「品種改良」の版間の差分
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人間が人為的に育成し、利用する動物や植物は多様であり、動物では家畜、植物では穀物や野菜など、多くのものがあるが、たいていは野生のものとは大きく形を異にしている。これは、一般に[[家畜化]]といわれる変化である部分もあるが、人間がその育成の過程で、無自覚に品種改良を行なってきたからでもある。家畜にしても栽培植物にしても、その歴史は数千年にわたるといわれるが、おそらくはその間に、より人間に有利な特徴のあるものを選び、それを優先して育てることがあったと思われる。[[コムギ|小麦]]等については、数種の[[原種]]の間に生じた雑種であることが確かめられているから、恐らくその間に偶然に生じた雑種を、特に選んで育てた経過があったはずである。 |
人間が人為的に育成し、利用する動物や植物は多様であり、動物では家畜、植物では穀物や野菜など、多くのものがあるが、たいていは野生のものとは大きく形を異にしている。これは、一般に[[家畜化]]といわれる変化である部分もあるが、人間がその育成の過程で、無自覚に品種改良を行なってきたからでもある。家畜にしても栽培植物にしても、その歴史は数千年にわたるといわれるが、おそらくはその間に、より人間に有利な特徴のあるものを選び、それを優先して育てることがあったと思われる。[[コムギ|小麦]]等については、数種の[[原種]]の間に生じた雑種であることが確かめられているから、恐らくその間に偶然に生じた雑種を、特に選んで育てた経過があったはずである。 |
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より近年になると、このような過程は意識されるようになり、目的を持って品種改良が行なわれるようになった。そのための基礎知識として[[遺伝]]の法則 |
より近年になると、このような過程は意識されるようになり、目的を持って品種改良が行なわれるようになった。そのための基礎知識として[[遺伝]]の法則が追究され、[[メンデルの法則]]の発見などにも、このような要求がその背景にあった。 |
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基本的な方法は、有利な形質をもつ個体を選択し、それを繁殖させる。時に出現する突然変異は、有力な対象であり得る。また、有利な形質をもつ個体や種間での交配もよく行なわれる。これらの方法は、前史に置いては無自覚、かつ偶然に行なわれたが、次第に意識して行なわれるようになったものと思われる。 |
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有利な形質を持つものの子を選んで育成するのは、品種改良の基本であり、人為選択とも言われる過程である。結果として、より優れた遺伝子を持つ子を得ることになる。これを繰り返してゆけば、その段階で存在する個体の中の最も優れた性質を合わせ持つ個体が得られる。ただし、それ以上優れた個体が得られるわけではない(純系の法則)。 |
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現存の範囲を超えて優れた性質は[[突然変異]]によって出現するかも知れず、それまでの世代になかった形質の子が表れた場合、これが期待できる。突然変異はめったに起きないことになっているが、飼育下では自然条件に比べて[[生存競争]]が激しくない(あるいはないように操作できる)ので、変わり者を拾い出すことはたやすく、また、それが別の面では性質の弱いものであっても保護することが可能である。もっとも、このことは飼育生物が野外のそれよりひ弱になることをも意味する。現在では、突然変異をも意識的に誘発することが行なわれている。 |
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種間[[交雑]]は野外では滅多に成立しないが人工的にこれを行えば成功することもあり、ここから新しいものが生まれることも多い。[[コムギ]]なども何度かの種間交雑が過去にあったことが推定されているが、これらはかなり古い時代と言<!--思-->われ、偶然の産物であろう。現代では、たとえば[[洋ラン]]では広くこれが行われ、さらに属間雑種も作られている。いわゆる[[カトレア]]には近縁四属の属間雑種が多数含まれている。品種間でも交雑により新品種の作出が試みられる。 |
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余談だが、これらの品種改良工程は、自然界で発生していると言われている[[進化]]の現在の解釈と同等の変化であり、進化を人為的に行なっているとも言える。人為的に突然変異個体や優良個体を選択し繁殖させていくことで、自然界の進化では考えられないスピードで変化していくが、自然界の進化で起こるとされる種の分化には至らない。これは、根本的な生殖遺伝子の変異は、人為的品種改良では時間が短いためそう簡単に変化せず、またある個体の生殖遺伝子に変化が生じた場合であっても、その他の個体との生殖等によって子孫では特徴が薄れたり消失してしまったり、もしくは生殖そのものが行なえず子孫を残せないためである(変異は長期的には進化の一環だが、個体では[[奇形]]や[[先天性]]の[[障害]]とみなされることが多い)。自然界の進化では数万年単位の長期間をかけて変異個体同士の特徴固定化や生息地域の分断等による[[自然選択]]によって分化しているとされている。進化の詳細については[[進化]]の項を参照。 |
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2019年10月28日 (月) 02:58時点における版
品種改良(ひんしゅかいりょう)とは、栽培植物や家畜などにおいて、より人間に有用な品種を作り出すこと。具体的な手法としては、人為的な選択、交雑、突然変異を発生させる手法などを用いる。
公的な農業試験場や畜産試験場などで進められているほか、穀物メジャーなどに代表される民間企業もビジネスとして参入している。
前史
人間が人為的に育成し、利用する動物や植物は多様であり、動物では家畜、植物では穀物や野菜など、多くのものがあるが、たいていは野生のものとは大きく形を異にしている。これは、一般に家畜化といわれる変化である部分もあるが、人間がその育成の過程で、無自覚に品種改良を行なってきたからでもある。家畜にしても栽培植物にしても、その歴史は数千年にわたるといわれるが、おそらくはその間に、より人間に有利な特徴のあるものを選び、それを優先して育てることがあったと思われる。小麦等については、数種の原種の間に生じた雑種であることが確かめられているから、恐らくその間に偶然に生じた雑種を、特に選んで育てた経過があったはずである。
より近年になると、このような過程は意識されるようになり、目的を持って品種改良が行なわれるようになった。そのための基礎知識として遺伝の法則が追究され、メンデルの法則の発見などにも、このような要求がその背景にあった。
方法
基本的な方法は、有利な形質をもつ個体を選択し、それを繁殖させる。時に出現する突然変異は、有力な対象であり得る。また、有利な形質をもつ個体や種間での交配もよく行なわれる。これらの方法は、前史に置いては無自覚、かつ偶然に行なわれたが、次第に意識して行なわれるようになったものと思われる。
有利な形質を持つものの子を選んで育成するのは、品種改良の基本であり、人為選択とも言われる過程である。結果として、より優れた遺伝子を持つ子を得ることになる。これを繰り返してゆけば、その段階で存在する個体の中の最も優れた性質を合わせ持つ個体が得られる。ただし、それ以上優れた個体が得られるわけではない(純系の法則)。
現存の範囲を超えて優れた性質は突然変異によって出現するかも知れず、それまでの世代になかった形質の子が表れた場合、これが期待できる。突然変異はめったに起きないことになっているが、飼育下では自然条件に比べて生存競争が激しくない(あるいはないように操作できる)ので、変わり者を拾い出すことはたやすく、また、それが別の面では性質の弱いものであっても保護することが可能である。もっとも、このことは飼育生物が野外のそれよりひ弱になることをも意味する。現在では、突然変異をも意識的に誘発することが行なわれている。
種間交雑は野外では滅多に成立しないが人工的にこれを行えば成功することもあり、ここから新しいものが生まれることも多い。コムギなども何度かの種間交雑が過去にあったことが推定されているが、これらはかなり古い時代と言われ、偶然の産物であろう。現代では、たとえば洋ランでは広くこれが行われ、さらに属間雑種も作られている。いわゆるカトレアには近縁四属の属間雑種が多数含まれている。品種間でも交雑により新品種の作出が試みられる。
余談だが、これらの品種改良工程は、自然界で発生していると言われている進化の現在の解釈と同等の変化であり、進化を人為的に行なっているとも言える。人為的に突然変異個体や優良個体を選択し繁殖させていくことで、自然界の進化では考えられないスピードで変化していくが、自然界の進化で起こるとされる種の分化には至らない。これは、根本的な生殖遺伝子の変異は、人為的品種改良では時間が短いためそう簡単に変化せず、またある個体の生殖遺伝子に変化が生じた場合であっても、その他の個体との生殖等によって子孫では特徴が薄れたり消失してしまったり、もしくは生殖そのものが行なえず子孫を残せないためである(変異は長期的には進化の一環だが、個体では奇形や先天性の障害とみなされることが多い)。自然界の進化では数万年単位の長期間をかけて変異個体同士の特徴固定化や生息地域の分断等による自然選択によって分化しているとされている。進化の詳細については進化の項を参照。
植物
食料の場合、収穫量や耐病性・食味などの性質を向上させる目的で品種改良が行われる。イネ、ムギ、トウモロコシ等の穀物や、イモ類などで盛んに品種改良が進められている。
その他、望まれる特性としては、耐寒性、耐暑性(温暖化対策)、耐虫性、減肥や多肥(窒素過多)での栽培、密植可能、矮性等が挙げられる。
動物
家畜の場合、競走能力の向上、肉質などの性質を向上させる目的で品種改良が行われる。競走馬、肉牛などで盛んに品種改良が進められている。例えばサラブレッドの場合、原種の一つであるアラブ種と比較し、走力が大幅に強化されている。アラブ限定のドバイカハイラクラシック(ダート2000m)の走破タイムは2分15秒ほどであるが、同日同条件で行われるサラブレッド限定のドバイワールドカップは2分前後と速くなっている。さらに、ごく短い距離ならば時速80kmを出すことも馬によっては可能だという(他に体高で約15cm、体重で約25%増加するなど体型にも変化が見られる)。これらの品種改良は初期にはイギリスで、後には世界各地で合計300年以上をかけ行われ、現在も競馬を通じて品種改良が続けられている。
ペットの場合、外見や性格などの性質を向上させる目的で品種改良が行われる。イヌ、ネコなどで盛んに品種改良が進められている。
生物的防除を目的とした生物農薬に用いる昆虫類なども品種改良の対象となることがある。
生物学への影響
チャールズ・ダーウィンはハトの品種改良の過程から自然選択を発想した。