吉野源三郎
吉野源三郎(よしの げんざぶろう 1899年-1981年)は、元明治大学教授・岩波書店常務取締役。編集者・児童文学者・評論家・反戦運動家。岩波文庫の「君たちはどう生きるか」の著者として、また、「世界」初代編集長としても名高い。岩波少年文庫の創設にも尽力した。日本ジャーナリスト会議初代議長・沖縄資料センター世話人などの要職を歴任。1899年東京都出身。父は株式取引所仲買人。1912年、東京高等師範付属中学校(現・筑波大学付属中学校)に入学し、1916年に卒業。1918年、第一高等学校(現・東京大学教養学部)に入学。1922年、2留のすえ第一高等学校を卒業し、東京帝国大学経済学部(現・東京大学経済学部)になんとか入学。思索の中で哲学への思いが高じて文学部哲学科に転部した。1925年、26歳でようやく東京帝国大学文学部哲学科を卒業。陸軍に入隊する。1927年、東京大学図書館に就職。このころから政治に関心を持ち、その筋の団体の事務所に出入りするようになる。1931年にそのような行動から治安維持法事件で逮捕された。実際は違法行為などは行っていなかったのだが、このとき抱いた軍国主義への不信感が、後年の反戦活動、理想主義的な思想体系を形作ったと思われる。1935年、「日本少国民文庫」編集主任に就任。1937年には明治大学講師に就任。この年、「君たちはどう生きるか」を刊行する。1939年、明治大学教授に就任。戦時中も一貫して独自のヒューマニズム論を展開した。1945年「世界」初代編集長に就任。1949年、岩波書店取締役に就任。1950年、岩波書店常務取締役に昇進。1959年「安保批判の会」結成に参加。1965年、岩波書店編集顧問に就任。1981年、81歳の高齢で死去。反戦への思いを熱く秘めたその作風は多くの支持を集め、「君たちはどう生きるか」は、刊行から70年経過した今でも、2003年の「私が好きな岩波文庫100」で、5位にランクされるほど、根強い人気を誇っている。一方で、その理想主義の甘ったるさを指摘する人もいたりする。岩波少年文庫各冊の終わりによせた「岩波少年文庫発刊に際して」という一文は、いまだに名文という評価が高い。
主な著作
- 「君たちはどう生きるか」
- 「エイブ・リンカーン」
- 「ぼくも人間きみも人間」
- 「同時代のこと」
- 「波濤をこえて」
- 「人間の尊さを守ろう」
- 「原点 戦後とその問題」
- 「職業としての編集者」
- 「同時代のこと ヴェトナム戦争を忘れるな」
- 「日本における自由のための闘い」(編著)
- 「日本の運命」(編著)
主な翻訳書
- 「西洋哲學史」(共訳)
- 「わが人生観」