EMPAR英語: European Multifunction Phased-Array Radar)は、イタリアアレニア・マルコーニ・システムズ(AMS; 現在のSELEX)社が開発した艦載用の多機能3次元レーダーPAAMS(E)武器システムの中核的なセンサーとして採用されており、イタリア海軍ではMM/SPY-790として制式化されている[1]

EMPAR
軽空母カヴール」搭載機
種別 3次元レーダー
目的 多機能レーダー(MFR)
開発・運用史
開発国 イタリアの旗 イタリア
就役年 2008年
送信機
形式 進行波管TWT
周波数 Cバンド
送信尖頭電力 120 kW
アンテナ
形式 パッシブ・フェイズドアレイ(PESA)
ビーム幅 2.6度
走査速度 60 rpm (HPTモード)
方位角 全周無制限(機械式走査)
左右45度(電子走査)
仰俯角 +95度 〜 -25度
探知性能
探知距離 100 km (54 nmi) (RCS 2m2の場合)
その他諸元
重量 2,500 kg (アンテナ部)
350 kg (レドーム)
6,000 kg (甲板下)
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来歴

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EMPARを搭載した「カラビニエーレ」

アレニア社による多機能レーダー開発の試みは、1965年より着手された。その後、1980年代後半にNATO加盟8カ国による共通フリゲートとしてNFR-90 (NATO Frigate Replacement for 1990s) の計画が開始されると、イタリア海軍向けの艦には同社製の多機能レーダーが搭載される予定とされ、1986年には開発契約が成立した。NFR-90計画そのものは各国間の調整から難航し、1990年にはイタリアも計画から脱退したが、その後フランスやイギリスと共同でホライズン計画が開始されたことから、同社の多機能レーダーはこちら向けとして開発が続けられることになった。1995年中盤より、試作機をアルピーノ級フリゲートの2番艦「カラビニエーレ」(F581)に搭載しての洋上試験が開始された[1]。初の実用機搭載艦であるフランス海軍の「フォルバン」は2008年に就役した[2]

設計

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アンテナは、試作機では背中合わせに配置された2面の回転式であったが、実用機では1面回転式とされた。寸法は高さ2,100mm×幅2,200mm×奥行き1,010mmで、垂直から約30度傾斜している。パッシブ・フェーズド・アレイ(PESA)方式を採用しており、アンテナ面には2,160個の送信管が配置されている。位相制御は4ビットのピン・ダイオード移相機によって行なわれる。送信機は進行波管(TWT)を使用しているが、最大出力は120キロワット程度と伝えられ、4-6メガワットのAN/SPY-1と比べて格段に小さい。動作周波数はCバンドである。ペンシル・ビームの幅は通常2.6度で、アンテナ面中心線に対して左右45度、上下±60度の空間を走査する事ができる[3]。なお、アンテナは直径5000mm・重量350kgのレドームに収容されている[4]。またアクティヴ・フェーズド・アレイ(AESA)方式に変更した派生型としてKRONOSも開発されている[5]

探知距離は、レーダー反射断面積(RCS)が10m2の目標(大型航空機に相当)に対しては180 km (97 nmi)、2m2の目標(小型戦闘機に相当)に対しては100 km (54 nmi)、0.1平方メートルの目標(シースキマーに相当)に対しては50 km (27 nmi)である。同時に300個の目標(高優先度69個、低優先度231個)を処理可能であり、うち50目標に対して、武器指向可能な精度での追尾を行うことができる。ただし実際に同時にミサイル攻撃可能な目標数は24個である[3]。最大能力では、EMPARのレーダー時間のうち、75%が新たな目標の捜索に当てられ、20%が既知の目標の追尾に、5%がミサイルへの指令誘導アップリンクに用いられることになる[1]

採用国と搭載艦

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  アルジェリア海軍

  イタリア海軍

  カタール海軍

  フランス海軍

参考文献

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  1. ^ a b c Norman Friedman (1997). The Naval Institute guide to world naval weapon systems 1997-1998. Naval Institute Press. pp. 300-301. ISBN 9781557502681. https://books.google.co.jp/books?id=l-DzknmTgDUC 
  2. ^ Eric Wertheim (2013). The Naval Institute Guide to Combat Fleets of the World, 16th Edition. Naval Institute Press. ISBN 978-1591149545 
  3. ^ a b 野木恵一「世界の艦載多機能レーダー (特集・多機能レーダーと艦艇デザイン)」『世界の艦船』第687号、海人社、2008年3月、88-89頁、NAID 40015830635 
  4. ^ SELEX Sistemi Integrati (2008年6月). “EMPAR shipborne multifunction radar - Selex Systems” (PDF) (英語). 2014年6月8日閲覧。
  5. ^ SELEX ES (2013年). “KRONOS - Multifunctional Naval Radar for total surveillance” (PDF) (英語). 2014年6月22日閲覧。