キオクシアは個人向けのGen 5対応NVMe SSD「EXCERIA PLUS G4」を発売した。キオクシアのBiCS FLASH TLCフラッシュメモリとPhisonの最新コントローラの組み合わせで10,000MB/秒の速度と低発熱を両立しているのが最大の特徴だ。さっそく、前モデルでGen 4対応のEXCERIA PLUS G3との比較を含め、実力をチェックしていきたい。

  • キオクシアのPCI Express 5.0 x4(Gen 5)対応NVMe SSD「EXCERIA PLUS G4」。2TBと1TBをラインナップしている

    キオクシアのPCI Express 5.0 x4(Gen 5)対応NVMe SSD「EXCERIA PLUS G4」。2TBと1TBをラインナップしている

キオクシア初のGen 5対応NVMe SSD

EXCERIA PLUS G4は、キオクシアの個人向けとしては初となるGen 5対応NVMe SSD。キオクシアの第8世代BiCS FLASH TLCフラッシュメモリとPhisonのGen 5対応コントローラ「PS5031-E31T」を組み合わせることで、シーケンシャルリードで最大10,000MB/秒、シーケンシャルライトで最大8,200MB/秒を実現した。

第8世代BiCS FLASH TLCはCBA(CMOS directly Bonded to Array)という新しいアーキテクチャを採用して、218層を達成し、前世代より記録密度を高め、読み書きを高速化しながら消費電力の削減を実現しているのが大きな特徴だ。

そして、PhisonのPS5031-E31TはGen 5向けとしては初のDRAMレス対応で、CES 2025では第8世代BiCS FLASH TLCと互換性があることが紹介されており、それが実現した形だ。こちらはTMSC 7nmで製造され、Gen 5コントローラとしては最速ではないものの、低発熱、低消費電力となっており、幅広いPCに組み込みやすくなっている。

容量 1TB 2TB
フォームファクタ M.2 2280
インターフェース PCI Express 5.0 x4
プロトコル NVMe 2.0c
NANDフラッシュメモリ キオクシア製BiCS FLASH TLC
コントローラ Phison PS5031-E31T
シーケンシャルリード 10,000MB/秒 10,000MB/秒
シーケンシャルライト 7,900MB/秒 8,200MB/秒
総書き込み容量(TBW) 600TB 1,200TB
保証期間 5年

価格は1TB版が22,000円前後、2TB版が38,000円前後だ。Gen 5のハイエンドモデルとGen 4のハイエンドモデルのちょうど間になる価格帯。これまではGen 5とGen 4の価格差が大きかっただけに、導入しやすいGen 5 SSDが登場したことになる。

  • CrystalDiskInfoでの表示。Gen 5のx4接続であることが分かる

  • シールの内側には薄型のヒートシンクが貼られており、放熱性を高めている

  • 2TBモデルの写真。第8世代BiCS FLASH TLCフラッシュメモリは2枚搭載されている。DRAMは非搭載だ

  • PhisonのGen 5&DRAMレス対応コントローラ「PS5031-E31T」。4ch仕様で最大8TBまでサポートする

性能ベンチマーク、公称通りの高速データ転送を確認

ここからは性能をチェックする。まずは、データ転送速度を測る定番ベンチマークの「CrystalDiskMark 8.0.6」から実行しよう。比較対象として用意したのは、前モデルでGen 4のEXCERIA PLUS G3(2TB)。テスト環境は以下の通りだ。

【検証環境】
CPU Intel Core i9-14900K(24コア32スレッド)
マザーボード ASRock Z790 Nova WiFi(Intel Z790)
ビデオカード MSI GeForce RTX 4060 VENTUS 2X BLACK 8G OC(NVIDIA GeForce RTX 4060)
メモリ Micron Crucial DDR5 Pro CP2K16G56C46U5(PC5-44800 DDR5 SDRAM 16GB×2)
システムSSD Western Digital WD_BLACK SN850 NVMe WDS200T1X0E-00AFY0(PCI Express 4.0 x4、2TB)
CPUクーラー Corsair iCUE H150i RGB PRO XT(簡易水冷、36cmクラス)
電源 Super Flower LEADEX V G130X 1000W(1,000W、80PLUS Gold)
OS Windows 11 Pro(24H2)
  • 比較用としてEXCERIA PLUS G3の2TBモデルを用意した

  • マザーボードのGen 5対応M.2スロットに装着。ヒートシンクも取り付けた上でテストしている

  • EXCERIA PLUS G4 2TB版のCrystalDiskMark 8.0.6の結果

  • EXCERIA PLUS G3 2TB版のCrystalDiskMark 8.0.6の結果

EXCERIA PLUS G4は、シーケンシャルリードが10,404.66MB/秒、シーケンシャルライトが8,934.74MB/秒と公称よりも若干高いスピードを記録した。

次は、Microsoft Office、Adobe PhotoshopやIllustratorなどクリエイティブ、オーバーウォッチなどゲーム系などさまざまなアプリの動作をシミュレートするPCMark 10のFull System Drive Benchmarkを実行しよう。アプリに対するレスポンスのよさを見ることができるテストだ。そこから、ゲームの起動速度、Adobe製品の処理速度部分を抜粋した結果も掲載する。

  • PCMark

  • PCMark個別

4,869という非常に高いスコアを記録した。これはGen 5の最速クラスSSDと比較しても引けを取らない。EXCERIA PLUS G3よりも約29%も高いスコアがそれを物語っている。アプリのレスポンスは非常に優秀だ。個別の処理速度を見ても、EXCERIA PLUS G3を上回っている。とくにゲーム起動は高速だ。

続いて、ゲームの起動やロード、録画しながらのプレイなどゲーム関連のさまざまな処理をシミュレートする3DMarkのStorage Benchmarkを試す。スコア2,500以上が高速モデルの目安だ。同じくゲーム系として「ファイナルファンタジーXIV: 黄金のレガシー ベンチマーク」のローディングタイムも測定する。

  • 3DMark

  • ファイナルファンタジーXIV: 黄金のレガシー ベンチマーク

3DMarkはEXCERIA PLUS G3を約13%上回った。ゲーミング用途でも優秀。ファイナルファンタジーXIVのロード時間もEXCERIA PLUS G4のほうが高速だ。

続いて、連続書き込み時の速度と温度の推移をチェックしたい。TxBENCHを使って5分間連続でシーケンシャルライトを行ったときの速度と温度をモニタリングアプリの「HWiNFO Pro」で追ったときの値だ。バラック状態でテストしている。

  • 速度推移

  • 温度推移

速度推移は、EXCERIA PLUS G4は約7,500MB/秒の高速な書き込みが行われ、約420GB書き込んだ時点でSLCキャッシュが切れたようで、その後は平均1,484MB/秒で推移した。キャッシュが切れても高めの速度を維持しているのがポイントだ。EXCERIA PLUS G3は約4,000MB/秒の書き込み速度で約446GB書き込んだ時点でSLCキャッシュが切れ、その後は平均492MB/秒で推移した。400GB以上を一度に書き込む機会は少ないだろう。2TBモデルなら、実際には速度低下に遭遇する場面はあまりないはずだ。

温度に関してはさすがにEXCERIA PLUS G4のほうが若干高いが、それでも最大で52℃と速度から考えれば、全然熱くなっていないと言える。最速クラスのGen 5 SSDは、厚めのヒートシンクを搭載しても60℃以上になることが多いだけに、低発熱はホンモノだ。

高性能で低発熱だが最低限の冷却対策は必要

では、ヒートシンクの搭載しない場合はどうだろうか。マザーボード付属のヒートシンクを取り外して、同じ条件でテストを実行した。

  • 速度推移(ヒートシンクなし)

  • 温度推移(ヒートシンクなし)

EXCERIA PLUS G4、EXCERIA PLUS G3どちらも80℃まで温度が上昇するとサーマルスロットリングが発生。速度の大幅な低下が確認できた。EXCERIA PLUS G4は、一度サーマルスロットリングが発生すると70℃以上にはならないように安全運転になるようだ。書き込み速度は約1,000MB/秒になった。EXCERIA PLUS G3は、温度が下がるとまた書き込み速度が戻り、再びサーマルスロットリングが発生と乱高下が見られた。どちらを使うにしても、最低限の冷却対策は必要と言える。

  • このほか、SSDの健康状態やメインメモリの一部をバッファ用として利用するHMBに割り当てられた容量などをできるユーティリティ「SSD Utility」も用意されている

最大10,000MB/sとGen 4を超える性能を持ちながら、低発熱で価格も抑えられており、Gen 5 SSDの中で一番導入しやすい製品になっている。小型のPCにも組み込みやすく、高速ストレージを求める幅広い層に刺さるSSDが登場したという印象だ。