ、代表に田中僚介氏が就任しました。海外事業には、どのような人材を選出したのでしょうか。
鹿村社長:代表の田中は、以前より海外企業を対象としたBtoBのオークション業務に携わり、海外とのやりとりを行っていました。また、いーふらんは社内での報告と連絡を重んじる文化がありますが、中でも田中の報告からは、彼が自らの業務の非常に細かいところまで気を回し、目を配っていることが感じられました。こうしたことから、多様なメンバーをまとめ、先導することが求められる海外で事業を開拓していく人材として適任だと考え、海外法人の代表に抜擢しました。
その他のメンバーは社内公募を行い、海外事業に意欲のある人材を集めています。いずれも、海外経験があり、自国と異なる環境でやっていける精神的なタフさを持ったメンバーです。会社としても新しいチャレンジをしている段階なので、今後は海外に目を向けた人材の積極的な採用も構想しています。
――田中代表はこれまでどのようなキャリアを築いてきたのでしょうか。
![](https://img.cf.47news.jp/public/photo/48d95ed59474b9084321dfc522e5fd88/photo.jpg)
田中僚介代表
田中代表:私はもともと不動産関連企業で営業をしており、いーふらんの努力しただけ評価される社風やインセンティブ制度に惹かれ、2019年に中途採用で入社しました。余談ですが、面接の場で採用を即決してもらったことも入社する決断の後押しとなりました。私も採用する立場になり「この人材を逃したくない」と感じる人がいたらその場で上司の承認をもらって即決することがあります。これは、普段から経営層との連絡、報告を密に行う社風だからできることですね。
入社当初は店舗の買取スタッフとして現場を知るところから始まりました。その後はフランチャイズ加盟店様のスーパーバイザーを経験し、海外オークション事業部を経て、現在はシンガポール法人の代表をはじめ、海外展開に関わる業務全般を担っています。
成果や実力が評価される社内文化
――現在担当されている海外事業についてはいきなりの抜擢だったと聞きました。当初はどのように受け止めましたか。
![](https://img.cf.47news.jp/public/photo/afb0190da40076b55e1e42ab2f48a559/photo.jpg)
田中代表:海外事業のリーダーを任されるという話を初めて聞いたのは、通常業務の報告のタイミングでした。正直なところ、驚きましたね。
そこからまず取り掛かったのは、海外への足掛かり作り。当初は1人でリサーチを行っていたのですが、その中で今後任されるであろう事業、そして自分と向き合う中でこれからのビジョンを確立でき、リーダーとしての自覚がより確実なものとなりました。
海外出店は、大手企業であっても大きな苦労が伴うものです。しかし、そのリーダーに抜擢されたということは、これまで培ってきた自分の力や成果が評価を受けたということにほかなりません。
新しい領域へのチャレンジは未知への不安に目が向きがちですが、忘れてはならないのは、不安がある分だけプロジェクトが軌道に乗り成功したときの成果も喜びも大きいということです。海外にはこれから成長していく広いマーケットがあり、会社の利益に大きく貢献できる可能性がある。そうした場所への出店を任されたことで、仕事に対して今まで以上にポジティブな気持ちで取り組めています。
――組織が大きくなる中でも、経営層が社員の成果にきめ細かく目を配っているのですね。
田中代表:弊社は、全社での報告や連絡が他社に比べても多く、他社からの転職だと特に、最初は大変だと感じる部分があるかと思います。ただこれは、商材となる高級ブランド品など、これまで馴染みがないものを扱うという部分では必要不可欠なこと。また、報告・連絡と同様に業務マニュアルの徹底も求められますが、これは充実した研修制度があるからだと言えます。
こうした土壌があるからこそ、社員規模が1千人を超えた今でも、鹿村をはじめとする経営層が社内の細かいところまで目を配り、個人の頑張りに合わせた評価をすることが実現できているのです。それを象徴する人事として、2022年に入社した社員を2023年に執行役員に抜擢したこともありました。
業務や研修を通して自分を成長させながら、それに対する評価を給与面でもしっかりと受けられるところが、いーふらんの大きな強みであり魅力ですね。私自身も、現在まで「頑張りをちゃんと見られている」という実感を得ながら仕事に取り組めています。また、実力がきちんと評価される一方で、会社の制度がしっかりしているためワークライフバランスを実現できることも強みです。
現地に合わせた戦略と「おもてなし」
――田中代表が考える、おたからやの海外戦略の鍵はなんでしょうか。
田中代表:海外市場では、偽ブランド品も多く出回っています。更に、購入したものを後日発送すると言って別の偽物を送りつけるなどの詐欺的な手口を行っている悪徳業者もあり、業界自体への信用が高くありません。そのため、「不要になったブランド品を売る」という動きが根付いておらず、多くのブランド品が次の人の手に渡ることなく廃棄されてしまっているのが現状です。
![](https://img.cf.47news.jp/public/photo/896b606494d3b493ab5c3164408f26d3/photo.jpg)
業界そのものの信頼を高めるためには、「おもてなし」に代表されるような日本の丁寧な接客が不可欠だと感じています。これは、これまで行ってきたBtoBの展示会でも実感している部分です。こうしたことから、いーふらんの強みである日本国内のスタッフ教育は、海外でのローカライズを考えていません。他国の文化を学び、寄り添いつつも、日本流の接客をそのまま現地のスタッフに根付かせられるかという部分が今後の事業成長の重要なポイントになってくるでしょう。
現在は現地での採用活動を行っていますが、将来的には日本国内で外国人スタッフを採用し、日本で研修を行って、スタッフ自身の出身国など海外の店舗で活躍していただく、という形もあるかもしれませんね。
――今後の海外事業については、どのようなビジョンを持っていますか。
田中代表:海外では、中古のブランド品が売れるということを知らない人も多い一方で、BtoBの市場では日本の相場よりもブランド品が高く売れるという現状があります。加えて、アジア諸国には日本より平均年齢が若く、市場の規模が大きい国も多いです。
現在出店準備を進めている香港では、人口は740万人程度ながら、年間3千万人以上の外国人観光客が訪れるという特徴があります。旅行客もターゲットと捉えた場合、旅行中の行動としては売るより買う方が多いと考え、香港においては買取と販売の両展開を予定しております。これにより、いーふらん史上初の販売店が海外で誕生することになります。
このように、いままでの業態に加え、現地の事情に合わせて多角的な視点で事業を成長させていければと構想しています。
今後は海外事業の拡大に向け、日本でも新卒を中心に海外事業を担ってくれる人材を採用していきます。いーふらんは、自分が会社でどのようなポジションにいるのか、自身が持つ目標がいまどれだけ達成されているのかなど、全ての事象において自分を客観視した「数値」が分かりやすい会社です。これを上手に利用して自身を管理し、高めていける方がいたら、ぜひ共に海外事業を推し進めていきたいです。
――最後に、読者へのメッセージをお願いします。
田中代表:2024年は、グローバル戦略を本格化させ、さらなる成長を目指していく年だと定義しています。これまで自社で培ってきたノウハウに、AIなどテクノロジーの新たな力を合わせて事業を進化、拡大させ、社会に貢献できる企業を目指してまいります。
![](https://img.cf.47news.jp/public/photo/c3593ead9276a32890d81150c8cab2a6/photo.jpg)