若い音楽家のためのチャイコフスキー国際コンクール
「若い音楽家のためのチャイコフスキー国際コンクール」International Tchaikovsky Competition for Young Musiciansは、世界三大コンクールのひとつであるチャイコフスキー国際コンクールの姉妹コンクール、ジュニア部門として創設された。
上原彩子、ラン・ランらを輩出したことから、ジュニア・コンクールの最高峰、次代のクラシック界を担う若手の登竜門として知られ、入賞者・参加者は、後に「チャイコフスキー国際コンクール」をはじめとする世界的な国際コンクールにおいて上位入賞を果たしている。
概要
編集主催は、ロシアの音楽機関 チャイコフスキー国際コンクール入賞者連盟(Association of Tchaikovsky Competition Stars、ATCS)。
審査部門は、ピアノ、ヴァイオリン、チェロ。参加資格は、8歳以上17以下(参加年齢・条件等は開催国によって多少異なる)。審査員は過去の「チャイコフスキー国際コンクール」の入賞者らが務める。審査方法もチャイコフスキー国際コンクールに準じ、第1次、第2次のソロ演奏に加え、第3次のファイナルにおいて、オーケストラとの共演によるコンチェルト演奏による審査が行われる。
このコンクールは、一都市で定期的に行われる通常のコンクールとは異なり、才能ある世界の若い音楽家たちに、より広くより多くのチャンスを与えるため、開催地を固定せず、世界の都市を巡って開催する“ワールドカップ・スタイル”を採用しており、これまでに、「第1回・モスクワ」(1992年:ロシア)、「第2回・ 仙台」(1995年:日本)、「第3回・サンクトペテルブルク」(1997年:ロシア)、「第4回・ アモイ」(2002年:中国)、「第5回・ 倉敷」(2004年:日本)、「第6回・水原」(2009年:韓国)で開催された。 「第6回・水原」(2009年:韓国)大会では、上野通明(13歳)が日本人として初のチェロ部門第1位を獲得した。
主催機関と協力関係にある日本のNPO法人ユーラシア交流支援センター(所在地:神奈川県藤沢市)が日本における広報・連絡窓口を務めている。
開催年、開催地及び入賞者
編集第1回(1992年) モスクワ
編集(ピアノ部門)
- 第1位 エミリー・シェイ(アメリカ)、アレキサンドル・モギレフスキー(ロシア)
- 第2位 エカテリーナ・メンシコヴァ(ロシア)
- 第3位 アレクセイ・ナビウリン(ロシア)、マリアンナ・グメツカヤ(ウクライナ)
(ヴァイオリン部門)
- 第1位 ジェニファー・コウ(アメリカ)
- 第2位 アレクセイ・ナゴヴィーツィン(ロシア)、パンイ・チェン(中国)
- 第3位 ラリーサ・シャフマートワ(ロシア)
(チェロ部門)
- 第1位 ダニエル・ミューラー=ショット(ドイツ)
- 第2位 タチヤーナ・ワシーリエワ(ロシア)
- 第3位 アレクサンドル・チャウシャン(アルメニア)、クラウディオ・ボホーケス(ドイツ)
第2回(1995年) 仙台
編集(ピアノ部門)
(ヴァイオリン部門)
- 第1位 ピョートル・クザズニー(ポーランド)
- 第2位 松山冴花(日本)
- 第3位 ルー・ウェイ(中国)
(チェロ部門)
- 第1位 モニカ・レスコヴァル(クロアチア)
- 第2位 ベルンハルト・直樹・ヘーデンボルク(オーストリア)
- 第3位 ニー・タオ(中国)、アレクサンドル・ケクショエフ(ロシア)
第3回(1997年) サンクトペテルブルク
編集(ピアノ部門)
- 第1位 セルゲイ・バスキンスキー(ロシア)
- 第2位 ピョートル・オフチャロフ(ロシア)、ソン・ヨルム(韓国)
- 第3位 ポリーナ・コンドラトコワ(ロシア)
(ヴァイオリン部門)
- 第1位 Kong Zui BUY(ヴェトナム)
- 第2位 Hyuk Joo KWOH(北朝鮮)、マリア・スクリャーヴィナ(ロシア)
- 第3位 ライア・コズロフ(ロシア)
(チェロ部門)
- 第1位 Ihn KOH BON(北朝鮮)
- 第2位 スヴェトラーナ・ウラヂーミロワ(ロシア)、ニコライ・マフレーエフ(ロシア)
- 第3位 アレクセイ・キセレフ(ベラルーシ)
第4回(2002年) アモイ
編集(ピアノ部門)
- 第1位 チャン・ハオチェン(中国)
- 第2位 Eun-Tack KIM(韓国)
- 第3位 エヴゲニー・アンドレーエフ(ロシア)
(ヴァイオリン部門)
- 第1位 Xiao-yu YANG(中国)
- 第2位 チェ・イェウン(韓国)
- 第3位 エレーナ・セミョーノワ(ロシア)
(チェロ部門)
- 第1位 Bonian TIAN(中国)
- 第2位 Seung-min KANG(韓国)
- 第3位 Nan JIA(中国)
第5回(2004年) 倉敷
編集(ピアノ部門)
- 第1位 ユリア・チャプリーナ(ロシア)
- 第2位 ディナーラ・ナジャーフォバ(ウクライナ)
- 第3位 沼沢淑音(日本)
(ヴァイオリン部門)
- 第1位 アイレン・プリッチン(ロシア)
- 第2位 ベ・ウォンヘ(韓国)
- 第3位 ソン・ユンウォン(韓国)
- 第5位 中村 太地(日本)
(チェロ部門)
- 第1位 フョードル・アモソフ(ロシア)
- 第2位 ホン・ウンソン(韓国)
- 第3位 イ・ウン(韓国)
第6回(2009年) 水原
編集(ピアノ部門)
- 第1位 Huang Nansong(中国)
- 第2位 Su Yeon KIM(韓国)、 Yu Chong WU(中国)
- 第3位 Jung Eun KIM(韓国)
(ヴァイオリン部門)
- 第1位 Sirena HUANG(アメリカ)
- 第2位 Seohyun LIM(韓国)
- 第3位 Jou Rose HSIEN(台湾)、Gye Hee KIM(韓国)
(チェロ部門)
- 第1位 上野通明(日本)
- 第2位 Sang Eun LEE(韓国)
- 第3位 Taeguk MUN (韓国)、Sae Bom BYUN(韓国)
第7回(2012年) モントルー
編集(ピアノ部門)
- 第1位 Alexander Kutuzov(ロシア)
- 第2位 Bolai Cao(中国)
- 第3位 Kon Ui Park(北朝鮮)
(ヴァイオリン部門)
- 第1位 Veriko Tchumburidze(ジョージア/トルコ)
- 第2位 Yoo-Jin Lee(韓国)
- 第3位 Jaewon Wee(韓国)、Yury Vasilevsky(ベラルーシ)
(チェロ部門)
- 第1位 Noah Lee(アメリカ)
- 第2位 Zlatomir Fung(アメリカ)
- 第3位 Ja Kyung Huh(韓国)
第8回(2014年) モスクワ
編集(ピアノ部門)
- 第1位 Aleksandr Malafeev(ロシア)
- 第2位 Kaiwen Zhao(中国)
- 第3位 Tagir Kamaltdinov(ロシア)
(ヴァイオリン部門)
- 第1位 Ruslan Turuntaev(カザフスタン)
- 第2位 Roman Reshetkin(ロシア/フランス)、Soo Been Lee(韓国)
- 第3位 Naina Kobzareva(ロシア)、Yoo Min Seo(韓国)
(チェロ部門)
- 第1位 李拉(中国)
- 第2位 Woochan Jeong(韓国)、Gabriel Martins(アメリカ)
- 第3位 Nathan Lee(アメリカ)
第9回(2015年) ノボシビルスク
編集(ピアノ部門)
- 第1位 Su-Ah Ye(韓国)
- 第2位 Elizaveta Kliuchereva(ロシア)
- 第3位 Hyuk Lee(韓国)
(ヴァイオリン部門)
- 第1位 Maria Andreeva(ロシア)、Donghyun Kim(韓国)
- 第2位 安田 理沙(日本)、Diana Adamyan(アルメニア)、Jieon Park(韓国)
- 第3位 Hyeonah Hong(韓国)、Maria Baeva-Kuznetsova(ロシア)
(チェロ部門)
- 第1位 Maria Zaytseva(ロシア)、Anastasia Ushakova(ロシア)
- 第2位 Dylan Wu(アメリカ)、Sanga Yang(韓国)
- 第3位 Dan Ah Han(韓国)、Timur Rashkov(ベラルーシ)
第10回(2017年) アスタナ
編集(ピアノ部門)
- 第1位 Kyle Hu(韓国)
- 第2位 Ilia Papoian(ロシア)、Hechao Yang(中国)
- 第3位 Anastasia Makhamendrikova(ロシア)、Maria Andreeva(ロシア)
- 第4位 Song Hyeon Kim(韓国)、中山拓樹(日本)
(ヴァイオリン部門)
- 第1位 Nakyung Kang(韓国)、河合勇人(日本)
- 第2位 Anne Maria Wehrmeyer(ドイツ)、Akbike Algi(カザフスタン)
- 第3位 Rakhil Mussakhojayeva(カザフスタン)、Aleksei Stychkin(ロシア)、Zhenyi Jiang(中国)
(チェロ部門)
- 第1位 北村陽(日本)
- 第2位 Namisa Sun(中国)
- 第3位 Yeeun Kang(韓国)
第11回(2023年) モスクワとサンクトペテルブルク
編集- 入賞者一覧[1]
歴代入賞者・参加者のその後の活躍(国際コンクール上位入賞者)
編集- ジェニファー・コウ(「第1回・モスクワ」ヴァイオリン:第1位 →「第10回チャイコフスキー国際コンクール」第2位(第1位該当なし)・1994年)
- アレクセイ・ナビウリン(「第1回・モスクワ」ピアノ:第3位→「第12回チャイコフスキー国際コンクール」第2位及び特別賞・2002年)
- アレクサンドル・チャウシャン(「第1回・モスクワ」チェロ:第3位→「第12回チャイコフスキー国際コンクール」第3位・2002年)
- 上原彩子(「第2回・仙台」ピアノ:第2位 →「第12回チャイコフスキー国際コンクール」第1位・2002年 ピアノ部門日本人初、かつ女性として世界初)
- ナレク・アフナザリャン(「第5回・倉敷」チェロ:第4位→「第13回チャイコフスキー国際コンクール」第5位・2007年)
- 有希・マヌエラ・ヤンケ(「第5回・倉敷」ヴァイオリン:エントリーのみ→「第13回チャイコフスキー国際コンクール」第3位・2007年)
その他の国際コンクール
編集- タチヤーナ・ワシーリエワ(「第1回・モスクワ」チェロ:第2位→ロストロポーヴィチ国際チェロコンクール第1位・2001年)
- クラウディオ・ボホーケス(「第1回・モスクワ」チェロ:第3位→カザルス国際コンクール第1位・2000年)
- ヴァシーリー・プリマコフ(「第2回・仙台」ピアノ:第3位→クリーブランド国際ピアノコンクール第2位・1999年)
- 松山冴花(「第2回・仙台」ヴァイオリン:第2位→エリザベート王妃国際音楽コンクール第4位・2005年)
- モニカ・レスコヴァル(「第2回・仙台」チェロ:第1位→ロストロポーヴィチ国際チェロコンクール第3位・1997年)
- ニー・タオ(「第2回・仙台」チェロ:第3位→アーヴィング・M・クライン国際弦楽コンクール第2位・2003年)
- ピョートル・オフチャロフ(「第3回・サンクトペテルブルク」ピアノ:第2位→国際ベートーヴェンコンクール第3位・2005年)
- ソン・ヨルム(「第3回・サンクトペテルブルク」ピアノ:第2位→ヴァン・クライバーン国際ピアノコンクール第2位・2009年)
- Hyuk Joo KWOH (「第3回・サンクトペテルブルク」ヴァイオリン:第2位→パガニーニ・モスクワ国際ヴァイオリンコンクール第2位・2004年)
- チャン・ハオチェン(「第4回・アモイ」ピアノ:第1位→ヴァン・クライバーン国際ピアノコンクール第1位・2009年)
- Ye-eun CHOI(「第4回・アモイ」ヴァイオリン:第2位→インディアナポリス国際ヴァイオリンコンクール第5位・2006年)
- エレーナ・セミョーノワ(「第4回・アモイ」ヴァイオリン:第3位→パガニーニ・モスクワ国際ヴァイオリンコンクール第1位・2003年)
- Bonian TIAN(「第4回・アモイ」チェロ:第1位→アントニオ・ヤニグロ・チェロ国際コンクール第2位・2008年)
- Seung-min KANG(「第4回・アモイ」チェロ:第2位→第3回ヨハンセン国際コンクール第1位・2003年)
- 上野通明(「第6回・水原」チェロ:第1位→第21回ブラームス国際コンクール第1位・2014年)
など
参考文献
編集- 第5回若い音楽家のためのチャイコフスキー国際コンクール組織委員会編「倉敷から翔び立つ未来の巨匠たち」
脚注
編集出典
編集- ^ “(UPDATED!) Winners of the XI International Tchaikovsky Competition for Young Musicians have been named”. en.tchaikovsky-competition.net. en.tchaikovsky-competition.net (2023年1月14日). 2023年2月26日閲覧。