マッシュスタイルラボと大網のECリーダーに聞いた「ネッ担アワード」。モチベーションアップ+業界で横のつながりを作れる魅力とは?
EC業界で活躍する「人」にフォーカスし、企業や団体などで活躍する個人の功績や取り組みを表彰する「ネットショップ担当者アワード」で、「ネットショップ担当者アワード賞(MVP)」を受賞したマッシュスタイルラボの今井貴大氏(EC事業部長)、「ベストチーム賞」を受賞した大網の小林裕児氏(あみあみ事業部 マーケティング部 マーケティング課 課長 )に、EC担当者へのメッセージや、「人」に焦点をあてるアワードの意義を語ってもらった。
第1回で選出した賞と選考基準
- ネットショップ担当者アワード賞(MVP):「月刊ネット販売」発行『第23回ネット販売白書』の売上高上位200社を参照し、伸長率、個人の実績などを考慮して選出
- ベストパーソン賞:個人でほかのEC事業者のロールモデルとなり得る人を選出
- ベストBtoB-EC賞:BtoB-EC領域で、個人、チームなどでほかのEC事業者のロールモデルとなり得る人を選出
- ベストチーム賞:チームでほかのEC事業者のロールモデルとなり得るチームを選出
「MVP」「ベストチーム賞」受賞者の実績
今井氏はアパレルブランド複数のECをけん引
「ネットショップ担当者アワード(MVP)賞」を受賞したマッシュスタイルラボの今井氏は2021年4月、EC責任者に就任。現在はブランドサイトとアプリ運用の責任者などを務める。
コロナ禍における店舗スタッフの活用、店舗とECどちらでも買いやすい設計作りに力を注ぎ、グループのEC事業の成長に大きく貢献した。EC事業はアフターコロナの市況に移行した後もEC事業の売上高は2ケタ成長を維持している。
「スナイデル」「ジェラート ピケ」など20を超えるブランドを展開するマッシュスタイルラボ。そのうち、今井氏が責任者を務めるブランドのオフィシャルサイトは16サイトにのぼる。
小林氏はホビー大手ECをリード
「ベストチーム賞」は、ほかのEC事業者のロールモデルとなり得るチームを選出した。受賞した大網の2022年度EC売上高は、前期比38.0%増の350億円。コロナ禍でEC顧客の拡大が加速し、ライトな顧客層の拡大も順調に推移している。あみあみ事業部が実績に大きく貢献した。
授賞式には、あみあみ事業部の小林氏が代表者として登壇。本取材のインタビュイーも小林氏が務めた。
著名ECサイトの「中の人」に会えるアワード
――受賞後の社内での影響について教えてほしい。
マッシュスタイルラボ 今井氏(以下、今井氏):関係部署からは祝福の声をいただいたが、ECと関係性の低い部署からの認知はまだまだだと感じた。マッシュスタイルラボは店舗売上が売上シェアの7割を占めているため、社内でのEC事業の存在感を高めていきたい。
一方で、同じタイミングでアズワンさんなどがアワードを受賞した旨の情報を発信している記事を見て、自分がMVPとして受賞したことを知った社外の方から声をかけてもらう機会が増えた。EC事業に普段携わっていない人たちは、EC関連媒体を見ることが日頃少ないが、受賞に際しては声をかけてもらえた。アワードで受賞したことの知名度はさまざまなところに広がっていると感じた。
大網 小林氏(以下、小林氏):会社そのものや事業単位ではなく、ECに関わる「人」にフォーカスしたアワードということで、一般的なアワードとは趣向が違い、身近なECパーソンとして受け入れられたいう印象。「うれしい」という共感する言葉を社内でもらうことが多かった。社内で受賞を報告し、祝福のコメントを多数いただいた。
――受賞して良かったと感じたことを教えてほしい。
今井氏:社外の人からの受賞者としての認知や、声をかけてもらえることがうれしい。パーティーや懇親会で「記事を見たよ」と声をかけてもらうこともあった。
一般的にはこのように露出をしなければ外部からの評判は上がりにくい。セミナーなどメディアに露出した人しか基本的に知られることはないので、自分のことを知ってもらえたことはうれしい。アワードの意義に沿った評価をしてもらえたと思うし、EC業務に携わっている人には響いたと感じている。
受賞したことは職種によって評価の目安にしてもらえ、それはうれしいこと。受賞した人が他社から声をかけてもらえることは、転職する・しないにかかわらず、自分のモチベーションに関わってくる。社内で大きく評価されていなくても、他社からの評価があることがわかると、モチベーションアップにつながると思う。そういった点からも良い賞だと思う。
授賞式では、授賞式の前に他の受賞者と話ができたり、他のファッション以外のジャンルについて知ることができて有意義だった。
小林氏:商材のなかでもホビーは特殊なカテゴリーなので、取扱商材が異なるEC業界の人たちと授賞式で知り合い、親交を深めることができたことは新鮮だった。自分にとって良い影響となった。
また、他の受賞者が手がけるECサイトを見て勉強する良い機会にもなった。ショップの名前を聞いたことがあったが、実際に運営している「中の人」にはなかなか会う機会がない。授賞式を通じて会うことができたこともうれしく思う。
「人」に焦点を当てるからこそ個人が報われる
――「ネットショップ担当者アワード」が「人」にフォーカスすることの意義や感じたことなどがあれば教えてほしい。
小林氏:人に焦点を当てることができる希少なアワードなのではないか。ECサイトという切り口で大網が受賞させていただく機会はあるが、数値面の実績による評価が重点となっていることが多い。「ネットショップ担当者アワード」はそのような基準とは一線を画す賞であることが貴重だと思う。数値面とは違う視点で評価をしてもらえるのは良いことだ。
今井氏:人・個人のノウハウやスキルに注目することはとても意味があるし、日々EC業務に尽力していることが報われる思いだ。
EC業務に携わっておらず、ECの運営に詳しくない人からは、EC事業が売り上げを作るために具体的に取り組んでいることはあまり理解されておらず、過小評価されていることが多いと思う。
たとえば、実店舗は出店すれば出店先の商業施設や立地が集客に大きく貢献してくれるが、ECはサイトを作っておけば売れるというものではないので、まずは集客から根気よくしないといけない。そのためには労力もノウハウも必要だ。
他部署からはそうした努力が見えにくく、総じてEC担当者は認められにくいと感じる。その点、「ネットショップ担当者アワード」での顕彰を通じてEC業界での横のつながりができるのはうれしい。EC担当者ならではの悩みや課題などを担当者同士の顔が見えるようになって共有していけるアワードになることを期待したい。
――EC担当者ならではの悩みや課題は。
今井氏:たとえばECサイトは、ブランドの世界観を表現することを重視すると、ユーザーにとっては購入までの動線が見えにくく、買い物しにくいサイトになってしまう。かといって、買いやすさに特化しすぎると、均一的で味気ない印象になってしまう。サイトの見せ方をいかに両立していくかという点が難しい。
自らの評価につながる機会を持つべき
――「ネットショップ担当者アワード」はEC業界で活躍する人を増やす、光を当てるなどの目的で開催している。受賞者として、ECの現場で汗を流す担当者や責任者にメッセージをお願いしたい。
今井氏:EC業界には、イベントなどに頻繁に登壇するような著名な人だけにとどまらず、実績をあげている人や、自社のEC事業のさらなる向上に向けて頑張っている人は多くいる。そうした人材は、おそらく8割は世間に露出しておらず、発掘されていないと思う。
アワードの受賞を通じて、自分から出て行くチャンスがあるのなら積極的に出て行って評価される機会を作ってほしいと思うようになった。そうすることで自信や仲間を得られたり、自分の顕彰にともなって部下がやっていたことも評価されたりする。モチベーションアップにもなる。
ECでリーダーや責任者として活躍している人にはぜひアワードに立候補してほしいし、「頑張っているけれど日の目を見ていない」という人が周りにいたら推薦してほしい。そうすることでチャンスがめぐり、何かが変わると思う。また、横のつながりを増やせるという意味では、授賞式に参加することにも意義がある。
小林氏:EC業界の物販分野は10年以上、市場規模を伸ばしている。勢いのある市場で仕事をしているだけに、新たな意見を提案しやすいとも言える。市場規模が拡大していることを武器にして、経営者にECに投資することを提案し、自分の存在をアピールしても良いのではないか。
アピールするきっかけとしてアワードに応募してみるのも良いと思う。社内外で自分の仕事に注目してもらって、自分が仕事で実現したいことにつなげていってもらいたい。
社内での円滑なコミュニケーションを創出
――小林さんにお伺いしたいが、チームメンバーのケアをしたり、チームのモチベーションアップを図るために工夫されている点などがあれば教えてほしい。
小林氏:あみあみ事業自体の規模が大きくなって他部署との連携も増えたので、些細な情報でも集まるように堅苦しくないコミュニケーションを取る、「この人は頼れる」という印象を持ってもらえるようにしている。自分が管掌するマーケティング課のチームメンバーは20人くらい。
たとえばトラブルの報告を受けたとしても、まずは報告してくれたことに感謝して、個人の責任を追及するようなことはしない。一緒に対応を考えていくことを意識している。
EC以外の業務経験がEC運営にも生きる
――今井さんにお伺いするが、EC事業のグロースにあたり、自身の経験で礎になったことを教えてほしい。
今井氏:店舗でのスタッフ経験、店長経験、さらには営業を経験してからEC事業に携わるようになったことだ。お客さまに直接接客して売ることや、チームマネジメントを経験してきた。こうした経験なく、いきなりECを担当したとしたら、うまくいっていなかったと思う。オンライン画面越しのユーザーのリアクションや、ECサイト上で商品を販売するときに「ユーザーはこう感じるだろう」ということが想像しにくかったのでないか。
ユーザーのリアクションなどの温度感を感じ取る嗅覚が、ECでのUI設計にもつながっている。ECの運営は未経験の状態で責任者になったので、広告の仕組みやノウハウはわからず、現場のなかの声を生かすしかなかったが、それがECの運営にダイレクトにつながってきた。
コンバージョンなどの実績は、施策やアクションの結果として得られるものなので、結果論より先に行動を起こすようにしている。
EC事業の配属になっても、新人は1~2年店頭販売を経験する。嗅覚を磨くことはとても強みになるからだ。販売と営業経験が重要だと思う。
マーケティングに縛られると効率重視になってしまう。それよりも、ユーザーが楽しめることを意識していきたい。施策やアクションの結果、離脱してしまうユーザーがいても、一方でリピーターになってくれるユーザーの獲得につながれば良いと思っている。
受賞者アフターインタビュー「前編」では、「ベストパーソン賞」を受賞した集英社 ブランドビジネス部 部長 兼 第10編集部 部長の湯田桂子氏と、「ベストBtoB-EC賞」を受賞したアズワン DX推進部長の中野裕也氏(肩書きは現在、受賞当時はeコマース本部 UXデザイン部長)がインタビューに登場している。まだ読んでいない方はぜひチェックしてほしい。
▶▶▶「前編」記事にはこちらからもお読みいただけます