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'''くさや'''は、[[魚類]]の[[干物]]の一つで、[[伊豆諸島]]の[[特産品]]として知られている。[[クサヤモロ]]などの新鮮な魚を「[[#くさや液|くさや液]]」と呼ばれる[[魚醤]]に似た独特の匂いや風味をもつ[[発酵]]液に浸潤させた後これを天日干しにした食品である。 |
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新島における方言で魚全般を指して「ヨ」と言われており「臭い」+「魚」=「クサヨ」が転じて「クサヤ」になったと言われている。 |
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また、新島ではくさやを製造している水産加工業者を指して「イサバヤ」と呼んでいる。 |
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2017年11月12日 (日) 03:28時点における版
くさや | |
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焼いたトビウオのくさや |
くさやは、魚類の干物の一つで、伊豆諸島の特産品として知られている。クサヤモロなどの新鮮な魚を「くさや液」と呼ばれる魚醤に似た独特の匂いや風味をもつ発酵液に浸潤させた後これを天日干しにした食品である。
新島における方言で魚全般を指して「ヨ」と言われており「臭い」+「魚」=「クサヨ」が転じて「クサヤ」になったと言われている。
また、新島ではくさやを製造している水産加工業者を指して「イサバヤ」と呼んでいる。
特徴
くさやは、新鮮なムロアジ類(クサヤモロなど)、トビウオ類、シイラなどの魚を使用した干物であり、伊豆諸島での生産が非常に盛んである。
味は塩辛いながらもまろやかさがあり、味わいから感じるほど塩分は高くはない。くさや液の塩分濃度は4%の例もあり[1]、濃くても13%程度である。独特の匂いによって好き嫌いが分かれるが、日本人が好きな発酵した魚の香りやうま味から、ご飯のおかず以外に、「島焼酎」と呼ばれる伊豆諸島産の焼酎や、コシの強い(乳酸の多い)日本酒によく合うとされる。
近年は体によい食品として注目され、関東地方を中心に出荷されている。
製法
開いた新鮮な魚を、「くさや液」(くさや汁)と呼ばれる浸け汁に8~20時間ほど浸け込み、くさや液をよくなじませてから真水で洗浄し、天日に1~2日ほど干す。
一般の干物製造と同様に、近年は天日によらず、乾燥機などを使用した強制乾燥も行われている。 出荷に際しては、独特の臭気があるため、大抵は臭いが漏れないような配慮がなされ、真空パックや瓶詰めなどとして出荷される。
なお、類似した外国の食べ物では、塩水やマール、ワインやブランデーなどの液体を定期的に吹き付けて熟成する「ウォッシュチーズ」と作り方が非常に似ており、独特な臭気もくさやに近い。
くさや液
魚の干物を浸すための塩水を繰り返し使用してきた発酵液は、くさや液の他、しょっちょる(塩汁)[1]とも呼ばれ、茶褐色の粘り気のある液体で魚醤に近い風味をもつ。塩分は高くなく、pH8など、弱アルカリ性で、含まれる窒素の大部分は揮発性塩基で占められており、溶出したタンパク質はほぼ完全に分解されていることがわかる[1]。
くさや液には乳酸菌の一種であるコリネバクテリウム・クサヤ(クサヤ菌)があり[2]、酢酸、酪酸、プロピオン酸などの有機酸とエステル類が特徴的な香りを醸し出す。
古いものほど旨味が出るとされ、中には200年も300年も続くものもある[3]。そのため、製造業者はこの液を家宝として、また味の出し方や塩の加減によって味が変わるので、くさや液の製法は各店の秘伝として、代々受け継がれている。くさやの匂いや味は島ごとはもちろんだが店ごとにも差がある。「元祖」だけあって、一般的には新島産の物がもっとも匂いが強いと言われている。また、伊豆諸島の一般家庭でも、代々くさや汁を受け継ぎ、家庭でくさやを作っている家もあり、昔は嫁入り道具の一つとなっていた。
また、ビタミン、アミノ酸などが非常に豊富に含まれていて、抗菌作用もある。そのため、体に良いとされており、かつて医療体制の整備が遅れていた伊豆諸島では、ケガをしたり体調を崩すたびに、薬代わりとしてくさや液を患部に塗布したり、飲ませたりしていたという。
なお、くさや液は、ヒスタミン生成菌が少なく、ヒスタミン分解菌が含まれており、食中毒の原因となるヒスタミンが蓄積しにくいとされる[4]。
調理法
一般的には焼いて食べるが、生でも美味しく食べることができる。
産地
産地は東京都の伊豆諸島各島で、特に新島、八丈島、伊豆大島、三宅島などが盛んであるが、現在は、小笠原諸島の父島でも生産している。
新島村にはくさやの加工団地があり、その所在地は「東京都新島村本村くさやの里」である。
三宅島におけるくさや製造は2000年の三宅島噴火による全島避難により壊滅したが、一部の製造者は近年の帰島後、新島の製造者よりくさや液を提供され、くさや製造を再開している。
歴史
くさやは長い歴史をもつ食品であり、江戸時代には献上品とされていた記録が残っている。
当初は単純な塩水に浸けた魚を干したものであったらしい。塩水を使いまわしながら干物を作っていたところ、それに魚の成分などが蓄積し、さらに微生物などが作用することで現在のくさや液のもととなるものができたとされる。
正確な発祥地は不明だが、伊豆諸島では新島を元祖とする説が有力であり、八丈島のくさや製造業者団体である八丈島水産加工業協同組合は「八丈島のくさや製造は新島からくさや液を分けてもらって始められた」としている。
くさやという言葉は江戸時代の江戸の魚河岸の間で「くさいからクサヤ」という名前がついたという説があるものの、いつの頃から呼ばれるようになったかは不詳である。
背景
伊豆諸島では急峻な斜面が多く、稲作や畑にする土地が少なかった。その代わり、伊豆諸島には塩という特産物があったので、江戸幕府は米の代用として塩を年貢として献上することを命じた(塩年貢)。米の年貢が村人全体総出で納めないとならないのと同じように、伊豆諸島の塩も島中の島民総出で作らないとならないほどの量を納めていた。当然ながら塩はとても貴重なもので、勝手に塩を盗んだり独占しようとしたらその一家は取り潰しにされるという厳しい掟があった。
くさやの原型
伊豆諸島では製塩のほかには魚などを獲っていた。釣った魚を江戸まで運ぶには塩漬けにして干物にするのがよいが、貴重な塩を大量に使うわけにはいかない。そこで島民たちは試行錯誤の上、塩水に浸しておいて干す方法を思いついた。浸すたびに塩水を取り替えたいが、塩は貴重なので、やむなく減った分だけ塩を足しながら塩水を使いまわした[1]。できた干物は一見傷んでいるように見えたが、食べたところおいしかったので、これが広まった、という説がある。
匂い
全体として銀杏のような不快臭が感じられる。1977年にくさやの身を水蒸気蒸留してガスクロマトグラムで分析した例[5]では、臭気成分の内、多量に検出されたものは、酸性成分ではn-酪酸(死臭や銀杏の臭気に含まれる不快臭を持つ)で、次いでプロピオン酸(短鎖脂肪酸の一種)であった。塩基性成分ではトリメチルアミン(魚臭、アンモニア臭を持つ)とアンモニアであった。窒素ガスでカルボニル成分を分離して分析した成分ではプロピオンアルデヒド(甘酸っぱさの中に焦げたような臭気)が強大であった。
臭い食べ物の代表例
臭い食べ物の代表例(食べ物の臭さの「順位付け」ではない)[6]
現在、技術上の問題で一時的にグラフが表示されなくなっています。 |
Au: アラバスター単位、におい成分の成分量の単位である。においの強弱は、におい成分毎にヒトの感覚閾値との相乗値で評価され、純粋な「においの単位」ではない。
くさやに関する作品
- シネマ歌舞伎第12作『大江戸りびんぐでっど』は、死者にくさや液を塗ると"存鼻(ぞんび)"として生き返り江戸の町が大騒ぎになる、という想定で演じられた。
脚注
- ^ a b c d 清水亘 ほか、「くさやの研究 I くさや汁の成分およびくさや汁のくさやの品質に及ぼす影響」『日本水産學會誌』、pp1143-1146、1967年、東京、日本水産学会 [1]
- ^ マルハ広報室編 『お魚の常識非常識「なるほどふ~ん」雑学』 p48、2000年、講談社プラスアルファ文庫
- ^ マルハ広報室編 『お魚の常識非常識「なるほどふ~ん」雑学』p47、2000年、 講談社プラスアルファ文庫
- ^ くさや汁中のヒスタミン量と細菌フローラ 佐藤常雄、溝井理子、木村凡、藤井建夫 1995年
- ^ 笠原賀代子、西堀幸吉、「くさや臭気成分」『日本水産學會誌』、pp385-387、1977年、東京、日本水産学会 [2]
- ^ 昭文社-なるほど知図帳2009「世界」51ページ。上記データを監修した東京農業大学教授小泉武夫の使用済み靴下は 120 Au であった。
関連項目
関連書籍
- 「くさいはうまい」 小泉武夫(著) 毎日新聞社(刊) 2003年7月 ISBN 9784620316352
- 「発酵は力なり」 小泉武夫(著) 日本放送出版協会(刊) 2004年5月 ISBN 4140841834