子どもたちが主体となって、プロのクリエイターとともにローカルマガジンを制作する「COLOMAGA Project(コロマガプロジェクト)」が全国に広がりつつある。2023年3月時点で1都2府5県16エリアが同プロジェクトに参加しており、そのうち9エリアではすでにローカルマガジンが発刊され、7エリアでも発刊準備が進んでいる。この活動の原型となったのが伊豆市のローカルマガジン『KURURA』だ。創刊から10年にわたる歩みをたどりながら、ローカルマガジンを制作する活動が子どもたちにどのような変化をもたらしたのかを振り返り、地域の未来に与える効果を探る。

子どもたちとプロのクリエイターとでつくられるローカルマガジン

 2022年、静岡県伊豆市で子どもたちが主体となって制作している『KURURA』というローカルマガジンが創刊10周年を迎えた。この『KURURA』は「伊豆の魅力を伊豆人に届けたい。」がコンセプトの伊豆の情報誌だ。

創刊時はA5サイズだったが、第7号からはA4サイズに。表紙には子どもたちが描いたイラストが使われている(写真:松山史恵)
創刊時はA5サイズだったが、第7号からはA4サイズに。表紙には子どもたちが描いたイラストが使われている。雑誌名「KURURA」は「来るら(=来るよね?・来るでしょ?)」という静岡の方言が由来だ(写真:松山史恵)
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 『KURURA』は地元に住む子どもたちとプロのクリエイターとのコラボレーションによってつくられている。取材に行って記事を書いたり、写真を撮ったり、イラストを描いたりするのは小学4年生〜中学3年生の子どもたちだ。その子どもたちによる原稿や写真・イラストを、プロのデザイナーがレイアウトして一冊のマガジンに仕上げる。

記者として活躍するのは小学校4年生〜中学3年生の子どもたち。取材や記事の執筆に際してはプロのライターやカメラマンからレクチャーを受ける(写真提供:KURURA)
記者として活躍するのは小学校4年生〜中学3年生の子どもたち。取材や記事の執筆に際してはプロのライターやカメラマンからレクチャーを受ける(写真提供:KURURA)

 2022年に発行された第10号の中身をのぞいてみると、「伊豆ブランド」という特集テーマに沿って、子どもたちの感性で「自慢できるもの」「誇れるもの」と思えるものがピックアップされている。誌面に並ぶのは、和紙をつくる体験のできる紙漉(かみす)き工房、伊豆から世界をめざす中学生サーファー、存在は知っていても子どもたちが利用する機会がほとんどない老舗旅館などだ。

 各号のテーマを決めたり取材先の選定をしたりしているのは、中高校生で構成される「子ども編集部」のメンバーである。当初は高校生だけだったが、最近はKURURAの活動経験のある中学生も参加するようになった。

「子ども編集部」はKURURAの活動を卒業した高校生と現役メンバーである中学生の有志から構成される。記者から提出された原稿や写真などについて、コンセプトに合っているかを確認してコンテンツを揃えていく(写真提供:KURURA)
「子ども編集部」は、KURURAの活動を卒業した高校生と現役メンバーである中学生の有志から構成される。記者から提出された原稿や写真などについて、コンセプトに合っているかを確認してコンテンツをそろえていく(写真提供:KURURA)

 記者である子どもたちは、自分の行きたい取材先を選択し、「伊豆の魅力を伊豆人に届けたい。」というコンセプトに沿って、子どもならではの視点で記事を書く。

 例えば、純和風の老舗旅館を紹介する記事では、海外製のクッションが話の起点となっている。記者である子どもは、純和風の旅館に海外からわざわざ取り寄せたというクッションがあることを意外に感じる。すると、インタビューによって旅館の女将(おかみ)と社長は海外での経験を積んだ人物であることや、日本の文化を大切にしつつも海外でよいと思ったことは積極的に取り入れていることなどが明らかになっていく。記事は女将や社長の「地元を飛び出して戻ってくるのはいいことだ」という談話で結ばれている。

 この記事に限らず、読み手の存在を意識しつつも自らの感性に忠実にアウトプットしていることが随所から感じられる。完成した冊子は市内のお店や公共施設などに置かれ、回を重ねるごとに地域での認知度も上がってきた。