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'''シリーズ21'''(シリーズトゥエンティーワン、{{Lang-en|Series-21}})は、[[近畿日本鉄道]](近鉄)の次世代一般車両として[[2000年]]から[[2008年]]に製造された[[通勤形車両 (鉄道)|通勤形電車]]。「人に優しい、地球に優しい」と「コストダウン」をコンセプトに開発された<ref name="近鉄時刻表_The Densha30">『近鉄時刻表 2009年3月20日ダイヤ変更号 』「The Densha 30 」p.46・p.47(著者・編者 近畿日本鉄道、出版・発行 同左)</ref><ref name="PHP_近鉄">近畿日本鉄道のひみつ p.114・p.115(発行者 小林成彦、編者・発行所 PHP研究所 2013年)ISBN 978-4-569-81142-0</ref><ref name="メディアックス近鉄">『近畿日本鉄道完全データ』 (発行 メディアックス 2012年)p.52・p.53・p.59・p.63・p.66・p.70 ISBN 9784862013934</ref><ref name="私鉄年鑑_2012">『私鉄車両年鑑2012 大手15社 営業用車両完全網羅』(発行 イカロス出版 2012年)p.25・p.28・p.32・p.36 ISBN 978-4-86320-549-9</ref>。
'''シリーズ21'''({{Lang-en|Series-21}})は、'''[[近畿日本鉄道]]'''(近鉄)の次世代[[一般車両 (鉄道)|一般車両]]として[[2000年]]から[[2008年]]に製造された[[通勤形車両 (鉄道)|通勤形電車]]。「[[間|人]]に優しい、[[地球]]に優しい」と「コストダウン」をコンセプトに開発された<ref name="近鉄時刻表_The Densha30">『近鉄時刻表 2009年3月20日ダイヤ変更号 』「The Densha 30 」p.46・p.47(著者・編者 近畿日本鉄道、出版・発行 同左)</ref><ref name="PHP_近鉄">近畿日本鉄道のひみつ p.114・p.115(発行者 小林成彦、編者・発行所 PHP研究所 2013年)ISBN 978-4-569-81142-0</ref><ref name="メディアックス近鉄">『近畿日本鉄道完全データ』 (発行 メディアックス 2012年)p.52・p.53・p.59・p.63・p.66・p.70 ISBN 9784862013934</ref><ref name="私鉄年鑑_2012">『私鉄車両年鑑2012 大手15社 営業用車両完全網羅』(発行 イカロス出版 2012年)p.25・p.28・p.32・p.36 ISBN 978-4-86320-549-9</ref>。
{{ローレル賞|41|2001|link=no}}{{right|※受賞車両は3220系・<br /> 5820系・9020系}}
{{ローレル賞|41|2001|link=no}}{{right|※受賞車両は3220系・<br /> 5820系・9020系}}
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|13=Kintetsu6820AY21-AY22.jpg
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|14=6820系
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[[File:Kintetsu_3220_20080127.jpg|thumb|200px|3220系(ペイント車)<br />現在は一般塗装・シングルアーム式パンタグラフとなっている]]
[[File:Kintetsu_3220_20080127.jpg|thumb|200px|3220系(ペイント車)<br />現在は一般塗装・シングルアーム式パンタグラフとなっている]]
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== 概要 ==
== 概要 ==
[[近畿日本鉄道|近鉄]]の一般車両は[[1986年]]に登場した[[近鉄6400系電車#6400系|6400系]]で確立された[[可変電圧可変周波数制御|VVVFインバータ制御]]装置に前面貫通型[[アルミニウム合金]]製車体を基本とする設計で[[1998年]]まで製造され<ref name="近鉄時刻表_The Densha30" />、その居住性や[[1981年]]に登場した[[界磁チョッパ制御]]車の[[近鉄8810系電車#8810系|8810系]]で確立されて[[1997年]]登場の[[近鉄5800系電車|5800系]]まで継承されていた斬新な車体デザインは利用者やファンの間で好評を博していたが<ref name="近鉄時刻表_The Densha30" />、[[2000年代]]を迎えるにあたって、一般車両のフルモデルチェンジを行なうことになった<ref name="近鉄時刻表_The Densha30" />。<br/>
[[近畿日本鉄道|近鉄]]の一般車両は[[1986年]]に登場した[[近鉄6400系電車#6400系|'''6400系''']]で確立された[[可変電圧可変周波数制御|VVVFインバータ制御]]装置に前面貫通型[[アルミニウム合金]]製車体を基本とする設計で[[1998年]]まで製造され<ref name="近鉄時刻表_The Densha30" />、その居住性や[[1981年]]に登場した[[界磁チョッパ制御]]車の[[近鉄8810系電車#8810系|'''8810系''']]で確立されて[[1997年]]登場の[[近鉄5800系電車|'''5800系''']]まで継承されていた斬新な車体デザインは利用者やファンの間で好評を博していたが<ref name="近鉄時刻表_The Densha30" />、[[2000年代]]を迎えるにあたって、一般車両のフルモデルチェンジを行なうことになった<ref name="近鉄時刻表_The Densha30" />。<br/>


設計の基本方針としては以下の5項目が掲げられた<ref name="近鉄時刻表_The Densha30" />。
設計の基本方針としては以下の5項目が掲げられた<ref name="近鉄時刻表_The Densha30" />。
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この設計方針を踏襲した車両は[[21世紀]]における理想像を目指した[[近畿日本鉄道|近鉄]]一般車両の標準型として「'''シリーズ21'''」と総称された<ref name="近鉄時刻表_The Densha30" /><ref name="PHP_近鉄" /><ref name="メディアックス近鉄" />。
この設計方針を踏襲した車両は[[21世紀]]における理想像を目指した[[近畿日本鉄道|近鉄]]一般車両の標準型として「'''シリーズ21'''」と総称された<ref name="近鉄時刻表_The Densha30" /><ref name="PHP_近鉄" /><ref name="メディアックス近鉄" />。


第一陣として製造された[[近鉄3220系電車|3220系]]は、[[2000年]][[3月15日]]に[[近鉄奈良線]]・[[近鉄難波線|難波線]]・[[近鉄京都線|京都線]]・[[近鉄橿原線|橿原線]]・[[近鉄天理線|天理線]]および[[近鉄京都線|京都線]]と[[直通運転]]を行う[[京都市営地下鉄烏丸線]]で営業運転を開始した<ref name="近鉄時刻表_The Densha30" />。以後、[[近鉄5820系電車|5820系]]・[[近鉄9020系電車|9020系・9820系]]といった系列が幅広い線区で導入され<ref name="近鉄時刻表_The Densha30" /><ref name="メディアックス近鉄" />、[[近鉄南大阪線|南大阪線]]には[[近鉄9020系電車#6820系|6820系]]が導入された<ref name="近鉄時刻表_The Densha30" /><ref name="メディアックス近鉄" />。ただし、後述の通り[[阪神電気鉄道]]との相互直通運転を行うため、[[近鉄奈良線|奈良線]]系統に大部分が投入されており<ref name="メディアックス近鉄" /><ref name="私鉄年鑑_2012" />、[[2024年]]2月時点では[[近鉄名古屋線|名古屋線]]区には1編成も導入されていない<ref name="rf_201708">『[[鉄道ファン (雑誌)|鉄道ファン]]』2017年8月号 [[交友社]] 「大手私鉄車両ファイル2017 車両配置表」</ref>。
第一陣として製造された[[近鉄3220系電車|'''3220系''']]は、[[2000年]][[3月15日]]に[[近鉄奈良線]]・[[近鉄難波線|難波線]]・[[近鉄京都線|京都線]]・[[近鉄橿原線|橿原線]]・[[近鉄天理線|天理線]]および[[近鉄京都線|京都線]]と[[直通運転]]を行う[[京都市営地下鉄烏丸線]]で営業運転を開始した<ref name="近鉄時刻表_The Densha30" />。以後、[[近鉄5820系電車|'''5820系''']]・[[近鉄9020系電車|'''9020系''''''9820系''']]といった系列が幅広い線区で導入され<ref name="近鉄時刻表_The Densha30" /><ref name="メディアックス近鉄" />、[[近鉄南大阪線|南大阪線]]には[[近鉄9020系電車#6820系|'''6820系''']]が導入された<ref name="近鉄時刻表_The Densha30" /><ref name="メディアックス近鉄" />。ただし、後述の通り[[阪神電気鉄道]]との相互直通運転を行うため、[[近鉄奈良線|奈良線]]系統に大部分が投入されており<ref name="メディアックス近鉄" /><ref name="私鉄年鑑_2012" />、[[2024年]]2月時点では[[近鉄名古屋線|名古屋線]]区には1編成も導入されていない<ref name="rf_201708">『[[鉄道ファン (雑誌)|鉄道ファン]]』2017年8月号 [[交友社]] 「大手私鉄車両ファイル2017 車両配置表」</ref>。


[[近鉄けいはんな線|けいはんな線]]の開業の際に導入された[[近鉄7020系電車|7020系]]は車体構造や[[鉄道車両の台車|台車]]設計こそ全くの別設計であるが内装や[[座席]]構造などがシリーズ21に準じた設計で、主要機器もシリーズ21とほぼ同じである。しかし、[[近畿日本鉄道|近鉄]]では同形式について、「シリーズ21」の一形式とは扱っていない<ref name="近鉄時刻表_The Densha30" /><ref name="PHP_近鉄" /><ref name="メディアックス近鉄" />。
[[近鉄けいはんな線|けいはんな線]]の開業の際に導入された[[近鉄7020系電車|'''7020系''']]は車体構造や[[鉄道車両の台車|台車]]設計こそ全くの別設計であるが内装や[[座席]]構造などが「'''シリーズ21'''」に準じた設計で、主要機器もシリーズ21とほぼ同じである。しかし、[[近畿日本鉄道|近鉄]]では同形式について、「'''シリーズ21'''」の一形式とは扱っていない<ref name="近鉄時刻表_The Densha30" /><ref name="PHP_近鉄" /><ref name="メディアックス近鉄" />。


これらの形式は下二桁を20とし、番号は21([[近鉄大阪線|大阪線]]用は51)からスタートしている。なお、[[2024年]]時点では[[近鉄9020系電車|9020系]]および[[近鉄9020系電車#6820系|6820系]]が2両編成で、[[近鉄3220系電車|3220系]][[近鉄5820系電車|5820系]][[近鉄9020系電車#9820系|9820系]]は全て6両編成で導入されている。
これらの形式は下二桁を20とし、番号は21([[近鉄大阪線|大阪線]]用は51)からスタートしている。なお、[[2024年]]時点では'''9020系'''および'''6820系'''が2両編成で、'''3220系''''''5820系''''''9820系'''は全て6両編成で導入されている。


「シリーズ21」として[[2000年]]に[[グッドデザイン賞]]・[[2001年]]には[[鉄道友の会]][[ローレル賞]]受賞<ref name="近鉄時刻表_The Densha30" /><ref name="PHP_近鉄" /><ref name="メディアックス近鉄" />。[[近鉄5820系電車|5820系]][[近鉄5800系電車|5800系]]に続き、[[L/Cカー]]としては2代続けての[[ローレル賞]]受賞となっている<ref name="近鉄時刻表_The Densha30" /><ref name="PHP_近鉄" /><ref name="メディアックス近鉄" />。
'''シリーズ21'''」として[[2000年]]に[[グッドデザイン賞]]・[[2001年]]には[[鉄道友の会]][[ローレル賞]]受賞<ref name="近鉄時刻表_The Densha30" /><ref name="PHP_近鉄" /><ref name="メディアックス近鉄" />。'''5820系''''''5800系'''に続き、[[L/Cカー]]としては2代続けての[[ローレル賞]]受賞となっている<ref name="近鉄時刻表_The Densha30" /><ref name="PHP_近鉄" /><ref name="メディアックス近鉄" />。


製造は[[2008年]]が最後となり<ref>{{Cite journal |和書 | journal = [[鉄道ジャーナル]] | author = 柴田東吾</small> | title = 関西私鉄車両の現状と今後 | year = 2019 | month = 11 |volume = No. 637 | issue = | pages = pp. 38 |publisher= [[鉄道ジャーナル社]] |ref= RJ2019-11 }}</ref>、以降[[近畿日本鉄道|近鉄]]では通勤型車両の新製導入がなかった。その後、[[1965年|昭和40年代]]([[1960年代]]後半から[[1970年代]]前半)に製造された車両の置き換えを目的に、[[2024年]]秋より16年ぶりに新形式の通勤型車両が導入されることが発表された。ただし、この新形式はシリーズ21として扱われていない<ref>{{Cite web|和書|url=https://www.kintetsu-g-hd.co.jp/common-hd/data/pdf/sinngatasyaryou20220516210916527029461.pdf|title=2024年秋 新型一般車両を導入します|format=PDF|publisher=近鉄グループホールディングス(近畿日本鉄道)|date=2022-05-17|accessdate=2022-05-17}}</ref>。
製造は[[2008年]]が最後となり<ref>{{Cite journal |和書 | journal = [[鉄道ジャーナル]] | author = 柴田東吾</small> | title = 関西私鉄車両の現状と今後 | year = 2019 | month = 11 |volume = No. 637 | issue = | pages = pp. 38 |publisher= [[鉄道ジャーナル社]] |ref= RJ2019-11 }}</ref>、以降[[近畿日本鉄道|近鉄]]では通勤型車両の新製導入がなかった。その後、[[1965年|昭和40年代]]([[1960年代]]後半から[[1970年代]]前半)に製造された車両の置き換えを目的に、[[2024年]]秋より16年ぶりに[[近鉄8A系電車|新形式の通勤型車両]]が導入されることが発表された。ただし、この新形式は「'''シリーズ21'''」として扱われていない<ref>{{Cite web|和書|url=https://www.kintetsu-g-hd.co.jp/common-hd/data/pdf/sinngatasyaryou20220516210916527029461.pdf|title=2024年秋 新型一般車両を導入します|format=PDF|publisher=近鉄グループホールディングス(近畿日本鉄道)|date=2022-05-17|accessdate=2022-05-17}}</ref>。また、この車両についてはシリーズ21が導入されていない名古屋線においても新製導入が行われる予定である


== 車体デザイン ==
== 車体デザイン ==
車体材質は7020系を除いて[[アルミニウム]][[ダブルスキン構造]]を採用しており<ref name="メディアックス近鉄" /><ref name="私鉄年鑑_2012" />、車体の塗装は[[1986年]]の[[近鉄3200系電車|3200系]]以降で採用されていたシルキーホワイトにマルーンレッドのツートンカラーから、車体上部をアースブラウン<ref name="近鉄時刻表_The Densha30" /><ref name="私鉄年鑑_2012" />、車体下部をクリスタルホワイトのツートンカラーに<ref name="近鉄時刻表_The Densha30" /><ref name="私鉄年鑑_2012" />、サンフラワーイエローの帯<ref name="近鉄時刻表_The Densha30" /><ref name="私鉄年鑑_2012" />を巻いた「シリーズ21」専用色となり、車体前面はブラックフェイスとなった<ref name="近鉄時刻表_The Densha30" /><ref name="私鉄年鑑_2012" />。
車体材質は'''7020系'''を除いて[[アルミニウム]][[ダブルスキン構造]]を採用しており<ref name="メディアックス近鉄" /><ref name="私鉄年鑑_2012" />、車体の塗装は[[1986年]]の[[近鉄3200系電車|'''3200系''']]以降で採用されていたシルキーホワイトにマルーンレッドのツートンカラーから、車体上部をアースブラウン<ref name="近鉄時刻表_The Densha30" /><ref name="私鉄年鑑_2012" />、車体下部をクリスタルホワイトのツートンカラーに<ref name="近鉄時刻表_The Densha30" /><ref name="私鉄年鑑_2012" />、サンフラワーイエローの帯<ref name="近鉄時刻表_The Densha30" /><ref name="私鉄年鑑_2012" />を巻いた「シリーズ21」専用色となり、車体前面はブラックフェイスとなった<ref name="近鉄時刻表_The Densha30" /><ref name="私鉄年鑑_2012" />。


車体前面部の[[方向幕|行先案内表示機]]と車両編成番号は車体洗浄時を考慮して大型[[ガラス]]の中に収めており<ref name="近鉄時刻表_The Densha30" /><ref name="私鉄年鑑_2012" />、前面側面共に種別表示は従来からの幕式表示機、行き先表示に[[LED]]式表示機を採用している<ref name="近鉄時刻表_The Densha30" /><ref name="私鉄年鑑_2012" />。
車体前面部の[[方向幕|行先案内表示機]]と車両編成番号は車体洗浄時を考慮して大型[[ガラス]]の中に収めており<ref name="近鉄時刻表_The Densha30" /><ref name="私鉄年鑑_2012" />、前面側面共に種別表示は従来からの幕式表示機、行き先表示に[[LED]]式表示機を採用している<ref name="近鉄時刻表_The Densha30" /><ref name="私鉄年鑑_2012" />。
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== 車内インテリア ==
== 車内インテリア ==
内装面では[[近鉄5800系電車|5800系]]で採用された明るいグレーを基調とした内装材を一部改良の上で本格採用し、車内空間に落ち着きを持たせた。[[扉|乗降扉]]の窓[[ガラス]]には[[複層ガラス]]を採用し車内の保温性を高め、[[扉]]間の側窓には固定式で大型1枚のものを採用したほか、高さを3段階とした[[つり革]]や、扉間の6人掛けのバケットシートを採用した<ref name="近鉄時刻表_The Densha30" /><ref name="メディアックス近鉄" />。また、[[近鉄5820系電車|5820系]]の車端部、及び[[近鉄7020系電|7020系]]以外では戸袋部分の1人掛け[[優先席|優先座席]]が「らくらくコーナー」とされ、両側に肘掛が設置されている<ref name="近鉄時刻表_The Densha30" /><ref name="メディアックス近鉄" />。これらの[[座席]]は全て赤系を基調としたモケットで<ref name="私鉄年鑑_2012" />、[[優先席]]には黄色いラインが入っている。製造メーカーはロングシートが[[住江工業]]製<ref>[http://www.suminoekogyo.co.jp/business/rail.html 住江工業公式ホームページ「鉄道部門」]</ref>、デュアルシートが[[天龍工業]]製<ref>[http://www.tenryu-kogyo.co.jp/?cat=11 天龍工業公式ホームページ「沿革」]</ref>となっている。
内装面では[[近鉄5800系電車|'''5800系''']]で採用された明るいグレーを基調とした内装材を一部改良の上で本格採用し、車内空間に落ち着きを持たせた。[[扉|乗降扉]]の窓[[ガラス]]には[[複層ガラス]]を採用し車内の保温性を高め、[[扉]]間の側窓には固定式で大型1枚のものを採用したほか、高さを3段階とした[[つり革]]や、扉間の6人掛けのバケットシートを採用した<ref name="近鉄時刻表_The Densha30" /><ref name="メディアックス近鉄" />。また、[[近鉄5820系電車|'''5820系''']]の車端部、及びその他の両の戸袋部分の1人掛け[[優先席|優先座席]]が「らくらくコーナー」とされ、両側に肘掛が設置されている<ref name="近鉄時刻表_The Densha30" /><ref name="メディアックス近鉄" />。これらの[[座席]]は全て赤系を基調としたモケットで<ref name="私鉄年鑑_2012" />、[[優先席]]には黄色いラインが入っている。製造メーカーはロングシートが[[住江工業]]製<ref>[http://www.suminoekogyo.co.jp/business/rail.html 住江工業公式ホームページ「鉄道部門」]</ref>、デュアルシートが[[天龍工業]]製<ref>[http://www.tenryu-kogyo.co.jp/?cat=11 天龍工業公式ホームページ「沿革」]</ref>となっている。


[[座席]]定員は従来車では[[扉]]間7人掛け・車端部5人掛けとされていたものを、長さはほぼそのままで6人掛けまたは4人掛けと変更された<ref name="近鉄時刻表_The Densha30" />。1人あたりの座席幅も430mmから485mmと、従来よりも格段に広くなった反面、座席定員は1両あたり10 - 18名減となった。
[[座席]]定員は従来車では[[扉]]間7人掛け・車端部5人掛けとされていたものを、長さはほぼそのままで6人掛けまたは4人掛けと変更された<ref name="近鉄時刻表_The Densha30" />。1人あたりの座席幅も430mmから485mmと、従来よりも格段に広くなった反面、座席定員は1両あたり10 - 18名減となった。
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== 主要機器 ==
== 主要機器 ==
走行機器は[[近鉄5800系電車|5800系]]までの[[ゲートターンオフサイリスタ|GTO]]-VVVFインバータ制御車両で確立された各部仕様を概ね踏襲し、[[近鉄22000系電車#16400系|16400系]]で初採用された[[絶縁ゲートバイポーラトランジスタ|IGBT]][[半導体素子|素子]]を本格採用している。従前の[[近畿日本鉄道|近鉄]]では、同一仕様の[[主電動機]]を搭載しても制御装置のメーカーで車両形式を分けることがあったが、シリーズ21では特に区別しておらず<ref name="メディアックス近鉄" />、同一形式に[[三菱電機]]製と[[日立製作所]]製の制御装置が混在する<ref group="*">現時点では3220系・6820系の制御装置は日立に、7020系は三菱にそれぞれ統一されている。</ref><ref group="*">[[近鉄7000系電車|7000系]]では投入当初から編成単位で三菱製と日立製の制御装置が混在しているが、別形式とはされず同一形式として扱われている。</ref>。台車は[[近鉄22000系電車#22000系|22000系]]以降の[[近畿日本鉄道|近鉄]]車両では一般的な積層ゴムブッシュ片側軸箱支持式の[[ボルスタレス台車]]を標準としている<ref name="メディアックス近鉄" /><ref name="私鉄年鑑_2012" />。
走行機器は[[近鉄5800系電車|'''5800系''']]までの[[ゲートターンオフサイリスタ|GTO]]-VVVFインバータ制御車両で確立された各部仕様を概ね踏襲し、[[近鉄22000系電車#16400系|'''16400系''']]で初採用された[[絶縁ゲートバイポーラトランジスタ|IGBT]][[半導体素子|素子]]を本格採用している。従前の[[近畿日本鉄道|近鉄]]では、同一仕様の[[主電動機]]を搭載しても制御装置のメーカーで車両形式を分けることがあったが、シリーズ21では特に区別しておらず<ref name="メディアックス近鉄" />、同一形式に[[三菱電機]]製と[[日立製作所]]製の制御装置が混在する<ref group="*">現時点では3220系・6820系の制御装置は日立に、7020系は三菱にそれぞれ統一されている。</ref><ref group="*">[[近鉄7000系電車|7000系]]では投入当初から編成単位で三菱製と日立製の制御装置が混在しているが、別形式とはされず同一形式として扱われている。</ref><ref group="*">近鉄において、同一形式に三菱と日立の制御装置が混在している車種としては他に7000系と[[近鉄80000系電車|80000系]]があるが、7000系は車両番号の奇数と偶数で区分し(奇数:三菱、偶数:日立)、80000系は日立の制御装置を搭載する編成を10番台として区分しているが、シリーズ21では特に法則性は見受けられない。</ref>。台車は[[近鉄22000系電車#22000系|'''22000系''']]以降の[[近畿日本鉄道|近鉄]]車両では一般的な積層ゴムブッシュ片側軸箱支持式の[[ボルスタレス台車]]を標準としている<ref name="メディアックス近鉄" /><ref name="私鉄年鑑_2012" />。


[[ブレーキ|制動]]方式は[[電気指令式ブレーキ]](読替装置非搭載車含め[[非常ブレーキ]]のみ[[自動空気ブレーキ]])を採用しており、[[近鉄3220系電車|3220系]]以外は[[電磁直通ブレーキ]]式の従来車と連結可能とするため、[[ブレーキ]]指令読替装置を装備している<ref name="私鉄年鑑_2012" />。
[[ブレーキ|制動]]方式は[[電気指令式ブレーキ]](読替装置非搭載車含め[[非常ブレーキ]]のみ[[自動空気ブレーキ]])を採用しており、[[近鉄3220系電車|'''3220系''']]以外は[[電磁直通ブレーキ]]式の従来車と連結可能とするため、[[ブレーキ]]指令読替装置を装備している<ref name="私鉄年鑑_2012" />。


[[集電装置]]は、編成単位で[[集電装置#下枠交差型|下枠交差式]]と[[集電装置#Z型・シングルアーム型|シングルアーム式]]が混在しており、[[近鉄3220系電車|3220系]]のモ3220形、9020系、[[近鉄9020系電車#6820系|6820系]]は[[集電装置|パンタグラフ]]を2基搭載する。[[集電装置#Z型・シングルアーム型|シングルアーム式]]の配置は「< <」の配置とされ、[[近鉄22600系電車#22600系|22600系]]以降の[[特急形車両|特急形電車]]にも踏襲された。
[[集電装置]]は、編成単位で[[集電装置#下枠交差型|下枠交差式]]と[[集電装置#Z型・シングルアーム型|シングルアーム式]]が混在しており、'''3220系'''のモ3220形、9020系、[[近鉄9020系電車#6820系|'''6820系''']]は[[集電装置|パンタグラフ]]を2基搭載する。[[集電装置#Z型・シングルアーム型|シングルアーム式]]の配置は「< <」の配置とされ、[[近鉄22600系電車#22600系|'''22600系''']]以降の[[特急形車両|特急形電車]]にも踏襲された。


[[近鉄奈良線|奈良]]・[[近鉄京都線|京都線]]用の[[近鉄5820系電車|5820系]]・[[近鉄9020系電車|9020系]]・[[近鉄9020系電車#9820系|9820系]]については[[阪神電気鉄道|阪神電鉄]]直通運転対応工事を行い、同社用の[[自動列車停止装置|ATS]]と[[列車選別装置|列車種類選別装置]]の取り付けを完了した<ref name="近鉄時刻表_The Densha30" /><ref name="メディアックス近鉄" /><ref name="私鉄年鑑_2012" />。これにより[[狭軌]]用の[[近鉄9020系電車#6820系|6820系]]以外の形式は他社線に乗り入れることとなった<ref name="近鉄時刻表_The Densha30" /><ref name="メディアックス近鉄" /><ref name="私鉄年鑑_2012" />。
[[近鉄奈良線|奈良]]・[[近鉄京都線|京都線]]用の[[近鉄5820系電車|'''5820系''']]・[[近鉄9020系電車|'''9020系''']]・[[近鉄9020系電車#9820系|'''9820系''']]については[[阪神電気鉄道|阪神電鉄]]直通運転対応工事を行い、同社用の[[自動列車停止装置|ATS]]と[[列車選別装置|列車種類選別装置]]の取り付けを完了した<ref name="近鉄時刻表_The Densha30" /><ref name="メディアックス近鉄" /><ref name="私鉄年鑑_2012" />。これにより[[狭軌]]路線用の'''6820系'''以外の形式は他社線に乗り入れることとなった<ref name="近鉄時刻表_The Densha30" /><ref name="メディアックス近鉄" /><ref name="私鉄年鑑_2012" />。


== 車両 ==
== 車両 ==

; 標準軌用
; 標準軌路線
* [[近鉄3220系電車|3220系]]([[京都市営地下鉄烏丸線]]直通運転に対応)<ref name="近鉄時刻表_The Densha30" />
* [[近鉄5820系電車|5820系]]([[L/Cカー]]、[[奈良線]]所属車両は[[阪神電気鉄道|阪神電鉄]]直通運転に対応、[[近鉄大阪線|大阪線]]所属車両はサ5550形・ク5750形に[[車椅子]]対応[[便所|トイレ]]装備)<ref name="近鉄時刻表_The Densha30" /><ref name="私鉄年鑑_2012" />
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; 狭軌用
; 狭軌路線
* [[近鉄9020系電車#6820系|6820系]]<ref name="PHP_近鉄" />
* '''6820系'''<ref name="PHP_近鉄" />
; 第三軌条方式
* [[近鉄7020系電車|7020系]]([[Osaka Metro中央線]]直通運転に対応)


== 運用路線 ==
== 運用路線 ==
[[2021年]]4月時点での運用線区は以下の通り。
[[2021年]]4月時点での運用線区は以下の通り。

; 標準軌線
=== 標準軌 ===
* [[近鉄難波線|難波線]]
* [[近鉄難波線|難波線]]
* [[近鉄奈良線|奈良線]]
* [[近鉄奈良線|奈良線]]
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* [[近鉄橿原線|橿原線]]
* [[近鉄橿原線|橿原線]]
* [[近鉄天理線|天理線]]
* [[近鉄天理線|天理線]]
* [[近鉄大阪線|大阪線]]
* [[近鉄大阪線|大阪線]](5820系大阪線系統・9020系大阪線系統のみ)
* [[近鉄山田線|山田線]]
* [[近鉄山田線|山田線]](同上)
* [[近鉄鳥羽線|鳥羽線]]
* [[近鉄鳥羽線|鳥羽線]](同上)
* [[京都市営地下鉄烏丸線]]([[近鉄3220電車|3220系]]のみ<ref name="近鉄時刻表_The Densha30" />)
* [[京都市営地下鉄烏丸線]](3220系のみ<ref name="近鉄時刻表_The Densha30" />)
* [[阪神なんば線]]([[近鉄5820電車|5820]][[近鉄9020系電車|9020]][[近鉄9020系電車#9820系|9820系]]のみ<ref name="近鉄時刻表_The Densha30" />)
* [[阪神なんば線]](5820奈良線・9020系奈良線・9820系のみ<ref name="近鉄時刻表_The Densha30" />)
* [[阪神本線]][[尼崎駅 (阪神)|尼崎駅]] - [[三宮駅#阪神電気鉄道(神戸三宮駅)|神戸三宮駅]]間(同上)
* [[阪神本線]][[尼崎駅 (阪神)|尼崎駅]] - [[三宮駅#阪神電気鉄道(神戸三宮駅)|神戸三宮駅]]間(同上)

; 狭軌線
=== 狭軌 ===
* [[近鉄南大阪線|南大阪線]]
* [[近鉄南大阪線|南大阪線]]
* [[近鉄長野線|長野線]]
* [[近鉄長野線|長野線]]
* [[近鉄御所線|御所線]]
* [[近鉄御所線|御所線]]
* [[近鉄吉野線|吉野線]]
* [[近鉄吉野線|吉野線]]

; 第三軌条線
* [[近鉄けいはんな線|けいはんな線]]
* [[Osaka Metro中央線]]
; 備考
; 備考
[[2021年]]時点では[[近鉄名古屋線|名古屋線]]系統の路線には定期営業運転での入線実績はないが、[[近鉄大阪線|大阪線]]用の[[近鉄5820系電車|5820系]]と[[近鉄9020系電車|9020系]]は、団体運用で[[近鉄志摩線|志摩線]]に入線することがある。
[[2021年]]時点では[[近鉄名古屋線|名古屋線]]系統の路線には定期営業運転での入線実績はないが、[[近鉄大阪線|大阪線]]用の[[近鉄5820系電車|'''5820系''']]と[[近鉄9020系電車|'''9020系''']]は、団体運用で[[近鉄志摩線|志摩線]]に入線することがある。


[[近鉄名古屋線|名古屋線]]回送列車および[[2003年]]4月に開催された「[[きんてつ鉄道まつり]]」での展示車両として[[近鉄5820系電車|5820系]]5852Fが[[塩浜駅]]まで入線したことがある。
[[近鉄名古屋線|名古屋線]]回送列車および[[2003年]]4月に開催された「[[きんてつ鉄道まつり]]」での展示車両として'''5820系'''5852Fが[[塩浜駅]]まで入線したことがある。


== 脚注 ==
== 脚注 ==

2024年9月21日 (土) 00:45時点における最新版

シリーズ21英語: Series-21)は、近畿日本鉄道(近鉄)の次世代一般車両として2000年から2008年に製造された通勤形電車。「に優しい、地球に優しい」と「コストダウン」をコンセプトに開発された[1][2][3][4]

第41回(2001年
ローレル賞受賞車両
※受賞車両は3220系・
 5820系・9020系
3220系
3220系
5820系 (L/Cカー、奈良・京都線系)
5820系
L/Cカー、奈良・京都線系)
5820系 (L/Cカー、大阪線系)
5820系
(L/Cカー、大阪線系)
9020系 (奈良・京都線系)
9020系
(奈良・京都線系)
9020系 (大阪線系)
9020系
(大阪線系)
9820系
9820系
6820系
6820系
らくらくコーナー
らくらくコーナー
3220系(ペイント車)
現在は一般塗装・シングルアーム式パンタグラフとなっている
阪神電鉄で試運転中の9020系(EE32 近鉄・阪神相直ラッピング車)
9820系。阪神電鉄直通対応車は運転台側の窓の下と乗務員室入口ドアの横に相互直通対応車を示す蝶をあしらったマークが付いている。
阪神直通対応車両に貼付されたロゴマーク。黄色が近鉄、青が阪神を表している。

概要

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近鉄の一般車両は1986年に登場した6400系で確立されたVVVFインバータ制御装置に前面貫通型アルミニウム合金製車体を基本とする設計で1998年まで製造され[1]、その居住性や1981年に登場した界磁チョッパ制御車の8810系で確立されて1997年登場の5800系まで継承されていた斬新な車体デザインは利用者やファンの間で好評を博していたが[1]2000年代を迎えるにあたって、一般車両のフルモデルチェンジを行なうことになった[1]

設計の基本方針としては以下の5項目が掲げられた[1]

この設計方針を踏襲した車両は21世紀における理想像を目指した近鉄一般車両の標準型として「シリーズ21」と総称された[1][2][3]

第一陣として製造された3220系は、2000年3月15日近鉄奈良線難波線京都線橿原線天理線および京都線直通運転を行う京都市営地下鉄烏丸線で営業運転を開始した[1]。以後、5820系9020系9820系といった系列が幅広い線区で導入され[1][3]南大阪線には6820系が導入された[1][3]。ただし、後述の通り阪神電気鉄道との相互直通運転を行うため、奈良線系統に大部分が投入されており[3][4]2024年2月時点では名古屋線区には1編成も導入されていない[5]

けいはんな線の開業の際に導入された7020系は車体構造や台車設計こそ全くの別設計であるが内装や座席構造などが「シリーズ21」に準じた設計で、主要機器もシリーズ21とほぼ同じである。しかし、近鉄では同形式について、「シリーズ21」の一形式とは扱っていない[1][2][3]

これらの形式は下二桁を20とし、番号は21(大阪線用は51)からスタートしている。なお、2024年時点では9020系および6820系が2両編成で、3220系5820系9820系は全て6両編成で導入されている。

シリーズ21」として2000年グッドデザイン賞2001年には鉄道友の会ローレル賞受賞[1][2][3]5820系5800系に続き、L/Cカーとしては2代続けてのローレル賞受賞となっている[1][2][3]

製造は2008年が最後となり[6]、以降近鉄では通勤型車両の新製導入がなかった。その後、昭和40年代1960年代後半から1970年代前半)に製造された車両の置き換えを目的に、2024年秋より16年ぶりに新形式の通勤型車両が導入されることが発表された。ただし、この新形式は「シリーズ21」として扱われていない[7]。また、この車両についてはシリーズ21が導入されていない名古屋線においても新製導入が行われる予定である。

車体デザイン

[編集]

車体材質は7020系を除いてアルミニウムダブルスキン構造を採用しており[3][4]、車体の塗装は1986年3200系以降で採用されていたシルキーホワイトにマルーンレッドのツートンカラーから、車体上部をアースブラウン[1][4]、車体下部をクリスタルホワイトのツートンカラーに[1][4]、サンフラワーイエローの帯[1][4]を巻いた「シリーズ21」専用色となり、車体前面はブラックフェイスとなった[1][4]

車体前面部の行先案内表示機と車両編成番号は車体洗浄時を考慮して大型ガラスの中に収めており[1][4]、前面側面共に種別表示は従来からの幕式表示機、行き先表示にLED式表示機を採用している[1][4]

この他にも、全車両が製造時から連結部に転落防止幌を標準装備している[1][4]

車内インテリア

[編集]

内装面では5800系で採用された明るいグレーを基調とした内装材を一部改良の上で本格採用し、車内空間に落ち着きを持たせた。乗降扉の窓ガラスには複層ガラスを採用し車内の保温性を高め、間の側窓には固定式で大型1枚のものを採用したほか、高さを3段階としたつり革や、扉間の6人掛けのバケットシートを採用した[1][3]。また、5820系の車端部、及びその他の車両の戸袋部分の1人掛け優先座席が「らくらくコーナー」とされ、両側に肘掛が設置されている[1][3]。これらの座席は全て赤系を基調としたモケットで[4]優先席には黄色いラインが入っている。製造メーカーはロングシートが住江工業[8]、デュアルシートが天龍工業[9]となっている。

座席定員は従来車では間7人掛け・車端部5人掛けとされていたものを、長さはほぼそのままで6人掛けまたは4人掛けと変更された[1]。1人あたりの座席幅も430mmから485mmと、従来よりも格段に広くなった反面、座席定員は1両あたり10 - 18名減となった。

移動制約者対応として各車両1箇所に車椅子スペースを整備し、通常は立席スペースにも使用可能なように背もたれ用の「パーチ」が取り付けられている[1]

主要機器

[編集]

走行機器は5800系までのGTO-VVVFインバータ制御車両で確立された各部仕様を概ね踏襲し、16400系で初採用されたIGBT素子を本格採用している。従前の近鉄では、同一仕様の主電動機を搭載しても制御装置のメーカーで車両形式を分けることがあったが、シリーズ21では特に区別しておらず[3]、同一形式に三菱電機製と日立製作所製の制御装置が混在する[* 1][* 2][* 3]。台車は22000系以降の近鉄車両では一般的な積層ゴムブッシュ片側軸箱支持式のボルスタレス台車を標準としている[3][4]

制動方式は電気指令式ブレーキ(読替装置非搭載車含め非常ブレーキのみ自動空気ブレーキ)を採用しており、3220系以外は電磁直通ブレーキ式の従来車と連結可能とするため、ブレーキ指令読替装置を装備している[4]

集電装置は、編成単位で下枠交差式シングルアーム式が混在しており、3220系のモ3220形、9020系、6820系パンタグラフを2基搭載する。シングルアーム式の配置は「< <」の配置とされ、22600系以降の特急形電車にも踏襲された。

奈良京都線用の5820系9020系9820系については阪神電鉄直通運転対応工事を行い、同社用のATS列車種類選別装置の取り付けを完了した[1][3][4]。これにより狭軌路線用の6820系以外の形式は他社線に乗り入れることとなった[1][3][4]

車両

[編集]
標準軌路線用
狭軌路線用

運用路線

[編集]

2021年4月時点での運用線区は以下の通り。

標準軌路線

[編集]

狭軌路線

[編集]
備考

2021年時点では名古屋線系統の路線には定期営業運転での入線実績はないが、大阪線用の5820系9020系は、団体運用で志摩線に入線することがある。

名古屋線回送列車および2003年4月に開催された「きんてつ鉄道まつり」での展示車両として5820系5852Fが塩浜駅まで入線したことがある。

脚注

[編集]

注釈

[編集]
  1. ^ 現時点では3220系・6820系の制御装置は日立に、7020系は三菱にそれぞれ統一されている。
  2. ^ 7000系では投入当初から編成単位で三菱製と日立製の制御装置が混在しているが、別形式とはされず同一形式として扱われている。
  3. ^ 近鉄において、同一形式に三菱と日立の制御装置が混在している車種としては他に7000系と80000系があるが、7000系は車両番号の奇数と偶数で区分し(奇数:三菱、偶数:日立)、80000系は日立の制御装置を搭載する編成を10番台として区分しているが、シリーズ21では特に法則性は見受けられない。

出典

[編集]
  1. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u v w x y z aa ab ac ad ae af ag ah ai aj 『近鉄時刻表 2009年3月20日ダイヤ変更号 』「The Densha 30 」p.46・p.47(著者・編者 近畿日本鉄道、出版・発行 同左)
  2. ^ a b c d e f 近畿日本鉄道のひみつ p.114・p.115(発行者 小林成彦、編者・発行所 PHP研究所 2013年)ISBN 978-4-569-81142-0
  3. ^ a b c d e f g h i j k l m n o 『近畿日本鉄道完全データ』 (発行 メディアックス 2012年)p.52・p.53・p.59・p.63・p.66・p.70 ISBN 9784862013934
  4. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p 『私鉄車両年鑑2012 大手15社 営業用車両完全網羅』(発行 イカロス出版 2012年)p.25・p.28・p.32・p.36 ISBN 978-4-86320-549-9
  5. ^ 鉄道ファン』2017年8月号 交友社 「大手私鉄車両ファイル2017 車両配置表」
  6. ^ 柴田東吾「関西私鉄車両の現状と今後」『鉄道ジャーナル』No. 637、鉄道ジャーナル社、2019年11月、pp. 38。 
  7. ^ 2024年秋 新型一般車両を導入します” (PDF). 近鉄グループホールディングス(近畿日本鉄道) (2022年5月17日). 2022年5月17日閲覧。
  8. ^ 住江工業公式ホームページ「鉄道部門」
  9. ^ 天龍工業公式ホームページ「沿革」

参考文献

[編集]
  • 『近鉄時刻表 2009年3月20日ダイヤ変更号 』「The Densha 30 」p.46・p.47(著者・編者 近畿日本鉄道、出版・発行 同左)
  • 『近畿日本鉄道のひみつ』 p.114・p.115(発行者 小林成彦、編者・発行所 PHP研究所 2013年)ISBN 978-4-569-81142-0
  • 『近畿日本鉄道完全データ』 (発行 メディアックス 2012年)p.52・p.53・p.59・p.63・p.66・p.70 ISBN 9784862013934
  • 『私鉄車両年鑑2012 大手15社 営業用車両完全網羅』(発行 イカロス出版 2012年)p.25・p.28・p.32・p.36 ISBN 978-4-86320-549-9

関連項目

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外部リンク

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