むらさめ型護衛艦
むらさめ型護衛艦 | ||
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艦級概観 | ||
艦種 | 護衛艦(DD:汎用護衛艦) | |
建造期間 | 1993年 - 2000年 | |
就役期間 | 1996年 - 就役中 | |
前級 | DD:あさぎり型護衛艦 | |
次級 | DD:たかなみ型護衛艦 | |
性能諸元 | ||
排水量 | 基準 4,550トン | |
全長 | 151m | |
全幅 | 17.4m | |
深さ | 10.9m | |
吃水 | 5.2m | |
機関 | COGAG方式(60,000PS) 2軸推進 | |
LM2500ガスタービン(16,500PS) | 2基 | |
SM1Cガスタービン(13,500PS) | 2基 | |
速力 | 最大30kt | |
乗員 | 165名 | |
兵装 | 76mm単装速射砲 | 1基 |
高性能20mm機関砲 (CIWS) | 2基 | |
SSM-1B SSM 4連装発射筒 | 2基 | |
Mk 41 VLS (VLA SUM用:16セル) |
1基 | |
Mk 48 VLS (シースパロー 短SAM用:16セル) |
1基 | |
324mm短魚雷3連装発射管 | 2基 | |
艦載機 | SH-60J / K哨戒ヘリコプター | 1/2機 |
レーダー | OPS-24 3次元対空レーダー | 1基 |
OPS-28D対水上レーダー | 1基 | |
ソナー | OQS-5艦首ソナー | 1基 |
OQR-2戦術曳航ソナー | 1基 | |
FCS | 射撃指揮装置2型31 (FCS-2-31) |
2基 |
電子戦 | NOLQ-3統合電子戦装置 | |
Mk 137 チャフ発射機 | ||
曳航式デコイ | ||
言語 | 表記 | |
日本語 | むらさめ型護衛艦 | |
英語 | MURASAME type Destroyer |
むらさめ型護衛艦(むらさめがたごえいかん)は海上自衛隊が使用する汎用護衛艦。はつゆき型の老朽化に伴い、1991年度予算で初めて導入された。
なお、次型のたかなみ型は本型の発展強化型である。本級とたかなみ型は、質・量双方の面において現在の海上自衛隊汎用護衛艦の主力となっている。
概要
本型は、海上自衛隊の第3世代汎用護衛艦である。船体はステルス性を考慮して設計されており、また新型装備に対応して大型化しているため、機関も強化されている。レーダーやソナー、コンピューター、さらにミサイル兵器も全面的に刷新された。
本型の前に建造されたあさぎり型は、あらゆる面で、汎用護衛艦の初代であるはつゆき型の改良型に過ぎなかった。このため、いくつかの点で、設計面の不備が指摘されていたほか、これ以上の装備の進歩には追随しきれないことは明らかであった。このことから、まったく新しい設計に基づく、新世代の汎用護衛艦として建造されたのが本型である。
本型は、兵装面ではあさぎり型を基本的に踏襲しているが、ミサイル兵装は全面的に垂直発射化されており、即応性と抗堪性が向上している。また、電子装備も強化されており、対空レーダーとしては、あさぎり型の後期建造型より採用されたOPS-24 3次元レーダーが使用されているのをはじめとして、戦闘システムも全面的に刷新されており、特に対潜戦闘システムについては、イージス艦であるこんごう型と同等のものを搭載している。
船体・機関
船体はこれまでの汎用護衛艦としてはかなり大きく基準排水量は約4,550トン(平成10年度以降に基準排水量の公表値が4,400トンから4,550トンに変更された)で、むらさめ型の前に建造されていたあさぎり型に比べると基準排水量で約1,000トン上回り、海上自衛隊が保有するミサイル護衛艦(DDG)であるはたかぜ型とほぼ同サイズである。
各種兵装などの内容はある程度の改良があるものの基本的にはあさぎり型と変わっていないため、あさぎり型に比べると艦内は余裕のあるつくりとなっている。さらに省力化により乗員はあさぎり型より55人少ない165人となっているため、ベッドはこれまで3段だったのが2段に、部屋は12人程度で一部屋程度と細かく分けられるなど、居住性が向上している。
機関
むらさめ型はガスタービンエンジン4基を装備し、このうち巡航時には2基を使用、高速航行時にはそれに加え残りの2基を使用するCOGAG方式を採っている。
装備するガスタービンエンジンは巡航用がロールス・ロイス社製のSM1C(1基あたり13,500馬力)、高速用がゼネラル・エレクトリック社製のLM2500(1基あたり16,500馬力)となっているが、このようにメーカーの異なるガスタービンエンジンを採用することは世界的にも珍しい。
ステルス性
むらさめ型は海自のDDとして初めてステルス性に考慮した艦となっている。具体的には艦橋側面に傾斜をかけてあるほか、全体的に平面的な構造をしている。しかしレーダーなどを装備するマストは強度面での不安があったため、アメリカ海軍のアーレイ・バーク級ミサイル駆逐艦のような傾斜角柱、角錐型マストは採用していない。
本型が採用しているのは、同時期に建造された諸外国の艦とは異なり、従来までと同じ骨組みが剥き出しのラティスマストである。ただし、マストには電波吸収材が装着されている他、その形態自体についても工夫が凝らされており、実際にはレーダー反射断面積(Radar cross section, RCS)はかなり低いとも言われる。
ミニ・オランダ坂
あさぎり型、はつゆき型では、飛行甲板は艦の中央部、01甲板に配置されていたが、本型では上甲板レベルとなり、係留装置などとの干渉をさけるため、艦尾甲板の舷側部はなだらかに傾斜しており、これを初代むらさめ型を始めとする初期の海上自衛隊護衛艦の設計上の特徴であったオランダ坂に喩えて、ミニ・オランダ坂とも称する。
装備
C4Iシステム
本型の戦闘システムの中核となる戦術情報処理装置はOYQ-9と呼ばれる機種で、新しい世代のコンピュータを採用しており、UYK-43 1基とUYK-44 1基を中核として、ワークステーションとしてAN/UYQ-21が配置されている。データリンクとしてはリンク 11およびリンク 14、また、ヘリコプターとの情報交換用にORQ-1を装備している。
また、本型は、対潜情報処理装置を搭載したという点で、極めてエポックメイキングな艦である。その機種はOQS-103で、詳細は不明であるが、目標情報の管理機能と水中攻撃指揮機能を有するものと考えられている。
対空戦闘システム
本型は、先行する汎用護衛艦と同様、シースパローIBPDMS、オート・メラーラ 76 mm 砲、20mmファランクスCIWSと3重の対空火網を備えており、これらの火器は、OYQ-9を中核として連接され、半自動システムを構成している。そのサブシステムは下記のとおりである。
- OPS-24B三次元対空捜索レーダー
- OYQ-9戦術情報処理装置
- FCS-2射撃指揮装置
- シースパローIBPDMS (NSSMS)
- オート・メラーラ 76 mm 砲
経空脅威に対しては、まずOPS-24対空捜索レーダーで目標を探知・捕捉したのち、その諸元をOYQ-9戦術情報処理装置に手動で入力、オペレータが情勢を判断して攻撃の優先順位を決定したのち、攻撃する目標の諸元をFCS-2に手動で入力、シースパローIBPDMSまたはオート・メラーラ 76 mm 砲による攻撃に至る。
射撃指揮装置としては国産のFCS-2シリーズが用いられているが、本型では、シースパローIBPDMSと76mm砲用の射撃指揮装置を、FCS-2-31の単一機種に統一しており、方位盤は2基を設置している。
本型の特徴のひとつは、シースパローを垂直発射化した点であり、その発射機としては、16セルのMk 48 VLS 1基が艦の中央部、煙突間に配置されている。搭載するミサイル数の面ではこれまでの汎用護衛艦と同じであるが、従来は8発撃つとミサイルをランチャーに装填する必要があったのに対して、VLSではその必要がなくなり、即応弾数は倍になったといえる。シースパローは発展型シースパロー(ESSM)に換装される予定で、平成17年度から平成20年度までにむらさめ型9隻分が予算化されており、すでに9番艦「ありあけ」はESSMへの換装を実施している。Mk 48 VLSには、ESSMを1セルあたり2発搭載可能であるので、対空ミサイルの搭載数は倍の32発になる。
また、近接防空火器 (CIWS;Close-In Weapon System) としては20mmファランクス2基が搭載される。2基という搭載数は従来の護衛艦と同じであるが、こんごう型と同様に前後中心線上に1基ずつ設置され、より射界の広い合理的な配置となった。なお、OYQ-9戦術情報処理装置からファランクスCIWSに対する干渉は必要最小限であり、基本的には独立したシステムとして攻撃を実施することになる。
対水上戦システム
本型は、90式艦対艦誘導弾 (SSM-1B) 艦対艦ミサイルによる長距離対水上打撃力を備えている。これは本型から採用された国産の対艦ミサイルで、従来使用されてきたRGM-84 ハープーンよりも優れた精度と対妨害性を備えている。発射機はハープーンと同様の4連装発射筒で、2基の発射筒は、艦中央部、第1煙突後方に搭載されている。射撃指揮は、ハープーンのSWG-1 HSCLCSと互換性のある機種によって行なわれるため、必要に応じてハープーンに換装することも可能である。
対水上センサーとしては、OPS-28対水上レーダーが搭載されている。これはCバンドで動作し、遠距離での精密捜索能力に優れており、水上の目標のみならず、低空を飛行する巡航ミサイルなどの探知にも使用される。
また、レーダーを作動させることが危険な状況においては、NOLR-6C ESM装置や戦術データ・リンクからの情報に基づいて攻撃が実施されることになる。
対潜戦闘システム
本級の対潜戦闘システムは、様々な点で刷新されている。ソナーは新型になり、対潜ミサイルは垂直発射化され、これらの装備は、OYQ-103対潜情報処理装置を中核として連接され、アメリカのAN/SQQ-89に似た半自動システムを構成している。また、OYQ-103は、おそらく対潜攻撃指揮装置の機能を含んでいるものと推測される。
本型の主たる対潜センサーは、船体装備のOQS-5 ソナー、OQR-2戦術曳航ソナー(TACTASS)、および哨戒ヘリコプター装備のディッピングソナーとソノブイである。船体装備ソナーとしては、従来は船底装備のOQS-4シリーズが使用されてきたが、本型のOQS-5は船首装備(バウ・ソナー)となっており、より強力なものである。また、戦術曳航ソナーも従来のOQR-1に対してOQR-2が使用されているが、これはアメリカのSQR-19と同等と推測されており、長距離での敵潜水艦の探知が可能である。
一方、対潜攻撃兵器として、本型は長射程においてはヘリコプター、中射程においては垂直発射型アスロック(VLA)、短射程においては、68式3連装短魚雷発射管HOS-302から発射される短魚雷と3段構えの対潜火力を行使することができる。これは、同世代の欧米の同級艦と比して極めて強力なものである。特に対潜ミサイルについては、同時期に建造されたイギリス海軍の23型フリゲート、ドイツ海軍のブランデンブルク級フリゲートなどには無い装備である。
なお、本型においては、従来より使用されてきたアスロックの8連装発射システムMk 16にかわって、垂直発射型アスロック(VLA)用に16セルのMk 41 VLSが搭載されている。搭載位置は艦橋構造物前方で、甲板内に収容されている。なお、Mk 48を含め、これらの垂直発射装置は、汎用護衛艦としては初めての搭載例である。
また、本型の搭載する哨戒ヘリコプターは、アメリカ海軍のLAMPSとは異なり、かなり高度な独立作戦能力を有しており、固有のディッピング・ソナーからの情報に基づいて攻撃を実施することもできるが、LAMPSと同様、母艦からの統制のもとで攻撃を実施することもできる。
砲熕兵器システム
本型は主砲として、62口径76ミリ速射砲 1門を艦首(MK41VLSの前方)に備えている。これは、イタリアのオート・メラーラ社製 76ミリ コンパット砲を日本製鋼所でライセンス生産したもので、これまでの汎用護衛艦でも使用されてきた定評ある砲であるが、満載排水量で6000トンにも及ぶ艦体に比してやや過小であるとの指摘もある。砲の射撃指揮装置と対空ミサイルの射撃指揮装置は、艦の前後に装備されている2つのイルミネーターを共用している。砲の発射速度は分当たり最大100発に達する。また新たに開発された76mm砲用の05式近接信管と新型の狭指向性HE弾頭はセットでの使用で、対艦ミサイルへの近接防空能力が大きく改善される事を期待されている。
艦の前後に搭載された20mmファランクス2基は、主として対空迎撃に使用されるが、必要に応じて、手動で対水上射撃も可能である。また、7番艦以降は、艦橋下両舷のスポンソンが前方へ延長され12.7ミリ機銃の銃座が設けられている。
電子戦闘システム
従来の汎用護衛艦がESM装置としてNOLRシリーズ、ECM装置としてOLTシリーズを別々に有するのに対して、本型は、統合電子戦システムとしてNOLQ-3を搭載する。これは、ESM用にOPN-7B(VHF/DF帯用)とOPN-11(HF/VHF用)、ECM用にOLT-5を統合しており、アメリカ海軍のSLQ-32(V)2にほぼ匹敵するもので、極めて優れた性能を有する。
また、対ミサイルのソフト・キル用として、ミサイル警報装置、Mk 137 チャフ発射機および曳航式デコイを備えており、これらはNOLQ-3と連動している。
航空機
艦載ヘリコプターとして、SH-60Jもしくはその発展型であるSH-60K哨戒ヘリコプターを装備する。ヘリ格納庫はSH-60クラスのヘリコプター2機を格納可能なスペースがあるものの、通常運用での艦載ヘリコプター定数は1機となっている。また、ヘリ支援装備も1機分しか搭載されていない。
むらさめ型の各艦がインド洋に対テロ作戦支援(自衛隊インド洋派遣)に赴いた際は、2機搭載した。
同型艦
艦名 | 艦記号・艦番号 | 起工 | 進水 | 竣工 | 所属 | 製造 |
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むらさめ | DD-101 | 1993年 (平成5年) 8月18日 |
1994年 (平成6年) 8月23日 |
1996年 (平成8年) 3月12日 |
第1護衛隊群第1護衛隊 (横須賀基地) |
石川島播磨重工業 東京第2工場 |
はるさめ | DD-102 | 1994年 (平成6年) 8月11日 |
1995年 (平成7年) 10月16日 |
1997年 (平成9年) 3月24日 |
第2護衛隊群第6護衛隊 (司令部:佐世保基地) (定係港:横須賀基地) |
三井造船玉野事業所 |
ゆうだち | DD-103 | 1996年 (平成8年) 3月18日 |
1997年 (平成9年) 8月19日 |
1999年 (平成11年) 3月4日 |
第3護衛隊群第7護衛隊 (司令部:舞鶴基地) (定係港:佐世保基地) |
住友重工追浜造船所 浦賀工場 |
きりさめ | DD-104 | 1996年 (平成8年) 4月3日 |
1997年 (平成9年) 8月21日 |
1999年 (平成11年) 3月18日 |
第3護衛隊群第7護衛隊 (司令部:舞鶴基地) (定係港:佐世保基地) |
三菱重工業 長崎造船所 |
いなづま | DD-105 | 1997年 (平成9年) 5月8日 |
1998年 (平成10年) 9月9日 |
2000年 (平成12年) 3月15日 |
第4護衛隊群第8護衛隊 (呉基地) |
三菱重工業 長崎造船所 |
さみだれ | DD-106 | 1997年 (平成9年) 9月11日 |
1998年 (平成10年) 9月24日 |
2000年 (平成12年) 3月21日 |
第4護衛隊群第8護衛隊 (呉基地) |
石川島播磨重工業 東京第2工場 |
いかづち | DD-107 | 1998年 (平成10年) 2月25日 |
1999年 (平成11年) 6月24日 |
2001年 (平成13年) 3月14日 |
第1護衛隊群第1護衛隊 (横須賀基地) |
日立造船舞鶴工場 |
あけぼの | DD-108 | 1999年 (平成11年) 10月29日 |
2000年 (平成12年) 9月25日 |
2002年 (平成14年) 3月19日 |
第1護衛隊群第1護衛隊 (司令部:横須賀基地) (定係港:呉基地) |
石川島播磨重工業 東京第2工場 |
ありあけ | DD-109 | 1999年 (平成11年) 5月18日 |
2000年 (平成12年) 10月16日 |
2002年 (平成14年) 3月6日 |
第3護衛隊群第7護衛隊 (司令部:舞鶴基地) (定係港:佐世保基地) |
三菱重工業 長崎造船所 |
むらさめ型護衛艦画像
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DD-103ゆうだち(奥)とDD-112まきなみ(手前)
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DD-104きりさめ
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DD-105いなづま
登場作品
- 『亡国のイージス』
- DD-101 むらさめ - 架空の護衛艦はるかぜ役
- DD-107 いかづち - 架空の護衛艦うらかぜ役
- DD-102 はるさめ - クライマックスにて、主人公が乗るUH-60Jが燃料不足により、給油の為に緊急着艦。
- DD-102 はるさめ
TV番組 『奇跡体験!アンビリバボー』(フジテレビ系列)
- DD-107 いかづち - 番組内再現ドラマの撮影に協力。
- DD-101 むらさめ
- 『ヱヴァンゲリヲン新劇場版』 冒頭に於いて国連軍の戦車隊と共に沿岸部から使徒迎撃に当たる。
- 『ジパング』(アニメ版第1話)
- むらさめ型艦名不詳3隻