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{{ミサイル |
{{ミサイル |
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|名称=ミストラル |
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|画像=[[File:MBDA Mistral - IDET 2017.JPG|300px]] |
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|説明= |
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|種類=[[地対空ミサイル#近距離防空ミサイル|近距離防空ミサイル]]<br/>[[艦対空ミサイル#近接防空ミサイル|近接防空ミサイル]]<br/>[[空対空ミサイル#WVR|近距離空対空ミサイル]] |
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|製造国={{FRA}} |
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|設計= |
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|製造= |
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|ミサイル直径=90mm |
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|ミサイル全長=1.86m |
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|ミサイル全幅= |
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|ミサイル重量=18.7kg |
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|弾頭=3kg |
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|射程=6km |
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|推進方式=[[固体燃料ロケット]] |
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|誘導方式=[[光波ホーミング誘導#IRH-GEN3|赤外線ホーミング(IRH)]] |
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|飛翔速度=[[マッハ数|マッハ]]2.5 |
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'''ミストラル''' |
'''ミストラル'''({{Lang-fr|Missile transportable antiaérien léger, '''MISTRAL'''}})は、[[フランス]]の[[マトラ]]社(現在の[[MBDA]]社)製の[[ミサイル#対空ミサイル|対空ミサイル]]。軽量小型で短射程の[[ファイア・アンド・フォーゲット|打ち放し]]式[[ミサイル]]であり、即応性に優れたミサイルである。 |
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マトラ社は、積極的にファミリー展開しており、 |
マトラ社は、積極的にファミリー展開しており、[[携帯式防空ミサイルシステム|可搬型のシステム]](MANPADS)を基本として、車載型の[[地対空ミサイル#近距離防空ミサイル|近距離防空ミサイル]]、艦載型の[[艦対空ミサイル#近接防空ミサイル|近接防空ミサイル]]、[[ヘリコプター]]搭載の[[空対空ミサイル#WVR|近距離空対空ミサイル]]まで幾つかの型式が作られている。 |
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== 開発に至る経緯 == |
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1977年、[[フランス統合参謀総長|フランス統合参謀本部]]と[[装備総局]](DGA)は、3軍共通の近距離防空システムの要求事項を作成するための技術グループを発足させた{{Sfn|Cullen|Foss|1992|pp=31-34}}。当初は銃砲も俎上に載せられていたが、1979年までに、第3世代の対空ミサイルの開発に絞り込まれ、SATCP({{Lang|fr|sol-air très courte portée}}: 近距離地対空誘導弾)計画として知られるようになっており、DGAのミサイル担当部局({{Lang|fr|Direction des Engins}})によって開発計画が作成された{{Sfn|Cullen|Foss|1992|pp=31-34}}。 |
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地対空型の本ミサイルは、歩兵が運搬して肩撃ちまたは三脚架に設置するものと、車輌・船舶・飛行機等で運搬するものに大別される。 |
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1980年3月、5つの事業体からの提案の審査が開始され、まもなく、マトラ社と[[アエロスパシアル]]社、[[テクニカラー (企業)|トムソン・ブラント]]社の3社に絞り込まれた{{Sfn|Cullen|Foss|1992|pp=31-34}}。9月にはマトラ社が開発・製造契約を獲得したことが発表され、12月1日、同社を主契約者、誘導部を担当する[[:fr:Société Anonyme de Télécommunications|SAT]]社、ロケットモーターを担当する[[ソシエテ・ユーロピーネ・デ・プロパルジオン|SEP]]社とその推進薬を担当する[[:fr:Société nationale des poudres et des explosifs|SNPE]]社、熱電池を担当するSAFT社と弾頭部などを担当する[[:en:Manurhin|マニューリン]]社を副契約者として、MANPADS型の開発契約が締結された{{Sfn|Cullen|Foss|1992|pp=31-34}}。 |
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車上あるいは地上に設置して使用する連装発射機「Atlas」と、同じく連装であるが[[装甲車]]に追加する回転砲座に固定された「Albi」では、一般的な歩兵が2人1組で使用する肩撃ち方式では望めない対空レーダーの援用が期待できる。25kmまでカバーする対空[[レーダー]]を持つ統制車両であるMCPにより、ミストラル自体は、短射程の打ち放し式ミサイルであるにもかかわらず、効率的な目標選択を可能としている。 |
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1983年より試射が開始され、1988年3月までに予定通り37回の発射を完了したが、この頃までにこのミサイルは「ミストラル」と称されるようになっていた{{Sfn|Cullen|Foss|1992|pp=31-34}}。試射のうち1回は、接近してくる{{仮リンク|CT.20 (航空機)|en|Nord Aviation CT20|label=CT.20}}[[ターゲット・ドローン]]に対して5キロの距離で直撃を記録している{{Sfn|Friedman|1997|pp=398-399}}。1988年後半より、[[フランス陸軍|陸軍]]・[[フランス空軍|空軍]]に対して量産型システムの引き渡しが開始された{{Sfn|Cullen|Foss|1992|pp=31-34}}。なおこれらのシステムで使われるミサイル本体としては、初期型のミストラル1の生産は15,000発で終了し、2000年からは改良型のミストラル2へと移行している{{Sfn|Hooton|2001|loc=SURFACE-TO-AIR MISSILES, FRANCE}}。 |
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[[タレス・グループ|タレス社]]により、[[スティンガーミサイル|スティンガー]]兼用4連装発射機ASPICと統制システムMygaleが開発されている。ASPICは、[[フランス陸軍]]にも採用されている。また、Mygaleの一種をサマンサ(SAMANTHA)として、こちらも採用している。 |
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== 設計 == |
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=== ミサイル === |
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艦載型も作られ、本ミサイルの艦載用発射機は、連装・手動式がシンバッド(SIMBAD、{{lang|fr|Système Intégré de Mistral Bimunition pour l'Auto-défense}})、4連装・遠隔式がテトラル(TETRAL)、6連装・遠隔式がサドラル(SADRAL、{{lang|fr|Système d'Auto-défense Rapprochée Anti-aérienne Léger}})と名付けられ、25/30mm機関砲を含む3連装発射機はシグマ(SIGMA)と呼ばれる。 |
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ミストラルの誘導装置は[[R.550 (ミサイル)|マジック2]]のものの派生型であり、冷却措置を導入した[[光波ホーミング誘導#IRH-GEN2|2波長センサを用いた赤外線誘導方式]]を採用している{{Sfn|Cullen|Foss|1992|pp=31-34}}{{Sfn|Friedman|1997|pp=398-399}}{{Efn2|{{Harvnb|Cullen|Foss|1992|pp=31-34}}では波長3-5[[マイクロメートル]]の中波長[[赤外線]](MWIR)と[[紫外線]](UV)、{{Harvnb|Friedman|1997|pp=398-399}}では波長2-4および3-5マイクロメートルの赤外線(S/MWIR)としている。}}。[[電子光学センサー]]は複数素子の構成で{{Sfn|Cullen|Foss|1992|pp=31-34}}、[[フレア (兵器)|フレア]]などの影響を低減するために[[視野]](FOV)は狭められているものの、軸線から38度まで傾けることができる{{Sfn|Friedman|1997|pp=398-399}}。マジック2のものよりも[[感度 (電子工学)|感度]]が向上しており、[[アフターバーナー]]を使用していない[[ジェット機]]なら6,000メートル、赤外線排出抑制装置を装着した小型[[ヘリコプター]]であっても4,000メートル以上の距離から捕捉可能とされている{{Sfn|Cullen|Foss|1992|pp=31-34}}。また[[機関 (機械)|エンジン]]からの[[排気ガス|排気]](プルーム)を検知することで、目標の前方象限からの交戦も可能となっている{{Sfn|Cullen|Foss|1992|pp=31-34}}。光学センサーは透明な[[フッ化マグネシウム]]製のピラミッド型カバーで覆われている{{Sfn|Cullen|Foss|1992|pp=31-34}}。 |
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[[スラスター|推進装置]]としてはダブルベース推進薬を用いた2段式の[[固体燃料ロケット]]を用いており、まず[[ブースター|ブースタ]]によってミサイルを40メートル毎秒まで加速して発射筒から射出、15メートル飛翔したところで[[サスティナー|サステナ]]が点火し、2.5秒間の燃焼によって、[[マッハ数|マッハ]]2.6の速力を発揮できる{{Sfn|Cullen|Foss|1992|pp=31-34}}。マトラ社は「肩撃ち式として初めてマッハ2.5以上を発揮できるミサイル」と標榜した{{Sfn|Friedman|1997|pp=398-399}}。最長飛翔時間は12秒である{{Sfn|Cullen|Foss|1992|pp=31-34}}。操舵は前翼によって行われ、終末航程では7-8Gでの機動も可能とされている{{Sfn|Cullen|Foss|1992|pp=31-34}}。 |
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== 空対空型 == |
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ヘリコプターの自衛用として、[[小翼|スタブウイング]]等に取り付けられた連装発射機から発射される空中発射型の短距離空対空ミサイル(Air to Air Mistral、'''AAM'''、{{lang|fr|Air-Air Tres Courte Portee}})も製造・配備されている。 |
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重量2.95キロの破片効果[[弾頭]]を搭載しており、1キロの炸薬と[[タングステン]]製の弾子を備えている{{Sfn|Cullen|Foss|1992|pp=31-34}}。[[信管]]としては直撃のほかレーザー近接信管を備えている{{Sfn|Cullen|Foss|1992|pp=31-34}}{{Sfn|Friedman|1997|pp=398-399}}。 |
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== 写真 == |
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{{commons|Mistral missile}} |
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{{Multiple image |
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|align=left |
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|width=240 |
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|image1=Mistral_Aspic_p1040748.jpg |
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|caption1=車載型。写真は[[プジョー P4]]に搭載された4連装式のASPIC発射機 |
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|image2=Simbad_missile.jpg |
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|caption2=艦載型。写真は連装・手動式のSIMBAD発射機 |
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|image3=Eurocopter-1.jpg |
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|caption3=空対空型。 |
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}} |
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{{-}} |
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なおミストラル2では、操舵翼・後翼の設計を改訂するとともに赤外線誘導装置やブースタも更新されている{{Sfn|Hooton|2001|loc=SURFACE-TO-AIR MISSILES, FRANCE}}。そしてミストラル3では[[光波ホーミング誘導#IRH-GEN3|赤外線画像誘導]]方式が導入された<ref>{{Citation|title=MBDA’s Mistral 3 missile scores a double success|date=2019/11/15|newspaper=EDR On-Line}}</ref>。 |
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=== 発射装置 === |
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==== 地対空型 ==== |
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基本となる可搬式の発射装置は、ミサイルの発射筒と[[三脚]]式のスタンド、発射前用電子機器、昼間用照準器および[[電池]]・[[冷媒]]供給ユニットから構成される{{Sfn|Cullen|Foss|1992|pp=31-34}}。移動時には、各種機器を装着したペデスタルマウントからキャニスターに封入されたミサイルを取り外すことで、それぞれ重量20キロ以下に抑えることができ、人力で担送することができる{{Sfn|Cullen|Foss|1992|pp=31-34}}。60秒以内にシステムを組み上げて射撃準備姿勢に移行することができる{{Sfn|Cullen|Foss|1992|pp=31-34}}。ただし、電池・冷媒供給ユニットを発射筒に組み付けたのち、一度これらの供給を開始してシーカーを活性化すると、45秒の作動時間ののちにはこれらを交換する必要がある{{Sfn|Cullen|Foss|1992|pp=31-34}}。 |
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フランス陸軍のSATCP射撃小隊({{Lang|fr|sections de tir SATCP}})には、6基の発射機とともに、指揮・統制と索敵手段を提供するためのサマンサ警戒システムが配備された{{Sfn|Cullen|Foss|1992|pp=31-34}}。サマンサ警戒システムは、ストラテジーム情報処理装置、PR4G戦術無線通信機、そしてTRS-2630Pグリフォン対空捜索レーダーによって構成されている{{Sfn|Cullen|Foss|1992|pp=31-34}}。 |
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サマンサの原型となったミゲル防空システムは4基までのASPIC自走発射機を統制することも可能で{{Sfn|Cullen|Foss|1992|pp=102-103}}、このASPIC自走発射機はフランス空軍に採用された<ref name=ARQUUS>{{Cite web|date=2020/10/15|title=Livraison de la Dernière P4 VIPAIR À L’Armée de l’air et de L’Espace|url=https://www.arquus-defense.com/fr/newsroom/actualites/livraison-de-la-derniere-p4-vipair-larmee-de-lair-et-de-lespace|publisher=ARQUUS|accessdate=2023/09/18}}</ref>。一方、陸軍は自走発射機としてはPAMELA({{Lang|fr|Plate forme d’Adaptation MISTRAL Équipée Légère et Aérotransportable}})を採用したほか<ref>{{Cite web|title=LIVRAISON DE LA DERNIÈRE P4 VIPAIR À L’ARMÉE DE L’AIR ET DE L’ESPACE|url=https://artillerie.asso.fr/basart/article.php3?id_article=200|publisher=Base documentaire Artillerie|accessdate=2023/09/18}}</ref>、後に空軍のASPICの一部を譲り受け、空挺部隊・海外派遣用のVIPAIR({{Lang|fr|Véhicule d’Intervention et de Projection Air}})として配備した<ref name=ARQUUS/>。 |
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<gallery widths="180" heights="140"> |
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Mistral-2.jpg|可搬式の発射装置 |
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Mistral_Aspic_p1040748.jpg|[[プジョー・P4]]をベースとする4連装式のASPIC発射機 |
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</gallery> |
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==== 艦対空型 ==== |
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地対空型から少し遅れて艦対空型の開発も進められており、1986年からはSADRAL{{Sfn|Hooton|2001|loc=SURFACE-TO-AIR MISSILES, FRANCE}}、また1989年からはSIMBAD発射機の洋上試験が開始された{{Sfn|Friedman|1997|pp=398-399}}。1992年には、フランス海軍の全ての水上戦闘艦にミストラルを搭載する方針が発表された{{Sfn|Friedman|1997|pp=398-399}}。 |
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SADRAL({{Lang|fr|Système d'Auto-Défense Raprochée Anti-aérienne Léger}})は遠隔操作型の6連装発射機で{{Sfn|Friedman|1997|pp=398-399}}、小型艦艇の主たる[[対空兵器]]や大型艦の近接防空用として配備される{{Sfn|Hooton|2001|loc=SURFACE-TO-AIR MISSILES, FRANCE}}。マウントは2軸安定化されており、甲板上に配置される部分の重量は1,080 kgで、甲板下のコンソール(280 kg)からサーボ・コントロール・ユニット(410 kg)で制御される{{Sfn|Hooton|2001|loc=SURFACE-TO-AIR MISSILES, FRANCE}}。マウントは目標捕捉用のテレビカメラを備え、フランス海軍では後に[[FLIR]]に換装した{{Sfn|Hooton|2001|loc=SURFACE-TO-AIR MISSILES, FRANCE}}。発射前の給電は発射機側から行うほか、冷媒の供給用として[[アルゴン]]のボトルもミサイルに接続する{{Sfn|Hooton|2001|loc=SURFACE-TO-AIR MISSILES, FRANCE}}。 |
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SIMBAD({{Lang|fr|Système Integré de Mistral Bitube d'Auto-Défense}})は20mm機関砲のペデスタルマウントを改設計した手動操作型の連装発射機で、20mm機関砲の代替にあたる簡易的な対空兵器として配備される{{Sfn|Friedman|1997|pp=398-399}}{{Sfn|Hooton|2001|loc=SURFACE-TO-AIR MISSILES, FRANCE}}。装填状態での重量は250 kgで、電力や冷媒の供給は、可搬式の装置と同様に取外し可能なユニットによって行う{{Sfn|Hooton|2001|loc=SURFACE-TO-AIR MISSILES, FRANCE}}。なお、派生型として遠隔式のSIMBAD-RCや、RCを4連装化したSIMBAD-RC 4も存在する<ref>{{Cite web |url=https://www.janes.com/osint-insights/defence-news/sea/euronaval-2024-mbda-unveils-four-round-variant-of-simbad-rc |title=Euronaval 2024: MBDA unveils four-round variant of SIMBAD-RC |access-date=2024-11-06 |website=janes.com |date=2024-11-04 |author=Kate Tringham}}</ref>。 |
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このほか、4連装・遠隔式のテトラル(TETRAL)や、25/30mm機関砲を含む3連装発射機であるシグマ(SIGMA)もラインナップされた{{Sfn|多田|2022|p=24}}。 |
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<gallery widths="180" heights="150"> |
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Sadral mounting on the Dupleix (D 641).jpg|SADRAL発射機 |
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Simbad_missile.jpg|SIMBAD発射機 |
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</gallery> |
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==== 空対空型 ==== |
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[[File:Eurocopter-1.jpg|thumb|空対空型]] |
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[[ヘリコプター]]用の[[空対空ミサイル]]として、AATCP({{Lang|fr|Air-air très courte portée}}: 近距離空対空誘導弾)も開発された{{Sfn|Cullen|Foss|1992|pp=31-34}}。これは[[ハードポイント|パイロン]]を介して重量70キロの連装発射機を搭載するとともに、[[アビオニクス]]にも追加回路を組み込み、安定化した照準器または[[ヘッドマウントディスプレイ|ヘルメットマウントサイト]]を用いて照準するものであった{{Sfn|Cullen|Foss|1992|pp=31-34}}。フランス陸軍は[[SA 341 (航空機)|ガゼル]]・ヘリコプターへの搭載用として1992年からまず30セットを購入する予定だったが、[[1991年]]の[[湾岸戦争]]を受けて購入は前倒しされ、[[サウジアラビア]]に展開した[[:en:Rapid Action Force (France)|緊急展開部隊(FAR)]]に先行配備された{{Sfn|Cullen|Foss|1992|pp=31-34}}。 |
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== 採用国 == |
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*{{AUT}} |
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**[[オーストリア空軍]] - 2023年時点で、地対空型を保有している{{Sfn|IISS|2023|p=74}}。 |
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*{{CYP}} |
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**[[キプロス国家守備隊]] - 2023年時点で、地対空型を保有している{{Sfn|IISS|2023|p=81}}。 |
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*{{FRA}} |
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**[[フランス陸軍]] - 2023年時点で、地対空型を保有している{{Sfn|IISS|2023|p=91}}。 |
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*{{QAT}} |
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**[[カタール海軍]] - 2023年時点で、艦対空型([[バルザン級ミサイル艇]])を保有している{{Sfn|IISS|2023|p=350}}。 |
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**[[カタール空軍]] - 2023年時点で、地対空型を保有している{{Sfn|IISS|2023|p=350}}。 |
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* {{SGP}} |
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**[[シンガポール軍|シンガポール海軍]] - 2023年時点で、艦対空型([[エンデュアランス級揚陸艦]])を保有している{{Sfn|IISS|2023|pp=287-288}}。 |
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**[[シンガポール軍|シンガポール空軍]] - 2023年時点で、地対空型を保有している{{Sfn|IISS|2023|pp=287-288}}。 |
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== 脚注 == |
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{{脚注ヘルプ}} |
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=== 注釈 === |
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{{Notelist2}} |
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=== 出典 === |
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== 参考文献 == |
== 参考文献 == |
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* {{Citation|和書|title=現代の艦載兵器|last=多田|first=智彦|journal=[[世界の艦船]]|publisher=[[海人社]]|issue=986|year=2022|month=12|ID={{CRID|1520012777807199616}}}} |
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* 海人社『[[世界の艦船]] 別冊 艦載兵器ハンドブック』1996年6月 |
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* {{Citation|first=Tony|last=Cullen|first2=C.F.|last2=Foss|year=1992|title=Jane's Land-Based Air Defence 1992-93|publisher=[[:en:Jane's Information Group|Jane's Information Group]]|edition=5th|isbn=978-0710609793|ref=harv}} |
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* {{Citation|authorlink=:en:Norman Friedman|first=Norman|last=Friedman|year=1997|title= The Naval Institute Guide to World Naval Weapon Systems 1997-1998|publisher=[[:en:United States Naval Institute|Naval Institute Press]]|isbn=978-1557502681}} |
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* {{Citation|first=E.R.|last=Hooton|year=2001|title=Jane's Naval Weapon Systems|edition = Issue 35|publisher=Jane's Information Group Ltd|ncid=AA11235770}} |
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* {{Citation|title=The Military Balance 2023 |date=2023-02-15 |publisher=[[ラウトレッジ|Routledge]]|authorlink=国際戦略研究所|author=The International Institute for Strategic Studies (IISS) |isbn=978-1-032-50895-5 |ref={{SfnRef|IISS|2023}}}} |
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== 外部リンク == |
== 外部リンク == |
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{{commons|Mistral missile}} |
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*[http://www.mbda.net MBDA] |
*[http://www.mbda.net MBDA] |
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**[http://www.mbda.net/site/FO/scripts/siteFO_contenu.php?lang=EN&noeu_id=90 MISTRAL] |
**[http://www.mbda.net/site/FO/scripts/siteFO_contenu.php?lang=EN&noeu_id=90 MISTRAL] |
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[[Category:フランスの艦対空ミサイル]] |
[[Category:フランスの艦対空ミサイル]] |
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[[Category:フランスの空対空ミサイル]] |
[[Category:フランスの空対空ミサイル]] |
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[[Category:携帯式防空ミサイルシステム]] |
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[[Category:自走地対空ミサイル]] |
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[[cs:Mistral]] |
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[[Category:MBDAのミサイル]] |
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[[de:Mistral (Rakete)]] |
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[[en:Mistral (missile)]] |
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[[es:MBDA Mistral]] |
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[[et:Mistral (raketisüsteem)]] |
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[[fi:Matra Mistral]] |
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[[fr:Mistral (missile)]] |
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[[gl:Mistral (mísil)]] |
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[[hr:MISTRAL (projektil)]] |
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[[hu:Mistral]] |
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[[id:Mistral (peluru kendali)]] |
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[[it:MBDA Mistral]] |
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[[ko:미스트랄 미사일]] |
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[[nl:Mistral (Luchtdoelraket)]] |
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[[no:Mistral (missil)]] |
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[[pl:Mistral (pocisk)]] |
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[[ru:Mistral (ПЗРК)]] |
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[[sv:Mistral (robot)]] |
2024年12月10日 (火) 06:21時点における最新版
種類 |
近距離防空ミサイル 近接防空ミサイル 近距離空対空ミサイル |
---|---|
製造国 | フランス |
性能諸元 | |
ミサイル直径 | 90mm |
ミサイル全長 | 1.86m |
ミサイル重量 | 18.7kg |
弾頭 | 3kg |
射程 | 6km |
推進方式 | 固体燃料ロケット |
誘導方式 | 赤外線ホーミング(IRH) |
飛翔速度 | マッハ2.5 |
ミストラル(フランス語: Missile transportable antiaérien léger, MISTRAL)は、フランスのマトラ社(現在のMBDA社)製の対空ミサイル。軽量小型で短射程の打ち放し式ミサイルであり、即応性に優れたミサイルである。
マトラ社は、積極的にファミリー展開しており、可搬型のシステム(MANPADS)を基本として、車載型の近距離防空ミサイル、艦載型の近接防空ミサイル、ヘリコプター搭載の近距離空対空ミサイルまで幾つかの型式が作られている。
開発に至る経緯
[編集]1977年、フランス統合参謀本部と装備総局(DGA)は、3軍共通の近距離防空システムの要求事項を作成するための技術グループを発足させた[1]。当初は銃砲も俎上に載せられていたが、1979年までに、第3世代の対空ミサイルの開発に絞り込まれ、SATCP(sol-air très courte portée: 近距離地対空誘導弾)計画として知られるようになっており、DGAのミサイル担当部局(Direction des Engins)によって開発計画が作成された[1]。
1980年3月、5つの事業体からの提案の審査が開始され、まもなく、マトラ社とアエロスパシアル社、トムソン・ブラント社の3社に絞り込まれた[1]。9月にはマトラ社が開発・製造契約を獲得したことが発表され、12月1日、同社を主契約者、誘導部を担当するSAT社、ロケットモーターを担当するSEP社とその推進薬を担当するSNPE社、熱電池を担当するSAFT社と弾頭部などを担当するマニューリン社を副契約者として、MANPADS型の開発契約が締結された[1]。
1983年より試射が開始され、1988年3月までに予定通り37回の発射を完了したが、この頃までにこのミサイルは「ミストラル」と称されるようになっていた[1]。試射のうち1回は、接近してくるCT.20ターゲット・ドローンに対して5キロの距離で直撃を記録している[2]。1988年後半より、陸軍・空軍に対して量産型システムの引き渡しが開始された[1]。なおこれらのシステムで使われるミサイル本体としては、初期型のミストラル1の生産は15,000発で終了し、2000年からは改良型のミストラル2へと移行している[3]。
設計
[編集]ミサイル
[編集]ミストラルの誘導装置はマジック2のものの派生型であり、冷却措置を導入した2波長センサを用いた赤外線誘導方式を採用している[1][2][注 1]。電子光学センサーは複数素子の構成で[1]、フレアなどの影響を低減するために視野(FOV)は狭められているものの、軸線から38度まで傾けることができる[2]。マジック2のものよりも感度が向上しており、アフターバーナーを使用していないジェット機なら6,000メートル、赤外線排出抑制装置を装着した小型ヘリコプターであっても4,000メートル以上の距離から捕捉可能とされている[1]。またエンジンからの排気(プルーム)を検知することで、目標の前方象限からの交戦も可能となっている[1]。光学センサーは透明なフッ化マグネシウム製のピラミッド型カバーで覆われている[1]。
推進装置としてはダブルベース推進薬を用いた2段式の固体燃料ロケットを用いており、まずブースタによってミサイルを40メートル毎秒まで加速して発射筒から射出、15メートル飛翔したところでサステナが点火し、2.5秒間の燃焼によって、マッハ2.6の速力を発揮できる[1]。マトラ社は「肩撃ち式として初めてマッハ2.5以上を発揮できるミサイル」と標榜した[2]。最長飛翔時間は12秒である[1]。操舵は前翼によって行われ、終末航程では7-8Gでの機動も可能とされている[1]。
重量2.95キロの破片効果弾頭を搭載しており、1キロの炸薬とタングステン製の弾子を備えている[1]。信管としては直撃のほかレーザー近接信管を備えている[1][2]。
なおミストラル2では、操舵翼・後翼の設計を改訂するとともに赤外線誘導装置やブースタも更新されている[3]。そしてミストラル3では赤外線画像誘導方式が導入された[4]。
発射装置
[編集]地対空型
[編集]基本となる可搬式の発射装置は、ミサイルの発射筒と三脚式のスタンド、発射前用電子機器、昼間用照準器および電池・冷媒供給ユニットから構成される[1]。移動時には、各種機器を装着したペデスタルマウントからキャニスターに封入されたミサイルを取り外すことで、それぞれ重量20キロ以下に抑えることができ、人力で担送することができる[1]。60秒以内にシステムを組み上げて射撃準備姿勢に移行することができる[1]。ただし、電池・冷媒供給ユニットを発射筒に組み付けたのち、一度これらの供給を開始してシーカーを活性化すると、45秒の作動時間ののちにはこれらを交換する必要がある[1]。
フランス陸軍のSATCP射撃小隊(sections de tir SATCP)には、6基の発射機とともに、指揮・統制と索敵手段を提供するためのサマンサ警戒システムが配備された[1]。サマンサ警戒システムは、ストラテジーム情報処理装置、PR4G戦術無線通信機、そしてTRS-2630Pグリフォン対空捜索レーダーによって構成されている[1]。
サマンサの原型となったミゲル防空システムは4基までのASPIC自走発射機を統制することも可能で[5]、このASPIC自走発射機はフランス空軍に採用された[6]。一方、陸軍は自走発射機としてはPAMELA(Plate forme d’Adaptation MISTRAL Équipée Légère et Aérotransportable)を採用したほか[7]、後に空軍のASPICの一部を譲り受け、空挺部隊・海外派遣用のVIPAIR(Véhicule d’Intervention et de Projection Air)として配備した[6]。
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可搬式の発射装置
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プジョー・P4をベースとする4連装式のASPIC発射機
艦対空型
[編集]地対空型から少し遅れて艦対空型の開発も進められており、1986年からはSADRAL[3]、また1989年からはSIMBAD発射機の洋上試験が開始された[2]。1992年には、フランス海軍の全ての水上戦闘艦にミストラルを搭載する方針が発表された[2]。
SADRAL(Système d'Auto-Défense Raprochée Anti-aérienne Léger)は遠隔操作型の6連装発射機で[2]、小型艦艇の主たる対空兵器や大型艦の近接防空用として配備される[3]。マウントは2軸安定化されており、甲板上に配置される部分の重量は1,080 kgで、甲板下のコンソール(280 kg)からサーボ・コントロール・ユニット(410 kg)で制御される[3]。マウントは目標捕捉用のテレビカメラを備え、フランス海軍では後にFLIRに換装した[3]。発射前の給電は発射機側から行うほか、冷媒の供給用としてアルゴンのボトルもミサイルに接続する[3]。
SIMBAD(Système Integré de Mistral Bitube d'Auto-Défense)は20mm機関砲のペデスタルマウントを改設計した手動操作型の連装発射機で、20mm機関砲の代替にあたる簡易的な対空兵器として配備される[2][3]。装填状態での重量は250 kgで、電力や冷媒の供給は、可搬式の装置と同様に取外し可能なユニットによって行う[3]。なお、派生型として遠隔式のSIMBAD-RCや、RCを4連装化したSIMBAD-RC 4も存在する[8]。
このほか、4連装・遠隔式のテトラル(TETRAL)や、25/30mm機関砲を含む3連装発射機であるシグマ(SIGMA)もラインナップされた[9]。
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SADRAL発射機
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SIMBAD発射機
空対空型
[編集]ヘリコプター用の空対空ミサイルとして、AATCP(Air-air très courte portée: 近距離空対空誘導弾)も開発された[1]。これはパイロンを介して重量70キロの連装発射機を搭載するとともに、アビオニクスにも追加回路を組み込み、安定化した照準器またはヘルメットマウントサイトを用いて照準するものであった[1]。フランス陸軍はガゼル・ヘリコプターへの搭載用として1992年からまず30セットを購入する予定だったが、1991年の湾岸戦争を受けて購入は前倒しされ、サウジアラビアに展開した緊急展開部隊(FAR)に先行配備された[1]。
採用国
[編集]- オーストリア
- キプロス
- フランス
- カタール
- カタール海軍 - 2023年時点で、艦対空型(バルザン級ミサイル艇)を保有している[13]。
- カタール空軍 - 2023年時点で、地対空型を保有している[13]。
- シンガポール
- シンガポール海軍 - 2023年時点で、艦対空型(エンデュアランス級揚陸艦)を保有している[14]。
- シンガポール空軍 - 2023年時点で、地対空型を保有している[14]。
脚注
[編集]注釈
[編集]- ^ Cullen & Foss 1992, pp. 31–34では波長3-5マイクロメートルの中波長赤外線(MWIR)と紫外線(UV)、Friedman 1997, pp. 398–399では波長2-4および3-5マイクロメートルの赤外線(S/MWIR)としている。
出典
[編集]- ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u v w x y Cullen & Foss 1992, pp. 31–34.
- ^ a b c d e f g h i Friedman 1997, pp. 398–399.
- ^ a b c d e f g h i Hooton 2001, SURFACE-TO-AIR MISSILES, FRANCE.
- ^ “MBDA’s Mistral 3 missile scores a double success”, EDR On-Line, (2019/11/15)
- ^ Cullen & Foss 1992, pp. 102–103.
- ^ a b “Livraison de la Dernière P4 VIPAIR À L’Armée de l’air et de L’Espace”. ARQUUS (2020年10月15日). 2023年9月18日閲覧。
- ^ “LIVRAISON DE LA DERNIÈRE P4 VIPAIR À L’ARMÉE DE L’AIR ET DE L’ESPACE”. Base documentaire Artillerie. 2023年9月18日閲覧。
- ^ Kate Tringham (2024年11月4日). “Euronaval 2024: MBDA unveils four-round variant of SIMBAD-RC”. janes.com. 2024年11月6日閲覧。
- ^ 多田 2022, p. 24.
- ^ IISS 2023, p. 74.
- ^ IISS 2023, p. 81.
- ^ IISS 2023, p. 91.
- ^ a b IISS 2023, p. 350.
- ^ a b IISS 2023, pp. 287–288.
参考文献
[編集]- 多田智彦「現代の艦載兵器」『世界の艦船』第986号、海人社、2022年12月。CRID 1520012777807199616。
- Cullen, Tony; Foss, C.F. (1992), Jane's Land-Based Air Defence 1992-93 (5th ed.), Jane's Information Group, ISBN 978-0710609793
- Friedman, Norman (1997), The Naval Institute Guide to World Naval Weapon Systems 1997-1998, Naval Institute Press, ISBN 978-1557502681
- Hooton, E.R. (2001), Jane's Naval Weapon Systems (Issue 35 ed.), Jane's Information Group Ltd, NCID AA11235770
- The International Institute for Strategic Studies (IISS) (2023-02-15), The Military Balance 2023, Routledge, ISBN 978-1-032-50895-5