WIDEプロジェクト

日本の複数の大学で1988年から行われたインターネット研究・運用プロジェクト

WIDEプロジェクト(ワイドプロジェクト)は、日本を拠点として1988年に設立された、産官学組織と共同でインターネット技術・標準・社会に関連する研究を推進する、グローバルな研究コンソーシアムである[1]。WIDEは『英語: Widely Integrated Distributed Environment』の頭文字である。結成以来、米国が主導するインターネット関連技術を日本国内に導入しつつ、新技術の研究開発を促進する役割を担ってきた。現在は、技術を社会に繋げ、技術と技術を繋げ、研究者と研究者を繋げるという理念で運営されている[2]。WIDEプロジェクトのメンバーは参加が認められた研究機関・企業・その他団体に所属している(過去に所属していた)者である。研究者の他に、学生も参加しており、大学生以上の学生の他、2023年から高校生世代の参加が認められている[3]

概要

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元々は慶應義塾大学東京大学東京工業大学の3大学を結ぶデータ網を構築したことが切っ掛けとなり創設された「WIDE研究会」(1985年発足)が母体。JUNETとも密接な関わりを持っていたため混同されやすいが、運営そのものはJUNETとは別組織として行われている。WIDEプロジェクトの創設には関わっていないが、大型ネットワークテストベッドを運用しており、インターネットに関する研究を活発に行っている、奈良先端科学技術大学院大学(略称:NAIST), 北陸先端科学技術大学院大学(略称:JAIST)も、WIDEの活動や運営に深く関わっている。

主な実績

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1992年12月3日に、WIDEプロジェクトのメンバーが、ISPであるIIJを設立した。IIJは独自にバックボーンネットワークの構築を開始し、後に日本国内の官公庁・法人向けのインターネット接続環境の普及に多大な貢献を果たすことになった。

1994年平成6年)には日本初のインターネットエクスチェンジ(IX)であるNSPIXP1を東京都内に開設。その後1996年(平成8年)には、NSPIXP2を都内に、1997年(平成9年)には、NSPIXP3を大阪市にそれぞれ開設したほか、2003年(平成15年)4月には、NSPIXP2を発展的に解消し、日本初の本格的な分散運用型IXとして『dix-ie』の運用を開始した。

1995年11月30日には、「三菱電機 スーパーセレクション 坂本龍一 TOUR'95 D&L with 原田大三郎」の日本武道館ライブに技術協力を行った。その中で、ローリング・ストーンズに続いて世界で2例目,日本では初の試みとなる、インターネットを介した音楽ライブのライブストリーミングを行った。技術的には、通信衛星と、インターネットに設けられているマルチキャスト専用バックボーンであるMboneを用いていた。当時の回線速度の制約は厳しく、フレームレートは1fps未満と、実用的ではなかったようである。当該ライブはインターネット年表にも記載されている。

日本国内におけるインターネットの普及後は、前記のIX(dix-ie、NSPIXP3)の運用のほか、DNSルートサーバの一つである M Root Server の運用など、日本のインターネット運用の一翼を担っている。また、インターネット関係者の交流、運用実験、研究プロジェクトを行っている。

主なメンバー

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WIDEメンバーには、加わった順にWIDEナンバーが付与される。一覧については 公式サイト を参照のこと。WIDEメンバーには東京大学, 慶應義塾大学, 名古屋大学, JAIST, NAIST在籍者が多い。民間企業所属の人物も参加している。

主な著書

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  • 日本でインターネットはどのように創られたのか? WIDEプロジェクト20年の挑戦の記録(2009年3月 インプレスR&D(インプレスコミュニケーションズ) ISBN 978-4-8443-2677-9

脚注

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  1. ^ WIDE - WIDEプロジェクト -”. www.wide.ad.jp. 2024年11月19日閲覧。
  2. ^ WIDE - 理念 -”. www.wide.ad.jp. 2024年11月19日閲覧。
  3. ^ WIDE - ファウンダー挨拶 -”. www.wide.ad.jp. 2024年11月19日閲覧。

関連項目

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外部リンク

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