2024年5月に伊藤忠商事、伊藤忠エネクス、投資ファンドのジェイ・ウィル・パートナーズの共同出資で、旧ビッグモーターの事業を継承した新会社WECARS(ウィーカーズ)。パワーハラスメント、保険金の不正請求、街路樹の違法伐採など数々の問題を引き起こし、不正の温床となった組織をどう改革していくのか──。火中の栗を拾った田中慎二郎社長に、新会社発足から半年の現状と今後の見通しについて聞いた。
全国380名の店長、工場長全員と面談
──社長就任以来、全国の店舗を回っているそうですが、率直な感想は。
田中慎二郎氏(以下、敬称略) 店舗を回り始めたころは、コンプライアンスの問題と組織風土改革、そして現場でお客様目線が持てているかどうかという点を確認しながら、啓蒙することを重視していました。
上意下達で、下から上にモノが言えない会社だと聞いていたので、風通しを良くするために従業員に語りかけるという目的もあり、オンライン面談を含めて380名いる店長、工場長クラス全員と話をしました。
個人的な感想を言いますと、われわれ新しい経営陣に対して抵抗感のようなものはほとんどなかったと思います。昨年8月以降、散々世間から叩かれた会社で退職者も相当出ましたし、売り上げも無残なまでに落ちてしまっていたので、われわれが事業を引き継いだことに対してはポジティブに捉えられていた印象です。
──旧ビッグモーターはやはり組織全体に法令順守の意識が薄かった印象ですか。
田中 いろいろな問題があった中で、意図的に行ったことと、悪いと思っていなかったケースの両方があったようですが、やはりコンプライアンスの意識は薄かったのではないでしょうか。
WECARS発足以降は「改革貫徹本部」を立ち上げ、ガバナンス体制を明確にした上で、コンプライアンスや人事制度の見直し、従業員教育など各種の改革を推進してきました。
その進捗内容は今年11月8日に発表しました。そして、今後進むべき改革プランとして、「お客様に信頼いただける会社になるための約束。」「安心と安全のための約束。」「透明性と納得感のための約束。」「サービス品質向上のための約束。」からなる4つの「WECARSの約束。」を定めました。
──まともに商売をしていれば業績も好調な会社だったと思いますが、なぜさまざまな問題が起きてしまったのでしょうか。