ニュー・ジャーナリズム
ニュー・ジャーナリズム(英: New Journalism)は、1960年代後半のアメリカで生まれた新たなジャーナリズムのスタイル。従来のジャーナリズムにおいては何よりも客観性が重視されていたが、ニュー・ジャーナリズムでは、敢えて客観性を捨て、取材対象に積極的に関わり合うことにより、対象をより濃密により深く描こうとする。
ニュー・ジャーナリズムという語は、1973年にトム・ウルフが、ニュー・ジャーナリズムの記事を編んだ『ニュー・ジャーナリズム』(The New Journalism)という書籍から広まったとされる。ニュー・ジャーナリズムの代表的なジャーナリスト、小説家としては、『ライト・スタッフ』(1979年)のトム・ウルフ、『ラスベガスをやっつけろ』(1972年)のハンター・S・トンプソン、『汝の父を敬え』(1971年)のゲイ・タリーズ、『夜の軍隊』(1968年)のノーマン・メイラーらの名が挙げられる。
ニュー・ジャーナリズムの形成に大きな影響を与えたとされるのは、1966年に出版されたトルーマン・カポーティのノンフィクション・ノベル『冷血』である。当時普及の始まっていたテープレコーダーをあえて使わず、一年半かけた訓練の記憶力テストが95%以上の正確度に達したところで取材を行う方式によって、「フィクションの技術を駆使した物語風の構成でありながら、中身は完全な事実という形式」を完成させた[1]。ニュー・ジャーナリズムの旗手のひとりゲイ・タリーズは、「虚構を一切せず、本名や実在する通りの名前、出来事などをきちんと使用して“現実を演出”する。ニュージャーナリズムは、要は、ストーリーテリングのことだ」と説明する[2]。
日本にも1970年代から1980年代にかけて同様の手法が輸入され、沢木耕太郎が一時期ニュー・ジャーナリズムの旗手と呼ばれていた。その他に山際淳司や後藤正治、佐木隆三などもニュー・ジャーナリズムの影響を受けた書き手として言及される[3][4]。
関連項目
脚注
- ^ 碓井巧「ルポルタージュの作法―その表現様式と可能性」広島文教人間文化第7号、2007。
- ^ 本人への取材一切せず傑作記事を仕立てる。現実を演出する文豪ゲイ・タリーズの「ニュージャーナリズムの巧み」
- ^ 「わかりやすさ」の時代に抗って――古くて新しいジャーナリズムの可能性 石戸諭(BuzzFeed Japan)×河野通和(ほぼ日の学校長)
- ^ インタビュ―・ノンフィクションの可能性- 猪瀬直樹著『日本凡人伝』を手掛りに