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1回
夜の点数:4.0
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2013/05 訪問
夜の点数:4.0
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本手返しはラテンなターン?
2013/05/06 更新
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創業80年の老舗とはまったく知らずに訪れた。高級店の凛とした緊張感はなく,下町の穏やかな空気が心地よい。
三代目の後藤浩一さん(愛称コーちゃん)は,元高校球児であるが,一時期親に反抗して?ダンスに打ち込み,今やヒロの名でサルサスタジオを主催している。
しかし本業はやはり寿司職人である。握りの所作はリズミカルというよりは,捨てシャリが少なく,堅実な印象である。シャリの量を聞いてくれるのが気取らない感じで嬉しい。こちらも遠慮なく「特大で。」と言ってしまう。
江戸前かぶれの私の舌では,シャリは薄味で柔らかい。まあ,松波と比べるものではないが,逆にいえば関西人にもなじみやすい。新潟(魚沼か)のコシヒカリを使っているという。同じ新潟産で端麗な冷酒との相性が良い。
珍しいネタも含めてすべて築地から仕入れた天然ものを,客にお好みで10貫選ばせるか,お任せで握ってもらっても値は同じというユニークなやり方である。私はいつも,献立表や木札は見ずにお好みで注文するのだが,面白そうなのでお任せにしてみた。(私が三代目の力量を見ようとしていることは,三代目も気付いているはず。)
突き出しはモズク,大根とタコの煮物。この日のお任せは生鳥貝,赤貝(でかい),稚アユ(名物?),初鰹,ホッケ(溶ける),春子(これもでかい),生たこ(やはりでかい),バフンウニ,煮ハマ(珍しい天然だが,やや小さい),本マグロ(え,こんなにとろけるのにトロじゃない?)という組み合わせ。途中,吸い物が出る。
寿司オタクなら,ネタの大きさに「バランスが悪い。」とか言いそうであるが,多分,三代目は江戸っ子の人情から,わざわざ遠方から訪れた私のために特大特厚にサービスしていただいたのではなかろうか。そう思えてならない。
さらに三代目は,私が追加で頼むものまで予想していたと思われる。そのあうんの呼吸にこちらも応えて,コハダ,穴子(これは大きさ,柔らかさとも特筆もの!),玉子(2種類あるがシバエビと大和イモをすり混ぜたやつの鞍掛),かんぴょう巻きという,江戸前定番の流れでいただいた。
ネタケースの上にはローズクォーツのようなアンデスの岩塩。聞けば,この店が岩塩を寿司に使い始めた元祖なのだという。(異論のある方は教えてください。)
料理の鉄人が流行っていた20年ほど前に,服部幸應先生,グルメ評論家の山本益博さん,鹿賀丈史さんなどが来店したが,浅薄なマスコミが嫌いな三代目は,わざと普段の味は提供しなかったという。(どんな握りを出したんだろう?)
最強寿司職人決定戦に出場された話も出たが,あまり一度に聞いてはもったいないので,次にうかがう時の楽しみに取っておいた。そういえば,店名の由来もまだ聞いていなかった。
このように,大将との会話が弾めば,寿司の旨さも倍加するというものである。もくもくと食べて味の批評をしているだけでは,写メのコレクションしているだけでは,寿司屋での過ごし方としては余りに惜しい。
ダンスで培われた(と思う),カウンター越しの小気味良いやり取りを,ぜひ楽しんでほしい。下北沢駅から歩くなら,小笹寿司と並んで,おすすめの店である。