すばる望遠鏡について

歴史と変遷

はじめに ~宇宙への夢と挑戦~

散開星団「すばる」と 星が優しく 守るマウナケアの静夜

より遠くを見よう。もっと多くを知ろう。人類を今日の存在にまでおしあげたものは、そうした果てしなく続く夢でした。この衝動に駆られて人類は地平線を超え、水平線のかなたへ乗り出して、宇宙に足跡を残すまでになりました。

現在の天文学は、光学やエレクトロニクスをはじめとする最新の技術を動員して、いまや 130 億光年の彼方を観測し、膨張開始から間もない宇宙のあけぼのの時代をとらえようとしています。しかし、ふりかえってみるならば、人類はいつの時代にも可能なかぎり最高の技術を集め、見えるかぎりの宇宙を観ようと、その時代の驚異ともなった新しい装置を作り出してきたのです。石器時代の天文学といわれるストーンヘンジ、マヤの比類ない暦の技術、古代中国の巨大で精密な圭表 (ノーモン) などは、まさに各時代の技術の頂点であったに違いありません。天動説をくつがえす高精度のデータを生み出したティコの壁面四分儀や、銀河系の概念をもたらしたハーシェルの反射望遠鏡など、遠く深い宇宙の理解を目指す人類の歩みは、途絶えることがありませんでした。

これらの技術への挑戦を時代ごとに積み重ねて、現代の私たちは目も眩むような広大な宇宙を手に入れました。無数の恒星が生まれ、飛散し、渦巻く銀河は群れて衝突し、そして全体として急激な膨張を続ける、果てしなく変化し続ける宇宙です。

私たちは、この人類全体の夢の遺産を受け継いで、さらにはるかな宇宙へと船出をしようと、すばる望遠鏡を建設しました。すばる望遠鏡は、最初の銀河が生まれるつつある現場をとらえ、膨張し続ける宇宙の起源と歴史の全体像の把握に迫るでしょう。また、太陽系以外の惑星系を観測し、宇宙での生命の可能性を探るのです。

より遠く、詳しく宇宙を観ること。もっと広く、深く自然を理解すること。宇宙における私たち人類の位置を明らかにしようとする夢に、私たちも挑戦します。

すばる望遠鏡の歩み

1991(平成3年) 4⽉

国会が建設費を承認、⼤型光学⾚外線望遠鏡計画正式に発⾜
望遠鏡の建設開始
主鏡材の製作と総合設計を開始
望遠鏡の愛称を全国から公募

1992(平成4年) 6⽉

⼭頂の⼯事開始

1993(平成5年) 4⽉

望遠鏡本体機械部分の加⼯開始

1994(平成6年) 7⽉

ドーム上部構造の組⽴開始
主鏡材の完成

8⽉

主鏡の研磨開始

1995(平成7年) 4⽉

望遠鏡本体機械部分の製作完了 / 仮組⽴

1996(平成8年) 10⽉

ドーム内での望遠鏡組⽴開始

1997(平成9年) 3⽉

ドーム完成

4⽉

ハワイ観測所の設置と職員の赴任開始

1998(平成10年) 3⽉

ドーム内での望遠鏡組立の終了

8⽉

主鏡の研磨終了

11⽉

主鏡の山頂到着

12⽉ エンジニアリングファーストライト(星を初めて撮像)
1999(平成11年) 1⽉

ファーストライト(試験観測開始)

2000(平成12年) 12⽉

共同利⽤観測開始