栗太郡
日本の滋賀県(近江国)にあった郡
郡域
編集1879年(明治12年)に行政区画として発足した当時の郡域は、下記の区域にあたる。
2010年(平成22年)の国勢調査に基づく面積は239.20k㎡、人口は304,656人。[1]
古代
編集『和名類聚抄』などでは「栗本郡」とも記される。はじめは「くりもとぐん」と呼ばれていたが、やがて「くりたぐん」と変化した。大宝律令での格は下郡。古代には近江国府が郡内の勢多(瀬田)に置かれた。
郡衙
編集- 岡遺跡 (栗東市岡、北緯35度00分37.19秒 東経135度59分07.31秒)
- 大規模な建物跡や多数の出土品から栗太郡衙跡に比定される。南北300m、東西500m以上に広がる。
郷
編集『和名類聚抄』に記される郡内の郷は次の通り。かっこ内は訓読み。なお和名抄では栗本(久留毛止)と表記される。
- 物部郷(毛乃倍)
- 治田郷(発多)
- 木川郷(木乃加波)
- 勢多郷
- 梨原郷(奈之波良)
神社
編集『延喜式神名帳』には、以下に示す大社2座2社・小社6座6社の計8座8社が記載されている(栗太郡八座)。大社2社は名神大社である。
- 蘆井神社 - 五百井神社(栗東市下戸山)
- 意布伎神社 - 現在不詳
- 小槻大社 - 栗東市下戸山。
- 小槻神社 - 草津市青地町。
- 高野神社 - 栗東市高野。
- 印岐志呂神社 - 草津市片岡町。
- 佐久奈度神社 - 大津市大石中。名神大社。
- 建部神社 - 建部大社(大津市神領)。近江国一宮。名神大社。
郡司
編集中世以降
編集鈎の陣
編集長享年間(1487年-1489年)には、室町将軍足利義尚が六角高頼を討伐するための陣所を栗太郡の鈎[4]に構えた(
近世以降の沿革
編集幕末の知行
知行 | 村数 | 村名 | |
---|---|---|---|
幕府領 | 幕府領 | 10村 | ●○荒張村、○馬場村、野尻村、市川原村、志那新田、吉田新田、志那中新田、下寺村、下寺新田、下物新田 |
旗本領 | 5村 | ○上砥山村、大路井村、霊仙寺村、浮気村、横江村 | |
幕府領・旗本領 | 8村 | 阿村、綣村、新堂村、駒井沢村、志那村、吉田村、大萱村(現・草津市)、穴村 | |
藩領 | 近江膳所藩 | 55村 | 曽束村、小田原村、竜門村、大石中村、淀村、東村、富川村、関津村、太子村、黒津村、里村、今村新田、枝村、○森村、○牧村、堂村、新免村、○平野村、芝原村、石居村、稲津村、中野村、○桐生村、○大鳥居村、山寺村、○井上村、○金勝中村、○岡本村、追分村、奥村新田、丸尾新田、野路村、岡村、●草津村[6]、矢倉村、林村、辻村、中沢村、渋川村、笠川村、北中小路村、勝部村、十里村、木川村、北山田村、南山田村、御倉村、矢橋村、大萱村(現・大津市)、新浜村、大萱新田、大江村、神領村、橋本村、栗林新田 |
山城淀藩 | 6村 | 坊袋村、上鈎村、寺内村、焔魔堂村、二町村、上寺村 | |
上野前橋藩 | 4村 | 安養寺村、今里村、小坂村、下物村 | |
近江三上藩 | 2村 | 西目川村、東目川村 | |
丹後宮津藩 | 1村 | 今宿村 | |
河内狭山藩 | 1村 | 川原村 | |
膳所藩・伊勢菰野藩 | 2村 | 羽栗村、南笠村 | |
膳所藩・淀藩 | 1村 | 上山依村 | |
淀藩・菰野藩 | 1村 | 上笠村 | |
幕府領・藩領 | 幕府領・膳所藩 | 6村 | 東坂村、○観音寺村[7]、下戸山村、千代村、大門村、下笠村 |
幕府領・膳所藩・前橋藩 | 2村 | 六地蔵村、伊勢落村 | |
幕府領・淀藩 | 2村 | 小柿村、小野村 | |
幕府領・狭山藩 | 1村 | 野村 | |
幕府領・旗本領・膳所藩 | 2村 | 集村、志那中村 | |
幕府領・旗本領・膳所藩・淀藩 | 1村 | 平井村 | |
幕府領・旗本領・前橋藩 | 3村 | 伊勢村、大橋村、半苅村 | |
幕府領・旗本領・三上藩 | 1村 | 手原村 | |
旗本領・膳所藩 | 5村 | ○片岡村[7]、○部田村[7]、川辺村、下鈎村、長束村 | |
旗本領・膳所藩・淀藩 | 2村 | 出庭村、古高村 | |
旗本領・淀藩 | 1村 | 小平井村 | |
旗本領・前橋藩 | 1村 | 土村 | |
旗本領・狭山藩・和泉伯太藩 | 1村 | 蜂屋村 | |
その他 | 寺社領 | 1村 | 芦浦村 |
- 慶応4年
- 明治2年12月26日(1869年11月24日) - 狭山藩が廃藩。管轄地域が大津県の管轄となる。
- 明治3年
- 明治4年
- 明治5年(123村)
- 明治7年(1874年)(110村)
- 5月
- 金勝中村・上山依村が合併して御園村となる。
- 下物新田が下物村に合併。
- 市川原村・半苅村が合併して苅原村となる。
- 今里村・小坂村・土村が合併して高野村となる。
- 西目川村・東目川村が合併して目川村となる。
- 志那新田・吉田新田・吉田村が志那村に、志那中新田が志那中村に、下寺新田が下寺村に、今村新田が森村に、寺内村が上鈎村にそれぞれ合併。
- 2ヶ所存在した大萱村が、北大萱村(現・草津市)、南大萱村(現・大津市)にそれぞれ改称。
- 大萱新田が改称して月輪村となる。
- 5月
- 明治12年(1879年)5月16日 - 郡区町村編制法の滋賀県での施行により、行政区画としての栗太郡が発足。「栗太野洲郡役所」が草津村に設置され、野洲郡とともに管轄。
- 明治15年(1882年)(112村)
- 4月 - 北山田村の一部(元浜)が分立して山田村となる。
- 矢橋村の一部が分立して橋岡村となる。
町村制以降の沿革
編集- 明治22年(1889年)4月1日 - 町村制の施行により、以下の町村が発足。(15村)
- 草津村 ← 草津村、矢倉村、大路井村(現・草津市)
- 大石村 ← 曽束村、小田原村、竜門村、淀村、大石中村、東村、富川村(現・大津市)
- 下田上村 ← 羽栗村、森村、枝村、里村、石居村、稲津村、黒津村、太子村、関津村(現・大津市)
- 上田上村 ← 牧村、平野村、中野村、芝原村、堂村、新免村、桐生村、大鳥居村(現・大津市)
- 志津村 ← 馬場村、山寺村、岡本村、部田村、追分村(現・草津市)
- 金勝村 ← 井上村、東坂村、御園村、荒張村、上砥山村、観音寺村(現・栗東市)
- 葉山村 ← 伊勢落村、林村、六地蔵村、小野村、手原村、大橋村、出庭村、辻村、高野村(現・栗東市)
- 治田村 ← 岡村、目川村、坊袋村、川辺村、安養寺村、上鈎村、下鈎村、小柿村、下戸山村、中沢村(現・栗東市)、渋川村(現・草津市)
- 大宝村 ← 蜂屋村、野尻村、綣村、苅原村、笠川村、小平井村、霊仙寺村、北中小路村、十里村(現・栗東市)
- 物部村 ← 浮気村、勝部村、今宿村、焔魔堂村、阿村、伊勢村、二町村、古高村、大門村、横江村、千代村(現・守山市)
- 常盤村 ← 長束村、上寺村、片岡村、下寺村、下物村、芦浦村、穴村、志那村、志那中村、北大萱村(現・草津市)
- 笠縫村 ← 下笠村、上笠村、集村、駒井沢村、川原村、野村、平井村、新堂村(現・草津市)
- 山田村 ← 北山田村、山田村、南山田村、御倉村、木川村(現・草津市)
- 老上村 ← 野路村、南笠村、新浜村、矢橋村、橋岡村(現・草津市)
- 瀬田村 ← 大江村、橋本村、神領村、南大萱村、月輪村、栗林新田(現・大津市)
- 明治28年(1895年)6月22日 - 草津村が町制施行して草津町となる。(1町14村)
- 明治31年(1898年)4月1日 - 郡制を施行。郡役所が草津町に設置。
- 大正12年(1923年)4月1日 - 郡会が廃止。郡役所は存続。
- 大正15年(1926年)7月1日 - 郡役所が廃止。以降は地域区分名称となる。
- 昭和2年(1927年)1月1日 - 瀬田村が町制施行して瀬田町となる。(2町13村)
- 昭和16年(1941年)7月10日 - 物部村が野洲郡守山町と合併し、改めて野洲郡守山町が発足。(2町12村)
- 昭和26年(1951年)4月1日 - 大石村・下田上村が大津市に編入。(2町10村)
- 昭和29年(1954年)
- 昭和30年(1955年)4月1日 - 瀬田町・上田上村が合併し、改めて瀬田町が発足。(2町)
- 昭和31年(1956年)9月1日 - 栗東町の一部(渋川)が草津市に編入。
- 昭和42年(1967年)4月1日 - 瀬田町が大津市に編入。(1町)
- 平成13年(2001年)10月1日 - 栗東町が市制施行して栗東市となる。同日栗太郡消滅。滋賀県内では1897年の郡の再編以来初の郡消滅と同時に、21世紀初の郡消滅となった。
変遷表
編集自治体の変遷
明治22年(1889年)4月1日 | 明治22年(1889年) - 大正15年(1926年) | 昭和1年(1926年) - 昭和29年(1954年) | 昭和30年(1955年) - 昭和64年(1989年) | 平成1年(1989年) - 現在 | 現在 | |
---|---|---|---|---|---|---|
物部村 | 物部村 | 昭和16年(1941年)7月10日 野洲郡 守山町の一部 |
昭和45年(1970年)7月1日 守山市 |
守山市 | 守山市 | |
治田村 | 治田村 | 昭和29年(1954年)10月1日 栗東町 |
栗東町 | 平成13年(2001年)10月1日 栗東市 |
栗東市 | |
大宝村 | 大宝村 | |||||
葉山村 | 葉山村 | |||||
金勝村 | 金勝村 | |||||
草津村 | 明治28年(1895年)6月22日 町制施行 草津町 |
昭和29年(1954年)10月15日 草津市 |
草津市 | 草津市 | 草津市 | |
常盤村 | 常盤村 | |||||
笠縫村 | 笠縫村 | |||||
山田村 | 山田村 | |||||
老上村 | 老上村 | |||||
志津村 | 志津村 | |||||
瀬田村 | 瀬田村 | 昭和2年(1927年)1月1日 町制施行 瀬田町 |
昭和30年(1955年)4月1日 瀬田町 |
昭和42年(1967年)4月1日 大津市に編入 |
大津市 | 大津市 |
上田上村 | 上田上村 | 上田上村 | ||||
下田上村 | 下田上村 | 昭和26年(1951年)4月1日 大津市に編入 |
大津市 | |||
大石村 | 大石村 |
行政
編集- 栗太・野洲郡長
代 | 氏名 | 就任年月日 | 退任年月日 | 備考 |
---|---|---|---|---|
1 | 明治12年(1879年)5月16日 | 明治11年(1879年)5月6日までは、京都府宇治郡長も兼任 | ||
明治31年(1898年)3月31日 | 廃官 |
- 栗太郡長
代 | 氏名 | 就任年月日 | 退任年月日 | 備考 |
---|---|---|---|---|
1 | 明治31年(1898年)4月1日 | |||
松田宗寿 | ||||
大正15年(1926年)6月30日 | 郡役所廃止により、廃官 |
脚注
編集参考文献
編集- 「角川日本地名大辞典」編纂委員会 編『角川日本地名大辞典』 25 滋賀県、角川書店、1979年4月1日。ISBN 404001250X。
- 旧高旧領取調帳データベース
- 中川泉三編『近江栗太郡志』(名著出版、1972年)