「失踪者」の版間の差分
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2019年1月4日 (金) 03:19時点における版
失踪者(しっそうしゃ)とは、どこにいるのか分からなくなってしまった人、足取りのつかめない人のことである。「踪」の字が常用漢字に含まれない関係から、新聞・雑誌等では「踪」の字を使わず「失跡者」や「失そう者」と書かれることが多い。
概説
「失踪者」は自らの意志によってどこにいるのか分からなくした場合も、自らの意思とは無関係に行方が分からなくなってしまった場合も含む。 犯罪や事故に巻き込まれて居所を知らせることができない状態(失踪事件)も、犯罪に関与して居所を知らせられない(知らせたくない)場合なども含まれる。
類似の表現との比較
行方不明
ほぼ、同義語である。「行方不明」という表現は「どこに行ったのか分からない」意味である。事故・事件に巻き込まれていると特定されている場合は、自分の意志が入っていないというニュアンスが(「失踪」に比べれば)比較的強い「行方不明」という表現が多く使われる傾向がある。すでに命が失われていることが予想される場合でも「行方不明」ならば違和感が無い。また未成年に「行方不明」、成年に「失踪者」という使い分けもある[要出典]。[1]
家出人
「家出人」という表現には「自己意志による」という判断・断定が含まれる。それを避けるために「失踪者」が用いられる。ただし、日本の警察などでは、事件性が薄いと警察関係者が判断した場合に「家出人」という表現が用いられることが多い[2](児童などを除く。児童の場合は迷子などの場合がある)。また一人暮しなどが増え「家」という観念が薄れつつあるのも「失踪者」という言葉が使われる場合が多くなっている要因である。
日本における失踪者
失踪者の捜索願い(失踪届け出)受理件数はピークであった2002年の10万2880人から2008年の84,739人までは減少傾向であった。2008年以後は8万~8万5千人の間で増減を繰り返し、その間に2010年は80,655人と1966年以後で最少であった。2017年では8万4,850人となっている。これは届け出のあった数字のみであり、実際の数はこれを上回っているものと思われる。最近では失踪しても携帯電話などで連絡がとれる場合には届け出をしない場合もあるという。
一方、2017年における失踪者の所在確認(死亡も含む)数は捜索願いのあったもので8万1,946人、このうち受理されてから1年以内の所在確認数は7万4,384人である。[3]過去に失踪届け出のあった人も含んだ数であり、2017年に届け出のあった失踪者の発見数ではない。更に特異行方不明者数は、5万5,939人であった。[4]また、1989年から2017年までの捜索願いを受理した失踪者の合計は254万5,232人で、同期間の所在確認数は捜索願いのあったものだけでは230万9,635人であった。[3]更に、捜索願いがなかったものも含めた場合、1989年から捜索願いがなかったものを含めた統計があった2008年までであるが、170万3,490人(あったもののみは、158万9,179人)である。[5][6]よって、単純計算はできないが届け出のあった人のうち、年平均で8,000人ほどが未発見のままと考えられる。 また、2013年~2017年の5年平均では、約1,900人である。[7]
失踪者を探すと自称する探偵などのビジネスも、失踪者の増加とともに拡大している。テレビにおいては失踪者を取り上げる番組がしばしば放送され、これにより後日発見されることもある[8]。
警察庁が発表した『行方不明者の状況』[3]によれば、失踪者の数は次のようになる。
男女別 | 成人・少年別 | |||||
---|---|---|---|---|---|---|
年度 | 総数 | 男性 | 女性 | 成人 | 少年 | 所在確認数 |
1966(昭和41)年 | 91,593 | 46,144 | 45,449 | 46,783 | 44,810 | 63,667 |
1970(昭和45)年 | 100,753 | 49,195 | 51,558 | 55,761 | 44,992 | 74,218 |
1980(昭和55)年 | 101,318 | 48,398 | 52,920 | 55,206 | 46,112 | 88,821 |
1990(平成2)年 | 90,508 | 47,047 | 43,461 | 53,111 | 37,397 | 80,666 |
2000(平成12)年 | 97,268 | 58,946 | 38,322 | 71,854 | 25,414 | 83,730 |
2010(平成22)年 | 80,655 | 51,706 | 28,949 | 61,123 | 19,532 | 78,467 |
2015(平成27)年 | 83,948 | 53,319 | 28,716 | 64,064 | 17,971 | 80,232 |
2018(平成30)年 | 84,850 | 54,574 | 30,276 | 67,240 | 17,610 | 81,946 |
年齢別 | 9歳以下 | 10歳代 | 20歳代 | 30歳代 | 40歳代 | 50歳代 | 60歳代 | 70歳代 | 80歳以上 | 合計 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
届出数 | 1,198 | 16,412 | 17,052 | 10,615 | 8,502 | 5,507 | 5,663 | 9,425 | 10,476 | 83,948 |
比率 | 1.4% | 19.3% | 20.1% | 12.5% | 10.0% | 6.5% | 6.7% | 11.1% | 12.3% | 100% |
この統計によれば、認知症で行方不明の届出がなされた件数は2017年で1万5,863人であり、統計を取り始めた2012年以降増加しており、2012年の9,607人と比べて約1.65倍に増えた。2017年中に所在確認できなかったのは227人だった。2017年中に2016年以前の届け出分(6件)を合わせて1万5,166人が所在確認され、その内警察の捜索活動で発見されたのは1万129人であり、帰宅したり、家族らが見つけたりしたのは5,037人だった。また所在確認の内、470人は死亡していた。認知症不明者が発見されるまでの日数をみると、届け出の受理当日が半数以上の72.7%。自宅周辺などを徘徊(はいかい)し、遠くまで離れていなかったケースが多いとみられる。7日以内では、大半の99.3%だった。届け出があった行方不明の認知症の人の年代は、80歳以上8,220人、70代6,193人、60代1,336人などで、70代以上が9割を占めた。都道府県別では大阪の1,801人が最多で、埼玉1,734人、兵庫1,396人、愛知1,341人、東京1,284人の順だった。[9] [10][11]
また、厚生労働省が調査した居所の把握できない児童数は平成26年5月1日時点で全国で約2,908人である。そのうち、同年5月2日から9月1日までに、5月時点で居所を把握できない全国の児童の約92.3%にあたる2,684 人(92.3%)の所在が確認できており、9月1日時点で居住実態が把握できない児童数は全国で224人となった。なお、224人について、自治体に個別に聞き取り等を行った結果、同年10月20日時点で、さらに83人の居住実態が確認できており、同日時点で居住実態が把握できない児童は141人となった。[12] これらの児童のことを「所在不明の子[13]」、「所在不明児[14]」と呼ぶ。2018年6月1日時点で28人である。その内、平成28年度調査(平成29年6月1日時点)から引き続き居住実態が把握できない児童は、6人である。[15]
脚注
- ^ 蒸発も使われる。
- ^ 「家出人」と判断し分類すると警察の業務としては簡単になる、ということになる。この判断のありかたを巡って議論が起きることがある。
- ^ a b c 平成29年における行方不明者の状況について(平成30年6月)警察庁生活安全局生活安全企画課 平成30年12月4日閲覧
- ^ 平成30年警察白書 統計2-3 行方不明者届の受理件数の推移(平成25~29年)警察庁 平成30年12月4日閲覧
- ^ 平成20年中における家出の概要資料(平成21年6月)警察庁生活安全局生活安全企画課 平成30年12月4日閲覧
- ^ 上記データと同様で、同期間の失踪届け出のあった失踪者の発見数ではない。/参考資料:1989年から2007年までの行方不明者数の累計(平成19年中における家出の概要資料 補表1の資料を基に作成)より
- ^ 参考資料:1989年から2017年までの行方不明者数と所在確認者すうについて(「平成29年における行方不明者の状況について」にある年次別行方不明者届受理状況の資料を基に作成)より
- ^ しかし、霊能力者を出演させている『奇跡の扉 TVのチカラ』などは、家族を探したいという周囲の人間の気持ちを視聴率獲得の為に利用しているだけではないか[要出典]、と批判されることもある。[誰によって?]
- ^ 平成29年における行方不明者の状況について(図表)警察庁生活安全局生活安全企画課 平成30年12月4日閲覧
- ^ 認知症の行方不明者、5年連続増 昨年1万5863人(2018年6月14日) 朝日新聞 平成30年12月4日閲覧
- ^ 2017年の認知症不明者、過去最多の1万5千人超 警察庁まとめ (2018年6月14日) 日本経済新聞 平成30年12月4日閲覧
- ^ 「居住実態が把握できない児童」に関する調査結果等の報告について厚生労働省、2018年12月4日閲覧
- ^ コトバンク
- ^ コトバンク
- ^ 平成29年度「居住実態が把握できない児童」に関する調査結果【全体版】厚生労働省、2018年12月4日閲覧