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オッサンのいない日常11

 イストール魔法学院、魔法学特殊研究棟。

 サンジェルマン派を含む魔法学研究派閥が集うソリステア魔法王国の最高研究機関である。

 主に優秀な成績を修めた学院生がこの場所に集められ、様々な魔法や魔法薬の研究を行う研究施設である。

 この施設は王都にあるソリステア魔法王国軍部特殊研究所と繋がっており、特に薬草などの成分分析などが盛んに行われている。

 魔法などの開発は魔法文字の解読が進まず頓挫していたが、最近ではサンジェルマン派の研究発表により軌道に乗り始め、ようやく魔法式の解読が可能となってきたが、完全に理解するようになるには先はまだ長い。

 だが、その研究を進めた者達の中に、一際異彩を放つ者がいた。

 クロイサス・ヴァン・ソリステアである。


 入学時の試験で歴代トップの成績を叩き出し、他者の成績を圧倒する頭脳で常に学院の頂点にいる天才。一時は【魔導の寵児】と二つ名で呼ばれる異色の魔導士である。

 だが、最近では彼の近くにいる者達から【災厄を呼ぶ者】とも呼ばれるトラブルメーカーであり、講師陣営を悩ませる変人でもあった。

 そんな彼は現在、ラモットと呼ばれるネズミに似た生物に薬剤を投与し、その効果を確かめていた。

 ガラスケースの中ではラモットが派手に暴れている。今にもケースを壊す勢いだが、同時にラモットの体が無残に壊れ始めていた。


「どう? クロイサス君。なにか分かった?」

「セリナ……これは危険な魔法薬ですよ。存在を許して良い物ではありません」


 珍しくも厳しい表情のクロイサス。

 その目には驚愕と侮蔑の感情が込められていた。


「そんなに危険なの? 何か、ラモットがもの凄く暴れているみたいだけど‥‥‥ウプッ!」

「この魔法薬は精神の高揚と同時に肉体を強化します。これだけなら似た魔法薬があるのですが、問題は肉体に蓄えられた栄養素を強制的に引き出し、異常なまでの再生能力で傷を癒す事でしょう」

「何か、良い事尽くめに思えるけど、どこが危険なのよ」

「依存性が強く、一度使用したらやめられなくなりますね。しかも、限界まで肉体を強化するので攻撃すれば体が破壊され、その体を強力な再生能力で修復……重度の中毒者なら直ぐに死にます」


 三日前、サムトロールが使用していて死んだ原因の魔法薬。

 ツヴェイトの依頼で成分や効力を分析調査していたのだが、それは想像以上に危険な効力を持つ一種の麻薬であった。

 使用すれば気分が高揚するが、それは冷静な判断力を奪う事になる。同時に暴力的な本能を引きずり出され、行動は異様なまでに好戦的になってゆく。

 暴力を振り翳せば当然自分も傷つく事になり、怪我は異常なまでの再生力で治癒される事となる。

 そして、強力なまでの依存性により、この魔法薬を断つ事が出来ずに使用し続けるだろう。

 結果、その一連の行動を繰り返す事により、使用者は次第に人間から掛け離れて行く。最終的にはサムトロールの様に魔物化するのだ。 


「……これを作った人物は悪魔ですよ。存在自体が許されない魔法薬、何のために作ったのやら」

「ねぇ……もし、もしもよ? この魔法薬が世間に出回ったりしたら……」

「人間の中から魔物が大量発生……これは危険です」

「き、危険なんてものではないわ……災厄を呼び寄せる魔薬じゃない! 誰がこんな物を……」

「さぁ? ですが、この魔法薬を死刑囚に投与して、前線に送りだしたらどうなると思います?」

「!? そ、それって……」


 死刑囚は大半が隷属させられ、首に【隷属の首輪】が填められている。

 その死刑囚の肉体を強化し戦場の最前線に送り込めば、敵に大打撃を与えられる事だろう。

 しかも再生能力も高く、放置しておけば自滅するまで戦い続けるのだ。敵対国にとってこれほど恐ろしい兵力はない。


「身体強化に精神抑制を阻害する麻薬成分……さらに何から作り出したのか分からないの謎の物質。コレが身体の変質と強力な再生能力を促していると思われます。明らかに軍用ですね。それが市井の出回っているとなると……」

「テロ……怖いわね。街の人達がいつ暴れ出すか分からないわ……」

「サンパウロアヘアへ君は、恐らく実験体にされたのでしょう。そして破滅した。いや、この場合は自滅でしょうか?」

「サムトロールよ。一応は王族らしいわよ? 同じ王族なんだから名前くらい覚えなさい」

「興味ありませんね。私は次男坊ですし、家督を継げる訳ではありませんので。それに、既に死んでいますので覚える必要もないでしょう」


 クロイサスは興味のない事は覚えない。

 仮に名前を覚えるとしたら特定分野で秀でた人物か、或いは歴史上の偉人だけである。

 友人の名前は辛うじて覚えるのだが、それでもたまに間違う事がある。そんな訳で関わりのない人物や、ましてや死人の名前など覚える事はなかった。

 とにかくマイペースな性格なのである。


「兄さんが言っていましたが、これは恐らく検証実験……狙いはどこの国なんでしょうかね?」

「この国ではないの? 現に、サムトロールが狙われたのよ? 王族を狙ったものとは思わない?」

「いえ……犠牲者が出た以上、この国で魔法薬――便宜上【悪魔の錠剤デモン・ドロップ】としましょうか、【悪魔の錠剤】は警戒されてしまいます。ソリステアは小国なので、売り捌くには足がつきやすいですから」

「そうなの? でも、これほどの効果があるとなると、使い方次第では有用なんじゃない?」

「魔物化しなければの話ですがね。依存性が強くて危険度が測り知れないですよ。いつ魔物に変化して同胞を襲うか分かったものではありません。これは大事になりますよ……」


 ソリステア魔法王国は警備隊と軍が分割されており、それぞれ情報部が独立していた。

 警備隊は国内の安全のために独自の情報網を持ち、軍部は他国に対しての諜報機関と分かれている。ただし上層部では繋がっており、互いに有益な情報をやり取りする事で治安活動を円滑に進める体制が整っていた。

 情報の内容次第によっては警備隊が軍に出動要請を行う事ができ、逆に軍が警備隊に治安維持の命令を下す事も出来る。有事の際は特に迅速性が求められ、こうした連携を重要視しているのである。

 現にデルサシス公爵が【ヒュドラ】を潰した時、軍と警備隊が互いに作戦行動を行い包囲網を敷いた事から、管轄内での縄張り争いなのはないと見てよいだろう。

 未だ協力体制が整っていないのは魔導士団だけである。


「とりあえず報告書にまとめておきましょう。後の判断は上の人達がやりますから、私達はいつも通りに……」

「いつも通り? いつも通りに爆発起こしたり、有毒ガスを発生させたり、一時的な精神疾患患者を続出させるのがいつも通り?」

「……いえ、魔法式の解読と改良を少々……」

「その方が良いわ。これ以上騒ぎを起こしたら、教諭立ちが全員ストレスで胃に穴が開くわよ」

「酷い……。失敗なくして技術の進歩はあり得ないのに、それを阻むと言うのですか?」

「クロイサス君の場合、その失敗の犠牲者が多すぎるのよ。死人が出ないのが不思議よね」

「一応……安全策や点検は行っているんですけどね」


 点検や安全策をいくら施しても、その効果が全くないのは問題である。

 どういう訳かクロイサスが実験を失敗すると、予想外の所から被害が拡大するのだ。

 魔法障壁を張ろうが、急速に換気を行おうが、結果としてその行為が別の形で悪手に変わってしまう。

 例えばだが、実験の最中に得体のしれない毒々しい色のガスが発生し、そのガスを逃すために魔法を使用し換気したとする。

 だがそのガスは空気より比重が重く、換気した事により外部にガスが放出され、結果として被害者が出てしまう。その犠牲者が今この場にいないマカロフであった。

 昨日、【豊胸剤】の改良をしていた時に有毒ガスが発生。そのガスを外に逃した時に彼は被害に遭った。

 今のマカロフは胸が大きくなり、恥ずかしくて寮から出られないでいた。

 扉越しの話では、マカロフの胸は次第に元に戻りつつあるが、未だに見て分かるほどの巨乳になっているらしい。


「……狙ってやっている訳ではないんですがね」

「意図的にやったらマカロフに殺されるわよ? 被害に遭った男子は全員ショックで全員寝込んでるし、喜んだのは女子だけ」

「一時的な効果で喜ぶんですか? 所詮は儚い夢だと思いますが……。何とか効果を持続できれば売上向上できるのですがね。研究が上手くいきません……研究し甲斐があります」

「その前に、男子に謝りなさい。みんな悪夢にうなされているんだから」

「ふむ、アレは中々おもしろい結果が出ました。今度は気化ガスにして売り出してみましょうか?」

「反省していない……。マジで殺されるわよ?」


 クロイサスにとって失敗もまた成功であり、有意義な結果が出た出たを喜ぶ根っからの研究者であった。

 天才と呼ばれる者は、どこか人としての常識から掛け離れているのかもしれない。


「セリナ、この結果を教員室に提出してください。私は兄さんにこの事を伝えてきます」

「……そこからデルサシス公爵に伝わり、そして王家に情報が行くのね。ある意味で講師達よりも情報伝達が早いんじゃない?」

「ここには研究者しかいませんからね。伝えておかないと勝手にこの【悪魔の錠剤】を作り出そうとしますし、下手をすると極秘裏に研究し出しますから」

「まぁ、この研究棟にいる連中はどこか常識が欠けているから、念には念を入れておかないと危ないのは確かね。分かったわ、提出の方は任せておいて」

「お願いします。では、ここを片づけ次第兄さんに教えてきますよ」

「オッケー」


 セリナはクリップボードを手にすると、研究室から出て行った。


「さて……この魔法薬、どこで蔓延するのでしょうね。何にしても犠牲者が出る事は間違いないでしょう……何が起きているのやら」


 珍しくも真剣で険しい表情を浮かべるクロイサス。

 事、魔法薬などの利用した事件を彼は常にチェックしていた。その事から考えても、何ともキナ臭い事になりそうな予感がしていたのである。

 そんな事を思い浮かべる彼の横顔を見て、周囲の女子達は全員頬を赤らめ、男子は全員嫉妬の炎に狂うのであった。

 

 ◇  ◇  ◇  ◇  ◇


 片づけを終えた後、クロイサスはツヴェイトのいるであろうウィースラー派が多くいる戦術研究棟に、珍しく足を運んだのだが……残念ながらツヴェイトの姿はなかった。

 もしかしたらと思い大図書館にも向かったのだが、そこにも姿が見当たらない。


「兄さんは……いったいどこに………」


 多少レベルが上がっても、クロイサスは体力がない。

 いや、正確には体力がわずかしか上昇しなかったのだ。

 広い学院内で、しかも大図書館と正反対に位置する戦術研究棟を往復したせいか、彼の足腰が悲鳴を上げている。そして、その痛みを消すためだけに【ポーション】を使用していた。

 見た目には栄養ドリンクを煽りながら飲むリーマンのようである。普段からひきこもり生活を送っているクロイサスは、体力面で誰よりも劣っていた。魔法薬の無駄遣いにしか思えない。

 めんどくさくなったのか、クロイサスは寮に戻る事にした。が、そこで彼が目にしたものは……。


「・・・・・・・・・・」

「遅かったな。どこ行ってたんだよ」

「うっす。久しぶり」


 寮の前でクロイサスの帰りを待っていたツヴェイトとエロムラ君の姿があった。

 行き違い、すれ違い、読み間違いの三拍子でクロイサスの行動は無駄に終わった。

 普段やらない事を行うと、なぜか失敗する。クロイサスは初めてそれを体験したのである。


「兄さんと……エロダイスキ君でしたか? なぜ寮に……」

「違うからな!? せめて榎戸崎と呼んでくれぇ!!」

「いや、たまにはお前の部屋で話を聞こうかと思ったんだが、考えてみれば寮の部屋が鍵が掛けられている可能性がある。んで、ここで待ってた」

「……いつから……ここで?」

「十分前だが? その前は【書庫】にいたぞ?」


【書庫】とは大図書館の俗称である。つまりはクロイサスが最初から大図書館へ向かっていれば、ここまで体力を使う必要がなかった事になる。

 お互いに、普段やらない事をしたために起きたすれ違いであった。


「寮に来たのであれば部屋に入れば良いでしょうに……。なぜここで?」

「いや、普通は鍵を掛けるだろ?」

「私は自室に鍵なんて掛けませんよ? 壊れてますし、資料を運び出す手間を考えると鍵を掛けるなど無駄でしかありませんから。そのままです」

「お前、泥棒が入ったらどうすんだよ……」

「同志よ。お前の弟はもの凄くズボラだぞ?」

「大丈夫ですよ。私の部屋に入室する様な人は滅多にいませんから……おや?」


 クロイサスがドアを開けようとした時、内側から歌声の様なものが微かに聞こえていた。


『フ~ン、フフフゥ~~ン♪ おっそうじ、お掃除。お部屋を綺麗にぃ~~♪ 青酸、硫酸、ぶっかけてぇ~~~♪』

「「「・・・・・どんな歌だ?」」」

『クロイサス君、喜んでくれるかなぁ~♪ そして、そして……うふふ』

「「・・・・・・・・・・・」」


 何やら冷たい風が吹き抜けた。


「イー・リンですか、また部屋の掃除をしてくれてるんですね。ありがたい事ですが……どこに何が置いてあるか分からなくなるんですよ。困ったものです」

「「人の善意で掃除してもらっているくせに、何て言い草だぁ! このリア充野郎!!」」

「感謝はしていますが? ただ、魔法薬などはともかくとして、趣味で集めた物がどこに消えたか分からなくなるんですよ。探すだけで部屋が散らかりますね」

「自分で片づけろよ!! 人任せにすんじゃねぇ!!」

「しかも、女子だぞ!? こんな世話好きな子はそうはいねぇ、羨ましいぞ畜生!!」

「まぁ、この場にいても仕方がないので、部屋に入りましょう。往来の邪魔になり……はて?」


 ドアノブを回したのだが、なぜかドアが開かない。

 クロイサスは訝しげな表情を浮かべつつも、何度かドアノブを捻り続ける。


「おかしい。ドアが開きません」

「内側から鍵がかかってんじゃねぇか?」

「待て、同志! 確か、鍵が壊れてるて言ってなかったか?」

「内側からなら掛けられるとか……どうなんだよクロイサス」

「内側からでも同じですよ。完全に壊れてましたから、鍵が掛けられる筈がありません……。ふむ、実に興味深い」


 ―――ギョアアアアアアアアアアアアアアッ!!

『きゃぁ―――――っ!?』

『『『!?』』』

 

 突然響く獣の咆哮と乙女の叫び声。

 慌ててドアを開けようとするが、そのドアはまるで鋼鉄で出来ているかのように硬く、一ミリとて開く事が出来ない。


 ―――ズズゥゥン!! ズルリ……ビシャ……。


 部屋に入りきれるような大きさとは思えない重量のある生物が歩く音と、相応の量がある液体が上から滴り落ち、それでいて何かを引き摺るような音まで聞こえる。

 どう考えても室内で聞こえるような音ではない。


「……これが、噂に聞く怪現象ですか。初めて知りましたよ……」

「内側でいったい何が起きてるんだ? いや、それよりも巨乳の獣人女は大丈夫なのか!?」

「獣人、しかも巨乳だと!? どこまで…羨ましい……もげろ!!」

『た、助けて……誰かぁ―――っ!!』

「「「緊急事態が発生してる!?」」」


 ――ブロロロロロロロロロロ。

 ――チロリン、チロリン。


 どこからともなく聞こえてくるバイクのエンジン音と、何かが光る物体を現す様な効果音。


『『ワハハハハハハハハハ!!』』

『ヨ~ホホホホ~♪』

『・・・・・・・・』 


 そして響く笑い声。


 ―――ジャララララ!! ボゥッ!!(チェーンの様なものが巻き付き、火が点火した音)

 ―――ボグゥ!! ズブッ!!(鈍器で殴り、鋭利な物で突き刺す音)

 ―――ズバッ!! ピキ―――ン!!(剣で切り裂き、氷結する音)

 ―――ズガァアアアアアアン!! ブチブチブチ!!(何か重い物を振り廻した後に叩き付け、引き千切るような音)

 ―――パキィ――――――――――ン!!(何かが砕け散るような音)


『ゴォア……アァ……アァァ……』


 そして静寂が戻る。


「「「・・・・・・・・・・・・」」」


 何と言葉にだして良いか分からない、奇妙な沈黙が続く。


『いつもありがとうございます。スケルトン・フォーの皆さん』

「「「スケルトン・フォー!? いつも!? いつも助けられてるのか!?」」」


 扉一つ隔たりの奥で信じられない事が起きている。その部屋の前で、三人はしばらく頭が働かず呆然とドアを眺めていた。

 気が付いた時には日は傾き、空は赤く染まっている。


「ハッ!? 意識が飛んでいました。今は……夕暮れ時!?」

「馬鹿な……三時間以上もこの場にいたって言うのか!?」

「それより、色々とヤバくねぇか? 著作権とか、著作権とか……」


 目の前には何の変哲も無いドアがある。しかし、そのドアの距離が三人には遠い存在に思えた。

 異常事態が起きていた部屋に入るにも、三人は躊躇いが先にでる。

 もしこの先に踏み込めば、命の保証すらでき無い未知の空間が広がっているかもしれない。

 そう思うと迂闊に踏み込めないのだ。

 そんな三人の目の前で、ドアが静かに開いた。現れたのは垂れ下がった犬耳の獣人族、イー・リンである。


「あ~、クロイサス君だぁ~。駄目だよ? ちゃんとお部屋は片づけないとぉ~」

「イー・リン……つかぬ事を聞きますが、今までこの部屋で何が起きていたのですか?」

「ん~? お部屋のお片付けだけど? 凄く散らかっていて大変だったんだからぁ~」

「いや、それよりもスケルトン・フォーて何もんだよ……」

「スケルトン・フォー? 何ですか、それ? 新種のモンスター?」


 三人は顔を見合わせ困惑した。

 どう見てもイー・リンは誤魔化すとも嘘を吐いている様にも思えない。しかし、ドアの外で聞いた限りでは確かにスケルトン・フォーの事を知っていた。


「まさか、ドアの外に出ると記憶が……?」

「馬鹿な……それじゃ、この部屋は別の摂理が働いている事になるぞ!?」

「それより、著作権……色々と訴えられそうな気がする。別の意味でやべぇよ」


 三人が真剣な表情で話し合う中、イー・リンは不思議そうに首をかしげている。


「イー・リン……もう一度確認します。部屋を掃除している間、何か起きませんでしたか?」

「ん~……そう言えば、何か凄い事が起きた気がするけど……気のせいじゃないかなぁ~?」

「やはり覚えていなのか……。お前の部屋はどうなってんだ?」

「知りませんよ。いったいどうなっているのか興味が尽きませんが、仮に真実を暴いたとしても記憶を失う事になります。いや……キャロスティーの例もあるから、一概にそうとも言えないのか……?」

「この部屋だけ不思議空間なんだな。ファンタジーとは別方向の……」

「そんな事より、せっかくお掃除したんだから今度は散らかさないでよぉ~? 大変なんだから」

「「別の意味でな」」


 謎解きはとりあえず後回しにし、三人は恐る恐るクロイサスの部屋に入る事にした。

 掃除したてであるのが分かるほどに部屋は綺麗に整頓され、塵一つ落ちてはいない。

 三人が緊張しながらも部屋を調べるなか、イー・リンは『お腹空いたから食事して来るね』と言って食堂へ向かう。食事抜きで掃除をしてくれていた様である。

 二人の反リア充派は羨み、そして妬みの視線をクロイサスに送っていた。実に醜い。


「おかしな所はねぇな……」

「あぁ……だが、油断は出来ん」

「ふむ、何も起きないならちょうど良いですし、あの魔法薬の事を話しておきましょうか」

「そう……だな。元からそれが目的だったし……」

「本当に大丈夫か? 不安だぁ~……」


 それから一時間、クロイサスとツヴェイトは魔法薬の報告とそこから類推される魔薬製の意図を考え、起こり得るであろう予測を思い付く限り紙に書き記していく。

【悪魔の錠剤】が何のために製作されたのかは知らないが、その効果や製作側の意図を予測する事で次の一手を打てる事が出来る。

 あくまで推測の範疇だ。気休めで終わるかもしれないが、何もしないよりはマシである。学院側に予測される事態を伝えておけば、何らかの予防策になる可能性もあるだろう。

 だがこの時、三人は忘れていた。この部屋が異界に繋がるデンジャールームである事を……。

 そして、エロムラ君の不安は見事に的中する事となる。


『畜生! 何なんだよ、この化け物は!! それに、この広大な世界はいったい……』

『生物じゃねぇ、機械だ! 生物的な機械なんだ!!』

『不味い……ですね。このままでは魔力が……ジリ貧の上に彼等の様に……し、しまった!?』


 ―――ゾ○ダァアアアアアアアアァァァァ……。


『『クロイサスぅううううううううぅぅぅぅっ!?』』


 変な世界に巻き込まれたようである。


『クッ……クロイサスの奴が食われたか……』

『何かアレ、どこかで見た様な…おぉおっ!?』

『同志っ!?』


 ―――オンナァアアアアアアアアァァァァ……。


『化け物になっても、そんなに女が好きなのかぁ、エロムラぁ―――――――っ!?』


 ―――トウゼンダァアアアアァァァァ……。


『答えたっ!? って、アッ―――……』


 色々と不味い事態であった。

 クロイサスの部屋の前では、内側から派手な爆発音と巨大な物が派手な格闘戦をするような音が響き、廊下を通る学院生達はそれを聞いては蒼褪めた表情で走り去る。

 時々扉越しで聞こえる『撃ち抜く、止めて見せろ!』とか『遊びでやってんじゃないんだよ!』だの、『こいつでとどめだぁ―――っ!』や『光になれぇえええええっ!!』と叫び声が伝わって来る。

 本当にどこに繋がったのか謎である。


「おい、またかよ。お前、ちょいと覗いて見ろや」

「断る! 巻き添えを食らいたくはねぇ! 興味があるならテメェが覗けや!」

「冗談じゃない。俺にあんな不気味な部屋を覗かせんな」


 誰もその内側を覗こうとはせず、急いでその場から退避していた。

 踏み込んではいけない場所である事がもはや暗黙の了解となって、既に学院中に広がっているのである。


 翌日、三人は部屋の中央で仲良く倒れていた。

 どういう訳か妙に清々しい朝を迎え、まるで生まれ変わった気分だったという。そして、若干レベルアップしていたらしい。

 ここはデンジャールーム。異界と繋がる次元の部屋。

 なぜ、このような部屋が出来たのか、原因すら結局のところ判明する事はなかった。

 稀に例外もあるようだが、被害者の身に何が起きたのか、当事者本人が忘れてしまうのだから‥‥‥。

  

 ◇  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇


 時間は三時間ほど遡る。

 学院には、学生達が独自に行うサークル活動の様なものが存在している。

 特にスポーツ系のサークルが多く、特に【プラッケ】と呼ばれるテニスと的当てを足したようなスポーツが人気が高い。特に女子にだが。

 コートの自営陣地外側に点数の書かれたボードを置き、ラケットでボールを打ち合いながら的を射貫き点数を競い合う。1~10の点数を書かれた的であるボードはプレイヤーが任意に場所を変える事ができ、互いに獲得点数を競い合う。

 プレイヤーは【ガードナー】と【ブレーダー】呼ばれ、ボードを相手の攻撃から守りとボードを狙う責めのが役割があり、攻守に別れてボールを打ち合っていた。

 基本的にダブルスなのである。無論最近ではシングル戦も始め、各学び舎で公式戦などを行っていた。

 まぁ、それは兎も角として、こうしたサークル活動があるとなると当然ではあるが更衣室も存在する。

 そこには【プラッケ】でひと汗流した女子学院生がシャワーを浴び、汗で汚れた下着などを着替え、男から見ればそこはピンク色彩るパラダイス。

 時折覗きに侵入する男子もいるが、そうした不届き者は手痛い罰を受ける事になる。

 幸いな事に、この日はそんな馬鹿な者はいない様だ。


「疲れたぁ~、ハァ……シャワーも、もう少し長く使えればなぁ~」

「一人当たり使用時間が決められているのは辛いよねぇ~。まぁ、魔道具だから仕方がないけど」


 シャワーは水道管にお湯を沸かす魔道具を取り付ける事で使用できるのだが、この湯沸かしの魔導具は使用者が魔力を込めなければお湯を沸かす事が出来ず、込められた魔力量から10分くらいしか持続しない。

 しかも、一度お湯が出たら止める事が出来ず、体を洗うにも洗剤が使えない欠点があった。

 発明としては大した物ではあるが、使い勝手が若干悪いのが欠点である。そのため、寮に戻った後に入浴する学院生が多い。


「下着も何とかならないかなぁ~? 可愛くないんだよねぇ~、色もみんな同じだし……地味」

「そうよねぇ~。生地が悪いのか、汗をかくと痒くなってくるしさぁ~」

「けど、良い素材の下着なんて貴族しか買えないわよ?」


 この世界での女性下着は辛うじて現代地球の形に酷似しているが、余計な飾り気のない簡素なものであった。また、サイズ規格などある筈もなく、体格に合わない者には些か不満の残る代物であった。

 また、女性下着に使われる生地も値段はそれなりで、使用済み下着を回収する衣料店も多く存在する。

 回収された女性下着は、主に奴隷商や犯罪を犯した度女性囚人に廻される。わずかな布一切れでも無駄に出来ないほど大量製造されている訳ではない。

 娼婦などは貴族の使い古した衣服や下着を格安で購入し、街角で男達を誘っている。こうしたディスカウントのショップのおかげで商売が成り立っていたりするのだ。 

 ただ、普通の少女達には少々手が届かない値段なので、仮に購入できてもしばらくは極貧生活になるのは間違いない。シルクなど生地の物価は一般人にはお高いのである。


「どこかに可愛い下着、売ってないかなぁ~」

「……呼んだ?」

「きゃぁああああぁ!?」


 下着姿で椅子に座っていた女子学院生の目の前に、いつの間にかピンクの忍者がテーブルの上にちょこんと正座で座っていた。

 背中に大きな風呂敷包みを背負って……。


「……だ、誰?」

「……下着、欲しいの? ブラ? それともショーツ?」

「……あなた、何で更衣室に? 商売するなら別に路上でも……」

「………女の子の下着は道端で売れない。きっと……通報される……」

「だから、更衣室に侵入したの?」

「………そう」


 普通に考えていくら女性下着が格安で売っていたとしても、露店販売で購入するには勇気が必要だろう。ましてや試着など出来るはずもない。

 杏はそれを踏まえて女子更衣室で販売する事にしたようである。だが、その唐突な出現は混乱しかもたらさなかった。

 しかしながら性格がマイペースな杏はそんな事は知った事ではない。無言で風呂敷包みを開くと、商品を少女達の目の前で広げ始めた。

 女子達の目の色は次第に変わってゆく。

 何故なら杏が売り出そうとしている女性下着の数々は、彼女達の知らない未知なる物であるからだ。

 色鮮やかで、レースなどがあしらえてある気品に満ちた仕上がり。何よりも彼女達が求めてやまない可愛らしさがある。中には大人びた過激な物までもだ。

 少女達の目にはさぞかし至高の芸術品に見えている事であろう。


「……サイズ、色々揃えてある。早い者勝ち……」

「ちょ、こんな下着、私達じゃ買えないわよ?」

「えぇ……こんな物、貴族にしか買えないと思う。お小遣いが……」

「……問題ない。素材も吟味して、一般価格で買えるようにしてある。……試着……してみる?」


 少女達には悪魔の囁きであった。

 今自分達が着ている下着はお世辞にも可愛いとは言い難く、サイズなど御構い無しに作り上げた大量に量産を目的とした品物だ。だが、目の前にある物は何かが違う。

 少女達には魔性の輝きを放つ呪われた装備にしか思えない。

 

「………寄せて上げる方式を採用。体のラインが崩れない……可愛らしさも重視、買う?」

「……試着………できるのよね?」

「……うん」


 全員が息を吞んだ。そして、本能的に察したのである。

 今この下着を試着すれば、今までの下着に物足りなさを感じるであろうと……。

 興味はある。しかし、恐らく麻薬にも似たその満足感を得てしまえば、自分達は目の前にある下着しか使えなくなるであろうと危機感の様なものを覚える。主に金銭的な方向で、だが。

 とは言えど、この誘惑に勝てるほど十代の少女達は自制心が利かない。いや、この場合は好奇心だろうか。


「わ、私、試着しても良いかしら? その……興味があるけど、体に合うとは限らないし……」

「………あなたに合うのはこれ。オーソドックスに、初めは白で……」

「「「「!?」」」」」


 誰もが一歩も踏み出せず躊躇う中、一人の少女が先手を取る。

 杏はその少女のサイズを一目で測り、彼女にぴったりのサイズをチョイスした。

 何しろここは更衣室。誰もがあられもない姿をしているので、スリーサイズを見抜くなど造作もなかった。

 少女は杏から下着を躊躇いがちに受け取る。


「……ブラはフロントホック式、スタイル矯正効果も期待できる仕様になってる」

「……じゃ、じゃあ、試着してみるね」


 いそいそとその場を離れて行く女子生徒。

 地味な下着を脱ぎ、手にした純白の逸品を恐る恐る試着する。


「なっ、何よコレ……凄い!」


 それは正に革命だった。見事なまでのフィット感、動いてもズレる事もなく何より肌触りも良い。

 自分達の求めている理想を体現したかのような至高の逸品に、少女は言い様のない幸福感に包まれる。

 身に着けた純白の下着は正に魔王も殺す聖剣。この下着を使ったら他の店の物などゴブリンの棍棒の様なものだ。圧倒的なまでの破壊力のある満足感であった。


「……今使っている下着のリサーチは完璧。その不満を解消すべく、複数の生地をパーツに合わせて使い分けてる……」

「で、でも……こんなに凄い物だと、高いんじゃない?」

「高価な生地は敏感な部分にのみ一部使用……。肌触りも良いし、何よりあまり多様していない……。他は吸水性や伸縮性……色々と試した」

「け、けど……月に一度のものが来たら……」

「……生理用品もあるよ? 合計金額を合わせると……えと……ん、これだけ……」

「「「「!?」」」」」


 杏はそろばんを弾き、上下合わせた金額を提示した。

 その金額を見た瞬間、乙女達の目の色が瞬く間に変わる。

 良心的なお手頃値段であったのだ。


「こ、これを売ってちょうだい! 今、お金を払うから! いえ、全財産を使ってでも他の物も買わせてもらうわ!!」

「………まいど」


 試着を試した少女は直ぐにロッカーに走り出し、財布からお金を取り出して即行で払う。ついでに生理用品も含めいくつか他の下着を購入した。

 それが切っ掛けとなり、まるで関を破られた水門の如く乙女達が杏に殺到する。


「わ、私にも売って!! この青いのを……!!」

「あっ、それは私が狙ってたのにぃ!!」

「お財布を寮に取りに行かなくちゃ!!」

「お願い!! お金を貸して、今月はピンチなのぉ!!」

「嫌、それは私が買うのよ!!」

「……今回は、この部屋のみで販売。………まだ、あるから……ゆっくり吟味すれば良い」


 その一言を聞き、少女達の目は『ギラリ』と輝く。

 まさに飢えた獣の目であった。それ程までにこの世界の女性下着事情は最悪だったのだ。まるで戦後の日本の様に……。

 そもそもこの世界で衣類を仕立てる職人は男性が多く、こうした女性にしか分からない調整など出来るはずもない。そのためか形だけは下着だが、女性達を満足させる代物は滅多に出回らない。

 この日、イストール魔法学院の一画にある更衣室で、女性下着革命が起こった。

 もう、止まる事はないだろう。この日を境に学院都市の衣料店で女性下着の売り上げが低迷化し、やがて他の職人が杏の下着を見て激震が走る事となる。


 その後、財布を持っていなかった女子は寮に取に戻り、それ以外の女子は試着してその完成度の高さに至福の表情を浮かべた。

 喩え使われている生地が安物でも、【裁縫帝】のスキルは芸術品を生み出す。

 その作品の数々は乙女達を虜にし、更衣室にいる誰もが物欲を激しく刺激されるのだ。

 寮に戻った女子達は、他の女子より優位に立つべく杏の事を秘密にし、多くの下着を購入するのである。

 この日以降から杏は顧客を徐々に増やし、やがて女子学院生達は杏が現れるのを待ち続ける様になる。やがては教職員もこの中に加わる事だろう。

 神出鬼没の下着売りは、やがて都市伝説となるのであった。


 一週間後、男子による犯罪が増加する。俗に言うところの下着泥棒だ。

 覗を行うような男子は、当然の如く戦利品を得ようと下着を奪う。杏が売り出した物は新たな犯罪の火種となる。

 結果、多くの馬鹿な男子が衛兵に捕まり、そして下着泥棒を働こうと女子寮に忍び込んだ者達は半殺しの憂き目に遭うのである。

 馬鹿な男子と、自分達の下着を守ろうとする女子との戦争が勃発するのだった。


 ◇  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇


 場所は地球の日本。

 ある地方のアパート一室に移る。

 狭い部屋にはゲーム機が並び、乱雑に山積みにされた漫画の本や本棚が日の光を遮っている。

 洗濯物も重なり、無造作に放置されたお菓子の袋やペットボトルが、明らかにひきこもりの部屋だと物語っている。

 そんなゴミのような部屋に高校生くらいの少年が一人、携帯ゲームでオンラインプレイを楽しんでいた。

 静かな部屋にボタンを操作する音が静かに流れる。


「……おや、お客さんかな?」

「ハァイ♪ ケモさん、久しぶり」


 ドアを開けた形跡がないのに、いつの間にか二十代前後の女性が部屋の中にいた。


「―――さんですか……。どうしたんです?」

「どうしたじゃないわよ。例のあの世界……次元バランスが崩れて来てるわよ? 早く手を打たないと、被害はこちらにも来るわ」

「……次元バランス? また勇者召喚でもしたのかい?」

「少し違うわね。ただでさえ召喚で次元空間の歪が肥大しているのに、特異点が頻繁に発生するのよ。それも毎回別の世界へ繋がってね……」

「原因は掴めてる? さすがにそれだけでも困るんだけど……」

「特異点が発生する場所は決まっているわ。ただ、異界接触がランダムで引き起こされるのよ。いい加減、【観測者】を決めないと不味いわね。今はまだ大丈夫だけど、後100年もしたら次元融合を引き起こす可能性が高いわよ」

「そうだね。けど、今の僕達では干渉は出来ない。彼女が復活すれば別だけどね」

「送り返したんでしょ? まだ再生しないの? 対消滅を起こされると面倒なんだけど」

「彼に任せてある。近い内に復活させると思うよ? そのために性格に難のあるプレイヤーを送り込んだんだから」


 少年とは思えない大人びた口調から出るのは、とても現実のものとは思えない言葉の羅列。

 傍から聞いていれば厨二病的なセリフである。

 しかし、二人の表情は真剣なものであった。


「結局、彼女の復活待ちかぁ~……ままならないわね。特例事項は適応されないの?」

「事が起きたのは、例の試験世界だからね。その余波がこちらに逆流したのが問題。まぁ、聖約は破棄されたけどね」

「当然でしょ。これで聖約が維持されてったら、私達が本気で怒るわよ」

「まぁ、忠告はしておいたよ。『人間をあまり舐めない方が良い』ってね」

「あの馬鹿達が忠告を素直に受けるとは思えないけど? 私達と同等だと思ってるし」

「そうだね。でも、いつまでもこのままではいられないという事を知るだろうさ。彼女が復活すればね」

「だからって、彼を送りつける? 友人なんでしょ?」

「アハハハ♪ まぁ、本気で怒ってたら殴られてあげるよ。望めば何でも叶えてあげるし」

「ハァ~……アイツも無責任よねぇ~……こんな厄介事を残していくんだから」

「別に良さ。暇つぶしにはなるでしょ? しばらくは監視の方をヨロ」

「仕方ないわね……。けど、特異点の方は何とか出来ない?」

「今は無理。お互いに干渉できないでしょ? 気長に待とうよ」


 重要な案件を語り合っているのに、そこに危機感はあまりない。

 

「で、用件はそれだけ?」

「後は個人的なものね。数日こちらで遊ばせてもらうわ」

「また、ホストクラブかい?」

「ほっといて! 今日こそATSUSHI君を落して見せるわ!」

「……懲りないね。まぁ、程々に」


 少年の言葉が終わる前に、女性の姿は一瞬にして消え去った。

 まるで最初から存在していないかのように……。


「さて、全ては君にかかっているよ。頑張ってね、ゼロス君……」


 虚空を見上げ呟くと、少年は再び携帯ゲームに取り掛かる。

 再びアパートの一室に、携帯ゲーム機のボタンを押し続ける音が流れて行った。


 


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