汽力発電
汽力発電(きりょくはつでん,Steam power generation)とは、高圧の水蒸気でタービン発電機を回し、電力へ変換する発電方法である[1][注釈 1]。火力発電のほか[注釈 2]、原子力発電、地熱発電、太陽熱発電などでも利用される[3][4]。
構成要素
編集蒸気の種類
編集汽力発電で用いる熱媒体には水が用いられる。用いる水の圧力と温度によって、発電システムは亜臨界圧、超臨界圧、超々臨界圧などに分けられる(超臨界圧以降は超臨界水)[5]。火力発電においては超臨界水を用いるものが存在するものの、2022年現在、地熱発電や原子力発電においては超臨界水を用いる商業発電所は存在せず[6]、実用研究が行われている状況である(超臨界圧軽水冷却炉を参照)。
類似の発電システムには水以外の作動流体を用いたものも存在する。構成要素としては熱源と作動流体以外は汽力発電とほぼ同様である。 海洋温度差発電においてはアンモニア、冷熱発電においては液化天然ガスなどの沸点の低い媒体が使用される。 熱媒体を超臨界状態の二酸化炭素とした発電システムも実用化に向けた研究が行われている[7][8]。
歴史
編集- 1887年 - 日本初の発電所が営業開始、発電方式は蒸気往復機関である(広義の汽力発電)[9]。
- 1904年 - 現在の汽力発電の主流である蒸気タービン式発電が日本で初めて稼働[10]。
- 1943年 - 汽力発電ではない火力発電の方式として、日本初の発電用ガスタービンが開発された[11]。
- 1966年 - 日本初の商用原子力発電所が運転を開始(火力以外の熱源)[12]。
- 1966年 - 日本初の地熱発電所が運転を開始(火力以外の熱源)[13]。
- 1981年 - 研究(サンシャイン計画)用の太陽熱発電施設が建設(火力以外の熱源)[14]。
- 1993年 - 日本国内で初の超臨界圧発電が稼働[15]。
脚注
編集注釈
編集- ^ 汽力発電は原義としては水蒸気を用いる発電方法一般を指すものの[2]、21世紀現在では蒸気往復機関は廃れており蒸気タービンによるものを指す。
- ^ 用例上は火力発電の一方式とされることが多い[1]。火力発電所#汽力発電所も参照。
出典
編集- ^ a b “汽力発電 - 火力発電 | 電気事業連合会”. 2022年9月13日閲覧。
- ^ 工業常識普及会 編 (1933年). 工業通論. pp. 85-95
- ^ “発電方法の種類・しくみ”. 2022年9月13日閲覧。
- ^ “九州電力 大岳地熱発電所の発電を開始しました -2020年9月1日から試運転による発電を開始-”. 2022年9月13日閲覧。
- ^ “非効率石炭火力発電をどうする?フェードアウトへ向けた取り組み|スペシャルコンテンツ|資源エネルギー庁”. 2022年9月14日閲覧。
- ^ “超臨界地熱発電への期待”. 2022年9月14日閲覧。
- ^ “水蒸気の10倍のエネルギーで発電する「超臨界CO2タービン」技術:米研究者が開発”. 2022年9月14日閲覧。
- ^ “超臨界CO2ガスタービン発電システム開発|TED 熱技術開発株式会社”. 2022年9月14日閲覧。
- ^ “理工電子資料館:エジソンダイナモ”. 2022年9月14日閲覧。
- ^ “機械遺産Mechanical Engineering Heritage”. 2022年9月14日閲覧。
- ^ “東芝未来科学館:日本初の発電用ガスタービンを完成”. 2022年9月14日閲覧。
- ^ “日本における原子力の平和利用のこれまでとこれから|原子力|スペシャルコンテンツ|資源エネルギー庁”. 2022年9月14日閲覧。
- ^ “日本で最初に運転を開始した地熱発電所|東北電力”. 2022年9月14日閲覧。
- ^ “日本最小の県が30年前に挑んだメガソーラー、技術の進化で再生:日本列島エネルギー改造計画(37)香川 - スマートジャパン”. 2022年9月14日閲覧。
- ^ “戦後日本のイノベーション100選 現代まで 高効率石炭火力発電”. 2022年9月14日閲覧。