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'''HQ-7'''('''红旗/HongQi-7'''、輸出名: FM-80)は[[中華人民共和国]]の短距離[[対空ミサイル]]である、[[フランス]]の[[クロタル (ミサイル)|クロタル]]地対空ミサイルを[[リバースエンジニアリング]]し、その技術を元に開発された。このミサイルには、[[地対空ミサイル|地上発射型]]と[[艦対空ミサイル|艦上発射型]]の2タイプがあり、現在[[中国人民解放軍]]にて広く使用されている
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'''HQ-7'''红旗/HongQi-7、輸出名:FM-80)[[中華人民共和国|中国]]の短距離[[ミサイル#対空ミサイル|対空ミサイル]]である、[[フランス]]の[[クロタル (ミサイル)|クロタル]][[地対空ミサイル]]を[[リバースエンジニアリング]]し、その技術を元に開発された<ref>{{Cite web |title=HongQi 7 (HQ-7, FM-80, FM-90) Surface-to-Air Missile System - SinoDefence.com |url=https://web.archive.org/web/20110821030013/http://sinodefence.com/army/surfacetoairmissile/hongqi7.asp |website=web.archive.org |date=2011-08-21 |access-date=2024-04-16 |language=en}}</ref>


この[[ミサイル]]には、[[地対空ミサイル|地上発射型]]と[[艦対空ミサイル|艦上発射型]]の2タイプがあり、現在[[中国人民解放軍|中国軍]]にて広く使用されている。
== 歴史 ==
1970年代後半、中国は[[ソ連]]に対抗する西側の非公式の軍事同盟に参加した。当時、中国の装備は質の面においてソ連に大きなれを取っていたため、中国政府は自国装備近代化の援助を西側に要請した。アメリカイギリスドイツフランスイタリアオーストラリアイスラエルなどの国は中国に武器技術を輸出することを公、暗に同意した。


== 開発 ==
中国は1978-1979年にかけてフランスから少数のクロタル地対空ミサイルを評定のために輸入した。輸入されたクロタルは[[旅大型駆逐艦]]および[[旅滬型駆逐艦]]に実験的に装備された。その結果、クロタルが自国の[[HQ-61 (ミサイル)|HQ-61]]より優れたことを評価した中国人民解放軍は、クロタルをリバースエンジニアリングし自国での生産を開始した。
[[1970年代]]後半、[[華人民共和|中国]]は[[ソビエト連邦|ソ連]]に対抗する[[西側諸国]]の非公式の[[軍事同盟]]に参加した。当時、中国の装備は質の面においてソ連に大きなれを取っていたため、中国政府は自国装備近代化の援助を西側諸国に要請した。[[アメリカ合衆国|アメリカ]]・[[イギリス]]・[[西ドイツ]]・[[フランス]]・[[イタリア]]・[[オーストラリア]]・[[イスラエル]]などの国は中国に[[武器]]・技術を輸出することを公若しくは暗に同意した。


中国は、[[1978年]]-[[1979年]]にかけて[[フランス]]から少数の[[クロタル (ミサイル)|クロタル]][[地対空ミサイル]]を評定のために輸入した。輸入されたクロタルは[[旅大型駆逐艦]]および[[旅滬型駆逐艦]]に実験的に装備された。その結果、クロタルが自国開発の[[HQ-61 (ミサイル)|HQ-61]]より優れた性能を持つことを評価した[[中国人民解放軍|中国軍]]は、クロタルを[[リバースエンジニアリング]]自国での生産を開始した。
フランス政府は中国のリバースエンジニアリング行為に暗黙の承認を与え、それに協力すらしたことが推測されている。フランス政府は中国が[[ライセンス]]なしにクロタルを複製したことに対しなんら措置を講じたことはなく、中国がただ3-4年の時間でクロタルのリバースエンジニアリングに成功したことも奇妙に思える。


== 運用 ==
90年代にかけて、HQ-7は中国人民解放軍空軍基地、陸軍、艦船などに多数配備された。また、より高性能、長距離の[[HQ-9]]が開発されるまで、10年以上中国人民解放軍海軍艦船の主力短距離対空ミサイルであった。
HQ-7は、[[1990年代]]を通して[[中国人民解放軍空軍|中国空軍]][[基地]]・[[中国人民解放軍陸軍|中国陸軍]]・[[軍艦|艦船]]などに多数配備された。また、より高性能・長距離の[[HQ-9 (ミサイル)|HQ-9]]が開発されるまで、10年以上[[中国人民解放軍海軍|中国海軍]]艦船の主力短距離[[ミサイル#対空ミサイル|対空ミサイル]]であった。現在でも海軍艦船の多くがHQ-7を搭載している。未確認の情報によれば、[[中華人民共和国|中国]]は[[VLS]]発射型のHQ-7を開発しており、[[江凱型フリゲート|054型フリゲート]]に搭載されたVLSがそれだと考えられている。


輸出も提案されており、[[2009年]]には[[バングラデシュ]]がFM-90Nを採用した。[[バングラデシュ軍#バングラデシュ海軍|バングラデシュ海軍]]の[[フリゲート]]「[[ハーリド・ビン・ワリード (フリゲート)|バンガバンドゥ]]」に搭載されている。
未確認の情報によれば中国は[[VLS]]発射型のHQ-7を開発しており、[[江凱型フリゲート|054型フリゲート]]に配備されると思われる。


== バージョン ==
== 派生型 ==
*HQ-7 地上配備型: 航空基地など。
;HQ-7 地上配備型
:航空[[基地]]などに配置するための固定式[[ランチャー]]。
*HQ-7 自走型: 4x4自走車にHQ-7x4発、追レーダーなどが搭載される。 
*HQ-7 艦船配備: 
;HQ-7 自走
:4x4自走車にHQ-7x4発、[[レーダー]]などが搭載される。
*HQ-7A (輸出名: FM-90)
;HQ-7 艦船配備型
HQ-7ミサイルの速度距離を強化し、赤外線追跡カメラを追加したもの。1998に開発された。
:[[軍艦|艦船]]搭載用で、8連装ランチャーに搭載。主に[[駆逐艦]]に装備されている。
;HQ-7A(輸出名FM-90)
:HQ-7 [[ミサイル]]の速度距離を強化し、[[赤外線]]追跡カメラを追加したもの。[[1998年]]に開発された。
;FM-90N
:HQ-7 地上配備型を基に開発した輸出向け[[艦対空ミサイル]]。[[射撃管制装置|管制装置]]をデジタルモジュール化し、探知距離の増大・リアクションタイムの短縮などの改良が施されている。[[2002年]]に発表された。


== 仕様 ==
== 仕様 ==
*全長:3.00m
*全長:3.00m
*直径:0.156 m
*直径:0.156m
*翼幅:0.55 m
*翼幅:0.55m
*発射重量:84.5 kg
*発射重量:84.5kg
*実用高度:30~5,000m
*実用高度:30-5,000m
*最低射距離:500m
*最低射距離:500m
*最長射距離:8,600m (目標速度:400m/s)、10,000m (目標速度:300m/s)、12,000m (低速目標)
*最長射距離:8,600m(目標速度:400m/s)、10,000m(目標速度:300m/s)、12,000m(低速目標
*速度:Mach 2.3 (750m/s)
*速度:[[マッハ数|M]]2.3(750m/s)
*誘導方式:指令誘導光学誘導
*誘導方式:[[指令誘導]]+光学誘導
*弾頭:[[近接信管]]付き[[榴弾#破片効果と爆風効果|HE-FRAG]]
*弾頭: HE-FRAG with proximity fuse
*命中率:70~80%
*命中率:70-80%
*レーダー探知距離:18.4 km
*レーダー探知距離:18.4km
*レーダー誘導距離:17 km
*レーダー誘導距離:17km

== 登場作品 ==
=== 漫画 ===
; 『[[空母いぶき]]』
: 自走型が[[Il-76 (航空機)|Il-76 キャンディッド]][[輸送機]]により[[与那国島]]へ複数空輸される。

=== ゲーム ===
; 『[[マーセナリーズ2 ワールド イン フレームス]]』
: [[中国人民解放軍|アジアン軍]]が使用する[[駆逐艦]]「[[深圳 (駆逐艦)|深圳]]」の[[武装]]として登場する。

== 脚注 ==
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== 外部リンク ==
== 外部リンク ==
*[http://wiki.livedoor.jp/namacha2/d/HQ%2d7%b4%cf%c2%d0%b6%f5%a5%df%a5%b5%a5%a4%a5%eb%28%b9%c8%b4%fa7/FM%2d80/CSA%2dN%2d4%29 日本周辺国の軍事兵器 - HQ-7艦対空ミサイル(紅旗7/FM-80/CSA-N-4)]
*[http://sinodefence.com/army/surfacetoairmissile/hq7.asp China Defence Today (地上配備型)]
*[http://sinodefence.com/army/surfacetoairmissile/hq7.asp China Defence Today (地上配備型)]
*[http://sinodefence.com/navy/navalmissile/hq7naval.asp China Defence Today (艦船配備型)]
*[http://sinodefence.com/navy/navalmissile/hq7naval.asp China Defence Today (艦船配備型)]


[[Category:中華人民共和国の兵器|HQ-7]]
{{中華人民共和国のミサイル|SAM-maritime}}
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[[Category:地対空ミサイル|HQ-7]]
[[Category:艦対空ミサイル|HQ-7]]


[[Category:中華人民共和国の地対空ミサイル]]
[[en:HQ-7]]
[[Category:中華人民共和国の艦対空ミサイル]]

2024年4月22日 (月) 16:14時点における最新版

HQ-7
旅海型駆逐艦に搭載されたHQ-7
種類 地対空/艦対空
原開発国 中華人民共和国の旗 中華人民共和国
運用史
配備期間 1988年
配備先 中国海軍
開発史
製造業者 航天機電集団二院
(現:中国航天科工集団)
諸元
重量 84.5kg
全長 3.00m
直径 0.156m

射程 500-12,000m
弾頭 破片効果榴弾(HE-FRAG)
信管 近接信管または直撃

エンジン 一段固体推進薬ロケットモーター
翼幅 0.55m
最大高度 15-5,000m
誘導方式 指令誘導+光学誘導
操舵方式 操縦翼
発射
プラットフォーム
地上車両水上艦
テンプレートを表示

HQ-7(红旗/HongQi-7、輸出名:FM-80)は、中国の短距離対空ミサイルである、フランスクロタル地対空ミサイルリバースエンジニアリングし、その技術を元に開発された[1]

このミサイルには、地上発射型艦上発射型の2タイプがあり、現在中国軍にて広く使用されている。

開発

[編集]

1970年代後半、中国ソ連に対抗する西側諸国の非公式の軍事同盟に参加した。当時、中国の装備は質の面においてソ連に大きな後れを取っていたため、中国政府は自国装備近代化の援助を西側諸国に要請した。アメリカイギリス西ドイツフランスイタリアオーストラリアイスラエルなどの国は中国に武器・技術を輸出することを公に、若しくは暗に同意した。

中国は、1978年-1979年にかけてフランスから少数のクロタル地対空ミサイルを評定のために輸入した。輸入されたクロタルは旅大型駆逐艦および旅滬型駆逐艦に実験的に装備された。その結果、クロタルが自国開発のHQ-61より優れた性能を持つことを評価した中国軍は、クロタルをリバースエンジニアリングし、自国での生産を開始した。

運用

[編集]

HQ-7は、1990年代を通して中国空軍基地中国陸軍艦船などに多数配備された。また、より高性能・長距離のHQ-9が開発されるまで、10年以上中国海軍艦船の主力短距離対空ミサイルであった。現在でも海軍艦船の多くがHQ-7を搭載している。未確認の情報によれば、中国VLS発射型のHQ-7を開発しており、054型フリゲートに搭載されたVLSがそれだと考えられている。

輸出も提案されており、2009年にはバングラデシュがFM-90Nを採用した。バングラデシュ海軍フリゲートバンガバンドゥ」に搭載されている。

派生型

[編集]
HQ-7 地上配備型
航空基地などに配置するための固定式ランチャー
HQ-7 自走型
4x4自走車にHQ-7x4発、追尾レーダーなどが搭載される。
HQ-7 艦船配備型
艦船搭載用で、8連装ランチャーに搭載。主に駆逐艦に装備されている。
HQ-7A(輸出名FM-90)
HQ-7 ミサイルの速度・距離を強化し、赤外線追跡カメラを追加したもの。1998年に開発された。
FM-90N
HQ-7 地上配備型を基に開発した輸出向け艦対空ミサイル管制装置をデジタルモジュール化し、探知距離の増大・リアクションタイムの短縮などの改良が施されている。2002年に発表された。

仕様

[編集]
  • 全長:3.00m
  • 直径:0.156m
  • 翼幅:0.55m
  • 発射重量:84.5kg
  • 実用高度:30-5,000m
  • 最低射距離:500m
  • 最長射距離:8,600m(目標速度:400m/s)、10,000m(目標速度:300m/s)、12,000m(低速目標)
  • 速度:M2.3(750m/s)
  • 誘導方式:指令誘導+光学誘導
  • 弾頭:近接信管付きHE-FRAG
  • 命中率:70-80%
  • レーダー探知距離:18.4km
  • レーダー誘導距離:17km

登場作品

[編集]

漫画

[編集]
空母いぶき
自走型がIl-76 キャンディッド輸送機により与那国島へ複数空輸される。

ゲーム

[編集]
マーセナリーズ2 ワールド イン フレームス
アジアン軍が使用する駆逐艦深圳」の武装として登場する。

脚注

[編集]
  1. ^ HongQi 7 (HQ-7, FM-80, FM-90) Surface-to-Air Missile System - SinoDefence.com” (英語). web.archive.org (2011年8月21日). 2024年4月16日閲覧。

外部リンク

[編集]