「貨幣国定説」の版間の差分
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2020年6月10日 (水) 07:52時点における版
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マクロ経済学において、貨幣国定説とは、お金は物々交換に付随する問題に対する自然発生的な解決策あるいは債務を代用貨幣化する手段というより、経済活動を管理しようとする国の試みに起因し、不換紙幣(法定通貨)は国が発行する通貨で支払うべき税金を経済活動に対して賦課する権力によって交換価値をもっていると主張する貨幣理論である。
背景
ドイツの経済学者ゲオルク・フリードリヒ・クナップは、『貨幣国定学説』(1905年にドイツ語で発表され、1924年に英訳)の中で「貨幣国定説」という言葉を生み出した。名前の由来は、ラテン語の「charta」に由来し、トークンやチケットの意味で使われる。お金は商品貨幣ではなく「法律の創造物である」とクナップは主張した。クナップは貨幣の国家論を、当時の金本位制に具現化されていた「金属主義」(通貨単位の価値は貴金属の量(貨幣に含まれる量、または交換可能な量)に依存する)と対比させた。国家は純粋な紙幣を作り、それを「公共の給料として認められる」法定通貨として認識させることで交換可能にすることができる、とクナップは主張した。
金属主義と貨幣国定説の両方の原則が、紀元1世紀初頭から3世紀末にローマ帝国の東部地方でアウグストゥスによって導入された貨幣システムに反映された、とConstantina Katsari は主張している。
クナップが執筆した時代は、お金はある程度使用価値のある耐久性がある商品を表していたため、物々交換から交換媒体(en:Medium of exchange)に発展したという見方が一般的だった。
しかし、L・ランダル・レイやMathew Forstaterのような現代の貨幣国定派の経済学者が指摘しているように、貨幣国定派の洞察により、初期の多くの古典的な経済学者の著作に税金で駆動される紙幣の記述が見出された。例えばアダム・スミスの『国富論』で見出された:
A prince, who should enact that a certain proportion of his taxes should be paid in a paper money of a certain kind, might thereby give a certain value to this paper money; even though the term of its final discharge and redemption should depend altogether on the will of the prince — Adam Smith、An Inquiry into the Nature and Causes of the Wealth of Nations
ある王子が、自分の税金の一定割合をある種類の紙幣で納めるように制定した場合、この紙幣に特定の価値を与えることができるかもしれない — アダム・スミス、諸国民の富の本質と原因に関する研究
Forstater はまた、ジャン=バティスト・セイ、ジョン・スチュアート・ミル、カール・マルクス、ウィリアム・スタンレー・ジェヴォンズの著作の中に、特定の制度的条件の下で、税金で駆動される貨幣という概念への支持を見出した。
Alfred Mitchell-Innes は1914年の著作で、貨幣は交換媒体としてではなく、後払いの基準(en:Standard of deferred payment)として存在し、政府の貨幣は政府が課税によって回収できる負債である、と主張した。Innes の主張:
Whenever a tax is imposed, each taxpayer becomes responsible for the redemption of a small part of the debt which the government has contracted by its issues of money, whether coins, certificates, notes, drafts on the treasury, or by whatever name this money is called. He has to acquire his portion of the debt from some holder of a coin or certificate or other form of government money, and present it to the Treasury in liquidation of his legal debt. He has to redeem or cancel that portion of the debt...The redemption of government debt by taxation is the basic law of coinage and of any issue of government ‘money’ in whatever form. — Alfred Mitchell-Innes、The Credit Theory of Money、The Banking Law Journal
税金が課せられると納税者は、政府が貨幣の発行によって契約した債務の一部を償還する責任を負うことになる。納税者は自分の負債の一部をコインまたは証明書の所有者またはその他の形の政府のお金から獲得し、法的負債を清算して財務省に提示しなければならない。納税者は負債のその部分を償還またはキャンセルする必要がある...課税による政府債務の償還は、貨幣の基本的な法則であり、どのような形であれ政府の「お金」の発行の基本的な法則である。 — アルフレッド・ミッチェル=インズ、お金の信用理論、銀行法ジャーナル
ジョン・メイナード・ケインズは1930年の『貨幣論』(en:A Treatise on Money)の冒頭でクナップと「貨幣国定派」に言及しており、経済における国家の役割に関するケインズ派の考えに影響を与えたと考えられる。アバ・ラーナーが「国家の創造物としての貨幣」という論文を書いた1947年までに、経済学者たちは、貨幣の価値は金と密接に結びついているという考えをほぼ放棄していた。ラーナーは、インフレと恐慌を回避する責任が国家にある理由を、貨幣を創造したり課税したりする能力を持つため、と主張した。
現代の支持者
「現代貨幣理論」も参照