ル・ファンタスク級大型駆逐艦

ル・ファンタスク級大型駆逐艦

洋上のル・ファンタスク
艦級概観
艦種 大型駆逐艦
就役開始 1935年
退役完了 1964年(ル・マラン)
前級 ヴォークラン級大型駆逐艦
次級 モガドール級大型駆逐艦
性能諸元
排水量 基準 2,569トン
満載 3,200トン
全長 132.4m
全幅 11.98m
吃水 4.3m
機関 重油専焼水管缶4基
+ギヤード・タービン2基2軸推進
出力 定格:74,000shp
最大:100,000shp
速力 37.0ノット(69km/h)
航続距離 17ノット/3,560海里(6,600km)
34ノット/(1,200km)
乗員 220名
兵装 13.8cm単装速射砲 5門
3.7cm連装機関砲 2基4門
13.2mm連装機銃 2基4門
55cm3連装発射管 3基9門
機雷 40~50発
改装後
40mm機関砲 8門
20mm機関砲 8~10門
表記
日本語 ル・ファンタスク級大型駆逐艦
仏語 Contre-Torpilleur de classe Le Fantasque
英語 Le Fantasque Class (Large) Destroyer

ル・ファンタスク級大型駆逐艦Contre-Torpilleur de classe Le Fantasque、Le Fantasque Class Destroyer)は、フランス海軍が建造した大型駆逐艦の艦級で6隻が就役した。

概要

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本級は1930年度計画によって建造された、ヴォークラン級大型駆逐艦に続くジャグアー級大型駆逐艦の準同型艦である。前級のヴォークラン級に対してボイラーが1基減じられ、4本だった煙突も排煙路を2本に集束した集合煙突の2本にされた。また砲身も長砲身型の13.8cm(50口径)速射砲に改められ、従来のジャグアー級の後継艦とは一変したシルエットとなった。

艦形

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1935年に撮られた「ル・ファンタスク」。

本級の船体形状は艦首のみ乾舷の高い短船首楼型船体である。クリッパー型の艦首から前部甲板上に、主砲の「1929年型 13.9cm(50口径)速射砲」を防盾の付いた単装砲架で背負い式配置で2基。2番主砲塔の基部から上部構造物が始まり、その上に上部に測距儀を載せ、両脇に船橋(ブリッジ)を付けた箱型の操舵艦橋が立ち、それを基部として簡素な単脚式の前部マストが立つ。

 
1944年に撮られた「ル・ファンタスク」。

船体中央部には前後に離された2本煙突が立ち、55cm魚雷発射管が三連装で1番・2番煙突の側面に片舷1基ずつと2番煙突の背後に1基の計3基で片舷あたり6門が向けられた。煙突の周囲は艦載艇置き場となっており、1番煙突の側面に片舷1基ずつのクレーン計2基により運用された。副武装である3.7cm連装機関砲は2番煙突の側面に片舷1基ずつ計2基が配置された。軽量化のために後部マストは存在せず、2番煙突の左右にヤードを付けて、前部マストからの無線のアンテナ線を展開した。その2番煙突の背後に後部指揮所が設けられ、後部甲板上に上部構造物が設けられ、後部見張り所を挟んで3番・4番主砲が背中合わせに2基が配置。そこから後部甲板上に5番主砲が後ろ向きに1基の計5基が配置されていた

兵装

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1943年に撮られた自由フランス海軍に所属時代の「ル・ファンタスク」。前部マストが多脚化されており、上部にレーダーのアンテナを新設している。

主砲

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主砲は新設計の「1929年型 13.9cm(45口径)速射砲」である。その性能は40.6kgの砲弾を仰角30度で20,000mという射程を得ていた。この砲を単装砲架で5基を搭載した。俯仰能力は仰角30度・俯角10度である。旋回角度は単体首尾線方向を0度として左右150度の旋回角度を持つ。発射速度はカタログデーターは毎分7発である。

備砲、魚雷兵装

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1942年に撮られた「ル・ファンタスク」。ほぼ就役時の姿である。

対空火器として「オチキス 3.7cm(50口径)機関砲」を採用した。その性能は2.8kgの砲弾を仰角45度で7,150m、最大仰角で高度4,200mまで届かせる能力があった。これを連装砲架で2基を搭載した。砲架の俯仰能力は仰角80度・俯角15度である。旋回角度は360度の旋回角度を持つが実際は上部構造物により射界を制限された。発射速度は毎分42発である。

 
本級にも搭載された13.2mm連装機銃。

他に近接火器として「オチキス 13.2mm(76口径)機関砲」を採用した。その性能は51gの砲弾を仰角45度で7,200m、最大仰角で高度5,500mまで届かせる能力があった。これを連装砲架で2基を搭載した。砲架の俯仰能力は仰角90度・俯角10度である。旋回角度は360度の旋回角度を持つが実際は上部構造物により射界を制限された。発射速度は毎分450発である。他に主砲では手に負えない相手への対抗として55cm魚雷発射管を三連装で計3基装備した。

就役後の武装変換

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写真は「ル・トリオンファン」にも搭載された「Mark V 10,2cm(45口径)高角砲。」
 
写真は「ル・トリオンファン」にも搭載されたトライバル級駆アシャンティ(HMS Ashanti)」の「ヴィッカーズ 12.7mm(62口径)四連装機関銃」。

就役後の1941年に「ランドンターブル」は3.7cm機関砲を連装砲架で3基を追加した。

自由フランス海軍の「ル・トリオンファン」は1940年に4番主砲である13.9cm速射砲1基を撤去し、代わりにイギリス製の「10.2cm(45口径)高角砲」を単装砲架で1基を搭載した。更に近接火器として「ヴィッカース 4cm(39口径)ポンポン砲」を単装砲架で2基、同「ヴィッカーズ 12.7mm(62口径)機関銃」を四連装砲架で1基、同連装砲架で2基、単装砲架で2基を搭載した。1942年に「ル・トリオンファン」は「エリコン 2cm(76口径)機銃を単装砲架で7基を搭載した。

1943年から1944年にかけて「ル・ファンタスク」「ル・テリブル」「ル・マラン」「ル・トリオンファン」は近代化改装が行われた。このうち「ル・ファンタスク」「ル・テリブル」は3.7cm連装機関砲2基と13.2mm連装機銃2基と55cm三連装魚雷発射管1基を撤去し、新たに対空火器として「ボフォース 4cm(56口径)機関砲」を四連装砲架で1基を搭載し、エリコン 2cm単装機銃8基(「ル・マラン」「ル・トリオンファン」は10基)を追加。またレーダーの搭載と燃料タンクを530トンから730トンへの増設を行った。

機関

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白波を蹴立てて高速航行中の「ル・トリオンファン」

本級の機関は重油専焼水管缶4基とギヤード・タービン2基2軸推進で出力74,000馬力で常用37.0ノットを発揮した。 ボイラーはエーグル級「ミラン」および「ペルヴィイ」に搭載された新型ボイラーを採用した。公試運転においてネームシップの「ル・ファンタスク」が42.72ノット。「ル・テリブル」は45.02kt( 83.0km/h)を記録している。このとき機関出力は100,000馬力に到達した他、44.9ktで1時間巡航した際には94,200馬力を発揮している。

機関構成は性能の比較のために各艦で異なっており、「ル・マラン」「ル・トリオンファン」はペノエ式重油専焼水管缶とパーソンズ式ギヤード・タービン。「ローダシュー」「ル・ファンタスク」はボイラーはペノエ式だが推進機関はラテュ・ブルターニュ式ギヤード・タービンである。「ル・テリブル」のみヤーロー式重油専焼水管4基とラテュ・ブルターニュ式ギヤード・タービンの組み合わせであった。

艦歴

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第二次世界大戦において、「ローダシュー」がダカール沖海戦においてオーストラリア海軍の「オーストラリア」から8インチ砲の砲撃を受け大破、後にドイツ海軍によって再就役が試みられるも1943年5月7日に連合軍爆撃により大破し、再就役は断念された。また、「ランドンターブル」は1942年11月27日、トゥーロンで自沈した。

残る4隻は、イギリスによる捕獲後、1943年から軽巡洋艦の代わりに自由フランス軍によって運用され、大戦後もフランス海軍に所属。1964年に最後の1隻となった「ル・マラン」が除籍された。

同型艦

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艦名 起工 進水 就役 除籍
ル・ファンタスクLe Fantasque 1931年11月 1934年3月15日 1936年3月 1957年5月2日
ル・トリオンファンLe Triomphant 1931年8月 1934年4月16日 1936年5月 1954年12月
ル・マランLe Malin 1931年11月 1933年8月17日 1936年5月 1964年2月
ローダシューL'Audacieux 1931年11月 1934年3月15日 1935年11月 1943年5月7日戦没
ル・テリブルLe Terrible 1931年12月 1933年11月30日 1935年4月 1962年6月
ランドンターブルL'Indomptable 1932年1月 1933年12月7日 1936年2月 1942年11月27日自沈

参考図書

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  • 世界の艦船 増刊第17集 第2次大戦のフランス軍艦」(海人社
  • 「世界の艦船増刊第50集 フランス巡洋艦史」(海人社)
  • 「Conway All The World's Fightingships 1922-1946」(Conway)

関連項目

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外部リンク

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