「先輩と話す機会」として企画したが…
Z世代の部下をもつ上司にとって、自分たちの世代と感覚や考え方が異なることが悩みの種となるケースは多いことでしょう。
どう接すれば信頼関係を築けるのか、彼ら・彼女らがやりがいを感じる環境を整えるにはどうすればよいのか、具体的な解決策を見出せずに苦しんでいませんか。
Z世代と接する際のポイントは、「良」と「善」の使い分けにあります。
私が実際に相談を受けた事例とともに、具体的な接し方について見ていきましょう。
ケース:「仕事と私生活はきっちり分けたい」タイプの部下
大手メーカーT社で働く営業部の田中さん(男性、仮名)は、「仕事と私生活はきっちり分けたい」と主張する部下の矢田さん(女性、仮名)への対応に頭を悩ませていました。
事の発端は、矢田さんが入社して間もない春先のことです。
田中さんは、営業部に配属された新入社員が先輩とコミュニケーションを図ってほしいと考え、社休日にオフィス近くの河川敷でバーベキューを催すことにしました。
「参加しないとダメなんでしょうか?」
営業部に配属された新入社員は3名。
田中さんから部員にメールで開催日時を伝えると、新入社員のうち2名からはすぐに「ぜひ参加させていただきます」と返信がありました。
ところが、矢田さんからは一向に返事が届きません。
どうしたのだろう? と感じた田中さんは、その日の終業時に矢田さんに声をかけました。
「矢田さん、さっきのメール見てくれた?」
「はい、拝見しました」
「来週末だけど、都合はどうかな?」
田中さんにとっては何気ない会話でしたが、矢田さんの表情がみるみる曇り始めたことに気がつきました。
「あの、参加しないとダメなんでしょうか?」
「いやいや、ダメってことはないよ、その日は都合が良くないかい?」
「都合がつくかどうかを、今お伝えしないといけませんか?」
想定していなかった返答を聞いて、田中さんは内心戸惑っていました。
矢田さんの口調に反抗的な印象はなく、なぜ自分の都合を上司に伝えなくてはいけないのか本当にわからない、といった様子です。