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「大石静さんです!」――宝塚歌劇団で“脇役のトップスター”として活躍したおじさん役の名手・天真みちるさんに「今、会いたい人は?」と聞いて返ってきたのがこの一言。宝塚退団後にひょんなことから脚本家デビューを果たした天真さんにとって、今年のNHK大河ドラマ「光る君へ」の脚本も担当する大石さんは憧れの人。なんと、大石さんも天真さんには注目していたそうで……。びっくり仰天した天真さんが、大石さんに脚本家として第一線を走り続ける秘訣を聞きました。「人生は少しのいいことに励まされながら、絶望の淵を生きるもの」など、大石節がさえわたります。
「脇役のトップスターになりなさい」と言われて
天真みちる(以下、天真) 大石さんは、一番お会いしたい方だったので、今日は本当に光栄です! 私、大石さんが脚本を書かれた宝塚歌劇花組のミュージカル『カリスタの海に抱かれて』(2015年)で役をいただけたとき、すごくうれしかったんです。
大石静(以下、大石) そのとき花組で印象に残ったお一人が天真さんでした。娘役になれそうなかわいさなのに男役で、しかも、おじさん役を極めていらして。私が書いた役もおじさんだった(笑)。天真さんのおじさん役はとても多彩なのよね。
天真 「変なおじさん」を追求しすぎるあまり、「それはタカラジェンヌとしてはどうなんだ」と怒られることもありました(笑)。
大石 そもそも、おじさん役を極めようと思われたきっかけは?
天真 存在感もないし「トップには絶対になれない」と確信したときから、必要とされる存在になるには何ができるかを考え始め、そこで注目したのがおじさん役だったんです。
大石 宝塚の作品には主人公の上司のように、必ずおじさん的な役があるけれど、通常はキャリアを積んだ専科(特定の組に所属しない団員の組織)方が担当されることも多いですよね。
天真 それを3~4年目の私が演じたら面白いかな、そこを狙うと若くてもせりふがもらえるかな、クビにならないかなと考えて。そうしたら、5~6年目から自然とおじさん役がくるようになりました。演出の先生方にも「脇役のトップスターになりなさい」と言われたことで、おじさん役を極めていこうと。
大石 焦りが、自分らしさにたどりつくきっかけになったんですね。天真さんはお人柄もよくて、組長になったり、専科に行ったりして、いつまでも宝塚にいらっしゃるような気がしていましたから、ご卒業と聞いたときはショックでした。私、天真さんが退団後に始められたブログをずっと読んでいたんですよ。文章が軽快で、エピソードも愉快で毎回楽しみに読んでいました。今回の対談のお話を頂いたとき、すごくご縁を感じましたね。
天真 うれしすぎます……。