サンヴァラ系タントラ
(勝楽タントラから転送)
サンヴァラ系タントラ(サンヴァラけいタントラ)とは、仏教の後期密教経典、いわゆる無上瑜伽タントラの中の一群の総称。
母タントラの先駆である『サマーヨーガ・タントラ』(Samayoga Tantra) (通称「サンヴァラ」(Samvara)) を参照しつつ、その内容を換骨奪胎しながら成立した[1]。同じく母タントラに分類されるヘーヴァジュラ系統と双璧を成す。
9世紀後半の『チャクラサンヴァラ・タントラ』(『ラグサンヴァラ・タントラ』)を嚆矢として、それに連なる様々なタントラが作られた。
「サンヴァラ」の意味は、一般的には「至福」を意味すると解釈される。そのため漢字では、「勝楽」「最勝楽」等と訳される。また他方では、「秘すること」「守ること」という意味に解釈されることもある[2]。
サンヴァラ系タントラ一覧
編集サンヴァラ系タントラに分類される主な経典は以下の通り[3]。
第1期
編集- 『チャクラサンヴァラ・タントラ』(Cakrasamvara Tantra、勝楽タントラ) (『ラグサンヴァラ・タントラ』(Laghusamvara Tantra))
第2期
編集- 『アビダーノーッタラ・タントラ』(Abhidanottara Tantra)
- 『サンプトードバヴァ・タントラ』(Samputodbhava Tantra)
- 『ヘールカービュダヤ・タントラ』(Herukabhyudaya Tantra)
- 『ヨーギニーサンチャーラ・タントラ』(Yoginisamcara Tantra)
- 『ヴァジュラダーカ・タントラ』(Vajradaka Tantra)
第3期
編集- 『サンヴァローダヤ・タントラ』(Samvarodaya Tantra、最勝楽出現タントラ)
- 『ダーカールナヴァ・タントラ』(Dakarnava Tantra)
- 『ヴァーラーヒーカルパ・タントラ』(Varahikalpa Tantra)
- 『ジュニャーノーダヤ・タントラ』(Jnanodaya Tantra)
- 『ヨーギニージャーラ・タントラ』(Yoginijala Tantra)
脚注
編集参考文献
編集- 杉木恒彦『サンヴァラ系密教の諸相―行者・聖地・身体・時間・死生』東信堂、2007年8月。ISBN 978-4887137738。
- 田中公明「『金剛場荘厳タントラ』 の成立とインド密教史上における位置」『東洋文化研究所紀要』第152巻、東方研究会、2007年12月、doi:10.15083/00026957、ISSN 05638089、NAID 120000870364、2022年2月27日閲覧。