モバHO!
モバHO!(モバホ!)とは、2000年代に日本で放送されていた、放送衛星MBSatを利用した移動体向けマルチメディア放送(2.6GHz帯衛星デジタル音声放送)の愛称である。正式名称及び運営会社名は「モバイル放送」[1]。
モバHO! MobaHo! | |
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種別 | 超短波放送(デジタル放送) |
放送対象地域 | 日本国内 |
コールサイン | JO900-SB-DS |
放送期間 | 2004年10月20日 - 2009年3月31日 |
運営会社 | モバイル放送株式会社 |
本社 |
〒140-0014 東京都中央区銀座5-2-1 銀座東芝ビル7階 |
親局 / 出力 | 2642.5MHz / 1215W |
主な中継局 | 首都圏の鉄道沿線を中心に、ギャップフィラー多数 |
株主 |
東芝(39.2%) SKテレコム(13.6%) トヨタ自動車株式会社(5.7%) NTTデータ(3.2%) 日本テレビ放送網(3.0%) (2003年7月現在) |
特記事項:地球局の所在地は、東京都品川区大井1丁目28-1 住友不動産大井町駅前ビル。 呼び出し名称は、MBCOえいせいデジタルおんせいほうそう。 |
概要
編集モバHO!は、専用の携帯端末を用いることで、日本全国で有料の衛星放送を視聴することができるというシステムで、スカパー!やケーブルテレビで放送されている人気チャンネルを8チャンネル、音声番組を40チャンネル、そしてデータ放送を配信していた[2]。
2004年10月20日にサービスを開始し、サービス開始3年後の2007年に会員数を最低でも150万、目標は200万としており、海外進出の展望もあったが[1]、2006年にサービスが開始されたワンセグと競合。ワンセグはカーナビや携帯電話に搭載されたことで普及したが、一方のモバHO!は2008年時点で会員数は約10万と伸び悩み、赤字を改善できず事業継続を断念した[2]。
運営会社
編集モバHO!は東芝を筆頭株主とし、88社が出資するモバイル放送株式会社により運営された。2007年に東芝の子会社となった。
システム概要
編集従来の衛星放送は家屋などに固定したアンテナで受信する、固定受信局向けの放送である。放送衛星は高度約36,000kmの静止軌道から、12GHz帯(Kuバンド)を用いて100〜200W程度の送信出力で放送する。
従来のシステムでは、この放送波を受信するためはパラボラアンテナのような高利得アンテナを用いる必要がある。こうした高利得アンテナは指向性が鋭いため正確に衛星に向ける必要があり、自動車などの車両に取り付けたアンテナでは受信が困難である。衛星が見通せないトンネル内や地下、高架下では受信ができなかった。
モバHO!のシステムでは放送周波数に2.6GHz帯(Sバンド)を用いる。周波数が1/2になると空間の伝播損失は1/4になり、他の要因とあわせ従来の衛星放送に比べ約1/13のロスで済む。また、衛星側のアンテナとして12m径の高利得アンテナを用いることで実効輻射電力を増加させている。このため受信機のアンテナを小型の無指向性の物にすることができ、受信機を携帯端末サイズにまで小型化することが可能であった。なお携帯端末にはパッチアンテナ(マイクロストリップアンテナ)を採用した。
放送方式は、ITU-R勧告 BS.1547 "Terrestrial component of systems for hybrid satellite-terrestrial digital sound broadcasting to vehicular, portable and fixed receivers in the frequency range 1 400-2 700 MHz"のSystem Eを使用している。
大都市圏向け(札幌・東京・名古屋・大阪・福岡など)のサービスであるが、衛星が見えないトンネル内やビルの谷間ではギャップフィラーを用いて受信可能にする[1]。これは衛星を見通せる場所に設置したアンテナで受信した信号を、衛星からの電波の届かない場所に再送信する中継局である。ギャップフィラーには、S帯の電波を再送信する形式と衛星から通信として送られてくるKu帯のTDMの電波をS帯のDS-CDMに変換して再送信する形式があった。
しかしギャップフィラーの設置されていない日本国内(特に地方)の大半の地域での衛星が見えないトンネル内やビルの谷間での受信環境が良くなく、特に地方のモバイル放送の受信契約者からはギャップフィラーの設置や増設が待たれていた。
モバイル放送の契約者増を図る為には、受信契約者に対する充実した対策やパラボラアンテナのような高利得アンテナを用いない簡便さをアピールするためのコンテンツの充実が望まれた。
放送方式は、日本国内では唯一の直接拡散符号分割多重方式(DS-CDM)を採用している。国際的にITU-R Rec. BO. 1130-4 Digital System Eとして採択されていた。
コールサイン
編集MBSATのモバHO!放送システムに対して、コールサインJO900-SB-DSが総務省関東総合通信局より付与された。
なお、他の日本国内の衛星放送は2007年11月までにチャンネル運営を行う社団とその委託を受けて中継を行う衛星運営企業との上下分離を完了しており、チャンネル運営と衛星運営を兼ねる放送事業者はモバイル放送が唯一となった。
受信機器
編集放送を受信する機器は、携帯型・車載型・PCカード型の3種類が提供された。AVケーブルを接続して普通のテレビでも視聴する事が可能。
当初、携帯型受信機は東芝とシャープがそれぞれ発売した。このうち、東芝製の「モバビジョン」は2006年2月に「リチウムイオンバッテリーパックが膨らみ、バッテリーケースの蓋が閉まらない」というトラブルが起きることが判明したが、その後改善した。この東芝・シャープの製品は生産完了により終息し、モバイル放送社自身がカーキットと呼ばれる車載用、またホームキットという屋内受信用のセットを販売していた。
2006年には携帯電話内蔵型(DoCoMo『MUSIC PORTER X』三菱電機製)やカーナビ内蔵型(トヨタ純正ディーラーオプション)も登場したが携帯電話内蔵型は後に続く機種がなく、事実上MUSIC PORTER Xのみで生産終了した。
2007年6月にはワンセグ放送の視聴も可能な携帯型受信機(アップグレードによりモバイル放送だけでなくワンセグ放送の録画も可能)を新たに販売開始した。
このほかアイリバーの開発した受信機「U:MO」(ユーモ)を、USENが「モバイルUSENクラブ」という会員制サービスでレンタル提供していた。なお、同クラブは2008年2月末日をもって新規入会受付を終了した。U:MOはB20という型式に変更されアイリバーが販売を継続した。
放送品質
編集画質改善(動画圧縮方式の変更)
編集2005年10月から11月にかけて映像チャンネルの圧縮方式をMPEG-4からH.264に段階的に移行し、11月28日からは全ての番組をH.264で送信されるようになった。それに伴い10月から11月にかけて、受信機器では衛星ダウンロードによるソフトウェアの自動あるいは手動更新を行う必要があった。また、PCカード型受信機ではインターネットからのダウンロードで対応した[5]。
サービス
編集2009年3月時点で、モバHO!で提供していたサービスは以下の通り。一部を除いて有料放送である。
なおモバイル放送に与えられている免許は音声放送(超短波放送)であるため、映像放送については簡易動画付という位置づけであった。
映像放送
編集チャンネル | 放送局 | 要素 | 放送日 | 放送終了日 |
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001ch | チャンネルONE | MONDO21や釣りビジョンなどスカパー!の娯楽系チャンネルを軸に編成 | 毎日 | 2009年3月 |
011ch | モバイル.n | NHKニュースや、ディスカバリーチャンネルなどの一部番組を軸に編成
※NHKニュース番組は、首都圏のローカルニュースも含め放送した |
2008年9月 | |
012ch | CNNj | スカパー!と同時放送
※スカパー!向けのものを流用しているため、モバHO!で見ることのできないチャンネル・番組のCMが流れることがあった |
2007年3月 | |
014ch | 日テレNEWS24 | 2009年3月 | ||
015ch | 日経CNBC | 2007年3月 | ||
033ch | TBSチャンネル | 2009年3月 | ||
034ch | アニマックス | |||
035ch | MTV | |||
036ch | Music Japan TV | 平日 | 2009年3月 | |
081ch | グリーンチャンネル | EAST、競馬開催日のみ。平日開催の際はチャンネルONEにて放送した | 土日 |
音声放送
編集有線ラジオ放送『USEN440』の同名のチャンネルを、同時放送。
チャンネル | 放送局 | ジャンル | 放送日 | 放送時間 | 曲名表示 | 放送終了日 |
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401ch | モバHO!401 | プロモーション | 毎日 | あり | 2009年3月 | |
403ch | HMV Japan-COUNTDOWN | 邦楽ヒットチャート | 2008年9月 | |||
404ch | oricon | |||||
405ch | J-POP チャート | 2009年3月 | ||||
406ch | J-POP 2000 | 邦楽年代別 | ||||
407ch | J-POP 90's | |||||
408ch | J-POP 80's | |||||
409ch | J-POP 70's | |||||
413ch | oricon-Artist Special | 邦楽ジャンル別 | 2008年9月 | |||
414ch | J-STREET | 2008年9月 | ||||
415ch | フォーク大全集 | 2009年3月 | ||||
416ch | 演歌 | |||||
417ch | グループサウンズ | 平日 | ||||
431ch | Billboard Station | 洋楽ヒットチャート | 毎日 | 2008年9月 | ||
433ch | Billboard 90's | 洋楽年代別 | ||||
434ch | Billboard 80's | |||||
435ch | Billboard 70's | |||||
436ch | Billboard 60's | |||||
443ch | Billboard Ballads | |||||
446ch | THE ROCK by レッドシューズ | 洋楽ジャンル別 | 0:00〜6:00 | |||
447ch | rockin'on | 2009年3月 | ||||
448ch | BLACK MUSIC STATION | |||||
449ch | レゲエ | |||||
451ch | WPHI-R&B/Hip-Hop | なし | ||||
452ch | KSON-Country | |||||
461ch | CLUB MIX | クラブ | あり | |||
462ch | THE FEELING | ヒーリング | ||||
471ch | THE JAZZ | ジャズ | なし | |||
472ch | KKJZ=Jazz&Blues | |||||
475ch | THE CLASSIC | クラシック | ||||
476ch | WQXR-Classic | |||||
480ch | TOKYO FM | 国内FM | ||||
481ch | J-WAVE | |||||
482ch | FM802 | |||||
483ch | ZIP-FM | |||||
491ch | みんなだいすき♪キッズ・ソング | ファミリー | あり | |||
492ch | おとぎの国の音楽 | 土日 | ||||
493ch | 歌ってあそぼ♪ | 平日 | ||||
494ch | アニラジ | 毎日 | 6:00〜0:00 | |||
499ch | ラジオNIKKEI第2 | 競馬 | 土日 | なし |
データ放送
編集約50タイトル。日本文字放送(テレモ)・東京データネットワーク制作の文字放送と、独自コンテンツからであった。
- 毎日新聞ニュース
- RBB TODAY 速報ニュース
- 各地の天気
- 天気図
- 高速道路交通情報
- スポーツ速報
- スポニチ芸能ニュース
- 新作映画情報
- お出かけイベント情報
- プロに聞く!デジカメ撮影術
- 星座占い
- 詰碁
- 詰将棋
- ナンバーズ3&4結果
- ミニロト&ロト6結果
- 中央競馬速報
- 今日の単語ドリル
- HMV Japan-COUNTDOWN
他
- 携帯型受信機MBR0501A/K/Lでのデータ放送サービスの利用は、2007年8月27日から衛星を使ってのソフトウェア更新により可能となった。
- TOKYO FM、J-WAVE、FM802、ZIP-FMのCMの間はすべてBGMに差し替えられていた。
その他のサービス
編集2009年3月より前に放送を終了したチャンネルについて記載する。
音声放送
編集- モバイル301 - モバHO!のオリジナルチャンネル。ココナッツ娘。のアヤカがDJを担当した番組など。
- 小林克也チャンネル - 小林克也責任選曲及びプロデュース。
- BBCワールドサービス
- KLLY - AC Hot Hits
- K-POP by SBS
他
利用料金
編集- 加入金 2,000円
- 月額基本料金 450円
- 映像チャンネル+音声チャンネル 2,080円
- 映像チャンネル 1,380円
- 音声チャンネル 1,380円
- データ放送 300円
- グリーンチャンネル 1,260円
その他
編集- 全日本空輸が国内線で運航するボーイング777-200型機にモバHO!を導入する事が計画されていた[6]。
脚注
編集- ^ a b c “モバイル放送「モバHO!」、10月20日より本放送開始-新幹線、高速道路でも視聴可能。3年で加入200万人目指す”. インプレス AV Watch (2004年10月4日). 2014年2月4日閲覧。
- ^ a b “「モバHO!」3月末に終了 ワンセグに敗北”. ITmediaニュース (2008年7月29日). 2014年2月4日閲覧。
- ^ “モバHO!2009年3月31日の番組終了時刻について”. モバイル放送 (2009年2月27日). 2009年3月2日時点のオリジナルよりアーカイブ。2014年2月4日閲覧。
- ^ a b “衛星デジタル放送「モバHO!」、専用受信機に加えPC用や車載用も”. nikkei BPnet (2004年12月20日). 2014年2月4日閲覧。[リンク切れ]
- ^ “モバHO!、11月28日から全映像番組をH.264で放送 -対応ファーム配信。高画質/多チャンネル化を”. インプレスAV Watch. (2005年11月25日) 2014年2月4日閲覧。
- ^ “ANA 国内線エンターテイメントに、モバイル放送サービスを導入!”. 全日本空輸・モバイル放送 共同リリース (2004年10月20日). 2014年2月4日閲覧。
関連項目
編集外部リンク
編集- モバHO! - ウェイバックマシン(2008年5月13日アーカイブ分)
- モバHO! 放送サービス終了のお知らせ - ウェイバックマシン(2009年4月9日アーカイブ分)
- 東芝:モバイル放送受信機[モバビジョン] - ウェイバックマシン(2007年6月12日アーカイブ分)
- 東芝科学館 - ニューテクノロジー - ウェイバックマシン(2008年12月31日アーカイブ分)モバイル衛星放送「モバHO!」について。東芝・デジタルメディアネットワーク社担当者との対談。
- モバイルAVプレイヤー - ウェイバックマシン(2004年12月8日アーカイブ分) - シャープ製品。