技育祭2024【春】に登壇したひろゆき氏が、若手エンジニアへの提言を行いました。アプリ開発で自由な働き方を実現する方法や、中小企業でフルサイクル開発を経験することの価値、サイバーセキュリティ分野での実力証明の重要性について、自身の経験を交えて具体的に語ります。また、資格よりも実績を重視する採用の考え方も示しています。
自由な働き方を実現するためのアプリ開発
司会者:じゃあ次は私からピックさせてもらいます。「ひろゆきさんが今無名の大学生なら何をしますか? ひろゆきさんのように自由な暮らしがしたいです」ということです。
ひろゆき氏(以下、ひろゆき):まぁ、携帯のアプリを作るんじゃないですかね? 自由な暮らしって、結局誰かに命令されるわけではなく、なんか好きなところに住んで、好きな仕事ができるようになるという状態だと思うんですけど。そうするとWebサービスでもアプリでもいいんですけど、自分でサービスを当てると、それで毎月お金が入ってくるので。
それだったら、例えば日本に住みたいんだったら日本に住めばいいんです。パラグアイに住みたいんだったら、パラグアイに住みながら開発をするとかでもぜんぜんいいと思うんですよね。なので、家賃が安くて快適な南の島に住みながら、プログラムをして暮らすこともできたりするので。なので、Web系で完結しておくと(いいと思います)。
要はどこかの会社で働くことになっちゃうと、その会社のミーティングに参加しなければいけませんとか、取引先に合わなきゃいけませんとか、何だかんだ言って日本から離れられないという状況がけっこう多くなっちゃったりすると思うので。
なので、アプリとかであれば、アプリの開発さえちゃんとやっていて、ユーザー向けの対応だけをきちんとしていれば、別に誰かに合わなきゃいけないとか、会食に行かなきゃいけないとかというのも特になかったりします。なので、アプリかWebサービスを当てるというほうが自由度は高いんじゃないかなとは思います。
司会者:その「アプリかWebサービスを当てる」というところの観点で。もう1個質問をいただいております。「ひろゆきさん流のサービスをヒットさせるコツ、多くの人に使ってもらうポイントなどがあれば教えてください。「2ちゃんねる」の時はどうやっていたんでしょうか?」。
ひろゆき:サービス作りがうまい人には2つの種類の人がいると思っていて。自分で使うサービスを作るタイプの人と、自分で使わないけど、これがきっと流行るだろうというので当てにいくタイプの人。僕は自分が使うサービス以外は当てられないんですよね。
司会者:へー。
ひろゆき:要は自分が使う視点で見て、「こういうサービスないよね」とか「このサービスはこうしたほうが便利だよね」みたいなので、わりと試行錯誤して改良するという。どちらかというと僕は口うるさい消費者側なので、人のサービスにケチを付けるのはすごく得意なんですよ。
なので、それが自分のサービスでも「これはこうだったほうが便利だよね」とか、「ここは端折っても大丈夫だよね」みたいな、そういう感じがあるので、僕はわりと自分自身が使うことで改良していくというタイプですね。そうじゃない人もいますけど。
自動車免許は必須資格
司会者:じゃあ、続きましてひろゆきさんのほうで拾っちゃってください。
ひろゆき:はい。「ひろゆきさんの経験上、絶対に取っておけという資格はありますか?」というので、自動車免許。
司会者:それ大事ですね(笑)。
ひろゆき:大人になると自動車免許を取りに行くような暇ってないですからね。なんか別に日本で住むには「電車乗ればいい」とか「タクシーがある」って考えがちなんですけど。大人になると、だいたいの優秀なエンジニアって、アメリカに行く機会がチョコチョコあるんですよね。アメリカに行くと、やはり免許がないと移動できないんですよね。
なので、そういう意味でいくと、免許だけは若いうちに取っておくといいなというのはあります。
司会者:ちなみに、技術系で何かあります? もしくは技術系には必要ないと思います?
ひろゆき:うーん。まぁ、あるにはあったほうが面接とかは通りやすいと思うんですけど、中途半端な資格だけを持っている人が来た時に、じゃあエンジニアだったらそれは1週間、2週間勉強したら取れる資格しか持っていませんという人が来たら、僕はたぶん「この人はプログラムが嫌いなんだろうな」と、思っちゃうんですよね。
司会者:あー、はいはい。
ひろゆき:僕らの世代の優秀なプログラマーって、ゲームが好きで自分で作りたいからプログラムを始めた人が多いんですよ。プログラムをやりたいから始めた人って、すでにプログラムが書けているから資格を取る必要がないんですよ。「俺、このソフトを作りました」と言えば「作ったんだ」ということで話が終わるので。
なので、何か自分が作ったものがないというエンジニアが「俺は実力があるんだぞ」と説明するために資格を持ってくると、逆に「あ、こいつは何も作ったことがないんだな」という証明に見えちゃうんですよ。なので「こういうアプリを作ったことがあります。こういう資格もありますよ」だったらぜんぜんいいんですけど。
なんか「こういうアプリを作ったことがあります」がない状態で、ちょっとがんばれば取れる資格を出されると、「あ、この人は趣味でプログラムをやる人じゃないな」というのがわかるので。やはり趣味でやっている人と、お金のために儲かりそうだからやっている人だと、その先の成長が違う。なので、僕は中途半端な資格だけを持っている人は、あえて避けますね。
司会者:なるほどです。それが重要なんですね。次に私から行かせてもらいます。「毎年恒例となりましたが、技育祭のスポンサー企業で就職先のおすすめはありますか? 誹謗中傷は言わないでください」(笑)。一応画面を通してですね、準備しておきました。
(一同笑)
ひろゆき:いやー。たまたま始まる前にCMが流れて見ていたんですけど。CARTAさんのCMにすごくケチを付けたくなっていて。
司会者:はいはい(笑)。
ひろゆき:しゃべっているおっさんの活舌が悪い。
司会者:(笑)。
ひろゆき:他のところって、やはりちゃんと意識してCMを作っているのに、おっさんが活舌悪いから何を言っているのかがわからないというのと、あとフルサイクル開発を勧めていたんですけど、中小企業はフルサイクル開発が当たり前なんですよ。だって人がいないんだもん(笑)。
司会者:なるほど。
ひろゆき:お客さんが来た時に、その話をするのはエンジニアなので、中小企業はフルサイクルなんて言わないし、これが普通なんですよ。だからむしろフルサイクルじゃない開発環境のほうが会社としては規模が大きいという話になっちゃうので、フルサイクルを推すというのは、ちょっとどうなのかなというのを僕は思ったんですけど。すみません。
司会者:大丈夫です(笑)。
ひろゆき:でも、なので逆に言うと中小企業のほうが成長はしやすいんですよね。お客さんから直接文句を言われるので。お客さんをいかに騙すかというテクニックが手に入るんですよね。
要はお客さんから言われたとおりに言われたモノを作っていたら、どんどん工数がかかるし、最終的に「このとおりに作っていたら、あとでトラブルになるよね」というのがわかっている時に、お客さんが表面上は喜ぶんだけど、実はその問題があまり解決していないのに気づいていない、みたいな。そういうテクニックを増やすという結果にはなるんですけど、そのほうがわりとうまくいくことが多いんですよね。
問題解決の知識でよくあるクイズがあるんですけど「エレベーターの待ち時間がすごく長い、というクレームがありました。そのビルの管理者は、どうしますか?」という問題で、一般的なエンジニア的な解決だと「エレベーターを速く動かす」となっちゃうんですけど、実際はそんなことはできないと。なので、そのエレベーターのビルの会社の人がやったのは「エレベーターの前に鏡を置く」なんですよ。
鏡を置くと、人はなんとなく鏡を見てしまって、30秒から1分ぐらい、なんとなく時間を潰せてしまうんですよね。なので、結果として待ち時間は変わっていないんだけど、「待たされる」というクレームを言う人が減るというのがあったりします。
わりとユーザーインターフェイスとかもそうで、人間ってこういうふうに考えるよね(ということがあって)。例えば(ページを)「進む」みたいなもので、ユーザーの個人登録の画面を5ページぐらい進ませるとなると、途中で絶対に飽きるんですよ。
「もういいや」ってなっちゃうんですけど、最近だと「あと何ページありますよ」って下にバーを出すとか、1ページをメチャクチャ長くするとか、そういうかたちで、人間はどういうふうに考えるのかというところで問題解決をしていくと、わりと工数をかけなくてもけっこう苦情が減ったりするというのがあったりします。なので、いかに人を騙すかというのを、ちゃんと覚えたほうがいいんじゃないかなと思いますね。
司会者:みなさんご安心ください。ちなみに今回ひろゆきさんと技育祭をつないでくれたのはCARTA HOLDINGSの社長だったりするので。そこはつながっているので、ちゃんとご安心ください(笑)。
(一同笑)
ひろゆき:はい。お世話になっております(笑)。
司会者:ちなみに。おすすめはありますか?
ひろゆき:いやー。僕はやはり小さい会社のほうが伸びるんじゃないかと思っているんですよね。やりたくないことをやらざるを得ないほうが若い人は成長すると思うんですよね。
司会者:はいはい。
ひろゆき:専門職になって「こればかりを追求したいです」という人も、それはそれで年をとってから行けばいいと思うんですよ。「インフラだけをやりたいです」とか「Webとかを書きたくないです」みたいな人もいると思いますが、Webもやるしフロントエンジニアもやるし、バックエンドもやるしと、いろいろやっておいたほうが結果として何か問題が起きた時に、問題がどこにあるのかという切り分けがしやすいんですよね。
インフラしかやっていない人って「インフラは問題ないよ」しか言わないし。Webの人は「それはだってインフラ側の返しが遅いからこうなっちゃっているんだよね」みたいになるんですけど。じゃあそれをインフラで解決するのか、Web側で解決するのか。「このタイミングで、この仕様だったら、こういうかたちにしたほうがいいよね」みたいなのは、各々の全体が見えていないとわからないです。その全体を見るという力が、たぶん専門職をずっとやり続けると身に着かないんですよね。
なので、某上場企業で大きい会社で働いていた時に、そのインフラ部門をけっこうまとめている権力の強い人がいて、そこでインフラに対しての文句が言えなくなっちゃったんですけど。「これは明らかにインフラ側の問題なんだけど、この人がへそを曲げちゃうと、もうインフラがうまく使えなくなっちゃうから」っていうので、すごく燃えた末に偉い人を降ろすというのをやって、なんとか解決したみたいな話があります。
結果として、やはり全体を見えている人が、その仕様設計なり何なりをしないと、どこかのこれしかわからないという人が「俺のぶんの仕事はちゃんとやっているんだから、これ以上変える必要はないよね」となってしまうと、セクショナリズム的な、自分のことだけをやっているとなってしまって、全体の問題をどんどん他人にたらい回しにするという、お役所仕事みたいなことになってしまったりするので。
なので、全体を見る目を養うためにも、いろんな仕事をしたほうがいいんじゃないかなと思いますけどね。
司会者:なるほどです。はい、ありがとうございました。
サイバーセキュリティの知識と実力をどう証明するか
司会者:じゃあ続きまして、ひろゆきさんにぜひ選んでいただきたいなと思います。
ひろゆき:はい。じゃあ僕のほうから。「サイバーセキュリティの勉強をしたいんですが、どこから始めたらいいですか? ひろゆきさんならどうしますか?」というので。今、僕はちょうど「Coursera」というGoogleがやっているサイバーセキュリティのコースをチョコチョコ進めているんですよね。
オンラインの大学とか、Googleとかのいろんな資格を取れますよというのがあって。それで、なんかリスキリング何とか協会みたいなところが本来数万円するやつを無料で使えますみたいなのを配っていて……。あ、日本リスキリング協会のやつ! これをチョコチョコやっているんですけど。最近だと、なんか女性限定で5,000名までそれをもらえるみたいなのがあったかな?
サイバーセキュリティの仕事って何ですか? というとけっこう難しくて。「この仕事において、俺は実力があります」というのを他人に証明するのがすごく難しいんですよ。要は、例えばスクウェア・エニックスという会社で働いていました。そのセキュリティ部門で働いていましたという人が、この人のおかげでスクウェア・エニックスのセキュリティが堅いのか、クラッキングされていないか(ら大丈夫なのか)は他人から見てわかりようがないんですよ。
なので、セキュリティに関してすごく知識があって経験がありますというのを面接で伝えるのも、すごく難しいんですよね。それでいくと「Googleが認定しているこういう資格があるんですよ」と言われたら、Googleが認定する資格を取ったのであれば、その人はきっと大丈夫だろうと。
要は、その面接をする人が口だけがうまいだけで、実力がない人を採ってしまったら、あとで怒られるじゃないですか。でもこの資格を取っているんだから、それなりの実力があるはずでしょ? という、そこの証明というのでいくと、やはり資格を持っている人を採るというのが、サイバーセキュリティに関してはけっこう安定な気がするんですよね。
要はモノづくりだと「このサービスを作りました」というのは、すごくわかりやすいんですよ。なので「じゃあ、あなたは何を書いたことがあるの? 何を作ったことがあるの?」なんですけど。
「セキュリティに詳しいです」という証明が難しいんですよね。だから最新のトレンドとかで、なんか「こういうウイルスがあります」とか、なんか「こういうハッキングの方法がありますよ」とか言われても、別にニュースを見ればわかるし。
なので、付け焼き刃な知識は付けやすいんですけど、でもその全体として、じゃあそのサーバーの構成をどういうふうに置くべきか、そこでサーバーにアクセスする権限を持っている人にどういうかたちで権限を配るかというのとか。じゃあログインのところのテーブルは見られるけど、個人情報は見られないようにしようとかのセクションをどうやって分けるかとか。
その会社に応じてすごく知識が必要なんですけど、でもそれってその会社の状況を見ないと、そうやって分けたのが正しいのかどうかがわからないので。なので、サイバーセキュリティに関しては、僕は他人に対していかに証明できるかは、けっこう大事なんじゃないかなという気はしています。
もしくはメチャクチャクラッカーとして有名になるというパターンですね。0Chiakiさんみたいな世間を揺るがす事件を起こして、「あれをやったのは俺です」って言われたら、「あ、こいつはすごいな」となると思うので。悪目立ちというパターンは、サイバーセキュリティではけっこうありますね。
司会者:(笑)。
ひろゆき:FBIだとケビン・ミトニックさんという、メチャクチャやらかした人。最終的に捕まえたあとに雇われたりしているので。あとは『キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン』という、レオナルド・ディカプリオが偽札を作る映画があるんですけど、あれも元になった人というのは、その後FBIで雇われて偽札鑑定士として、すごく優秀な仕事をしたというのもあったりするので。なので、悪目立ちをして仕事をするというのは、あるんじゃないかなとは思うんですけどね。
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(次回へつづく)
※本記事の内容は「技育祭2024【春】」を実施した2024年3月16日〜17日当時のものです。