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== ストーリー ==
== ストーリー ==
以下の章立ては便宜上つけたもので、単行本中では序章以外には章立てやサブタイトルのようなものは付けられていない。
以下の章立ては便宜上つけたもので、単行本中では序章以外には章立てやサブタイトルのようなものは付けられていない。



=== 序章 ===
=== 序章 ===

2020年5月23日 (土) 10:47時点における版

海皇紀
ジャンル ファンタジー少年漫画
漫画
作者 川原正敏
出版社 講談社
掲載誌 月刊少年マガジン
レーベル KC月刊マガジン
発表期間 1998年3月号 - 2010年8月号
巻数 全45巻
テンプレート - ノート

海皇紀』(かいおうき)は、川原正敏による日本漫画作品。

概要

月刊少年マガジン』(講談社)誌上において、1998年3月号より2010年8月号まで連載された。ただし、物語の大きな節目には一旦休載され、『陸奥圓明流外伝 修羅の刻』の連載が挟まれた。単行本は『月刊少年マガジン』より全45巻が刊行されており(最終45巻は、2010年9月17日発売)、合計発行部数は1000万部を突破した(2007年3月現在)。

海上で生活する「海の一族」のファン・ガンマ・ビゼンを主人公とした海洋冒険活劇であり、また『三国志』の影響を受けた国同士の謀略劇の要素も強い(作者は本作について「僕にとっての『三国志』」と述べている)。また作者は広島商船高等専門学校出身であり帆船の操船法など船舶関係の描写は正確である。

世界設定

『海皇紀』の世界は、人類の文明が一度滅亡し、近世レベルまで技術が回復した未来を舞台とする。作者の川原正敏が1巻のあとがきで未来の話と語っている他は、作中で明確に語られているわけではないが、1巻冒頭に「北極星ケフェウス座γ星に移った」と解釈される序文があり、人型兵器が過去の遺産として登場することなどといった描写がなされている(なお、ケフェウス座γ星が北極星となるのは約2500年後である)。

また、英語「アイスダガァ(氷の懐剣)」が古の言葉として登場したり、図面に記述された「Fire」という単語について海の一族が使う独特の古代文字であると述べられるなど、ローマ字が古代文字であると描写されている。

イルアンジャ曰く世界は一度滅んでおり、その根幹となったものとしてアインシュタインの相対性理論の公式が挙げられている。ジオとタイシオの間のサナル海は丸く抉られた様に陸地が無くなっているなど海図に描かれる大陸は現在のものとは大きく異なり、エル・グリハラがクレーターの中に存在していた様に地形も大きく変化している。

その他、空には「太古に人が打ち上げた」という伝説もある動かない星(=静止衛星)があり、その方位や高度から自分の位置を観測する、などの描写もある。

現在は陸上には多くの国々があり、互いに覇を競っている。中でも西方の大国ロナルディアは、いにしえの“魔道の業”を復活させ、急速に勢力を拡大している。一方海では、以前から交易や傭兵などによって栄える「海の一族」が存在し、海洋を支配している。

この時代には石炭石油というものが存在しないため、陸上移動は、海上移動は船(帆船など)で行われる。「海の一族」は船舶の保有数や操帆技術に優れているため海洋を支配し続けていたが、ロナルディアが“魔道の業”(カノン砲)を装備した帆船を投入してきたため一族の覇権が崩れつつある。

ストーリー

以下の章立ては便宜上つけたもので、単行本中では序章以外には章立てやサブタイトルのようなものは付けられていない。

序章

1巻 - 3巻

伝説の大魔道師イルアンジャの情報を求めて辺境の小国ウォルハンの港町に居る魔道師を訪ねたマイア・スアルとトゥバン・サノオは「魔道士アナハラムを訪ねるか、グリハラという土地に訪れよ」との助言を受けた。その帰り道において襲われていたウォルハンの新国王カザル・シェイ・ロンと、そこに居合わせた正体不明の男ファン・ガンマ・ビゼンと偶然に出会い、海の一族を名乗る船乗りであり、グリハラの情報を持っているというファンにそのままついて行く事になる。一方、カザルは自国に対し圧力をかける隣国クアラとの和平交渉のため、クアラへ向かう船を求めていた。ファンはカザルの求めに応じ、自らが指揮する「影船八番艦」でクアラへと向かった。

クアラ王との和平交渉は決裂し、カザルはクアラの勇将ジンバハルを斬り、ファンの手助けで王宮から脱出する。カザルは最初からクアラと和平するつもりはなかったのだった。直ちにウォルハンの王宮に戻ったカザルは襲撃の黒幕だった大臣ダンマ・ウズキを粛清し、国境の要害ルガイ関でクアラ軍を打ち破るべく出撃する。一方、ファンはクアラ海軍によるウォルハンの挟撃を防ぐため、影船八番艦ただ一隻でクアラ海軍に挑む。

グリハラ編

3巻 - 10巻

影船八番艦の次の目的地は、マイアの探している大魔道師イルアンジャの情報が得られるという東の島、グリハラ。途中、補給のために寄った港で天才軍師アル・レオニス・ウル・グルラに出会う。アル・レオニスもグリハラを目指しており、影船に乗船するはずだったが、ウォルハンの進攻を知り、決別する。その後、途中の名も無き島で伝説にいう「闇の魔人衆(イベルグエン)」の技を使う男ギルス・ヴェダイを加えた一行は、グリハラを支配していた“導師”を倒し、アナハラムの娘メルダーザを連れてイルアンジャが向かったという内陸の聖地エル・グリハラへ向かう。

エル・グリハラに到着し、遺跡の地下で一行はイルアンジャと会う。しかしイルアンジャは発掘した「土武者」が動かないことに絶望し、精神に異常をきたしていた。魔道の業「ドルドルーヴォの火」によってファンたちを攻撃するイルアンジャだが、爆風によって突如動き出した「土武者」によって、感動の中撲殺される。トゥバンはファンのニホントウを借りて「土武者」を斬り、窮地を脱出するのだった。

グリハラを後にしたファンの船にフォレスト率いるロナルディアの船が襲いかかってきた。目的はマイアを捕らえることであり、「ドルドルーヴォの火」によってトゥバンを負傷させるも、ファンの巧みな操舵、そして戦闘術の前に敗れ去った。船には魔道の兵器(カノン)が積まれており、それを見たファンはロナルディアとの戦争を海王に提言すべく、海都へ赴く。

海都編

11巻 - 20巻

「海の一族」の首都、海都へ到着したファン達だったが、すぐさま近衛兵長エギア・アルガマスによって拘束・幽閉された。ファンが会おうとした海王は死去しており、第二子フェルカド・ルーナ・セイリオスが次期海王の座を手中にすべく、エギアとともに海都の実権を握っていたのだった。末子ソル・カプラ・セイリオスの助けも得て脱出したファンは、「海の一族」のしきたりに基づいた次代海王の選出と影船クルーの家族たちの安全のため、海都近衛艦隊との決戦に臨む。

「海の一族」のしきたりでは、7隻の影船の艦長たちの剣が捧げられた人物が次代の海王となる。選定の儀に乱入したファンは、自らが先代海王から継承者の資格を認められていた証を示す。票はソルとファンの間で割れ、海王を決めるための次のしきたり、候補者によるレース「王海走」が行われることになった。

王海走の第一本目をあっけなく落としたファンだったが、そのときの仕込みと天運によって第二本目を得る。最終戦となる第三本目、ファンはフェルカドの策をも利用してソル支持の影船を引き離し、先行するソルを猛追する。そして突風によってソルの乗艦は帆が破れ、勝負がついたかと思われたが……。

ガルハサン編

20巻 - 27巻

王海走の結果「大海帥」の称号を受けたファンは、ロナルディアに唯一対抗できると考えられるロン率いるウォルハンの元へと向かう。西方へと勢力を伸ばすウォルハンはロナルディアの同盟国ガルハサンの王都ルグーンに向かうため、ルラン関を避け冬のアルラン山脈を越える奇策に出る。その道は余りに過酷なため、ファン達は彼らの荷を運ぶため難攻不落のドラガン海峡を抜けようと試みる。その際、北インガルナシオ艦隊海将ジト・サントニウスに船を借り、無事ドラガン海峡を抜けたら願いをひとつ聞いてくれるよう取引し、それを成し遂げる。

他の誰も予測しなかったウォルハンの奇襲だったが、アル・レオニスはこれを読み罠を仕掛けていた。一時退却したウォルハンだったがアル・レオニスの策はまだ続く。丘の上でファンとアル・レオニスとの知恵比べが繰り広げられる。

ウォルハンはルグーンを落とし、アル・レオニスはカザルの下に付いた。ファンたちはアル・レオニスの身柄を狙ったイベルグエンたちの襲撃を二度にわたって防ぐが、その際にヴェダイがイベルグエンの「呪」によって一時操られてしまう。父アナハラムがロナルディアに与していると知ったメルダーザと、居場所の無くなったヴェダイはファンたち一行と別れを告げる。

ジーゴ・サナリア編

27巻 - 31巻

ガルハサンを離れた八番艦は、西の辺境サナル海へと向かう。そこはサナル海西周辺を支配する海賊「ジーゴ・サナリア」と小戦が絶えない紛争地域であり、一族中屈指のアレア・モス率いる影船四番艦がいる地域であった。多くの者が四番艦または海将を味方に引き入れるものと考えていたが、ファンの真意はジーゴ・サナリアを味方に付けることであった。

商船を罠に襲ってきたロナルディア戦船に苦戦する女戦士アグナ・メラ率いるジーゴの一軍をファンは助け、ジーゴに協力を得るべく単身ジーゴの大長の元へと向かう。ファンの申し出を受けた大長は、一族の若者たちの妨害を排除して、孫娘でもあるアグナに夜這いを仕掛けて嫁にし、一族の一員になれば認めるというものだった。しかしその真意は、無謀にも一人敵陣に乗り込んできたファンを、村の若者たちの手で亡きものにしようという企みであった。一人も殺さないよう戦うファンは苦戦するが、最終的にはその気持ちがジーゴのつわもの、そしてアグナにも伝わり、ジーゴ・サナリアはファン・ガンマ・ビゼンと共に戦うことを決意する。

無事八番艦に帰還したファンの前にアレア・モスが現れる。ロナルディア船を倒し、ジーゴを仲間に付けたファンは、ロナルディアと同盟を組もうとしている海王ソルにとって許せるものではないと言う。多くの者が手を貸してくれると思っていた中、アレア・モスは海王に、自分の見たことのみを報告すると言い去っていく。

ファンはソルと戦う戦力を得るため、サナル艦隊を「貰いに」行く。ソルによって新しく任命されたサナル艦隊海将ウォルカ・ベアスは若くして海将に選ばれる程の実力をもっていたが、部下を駒のように扱う人望の薄い男であった。ファンはそこを突き、見事ベアスを追い詰める。ベアスはアグナの槍によって命を落とし、残ったサナル艦隊はファンの説得、人徳によって共に戦うことを誓う。

かくしてサナル艦隊、ジーゴ・サナリアを味方につけたファンは海の一族を一つにすべく、海王ソルとの戦いに臨む。

海都攻防編

31巻 - 33巻

サナル艦隊、ジーゴ・サナリアとともにソルと戦うため、海都に向かうが途中大きな嵐がやってくる。ジーゴ・サナリアの船は筏同然である為、そのままではジーゴ・サナリアの船はひとたまりもない。そこでファンは機転を利かせ、ジーゴ・サナリアの船同士を繋いで、嵐を乗り切ってみせる。

一方、海都では、アレア・モスが海王ソルの元に自分の見てきた事を報告する。海王ソルは、報告からファンがジーゴ、サナル艦隊を率い海都へ攻めてくると判断、サナル艦隊を除く全艦隊と7隻の影船を召集し、ファンの率いるサナル艦隊、ジーゴ、影八番艦連合軍を迎え撃つことを決める。

海都に到着したファンの率いるサナル艦隊、ジーゴ、影八番艦連合軍はついに、海都に集結した6個艦隊、7隻の影船、そして近衛艦隊との戦いに突入する。

ホルアフト海戦編

34巻 - 37巻

ファンは、ロナルディアのカノン連合艦隊と戦うために、300隻近い主艦隊を陸送し、敵艦隊の背後を突くという作戦に出た。さらに、その背後へ回った艦隊の1/3を火艦として敵の3艦隊へ突入させ、カノン艦隊を完膚なきまでに壊滅させた。

カノン艦隊の全滅を受け、ロナルディアでは海をフォレスト、陸をガッツォの布陣がようやく整い、帝都決戦に向けての準備が着々と取られていた。

一方ロナルディアにおいて勢力を伸ばしていたクラッサ・ライの目の前には、マリシーユ・ビゼンが現われた。マリシーユはパンニャーの卵の守人で、ライはその守人を守護する役であったが、30年程前にライはそのパンニャーの卵を盗んで出奔していた。マリシーユは、パンニャーの卵が既に孵されていたこと、そしてその中にあったのが、メルダーザであったことを理解する。しかしながら、同時にメルダーザの覚醒の兆しを察したライによりその場を追われてしまう。

こうして、すべての流れが帝都ラオン・ヴラへと集約されていく。

帝都決戦編

38巻 - 43巻

帝都ラオン・ヴラを目前にして、最後の補給地となった入江において、ファンとフォレストの直接対決となった。フォレストは、手持ちの艦船に移動カノンを搭載し、即席のカノン艦隊を編成してファンに挑んだ。曇天、無風という悪条件が重なり、さしものファンもあわやとおもわれたときに、ソルとコル・セイリオス、そしてそれに載せられてきたジーゴ・サナリアが現われ、危機を救った。

体制を立て直したファンは、肝心な部分のみ記載されていない作戦図面を、わざとロナルディア側に奪われたという状況を作り出した。これは、フォレストの旗艦を1隻のみで湾内を遊弋させるための策であった。そこに、少人数による小艇で乗り込んでトゥバンがディアブラスを倒し、ロナルディア海軍を降服させた。この戦いにおいてソルは右腕を失い、海都へ帰還してから海王の座をファンに譲ることを告げた。

陸においては、魔道部隊と対峙したカザル軍は、極めてアルコール度数の高い酒を小瓶で投擲することで誘爆を誘い、これを無力化したと思わせることでロナルディア軍に勝利し、ついに帝都を陥落させた。

アナハラム編

43巻 - 45巻

帝都に辿り着いたファンたちであったが、そこには既にメルダーザの姿はなく、アナハラムや女帝に連れられて、離宮へと移った後であった。メルダーザは既に覚醒しており、ライに呪をかけられて、森守の制御装置に繋がれており、アナハラムとライ以外の声は聞こえなくなっていた。

ファン、マリシーユ、トゥバン、そしてヴェダイの4人が、離宮へと向かった。離宮の入口には森守がいて、4人の侵入を拒んだが、マリシーユの姿が見えなくなり、トゥバンがその動きを食い止めている間にファンとヴェダイが離宮への侵入に成功した。離宮の中にはアナハラム、女帝、ライ、2人のイベルグエン、そして森守の制御装置に繋がれたメルダーザがいた。外ではトゥバンと森守、中ではヴェダイとイベルグエン2人、ファンとライのまさに死闘が繰り広げられていく。

そんな中、マイアとアグナは、八番艦を離れ、2人で離宮へと向かったものの、入口でのトゥバンと森守の死闘を見て、その凄まじさに身動きが取れなくなってしまう。

イベルグエン、ライ、そしてアナハラムをなんとか倒したものの、メルダーザへかけられた呪は、マリシーユにも解くことができなかった。いよいよ森守がトゥバンを倒そうとしたとき、おもわずマイアが飛び出して、メルダーザに許しを乞うた。装置の中で半ば理性を失っていたメルダーザは、マイアを羨み、マイアさえいなくなればと考えてしまい、結果、森守の機銃でマイアを撃ってしまう。メルダーザが自身の行動に驚き森守の動きが一瞬止まった隙をつき、トゥバンはついに森守を倒すことができた。 自分の心の醜さにショックを受けたメルダーザの精神は、自らを深みの中へと沈めてしまおうとする。それを救ったのは、ヴェダイの声であった。メルダーザは、常に自分と一緒にいて、自分のために戦ってくれたヴェダイへの愛に気づき、こちらへ戻ってくることができた。

森守の機銃により瀕死の重傷を追ったマイアには、マリシーユがビゼンの里に代々伝わる古の特別な薬の最後の1本を投与して、自分と同じようにちょっと若くて、かるく不死身な身体にすることでその生命を救った。

こうして、大陸はカザル・シェイ・ロンにより平定され統武と改元し、海の一族はファン・ガンマ・ビゼンを新たな海王として頂き、共に繁栄してくこととなった。

メルダーザは、自身の身の回りで起きたことを、後年書物にまとめた。その題名を海皇紀という。

登場人物

影船八番艦

ファン・ガンマ・ビゼン
影船八番艦の艦長。本来は海王直属であるはずの影船を自由に動かし、幻ともいわれる名剣ニホントウを持つ謎の男。
母親はマリシーユ・ビゼン。父親は物語後半で前海王レグルスであることがマリシーユとソルの会話から語られる。物語の中盤で、成り行き上ジーゴ・サナリアのアグナ・メラ・ジーゴと婚約する。
海都へのガイドはシャチの「ナギア」(他の影船艦長はイルカを従えている。)。
この世界では絶滅したと思われている「ルファ」を常に従えている。
「怠け者・稀代のペテン師」を自称し、基本は怠けて何事もふわふわとはぐらかすが、仲間を思う心は篤く、多くの者が惹きつけられる不思議な魅力を持った男。他人を適正に評価する目があり、アル・レオニスやフォレストの才能を的確に評価しているが、自身に対する評価を見誤りがちな面があり、後にジンを失う遠因となる。
八番艦の操船は基本的にナオが行っているが、その操艦技術は歴代海の一族の中でも比肩する者はいないとされている。風や地形を的確に読むことで相手の艦を座礁・減速させ行動を奪うなどして1対多数の海上戦闘でも味方の被害を最小限に抑えている。
副長のハルバートはジトに対してファンを「アヌアビス・プロシオンが300年に1人の船乗りならばファンは1000年に1人の船乗りであり、比肩できるものなどいない」と評している。
自身の戦闘能力も非常に高く、ニホントウを用いた戦闘ではディアブラスに勝利しており、体術もマリシーユから習った体術(イベルグエンの体術に近いもの)を用いてニホントウが手元にない場合でもクラッサ・ライを本気にさせるだけの実力がある。
各国の情勢・海の状況(潮流等)を見聞きし、海王へと報告する事が本来の影船八番艦の艦長の職責ではあったが、ウォルハンの港でカザル・シェイ・ロンやマイア一行と出会ったことを切っ掛けにグリハラへ向かうこととなる。その帰路でフォレスト一行の襲撃を受けた際にカノンの威力を目の当たりにしたことでロナルディアを危険視する。得た情報を海王レグルスに報告するために海都に帰還したが、海王レグルス事故死に際するフェルカド一派の策略により影零番艦(八番艦)の不正占拠及び使用の罪で逮捕されてしまう。その後帰都したソルの手引きで脱獄、海都から脱出し海都近衛艦隊との艦隊戦を制した後(結果としてソルの預かりとなった)、正式な海王を選定するための儀を改めて行うに際して4人目の候補として名乗りを上げる。影の間での投票の結果としてソルとファンに票が入った為、王海走を執り行うこととなる。結果として負ける形(第3戦のレース結果を監視艦は僅差でファンの勝利であると長老部に報告している。)となりソルが海王となるが、”おみやげ”として『大海帥』の称号を得て(ただし、この時はなんの権利もないただの名ばかり官職)行動を開始する。海都攻防編後は海王ソルより全権を委任され、ロナルディアと戦争に踏み切る。
ロナルディアとの戦いが終わった後、ロナ海海戦の際に引退の意思を表明していたソル・カプラ・セイリオスの跡を継いで、海王となる。また、これと同時にジーゴ・サナリアの長(おさ)も兼任し、双方へ発展をもたらした。
海王就任後に、かねてより婚約していたアグナ・メラ・ジーゴと結婚。長女と長男をもうける。海王の地位に50年就いた後、妻の死とともに海王を引退した。後に長男はジーゴ・サナリアの長となり、長女はソル・カプラ・セイリオスの一子と結婚し、その子がファンの跡を継いで海王となった。
妻アグナを亡くした後、その妻自身からの申し入れもあり、亡くなるまでの20数年を、マイア・スアル・オンタネラと共に過ごし、少なくとも一子をもうけた。その子がアグナの孫の跡を継いで海王となった。
その最期は10日間ほど病臥した後、八番艦で出航、デッキで立ったまま笑みを浮かべての大往生を遂げる。統武七十三年没、享年101。おそらく母マリシーユ・ビゼンの使用した古の特別な薬の影響か、実年齢よりも若く見え、長寿であった。亡くなって後、海皇と諡号される。
トゥバン・サノオ
北方の国エンノロイア出身。かつて何人たりとも敵わなかったテラトーの森守を唯一撃退した(実際は森守に設定されていた防衛範囲外にトゥバンが押し出されたために森守が退いただけであるが、その他の挑戦者はそうなる前に全員が殺害されているため、それだけでも常人を超えた実力者であることが証明されている。)人物として、大陸一と評される伝説の兵法者。しかし、内には森守と戦い、倒すために強い渇望が燻っている。ロナルディアによるオンタナへの王都襲撃の際にマイア・宮廷魔導士とともに逃げ延びるが、その際に魔導士からカガクを求めろとの助言を受けてマイアと行動を共にしていた。
劇中ではその異名に違わぬ強さを見せ、その実力はファンからも本来誇張されやすい伝説の方が大人しいと評されるほど。その強さゆえに名剣ですら剣の方が保たずに度々戦闘中に剣が折れてしまい、彼も自身の力に耐えられる剣が無いことを多少なりとも憂いている。劇中で本気を出したのは3回(土武者・ディアブラス・森守)のみ。
ロナルディアとの戦いの中でディアブラスに勝った際、相手より古(いにしえ)の技術により作られたという剣を贈られる。ロナルディアとの戦いが終結した後は、ディアブラスの部下であったカンタァクを伴い、兵法求道・指南の旅へと出た。10年後に、ディアブラスとの約定でもあった、古の剣をカンタァクに譲った。なお、その最期は明らかになっていない。
マイア・スアル
カガクを求める少女。ロナルディアによって滅ぼされたオンタナの王女で、本名はマイア・スアル・オンタネラ。旅を続けていく中で、少しずつファンに惹かれていく。当初は誰に対しても気丈に振舞っていたが、海都編後は素直に気持ちを表すようになった。森守によって瀕死の重傷を負った際にマリシーユによってビゼンの里に伝わる古の特別な薬を投与されたため、マリシーユと同じく老化のスピードが常人より遅い。
ファンの妻アグナの死の床に呼ばれ、アグナ本人より、その死後ファンと結ばれるよう説得された。アグナの死後ファンと共に暮らし、少なくとも一子をもうけた。
ニッカ・タンブラ
影船八番艦クルーの一人。主計長。ファンの副官でもあり最も信頼する男である。常に冷静な態度を崩さず、影船の経済、渉外、調達など幅広く活動するが、やや毒舌。また捉え所の無いファンの意図の解説役。
海の一族としては致命的なカナヅチという欠点がある。
ロナルディアとの戦いが終わった後も、八番艦主計長という地位を他に譲らず、その他の役を受けることもなかった。しかしながら、海の一族の発展は、彼の働きなくしては成し得なかったと評価されている。スクラ三姉妹の次女エールラと結婚し、一子をもうけた。統武六十六年没、享年93。
ジン・パベル
影船八番艦クルーの一人。航海士。海都一のの名手(ジンの代わりの弓取りとしての実力を見せるために100メード先の標的を的中させることができたエールラをして、ジンならできるが自分にはできないと認めるような難易度の高い標的も射貫ける。)。父親はサナル海将老のオブキン・パベル。八番艦クルーがファンを信頼はしているが尊敬はしていないとしている中、唯一ファンを尊敬している奇特な男とトーマには茶化されている。ドラガン海峡攻略に際しては輸送艦を操船するなど、操船技術もある模様。海都攻防編でマルキュリの凶刃からファンを守り命を落とす。ロナルディア連合艦隊との海戦を行ったホルアフト海峡は後世ファンの要望でジン・パベル海峡と改名された。
ナオ
影船八番艦クルーの一人。操舵手。平時の八番艦を操船している。王海走も1~2戦目・3戦目途中までは操船をしておりファンからの指示(ドラガン海峡攻略に際しても)も的確にこなしている。
ハルバート・セグノ
影船八番艦副長兼航海士。通称ハルじい。八番艦の最年長者であり、ファンが艦長になる以前から八番艦に乗船していた。艦長として十分な経験と技術の持ち主だが、ファン以上の船乗りは見たことないとして副長に留まっている。
トーマ・ソム
影船八番艦クルーの一人。航海士。主に白兵戦を担当。ニッカと違って泳ぎは得意。
後にスクラ三姉妹の末子グリスロウ・スクラと結婚し、2子をもうける。
ギルゴマ・ジフン
影船八番艦クルーの一人。ファン専属の艇長(コクスン)。生まれは海の一族ではなく、ケイムリンの船に乗船中に嵐に合い漂流していたところを救われた。「海都の喧嘩王」の異名を持ち、海都の水門の番人を務めていたが無断で水門を開けようとするファンに敗れ、水門を開けるのに手を貸す。その罪により、一時幽閉されるがファンによりウラニスと共に助け出され、その人柄に惚れてファンのために命を捨てないことを条件にファンから影船クルーになることを認められる。
ファンが海王となって後もその艇長として仕えて統武五十年、海王引退の10日後に、ファンに看取られながら亡くなった。
イゲ
影船八番艦クルーの一人。司厨長。

ウォルハン

カザル・シェイ・ロン
ウォルハンの国王(ロン)。物語開始の2ヶ月前に父王の死去により即位。ファンやトゥバンには「大馬鹿」と評されたが、一方アル・レオニスは「覇王の器」と評した。序章でファンの手助けによってクアラを討つ。その際に船賃として1億ゴルドを支払う約束をしておりこの約束はロナルディア攻略後に100年の分割払いとして契約された。クアラ攻略後は破竹の勢いで東方諸国を併呑していきガルハサンでの決戦の後、アル・レオニスを幕僚として加える。かつて「興武王」と呼ばれたウォル・シェイ・ロンと同じ痣が胸にあり、「興武王の再来」と噂される。また、「民衆より搾り取らない」という噂も一人歩きしており、急激な拡大と共に補給がやせ細ること(占領地で実際に搾り取らないため)も起きている。トゥバンほどではないが、剣術も最前線を無傷で通り抜けたり、ガッツオを斬る寸前に急に飛び出してきた犬を当てないよう振り抜く芸当もできる程に腕が立つ。
大陸を平定した後も、国内に戦いがあるごとに自ら先陣を切って駆け巡った。生涯妻帯することはなく、世継ぎをもうけることもなかった。
その最期は北国モーリティアで、その地で起きた動乱を鎮圧した後、敗残兵が放った矢を、臣下を守るために自ら受けて亡くなった。統武二十六年没、享年53。統武王を諡号される。
アル・レオニス・ウル・グルラ
“放浪の大軍師”チャダの弟子。ガルハサン国王に任官し、見聞を広めるため各地を回っていた。チャダをして「我より10倍の才」と言わしめ、ファンにも「できるなら味方にしておきたい」と言わせるほどの才能の持ち主。諸国見分の旅の途中でアナハラムと出会い、グリハラの地図を渡される。その後カロの港でグリハラへ行くための手段を探している最中に寄港した影船八番艦を発見、オリカを通して艦長の人となりを確認するように依頼する。その後の報告でファンが一筋縄ではいかない相手と理解し直接グリハラへの船を向けるよう談判した。その最中で発生した組合同士の諍いを計略によって諌め、改めてファンに自身の知恵を認めさせた。一度は八番艦に同行する予定ではあったが、カロの港に座礁した船舶からの情報でウォルハンがクアラを攻略したとの報を聞き、任官しているガルハサンへの報告へ帰るかそれを無視してファンたちに同行するか思い悩みサイコロで行き先を決めようとするが、結果を見る前にファンからすでに自分の中に答えが出ている事を指摘され、ガルハサンへ帰任した。(賽の目は同行を示しており、ニッカからはアルが敵になってしまう事を懸念されていた。)その後は幕僚としてウォルハンを迎え撃とうとするが、若さやその才能を妬む人間たちの機微を読むことができず、最後には味方に裏切られたことにより首都ルグーンを落されてしまう。ガルハサンでの決戦の後、カザルの呼びかけに応じウォルハンに降り、軍師としてカザルの右腕となる。イベルグエンからの再三の襲撃に対してカザルが組織した黒竜騎と呼ばれる黒衣の精鋭部隊100人に常に守られている。軍略・政略すべてに長けており、ガルハサンの戦後処理から、空城の関を一見しただけでガッツオの策を洞察するなど、策略家としてはファンに匹敵する。
ロナルディアとの戦いが終結してすぐに、カザルの妹サリウと結婚し、少なくとも3人の子をもうけた。その長子が後にカザルの跡を継いでロンとなる。大戦後は統一憲法を起草、ウォルハン大帝国の礎を築いた事績は後世においても高く評価された。統武四十八年没、享年75。
サリウ・シェイ
カザル・シェイ・ロンの妹。物語の序盤でファンと出会い、以降彼が気になっている様子。その関係上、マイアとは犬猿の仲だったが、アグナ・メラ(ファンの婚約者)の登場で、そちらにより強い敵意を見せる。兄と似て思慮深さに欠け、なおかつ負けず嫌い。
軍師アル・レニオス・ウル・グルラと結婚。
カシベ
カザルの側近の一人で若い武人。常にカザルの命令を受け引き受ける忠臣。カザルが最後に身を呈して庇った部下は彼の息子だったと言う。
ウォル・シェイ・ロン
かつて大陸の東半分を征したという伝説の覇王。別名「興武王」。胸に痣があったと伝えられる。彼の王国は後に分裂し、現在大陸東部の国々の元となった。

グリハラ

ギルス・ヴェダイ
「闇の魔人衆(イベルグエン)」を父(ジによると、『ヴェダイ』の名を持つイベルグエン)に持ち「ルドランの眼」を持つ男。性格は抜け目無いが人間臭い台詞が多い。ファンに敗れ、子分となり八番艦に乗船。八番艦の中ではトゥバン、ファンに次ぐ実力の持ち主。メルダーザがファンを慕っていることを知りながら、彼女に惹かれていた。海都に逗留中はトゥバンの稽古相手になっていた。
ガルハサン編後、下人(げじん)から魔人になるため、メルダーザと共に影船を去り、ロナルディアへ向かう。後にマリシーユによって「根の呪」を解かれ、魔人となる。
後にメルダーザと結婚した。
メルダーザ
アナハラムの娘。ヴェダイとは幼い頃共に過ごした。八番艦にはグリハラで乗船。その後、アナハラムがロナルディアと組んでいることを確かめるため、影船を去り、ヴェダイと共にロナルディアに向かう。その後パンニャーの卵が孵化したものと判明し、覚醒。クラッサ・ライに「呪」をかけられ、森守を操る傀儡と化す。当初よりファンに惹かれていたが、森守の傀儡から目覚める際に、ヴェダイの大切さに気づき、後に結婚する。マイアやマリシーユと同じ処置を施されているらしく、120年程度の寿命を持っている[1]
パンニャーの卵とは、古の知識を後世に残すための人工冬眠装置のようなものだったらしく、その中にいたメルダーザの脳内には、カガグや言語などの知識が埋め込まれていた。森守の傀儡から目覚めた後には、その知識がまだ自分たちには早いと悟り、さらに後世に残すために書物として著した。
導師(カスト、ルグス)
イベルグエンの下人だった双子。町民をキオカの葉(焚くと幻覚作用のある煙が出る)を使って判断力を奪い支配していた。ダンドーの耳と双子による瞬間移動のトリックを暴かれ、倒される。
アナハラム
名目上メルダーザの父。闇の魔人衆イベルグエンを従え、イルアンジャについて知っていたという魔道師。メルダーザを含むファン一行がグリハラを訪れた際には、既に双子の下人を残してグリハラを去っていた。現在はロナルディアに与していると言われている。初期から名前のみが登場する。
その正体はロナルディアの先帝の弟「ムジク・タイ・ダ・ロナル」であった。暗愚な王だった兄を諌め続け、専横を図る家臣に暗殺されかけるが脱出、以後「アナハラム」を名乗り魔道の力を求め続けた。
カガクを神・正義の力と妄信し、レアニ女帝の非道を指摘しながら、己が死ぬ際にはラオン・ヴラを焼き討ちするようメルダーザに呪をかけるなど、決して善良な人物ではない。戦後は幽閉され、統武十二年、自らの正当性を訴え続け最後には「神はいないのか」と言い残して没した。
ガルディアン
イルアンジャの従者。漆黒の衣に身を包んだロボットで、イルアンジャの命令を忠実に遂行する。
イルアンジャ
1000年の昔から伝説として語られる大魔道師。正確には魔道の里の地名であり、その里から出てきた者たちの総称となる。エル・グリハラに一人でいたが、精神が病んでおり、最後は土武者に殺される。

ロナルディア

オンブルワ・ゼ・フォレスト
ロナルディア海軍、最年少の艦長。カノン砲を搭載した最新鋭の巡洋艦を与えられ、影船八番艦を追跡していた。手堅い操艦をする、厳格な武人。ファン達には俊英艦長として警戒されている。が、ファン達に負けた後、10人程度の小船で首都港湾の哨戒任務という閑職に追いやられる。後にロナルディアに新設された第四艦隊の艦隊司令に任命されたが、肌の色の違いやファンによる流言などで上層部には疎まれており、艦隊の中身は一隻と半隻(建造中)のみで、しかも残りは旧式艦を改修して廻す予定など差別的待遇を受け続ける。それでもその地位を最大限利用し、主力艦隊壊滅による海相の全権委任で船の改装や戦力強化に勤しむ。帝都近海決戦に於いてはガッツオより譲り受けたカノンを使い、海の一族に大打撃を与えるもファンの策にかかり敗北した。
カザル・シェイ・ロンによる平定の後、ファン・ガンマ・ビゼンの願いにより、ロナルディア海軍のナルド海司令官となり、海の一族に代わってその海を治めた。
ディアブラス
フォレストの部下の海兵隊隊長。大剣を軽々扱い、ファンを吹き飛ばしトゥバンと鍔迫り合いが出来るほどの剛力の持ち主。またニホントウの斬撃を大幅に質の劣る剣でありながら、技術でカバーしつつ切り結ぶ、卓越した剣士。当初は上の命令(クラッサ・ライ)によりフォレストを護衛する形で乗船していたが、ファンとの一騎討ちに敗れた後、自らの意志でフォレストの部下になっている。
最期はトゥバン・サノオとの直接対決に敗れ、クラッサ・ライより貰った古の剣をトゥバンに託し、散った。劇中では人間としてただ一人、トゥバンに直接剣による傷を与え、彼を本気にさせた人物である。
カンタァク
フォレストの部下の海兵隊副隊長。ディアブラスを強く信頼している。ヴェダイと互角の戦いを繰り広げる。八番艦に同船中に操帆を習い、小船程度なら操れるようになる。また上官の命令を忠実にこなし、ディアブラスから「艦隊旗艦の副長もこなせる」と言わしめる程まで成長した。
大陸平定後は、トゥバン・サノオに付き従うようにして諸国を巡った。後に、ディアブラスとトゥバンの約定によりディアブラスの剣を授かり、名人と呼ばれるまでになった。
ガッツオ・ルード・オルドディア
ロナルディア皇帝の従弟で、名門の出。その事による嫉妬と温厚かつ気弱な性格から周囲には軽んじられていたが、その才覚は確かなもので後にロナルディア陸軍総参謀長となり、魔導兵と陸兵の諸兵科連合によってウォルハンを一度は撃退する(ただし、ウォルハン側の巧妙な誘い出し)も、その後の第二戦にてアル・レオニスによる策とカザルとの一騎討ちに敗れ、降伏した。
カザル・シェイ・ロンによる平定の後、カザルの命によりロナルディアの公王となり、その存命中には国内で一度も乱を起こさせないなど、その手腕を発揮させた。
レアニ・ルヴァダ・ロナル
ロナルディア帝国の女帝。帝都ラオン・ヴラ陥落後、アナハラム、クラッサ・ライらと共に姿を消す。ホルアフト海峡において、ロナルディア帝国海軍の連合艦隊と海の一族の戦いでカノン艦が壊滅したときには、敗北の事実を隠すために、解放された自軍の兵士を、町もろとも灰燼に帰させるなど、激しい性格の持ち主。ロナルディアが正義であるとの揺るぎない信念を最後まで持ち続けた。
ファンとヴェダイが離宮の奥の間に辿り着いた際、復讐の意味もあってアナハラムにレーザービームのようなもので撃たれ、死亡した。

海の一族

ソル・カプラ・セイリオス
先代海王の末子。影船七番艦に乗って帰都し、しきたりに則った海王の選定を求める。年少の時、ファンに一度負けたことがある。アレア・モスをもって、他の2人とは器が違うと言わしめた。王海走に(真偽はともかく、公式には)勝利し、新たな海王となる。ファンの器量・実力・運に少々劣等感を持っており、それが彼の思考・行動に様々な影響を与えている。帝都近海決戦ではファンの策による演技のため、ディアブラスより右腕を斬られる重傷を負うが、生還。ロナルディア戦後はファンに海王の位を譲り、隠居した。「ファンに勝ちたければ味方になる事だ。そうすれば一度は勝てる」と語ったという。統武四十年没、享年69。
スクラ三姉妹の長女ライエを娶り、ロナルディア戦前に長男を授かる。後にこの長男とファンの長女が結婚し、その子がファンの跡を継いで海王となった。
マルキュリ・オ・スクラ
ソルの副官。“氷の懐剣(アイスダガァ)”の異名を持つ。スクラ三姉妹の兄。王海走後、新海都近衛兵長となる。ソルと共にファンを騙し討ちしようとしたが、ジンに命懸けで防がれ、アグナので死亡。
ライエ
ソルの下で働くスクラ三姉妹の長女。八番艦の海都脱出の際、裏で妹達と共に脱出に手を貸した。後にソルの妻になり、彼の子を身篭る。スクラ三姉妹はソルの乳兄弟でもある。
エールラ
スクラ三姉妹の次女。王海走の際にある役回りを引き受ける。弓矢の技量に優れ、ジン亡き後彼の代わりとして影船八番艦の乗組員となる。その件からか、当初ニッカからは八番艦乗員とは認められていなかったが、後にマリシーユ・ビゼンの言もあり、正式な乗組員となる。
ロナルディアとの戦いが終結した後は、ニッカの妻となり一子をもうけた。
グリスロウ(グリス)
スクラ三姉妹の三女。後にトーマ・ソムと結婚。2子をもうける。
イルカノ・ジバステン
海都近衛艦隊司令。海将としての力量は一族でも屈指の男。帝都近海決戦ではソルと共に重傷を負う。
ジト・サントニウス
北インガルナシオ艦隊海将。元海都近衛艦隊司令。堅物とも揶揄されるほど命令に忠実な男だが、その器量も一級。
ナルドロフ・ヴェザ
影船一番艦艦長。
ザンチャオ・ナウト
影船二番艦艦長。
グルミア・アフレイル
影船三番艦艦長。王海走の際、ソルを乗せて走った。
アレア・モス
影船四番艦艦長。影船の艦長たちの中でも最も操艦が上手い一人といわれる。
クラ・ミグナム
影船五番艦艦長。
イバト・ルタ
影船六番艦艦長。海王選定の儀で唯一ファンを支持する。アレア・モスと並ぶ操艦技術を持ち、ライバル視されている。
ギジン・ドラル
影船七番艦艦長。海王選定以前からソルを支持する。
レグルス・マリキ・セイリオス
先代海王。嵐に遭い、旗艦コル・セイリオスと共に沈んだ、とされている。ファンの父親であることが後に判明する。
カノープ・カフ・セイリオス
先代海王の長子。フェルカドによって傀儡の海王として擁立される。善人ではあるものの、凡人。
フェルカド・ルーナ・セイリオス
先代海王の第二子。エギアとともに海の一族を支配すべく策謀を巡らす。王海走後、母親と共に強制的に隠居(=幽閉)させられる。ソルが台頭するまで、アレア・モスなどからはそれなりの器と見られていた。
エギア・アルガマス
海都近衛兵長。フェルカドと組み、海の一族を支配すべく策謀を巡らす。王海走後、マルキュリに殺害される。
ウォルカ・ベアス
新しく任命されたサナル艦隊海将。若い頃から何をやらせても一番、といわれた男。部下を駒としか思わず、少しのミスも許さない。その割には実戦経験が少なく、ファンにも指摘されている。それが仇となり、部下の信望を失い、最期はアグナの銛によって絶命。
ヴィナン・ガルー
ウォルカの前任のサナル艦隊海将。戦上手で知られ、自身も戦好きを公言する。ソルに解任されたが、後に復帰。
オブキン・パベル
影船クルー、ジンの父親。長老部にいたが、フェルカドの陰謀により、辺境サナル海へ飛ばされる。ジンの死後、再び現役に戻り、八番艦にてジンの当直(ワッチ)を担当する。
デプリ・ソム
影船クルー、トーマの父親。オブキン同様長老部にいたが、辺境へ飛ばされる。
ウラニス・セグノ
影船副船長、ハルバードの妻。八番艦の海都脱出の際、リーダー格となって海都に閉じ込められた影船クルーたちを救い出し、その罪で一時幽閉される。その後、ファンが反乱を起こした際もハルバートとファンを信じている。
ウルキ
海都一の刀工。トゥバンのために剣を作った。トゥバンのために「斬れる事より、まず折れぬ事に重きをおいた」ために質が落ちるかもしれないとしたが、トゥバンはそれでも十分という。大陸一の兵法者の剣を打てたことを感謝している。
アヌアビス・プロシオン
初代大海帥。300年ほど前起きた海の一族の存亡を賭けた大海戦の際、海王に代わって一族を率いた。その栄誉を称え、海戦が起きた海域はアヌアビス海と名づけられた。
ノルハナ・スクラ
マルキュリ、スクラ三姉妹の母親。ソルの乳母。ソルが18歳の時に亡くなる。

ジーゴ・サナリア

アグナ・メラ・ジーゴ
海賊「ジーゴ・サナリア」の大長の孫娘。自身も組長になるほどの実力を持つ。なりゆきでファンの許嫁となり、乗船。投げ槍の名手。本作ヒロインとしては巨乳であることを自覚している。男勝りの性格で頭に血が上りやすいが、一族の急場でも冷静な、組長にふさわしい判断力をも併せ持つ。その反面、教養は余りないようで、少し難しい言葉が出てくると理解できずに頓珍漢な反応をする一面がある。
後にファンの妻となり、2子をもうける。その死の床にオンタナからマイアを呼び、自分の死後ファンと結ばれるように諭した。統武五十年没、享年68。
サクゥ
アグナ・メラの部下。ジーゴの男にしてはやや気弱。
クビンラ・ババ・ジーゴ
ジーゴ・サナリアの大長。アグナの祖父。嫁取りの儀を行い、アグナの婿になることを前提に、ファンに力を貸すことを認めた。好々爺然とした人物だが、ファンが離席した際、インダに「ロナルディアとの交渉のためファンの首を獲れ」と述べるなど老獪な面もある。
インダ
若くして五本の指に入る組長と言われる男。嫁取りの儀の際、リーダーとなりファンと戦った。その後、ファンの器を知りジーゴを率いてファンに加勢する。

闇の魔人衆(イベルグエン)

クラッサ・ライ
イベルグエンの長。イルアンジャと同じく、「クラッサ・ライ」とはイベルグエンの長が代々襲名する名前であり、本名はシーヴァ。歴代の魔人の中でも屈指の実力を誇り、森守ですら自分に攻撃を当てらねぬと豪語する程脚に自信をもっている。長であるが故か本来イベルグエンには無い技も知っている。
イベルグエンは、本来ビゼンの里で主筋たるビゼンの家のものを守ることを勤めとしていたが、シーヴァは外界でその力を試す誘惑に駆られ、ビゼンの家が守るパンニャーの卵を盗んで出奔した。その後ロナルディアと結んで勢力を増大させた。
シーヴァとマリシーユ・ビゼンは、若い頃お互いに惹かれあっていたと思われるふしがある。しかし、シーヴァの野望がそれに勝り、結局二人が結ばれることはなかった。
メルダーザを救出するために離宮へ攻めこんできたファンと一騎討ちとなったが、足でニホントウを操るというファンの奇手を読めずに敗れた。その死の直前にはファンに力を貸し、それが故にファンはアナハラムを倒すことができた。
ドウ
ヴェダイの物より重厚な「ルドランの眼」を常に装着している。ファンが驚くほどの素早い動き、イベルグエンの持つ古の業を駆使してファンを苦しめたが、イベルグエンですら知らないファンの体術の前に敗北。
敗北後瀕死の状態になった為、ジにイベルグエンは死体を見せてはならないという理由で回収され、事切れた後ルドランの眼を外された遺体は海中へと遺棄された。
「ダンドーの耳」に似た物を装着しており、蝙蝠の様に音で周囲の状況を把握する。イベルグエンの中でもさらに強い。下人の頃はアルラという名であり、ヴェダイとも面識があった。物静かで寡黙な印象を持つが、内心ではイベルグエンの魔人であることが歪んで傲慢なプライドとして息衝いており、ファンに敗北してからは感情と言葉が表出する事が増え、ヴェダイとの戦いでは味方を犠牲にする攻撃を行うなど極端な行動を取り、を破壊された時は決定的な隙となるほどの動揺を見せた。
ドウの代わりに来た男(氏名不詳)
ドウの死亡後ジによって呼ばれた男。「ルドランの眼」の他に、豆粒程の小さなスピーカーを多数所持し、それを用いてヴェダイに「呪」をかけた。またそれを周囲に撒くことで見えない敵を作り出し、ファンらを撹乱した。前の戦いで右腕を斬られ、治療後ジと共に再戦したが、最後はファンの言葉を信じたトゥバンに切り伏せられる。
ジとともにガッツォを奪いにきた男(氏名不詳)
行軍する魔道部隊をカザルが奇襲したときに、アル・レニオスを拉致しようとした男。後日カザル軍の野営地に侵入し、再びアル・レニオスを拉致しようとするが、それを予測したファンの手配により、トゥバンに倒される。
ドウと同じようなルドランの眼らしきものを装備していたが、ほとんど戦闘らしい戦闘をしないまま倒されたため、具体的な装備や得意技等は不明である。
ジと共に離宮でヴェダイと戦った男(氏名不詳)
ジと共に離宮でファン、ヴェダイを迎え撃った男。初登場は離宮ではなく、アル・レオニスを『救出』したジを回収するためロナルディア艦に搭乗していた。
短剣をファンに斬られるものの、2対1ということもあり体術でヴェダイを圧倒した。
最後はジによりヴェダイの体勢を崩す布石に利用され、後ろから不意に突き飛ばされた為ヴェダイの剣で喉を掻っ切られた。
残りのイベルグエン
テラトーの森に侵入した際、森守に殺された模様。

その他

マリシーユ・ビゼン
ファンの母親。ファンに体術、ニホントウ、気象に関する科学知識などを授ける。海の一族ではないが、先代海王に愛されファンを身篭り、その後当時の零番艦を八番艦として授かった。艦長あるいは船長と呼ばれることを嫌がったため、船員達からは海子守(みこもり、ハルバートがつけた)と呼ばれる。容姿はファンの母親とは思えないほど非常に若々しい。ファン以上にとぼけた性格で、彼を閉口させられるほぼ唯一の人物である。連載開始時から消息は不明のままであったが、34巻で初めて登場した。
その若さの秘密はビゼンの里に伝わる「古の特別な薬」によるもの。この薬には、身体を活性化させ、老化のスピードを落とし、寿命を伸ばす作用がある。息子よりも長生きし、統武八十年。パンニャーの卵を守る守人としての使命に生きた人生に対しての皮肉か、マイアとメルダーザに看取られながら、全く意味のない言葉を発して世を去る。享年125。

作中用語

イベルグエン
「闇の魔人衆」とも呼ばれる集団。驚異的な力、技を持ち、さらに古の道具(=科学の道具)を扱う。主従ではなく、何かの約定によって仕える者たち。その正体はマリシーユの故郷であるビゼンの里で守人を守るものたち。だったが長だったクラッサ・ライが数十年前にパンニャーの卵とイベルグエンを伴って逃亡。以後はロナルディアに仕えている。特殊な言語を持ち、攫ってきた子をその言葉の呪によって縛りながら、下人として育てる。ある程度力が付くと(呪によって束縛を解除することで)下人から魔人へなれるようだ。ファンやトゥバンとの交戦、旧オンタナのテラトーの森侵入などで多くが死に、ファンとヴェダイが再会したときにはクラッサ・ライを入れても生き残りは3人のみになっている。
影船
「海の一族」の守護神とも呼ばれる海王直属の軍艦で、船体はおろか、帆までが黒く塗装されていることからこう呼ばれる。原型である零番艦を除くと7隻あり、それぞれ7つの海の海将を監察する役目を与えられている。しかしファンが乗艦としているのは、番外ともいえる八番艦であった。船体の材質はこの時代に不釣合いなものが使われている様子で、木造の船では木っ端微塵になる大嵐の中でも走行が可能である。ただし武装に関しては一族の他の艦と同様、火器などは搭載していない。一族の中でも最強といえる船であり、「一隻同士の一騎討ちだけでなら無敵」と評する声もある。
影船のオリジナルは零番艦と別名される八番艦であり、その正体は海都や森守同様古代の遺産である。
実際に世界が滅亡したのが何年前かは判明していないが、作中世界の文明が形成される以前のものにもかかわらず船体に目立った損傷や腐蝕はなく、大波に飲み込まれても船体が破損せず、全速力の中型船の衝突にも耐えている。
残りの影船は八番艦を模倣して海の一族が建造したもので、作者によると内部に動力機関があるかもしれないとのこと。ただし船体後部にスクリューなどの装置はない。
  • 一番艦 - 帆装:バーク / 艦長:ナルドロフ・ヴェザ / 担当:北インガルナシオ海
  • 二番艦 - 帆装:バーケンチン / 艦長:ザンチャオ・ナウト / 担当:西インガルナシオ海
  • 三番艦 - 帆装:バーク / 艦長:グルミア・アフレイル / 担当:ウンジロ海
  • 四番艦 - 帆装:バーケンチン / 艦長:アレア・モス / 担当:サナル海
  • 五番艦 - 帆装:バーク / 艦長:クラ・ミグナム / 担当:ハンダン諸島
  • 六番艦 - 帆装:バーケンチン / 艦長:イバト・ルタ / 担当:東アヌアビス海
  • 七番艦 - 帆装:バーケンチン / 艦長:ギジン・ドラル / 担当:西アヌアビス海
  • 八番艦零番艦) - 帆装:トップスル・スクーナー / 艦長:ファン・ガンマ・ビゼン
コル・セイリオス
海の一族の海王が乗艦する艦隊旗艦。大型な上、矢を飛ばす石弓を装備しており、海の一族中では強力な砲戦能力をもつ。帝都近海決戦ではソルが乗船したが、ジーゴを“載せて”荒海を越えさせるためにほとんどの水兵・装備を降ろしており、第二戦にて砲撃を受けて座礁する。
土武者
大陸西方の伝説で、悪魔ラドゥーディが禍をもたらしたとき、神臣ヴェラリが土で造ったという兵士。アナハラムはエル・グリハラの地下で「土武者」と名づけた人型兵器を発掘していた。
ニホントウ
「鉄をも断つ」とも「もはや現存しない」ともいわれる伝説的な武器。ファン曰く、数振りしか残っていない。現代で言う日本刀と同一のものかは不明だが、ファンやトゥバンが使えば伝説に違わぬ切れ味を見せる。
黒竜騎
カザルがファンの助言に従って組織したアル・レオニスの近衛兵。もっとも、アル・レオニスとカザルが近くにいることが多く、むしろ黒竜騎たちは今までどおりカザルを守ろうとしてしまうためにカザルから叱責されることがある。劇中ではカザルの命とはいえ全軍で奇襲を仕掛けた為にイベルグエンをアル・レオニスに無防備に近づけさせてしまう、不意の砲撃でとっさにカザルをかばってしまうなど、失態が多い。
海兵隊
ロナルディア海軍に所属する白兵専門の兵士(海兵)。主任務は敵船との切り込み戦であり、ドルドルーヴォや陸上兵と同じ重装備で身を固めている。
魔道部隊
ロナルディア軍の強力な戦力であり、部隊長は魔道師。ロナルディアが強大化した要因であり、カノン・ドルドルーヴォを所持する。ただし、長遠のカノンと投擲のドルドルーヴォがあることで対弓矢しか考慮していない超重装の鎧・盾兼用の篭手しか装備しておらず、雨などで魔導兵器が使えなくなると極端に脆くなる。ガッツォは歩兵部隊と取り混ぜ、雨天対策を施すことでこの弱点を克服する。
ディアブラスの剣
ファンとの闘いで剣を折られたディアブラスが、クラッサ・ライより貰い受け帝都近海決戦で使用した古の剣。カガクによるものでは無いという。海都の名工が鍛えたトゥバンの剣を逆に折り、後のトゥバンと森守との死闘でも折れないなどニホントウ並の切れ味・強度を持つ。ディアブラスからトゥバンへ、そしてカンタァクへと受け継がれていく。

地名

イルアンジャ
一般的には伝説の魔道士の名前だが、正確には魔道の里の名。そこにはいまだ謎に包まれた「モンジュの扉」が存在する。
ウォルハン
首都:ジンロン。東方の遊牧民族の小国。かつては大陸の東半分を支配した“興武王”ウォル・シェイ・ロンの直系を称し、国王はロンの称号を名乗る。カザルがロンを名乗った当時は、東方諸国の中でも弱小国の部類に入っていたが、カザルの下で急激に領土を拡張していく。
海の一族
交易などによって世界の海の半ばを支配する「国」。「海王」が統治する。
エンノロイア
北方の小国。トゥバンの出身地。
オンタナ
大陸西方にあった王国。精鋭の騎士団を有する国で、ロナルディアと不可侵条約を結んでいたが、突然侵攻され、魔道の兵器の前になすすべもなく滅亡した。領内に森守が守護する「テラトーの森」がある。
海都
「海の一族」の本拠地。インガルナシオ海を回遊する巨大な船であり、海の一族を除いては入ることはできない。また常に海流に乗って一定の航路を彷徨っているため、その正確な位置は海の一族であってもイルカやシャチを用いないと特定できない。
ガルハサン
首都:ルグーン。大陸中原にある豊かな農業国で、国庫には5万の軍勢を5年間保てるほどの兵糧が貯蓄されていた(それでもアル・レオニス曰く「歴代王はあぐらをかいていた」といわれるほど潜在的な生産力がある)。現在では同盟国ロナルディアに貢納同然の安値で兵糧を奪われ、3年分ほどに落ち込んでいる。
カロ
ウォルハンやクアラの南方の島。また、そこにある自治都市。金と茶を産出し、貿易でも栄える。クアラ陥落は、海軍が海賊行為を働いていたために好印象を持っている人が多い。
クアラ
首都:ルイチ。大陸東域最大の国。“金虎将”ジンバハルのもと強力な騎兵、そして急ごしらえながら数隻の海軍+上陸兵を擁していた。カザルによってジンバハルが討たれ、ルガイ関の戦いに敗れたのち滅亡した。このクアラ陥落は、ウォルハン台頭のきっかけとなる。
グリハラ
大陸のはるか東方にある魔道の島。アナハラムが以前住んでいた。東の砂漠の先に禁断の地エル・グリハラがある。
サナリア諸島
西の辺境、サナル海の西に位置する諸島。海賊ジーゴ・サナリアが全域を支配している。
ヌライナ本島
サナル海の東に位置する島。サナル艦隊の補給地であり、海将もいる。
ジオ
サナリア諸島の西に位置する島国。香辛料と宝石の産地で小国ながら栄えている。ジーゴ・サナリアはジオからの貿易船を襲うことで生計を立てているが、実は裏で手を組んでおり、交易品の供給量を調節するためにジーゴ・サナリアに襲わせ、返されたのをまた売るという行為を繰り返している。(ジーゴは宝石に興味がなく、噂では「ジオ産の半分はジーゴから返ってきたもの」)
ブイン
王都:ギ。ガルハサンの東に位置する。ウォルハンが陥落させた東方最後の国。ブインとガルハサンの間にはアルラン山脈が広がる。貿易によって国土に見合わない利益を得ていたが、国王の独占だったためにウォルハン接近と共に首都民衆が蜂起し国王は死亡。ウォルハンに降る。
ロナルディア
大陸西方の大国。魔道の兵器を蘇らせ、領土を拡張している。さらに強力な魔導の示威によって“同盟という名の支配”を広げ、世界に強大な影響力を持っている。保有する艦船は海の一族に多い細身ではなく、キャラック船、ガレオン船などのようにやや膨らんだ船型をしている。

カガク

この世界には“魔道の技”と呼ばれる「カガク」の存在がある。詳細に関しては殆ど伝えられておらず、現実世界における空想の産物である魔法のようなもののように捉えられている。実際には現実世界の科学とほぼ同意語だが、その科学レベルには幅がある。現実世界では14世紀頃にはすでに使われていた大砲のようなものから、現在の技術でも実現不可能な二足歩行の戦闘用ロボットまで、全てをまとめて「カガク」としている。

ルドランの眼(ルドランのめ)
ヴェダイが所有していた、作中最初に登場したカガクの産物。瞬時に光量を調節することで暗闇の中でも物を見ることが出来、さらに望遠機能で遠方を見ることが出来るなど、ナイトビジョン望遠鏡の機能を併せ持つ。
雷の剣(いかずちのけん)
グリハラ王家が所有し、グリハラにいた導師(イベルグエンの下人)が持っていた武器。刀身から雷(=電撃)を発する。ただし電気を発するには下記のエクタルの石(=バテリ)が必要なようである。
エクタルの石(エクタルのいし)
雷の剣を使用可能にするために必要な物。別名「バテリ」。
ダンドーの耳(ダンドーのみみ)
導師が所有していた道具。遠方の音の送受信が可能な無線機の機能を持つ。集音器(ガンマイク)の働きも兼ねている物や、豆粒ほどの大きさのスピーカーのような種類もある。
森守(もりもり)
オンタナにあるテラトーの森の守護者。テラトーの森に何があるのかは不明だが、森守と呼ばれる人型兵器により何人たりともその中をうかがい知ることはできない。頭部より光線らしきものを発する。その威力は、土塁を一瞬で溶解する超高熱で、かわしても皮膚を焦がすほどである。グリハラにはその眷属が存在し、アナハラムはこれを「土武者」と呼称していた。形状その他からロボットアンドロイド)と思われる。テラトーの森にはこれを操作する遠隔操縦機があり、それを使用した場合は上記に加え、近接防御火器をも駆使した高度な戦闘が可能。
ガルディアン
エル・グリハラにいた黒ずくめのイルアンジャの従僕。その正体は森守と同様人型兵器。ただし森守とは性能は異なり、素早い動きと堅い装甲、そして雷の剣を用いて戦う。頭部を破壊されない限り、一時的に機能を停止しても復活する様子。
ドルドルーヴォの火(ドルドルーヴォのひ)
『ドルドルーヴォ』とも呼ばれる。火をつけて炸裂する武器。作中ではエル・グリハラのイルアンジャが用いたのが初出。これを使用したロナルディア軍は、精強と言われたオンタナの騎士団を1日で破り、堅牢無比と謳われた城も2日で落とした。海兵が接舷直後に投擲する使用法も見られる。ロナルディアが一躍強国になったのは、これを主兵装とする魔導部隊の創設が大きい。周辺諸国に対し、遠方への脅威に対する援軍として多少出向させることもあるようである。
カノン
ロナルディアの戦闘艦に搭載されている大砲。艦船の他、史実と同様に攻城や守城などにも使われている。作中の人物からは「のごとき轟音と共に」と表しており、海の一族でも数隻が沈められている。作中では、この技術のみ実世界と同じ呼び方をされており、中世に近い技術レベルを連想させる描写がされている。
海都(かいと)
上記の地名にあるように海の一族の本拠地で、小島ほどの大きさを持ち、海上に浮いている建造物。本来の用途は不明ながら、中央には船橋とも呼ぶべき高層ビルほどの構造物が建ち、その後方の甲板上には貯水施設が設けられている。甲板下には大型帆船を多数収容できる湿ドックを持っている。内部の階段は実世界のエスカレーターとよく似た形で描かれており、カガクの産物であるかのような片鱗を窺わせる。船としての動力をカガクと結びつける描写はなされておらず、大半が樹木で覆われた甲板には、ところどころに大型帆船と同程度の大きさの横帆を持ったマストが描かれている。
“星”
イベルグエンの「“星”の位置が良かったため素早い連絡が取れた」という旨の言い回しがある。イベルグエン達の連絡手段などに使われている。
パンニャーの卵
ビゼンの里に伝えられていた宝物。その正体は一種の「人工冬眠装置」で赤ん坊のメルダーザが「カガクの知識を伝える生きたデータバンク」として眠っていた。
ビゼンの秘薬
ビゼンの里、パンニャーの守人の家に伝わる薬。代謝機能を向上させて若さを保ち、回復力を高める(マリシーユ曰く「軽く不死身」)が不死と言う訳ではなく人間の生理寿命である120歳前後で機能を停止する。直系の子孫の場合二代から三代の間は多少老けにくく長生きするようだ。

書誌情報

  1. 1998年8月17日、ISBN 4-06-333637-9
  2. 1998年11月17日、ISBN 4-06-333655-7
  3. 1999年2月17日、ISBN 4-06-333667-0
  4. 1999年5月17日、ISBN 4-06-333678-6
  5. 1999年8月17日、ISBN 4-06-333690-5
  6. 1999年11月17日、ISBN 4-06-333703-0
  7. 2000年2月17日、ISBN 4-06-333713-8
  8. 2000年5月17日、ISBN 4-06-333724-3
  9. 2000年8月10日、ISBN 4-06-333733-2
  10. 2000年11月16日、ISBN 4-06-333745-6
  11. 2001年1月17日、ISBN 4-06-333755-3
  12. 2001年5月17日、ISBN 4-06-333769-3
  13. 2001年9月17日、ISBN 4-06-333781-2
  14. 2002年3月15日、ISBN 4-06-333811-8
  15. 2002年9月17日、ISBN 4-06-333842-8
  16. 2002年12月17日、ISBN 4-06-333854-1
  17. 2003年4月17日、ISBN 4-06-333874-6
  18. 2003年7月17日、ISBN 4-06-333888-6
  19. 2003年10月17日、ISBN 4-06-333903-3
  20. 2004年3月17日、ISBN 4-06-333926-2
  21. 2004年6月17日、ISBN 4-06-333937-8
  22. 2004年9月17日、ISBN 4-06-370951-5
  23. 2004年12月17日、ISBN 4-06-370963-9
  24. 2005年3月17日、ISBN 4-06-370978-7
  25. 2005年6月17日、ISBN 4-06-370991-4
  1. 2005年9月16日、ISBN 4-06-371008-4
  2. 2006年3月17日、ISBN 4-06-371033-5
  3. 2006年6月16日、ISBN 4-06-371047-5
  4. 2006年9月15日、ISBN 4-06-371058-0
  5. 2006年12月15日、ISBN 4-06-371070-X
  6. 2007年3月16日、ISBN 4-06-371083-1
  7. 2007年6月15日、ISBN 4-06-371092-0
  8. 2007年9月14日、ISBN 4-06-371108-0
  9. 2007年12月17日、ISBN 4-06-371119-6
  10. 2008年3月17日、ISBN 978-4-06-371132-5
  11. 2008年6月17日、ISBN 978-4-06-371148-6
  12. 2008年9月17日、ISBN 978-4-06-371161-5
  13. 2008年12月17日、ISBN 978-4-06-371175-2
  14. 2009年3月17日、ISBN 978-4-06-371187-5
  15. 2009年6月17日、ISBN 978-4-06-371195-0
  16. 2009年9月17日、ISBN 978-4-06-371205-6
  17. 2009年12月17日、ISBN 978-4-06-371223-0
  18. 2010年3月17日、ISBN 978-4-06-371233-9
  19. 2010年6月17日、ISBN 978-4-06-371244-5
  20. 2010年9月17日、ISBN 978-4-06-371254-4

ゲーム

三国志大戦
SEGAアーケードゲーム
2005年稼働の三国志大戦では、川原が担当するカード・イラストは海皇紀の登場人物に酷似している。これは32巻EXTRA EDITION付属の小冊子によると、SEGAからの要望によるもの。また32巻EXTRA EDITIONには、三国志大戦用の限定カードも付属している。
2016年稼働の三国志大戦では、2019年5月より本作のファンをモデルにした劉備(声 - 益山武明)が登場している[2]

関連項目

  • 陸奥圓明流外伝 修羅の刻 - 本作の休載中に連載される。
  • 修羅の門 - 作中のいくつかの技が本作にも登場している(世界設定を共有しているかどうかは明言されていない)。
  • 帆船あこがれ - 影船八番艦のモデルとなったとされる実在のセイルトレーニング帆船。セイルプランや船体のサイズがほぼ一致する。
  • 『王海走』in海の文化資料館 - 沖縄県うるま市海の文化資料館では、毎年夏休みに子どもを対象に「船の模型づくり親子体験教室」を開催し、その時できあがった船の模型で「王海走」をする。そのレースは『海皇紀』大ファンの資料館スタッフたちが著作権もとの作者および講談社より許可を得て、2007年度から開催されている[3]。また、パンフレットなどに作品のイラストなどが使用されている[4]

外部リンク

脚注

  1. ^ その役割の重要性から施された処置はより高機能な物である可能性が言及されている。
  2. ^ ニュース|三国志大戦セガ公式サイト|対戦型カードアクションゲーム”. www.sangokushi-taisen.com. 2020年1月29日閲覧。
  3. ^ おきなわ海ログ~うるま市立海の文化資料館物語~
  4. ^ 海の文化資料館ホームページ,期間限定ページ!!