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2009年2月28日 (土) 16:08時点における版

Phenom (フェノム)とは、米国時間2007年11月19日に AMD が発表した、AMD K10 マイクロアーキテクチャに基づいたデスクトップ用 CPU 製品のブランドの一つ。名前の由来は「驚異的な・目を見張る」といった意味の「Phenomenal」から来ている。2009年1月より Phenom II を発売した。

登場までの経緯

Intel の Core 2 Quad によるクアッドコア ブームの折、AMD にも早急にクアッドコア CPU の発売が求められていた。Kentsfield がデュアルコアの 2ダイによる「なんちゃってクアッドコア」(インテル日本法人担当談)[1]であるのに対し、Phenom は 4つのコアを 1ダイに収めた「真のクアッドコア」「ネイティブクアッドコア」である点を強調。「Are you "ネイティブ"?」のキャッチコピーで、対抗感を滲ませていた[2]

当初はクアッドコア製品が「Phenom X4」、デュアルコア製品が「Phenom X2」と名付けられていた。しかし、出荷直前の2007年9月に急遽トリプルコア製品をラインナップに加えると発表し、クアッドコア製品は「Phenom 9000」、トリプルコア製品は「Phenom 8000」、デュアルコア製品は開発中止となり、代わりに「Athlon X2 7x50」 (Kuma) が発表された。

この世界初の x86 トリプルコア採用 CPU はPhenom 9000 シリーズのコアを 1個無効化したものとされ、歩留まりが向上すると共に価格や消費電力が低下する点をセールスポイントとした。

発売後の現状

後発だけあって Core 2 Quad の対抗馬として大きく注目され、発売後は各種メディアでベンチマーク比較が数多く行われたが、その結果 Core 2 Quad を超えるものではないとする評価が多勢を占めた。要因としては、完全なマルチスレッド処理となっているアプリケーションやゲームがまだ僅かしかなく、Phenom が得意とする処理は従来プログラマーにとって避けるべき処理とされていたことや[3]、絶対的なクロック数の低さ、消費電力の高さなどが挙げられている。これにより、新製品にもかかわらず高値を付けることができず、TLB のエラッタ(後述)が発覚してからは更に値が下がる窮状となった。なお、このエラッタが解消された2008年3月からは、再び Phenom 9000 が Phenom X4 9000 に、Phenom 8000 が Phenom X3 8000 に改称された。

TLBのエラッタ問題

K10 マイクロアーキテクチャでの最初のリビジョンである B2 では、全 CPU モデルで L2 キャッシュの不具合が原因で、L3 キャッシュ内容が特定の条件で破壊されるという、エラッタの存在が公表されている。L2 / L3 キャッシュと Translation Lookaside Buffer (TLB) に関わる問題であり、最悪の場合、OS がフリーズしたりデータが破損したりする可能性があるが、通常使用によるエラッタによっての問題の発生確率は低い[4]

このエラッタを回避するには、BIOS や OS によってモデル固有レジスタ (MSR; Model Specific Register) の設定で TLB のキャッシュを無効化するしかないが、TLB のキャッシュを無効化した場合はアプリケーション レベルで性能が 5% から 10% 低下する[4]。このエラッタは同じ K10 マイクロアーキテクチャを採用する Opteron でも発生し、Barcelona の一時販売停止から大量出荷の延期に繋がると共に、高価格で販売できる新製品の出足を挫いた。

Phenom の発売後まもなく TLB のキャッシュを無効化するための MSR の変更を行うコードを含んだ BIOS や OS での対策が始まり、2008年3月からはエラッタを解消した B3 ステップが順次発売されている。通常、ステッピングの更新でモデルナンバーが変更されることはないが、B3 ステップの Phenom はモデル ナンバーが 50 増加しており異例の差別化が図られた。

ラインナップ

Phenom X4

Agena (65nm SOI)

Phenom X3

Toliman (65nm SOI)

Athlon X2

Kuma (65nm SOI)

一覧

モデル 動作周波数
(GHz)
L2キャッシュ
(KiB)
L3キャッシュ
(MB)
ステッピング TDP
(W)
HyperTransport
(MHz)
発売時期
Phenom X4 9000 シリーズ (Agena)
Phenom X4 9950 Black Edition 2.60 4 x 512 2 B3 140/125 2000 2008年7月
Phenom X4 9850 Black Edition 2.50 4 x 512 2 B3 125 2000 2008年3月
Phenom X4 9750 2.40 4 x 512 2 B3 125/95 1800 2008年3月
Phenom X4 9650 2.30 4 x 512 2 B3 95 1800 2008年Q2
Phenom 9600 2.30 4 x 512 2 B2 95 1800 2007年11月
Phenom 9600 Black Edition 2.30 4 x 512 2 B2 95 1800 2007年12月
Phenom X4 9550 2.20 4 x 512 2 B3 95 1800 2008年4月
Phenom 9500 2.20 4 x 512 2 B2 95 1800 2007年11月
Phenom X4 9350e 2.00 4 x 512 2 B3 65 1800 2008年7月
Phenom X4 9150e 1.80 4 x 512 2 B3 65 1600 2008年7月
Phenom X4 9100e 1.80 4 x 512 2 B2 65 1600 2008年4月
Phenom X3 8000 シリーズ (Toliman)
Phenom X3 8850 Black Edition 2.50 3 x 512 2 B3 95 1800 2008年Q4
Phenom X3 8750 2.40 3 x 512 2 B3 95 1800 2008年4月
Phenom X3 8700 2.40 3 x 512 2 B2 95 1800 2008年3月
Phenom X3 8650 2.30 3 x 512 2 B3 95 1800 2008年4月
Phenom X3 8600 2.30 3 x 512 2 B2 95 1800 2008年3月
Phenom X3 8450 2.10 3 x 512 2 B3 95 1800 2008年4月
Phenom X3 8450e 2.10 3 x 512 2 B3 65 1800 2008年9月
Phenom X3 8400 2.10 3 x 512 2 B2 95 1800 2008年Q2
Phenom X3 8250e 1.90 3 x 512 2 B3 65 1800 2008年9月
Athlon X2 7000 シリーズ (Kuma)
Athlon X2 7750 Black Edition 2.70 2 x 512 2 B3 95 1800 2008年12月
Athlon X2 7550 2.50 2 x 512 2 B3 95 1800 2008年12月

脚注

  1. ^ “神様”切り返し、AMDクアッドコアは「張子のクアッドだ」”. Impress Watch. 2008年10月23日閲覧。
  2. ^ Phenomロゴが秋葉原をジャック「Are you“ネイティブ”?」”. Impress Watch. 2008年10月23日閲覧。
  3. ^ Phenom徹底分析(前):ネイティブクアッドコアに意味はないのか?”. 4Gamer.net. 2008年12月22日閲覧。
  4. ^ a b 西村 岳史. “Vista SP1でCPUの速度低下についてAMDがコメント:ニュース”. PC Online. 2008年10月23日閲覧。

外部リンク