ケアマネジメント
ケアマネジメントとは、主に介護等の福祉分野で、福祉や医療などのサービスと、それを必要とする人のニーズをつなぐ手法のこと。
名称の由来
[編集]この用語は、日本では2000年4月から導入された介護保険制度により一般的となった。それまでは、社会福祉学者から「ケースマネジメント」や「ケアマネジメント」、看護学者から「ケアコーディネーション」と、同様の言葉が乱立し・提案されていたが、それぞれが同様の意味であることから、厚生省(当時)が「ケアマネジメント」の用語を採用し、その従事者をケアマネジャー(介護支援専門員)と呼ぶようになった。
ケアマネジメントの流れ
[編集]以下の順に行われる。
- インテーク[サービスの受理面接]
- アセスメント[生活課題の分析]
- プランニング[サービス計画の立案]
- サービスの実施
- モニタリング[サービスの進行中における中途の評価]
- サービス評価[エヴァリュエーション:最終的なサービスの評価]
- フィードバック後、再びアセスメント以下のプロセスを経る。
何らかの理由でサービスの中止に至った場合、その時点で終結となる。
アセスメント
[編集]アセスメントをする際に利用者に確認する項目が定められており、課題分析標準項目と呼ばれる。以下の23項目がある[1]。1から9までが基本情報に関する項目で10から23が課題分析(アセスメント)に関する項目である。
番号 | 項目名 | 主な内容 |
---|---|---|
1 | 基本情報(受付、利用者等基本情報) | 居宅サービス計画作成についての利用者受付情報(受付日時、受付対応者、受付方法等)、利用者の基本情報(氏名、性別、生年月日、住所・電話番号等の連絡先)、利用者以外の家族等の基本情報について記載する項目 |
2 | 生活状況 | 利用者の現在の生活状況、生活歴等について記載する項目 |
3 | 利用者の被保険者情報 | 利用者の被保険者情報(介護保険、医療保険、生活保護、身体障害者手帳の有無等)について記載する項目 |
4 | 現在利用しているサービスの状況 | 介護保険給付の内外を問わず、利用者が現在受けているサービスの状況について記載する項目 |
5 | 障害老人の日常生活自立度 | 障害老人の日常生活自立度について記載する項目 |
6 | 認知症である老人の日常生活自立度 | 認知症である老人の日常生活自立度について記載する項目 |
7 | 主訴 | 利用者及びその家族の主訴や要望について記載する項目 |
8 | 認定情報 | 利用者の認定結果(要介護状態区分、審査会の意見、支給限度額等)について記載する項目 |
9 | 課題分析(アセスメント)理由 | 当該課題分析(アセスメント)の理由(初回、定期、退院退所時等)について記載する項目 |
10 | 健康状態 | 利用者の健康状態(既往歴、主傷病、症状、痛み等)について記載する項目 |
11 | ADL | ADL(寝返り、起きあがり、移乗、歩行、着衣、入浴、排泄等)に関する項目 |
12 | IADL | IADL(調理、掃除、買物、金銭管理、服薬状況等)に関する項目 |
13 | 認知 | 日常の意思決定を行うための認知能力の程度に関する項目 |
14 | コミュニケーション能力 | 意思の伝達、視力、聴力等のコミュニケーションに関する項目 |
15 | 社会との関わり | 社会との関わり(社会的活動への参加意欲、社会との関わりの変化、喪失感や孤独感等)に関する項目 |
16 | 排尿・排便 | 失禁の状況、排尿排泄後の後始末、コントロール方法、頻度などに関する項目 |
17 | じょく瘡・皮膚の問題 | じょく瘡の程度、皮膚の清潔状況等に関する項目 |
18 | 口腔衛生 | 歯・口腔内の状態や口腔衛生に関する項目 |
19 | 食事摂取 | 食事摂取(栄養、食事回数、水分量等)に関する項目 |
20 | 問題行動 | 問題行動(暴言暴行、徘徊、介護の抵抗、収集癖、火の不始末、不潔行為、異食行動等)に関する項目 |
21 | 介護力 | 利用者の介護力(介護者の有無、介護者の介護意思、介護負担、主な介護者に関する情報等)に関する項目 |
22 | 居住環境 | 住宅改修の必要性、危険個所等の現在の居住環境について記載する項目 |
23 | 特別な状況 | 特別な状況(虐待、ターミナルケア等)に関する項目 |
プランニング
[編集]介護保険サービスを利用するにはサービス計画(以下、ケアプラン)を策定する必要がある。その方法は以下の2通りがある。
- 利用者、または家族でケアプランを策定し、自己管理でマネージメントする場合(俗称でセルフケアプランという)
- 介護支援専門員に依頼してケアプラン策定に基づくサービスマネジメントを依頼する場合
ただし、現行の制度が複雑であり、法規にさえ明記されていない細かいルールが存在し(これは厚生労働省からの「通知」という形で示される場合がほとんどである)、介護報酬のレセプト管理も煩雑で複雑なこと、さらに医療知識や介護保険以外の社会資源の知識も要求されることから、介護支援専門員にサービス計画策定の依頼を行うことがほとんどである。
ケアプランの策定依頼
[編集]ケアプランの策定を介護支援専門員に依頼する場合、居宅(在宅)の場合と施設入所の場合とに大別される。
居宅(在宅)で介護給付相当(要介護1〜5)の場合は都道府県が介護保険法上の指定を行った指定居宅介護支援事業者に依頼を行う。指定居宅介護支援事業者所属の介護支援専門員がケアプラン策定を含めたケアマネジメントを行う。
居宅(在宅)で予防給付相当(要支援1・2)の場合は居住地域内(住民票がある地域)の地域包括支援センターの保健師または経験ある看護師が予防給付対象者のためのケアプラン策定を含めたケアマネジメントを行う。ただし委託の方法で、指定居宅介護支援事業所にケアマネジメントを行わせることも可能である。
施設入所で当該の介護保険施設(指定介護老人福祉施設、介護老人保健施設、指定介護療養型医療施設)に入所契約し、実際に入所した場合は施設勤務の介護支援専門員がケアプラン策定を含めたケアマネジメントを行う。なお、要介護1〜5の利用者が入所できるので、予防給付の者は原則として入所できない(ただし旧措置制度による現入所者で、一定の移行期間に要支援1・2と判定された者も例外的に入所継続が可能であったが、この措置は平成21年3月をもって終了した)。
介護支援専門員などによって作られた原案をもとにして、サービス担当者会議で各専門職が話し合うことでケアプランは完成する。
居宅サービス計画書
[編集]居宅サービス計画書は居宅で介護および予防サービスを利用する際に作成される計画である。 以下の記入項目がある[2]。
- 居宅サービス計画書(1)
- 利用者及び家族の生活に対する意向を踏まえた課題分析の結果
- 介護認定審査会の意見及びサービスの種類の指定
- 総合的な援助の方針
- 生活援助中心型の算定理由
- 居宅サービス計画書(2)
- 生活全般の解決すべき課題(ニーズ)
- 目標(長期目標・短期目標)
- 援助内容(サービス内容・サービス種別)
- 週間サービス計画表
- 主な日常生活上の活動
- 週単位以外のサービス
- サービス担当者会議の要点
- 検討した項目
- 検討内容
- 結論
- 残された課題
- 居宅介護支援経過
- サービス利用票(兼居宅(介護予防)サービス計画)
- サービス利用票別表
- 区分支給限度管理・利用者負担計算
- 種類別支給限度管理
- 要介護認定期間中の短期入所利用日数
介護予防サービス・支援計画書
[編集]介護予防サービス・支援計画書は要支援1・2の人が介護予防サービスを利用する際に作成される計画である。 以下のアセスメント項目がある[3]。
- 運動・移動について
- 日常生活(家庭生活)について
- 社会参加、対人関係・コミュニケーションについて
- 健康管理について
また上記アセスメントに関して、以下の項目を記入する必要がある。
- 本人・家族の意欲・意向
- アセスメント項目に対する課題
- 課題に対する目標と具体策の提案
- 具体策についての意向 本人・家族
- 目標
- 支援計画
- 目標についての支援のポイント
- 本人等のセルフケアや家族の支援、インフォーマルサービス
- 介護保険サービスまたは地域支援事業
- サービス種別
- 健康状態について □主治医意見書、生活機能評価等を踏まえた留意点
- 【本来行うべき支援ができない場合】妥当な支援の実施に向けた方針
- 総合的な方針:生活不活発病の改善・予防のポイント
脚注
[編集]- ^ “課題分析標準項目(23項目)”. 「介護サービス計画書の様式及び課題分析標準項目の提示について」の一部改正等について(介護保険最新情報Vol.958等の再周知). 厚生労働省 老健局認知症施策・地域介護推進課 (2022年3月). 2022年9月4日閲覧。
- ^ “01-1 (別紙1)居宅サービス計画書①”. 厚生労働省. 2022年9月16日閲覧。
- ^ “介護予防サービス・支援計画書”. 厚生労働省. 2022年9月12日閲覧。