クモイコザクラ
クモイコザクラ(雲居小桜、学名:Primula reinii var. kitadakensis)は、サクラソウ科サクラソウ属の多年草。コイワザクラ P. reinii var. reinii を分類上の基本種とする変種[2][3][4][5][6]。別名、キヨサトコザクラ[1]。
クモイコザクラ | ||||||||||||||||||||||||||||||
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分類(APG IV) | ||||||||||||||||||||||||||||||
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学名 | ||||||||||||||||||||||||||||||
Primula reinii Franch. et Sav. var. kitadakensis (H.Hara) Ohwi (1953)[1] | ||||||||||||||||||||||||||||||
和名 | ||||||||||||||||||||||||||||||
クモイコザクラ(雲居小桜)[2][3] |
特徴
編集地下にある根茎は細く、数個の葉が束生する。葉には長い葉柄があり、白色の長い軟毛が密生する。葉身は径1.5-4cmの円形になり、基部は心形で、縁は基本種のコイワザクラより深く3分の1ほど裂けて掌状に7-9裂し、裂片に少数の粗い先がとがった鋸歯がある。葉の表面に白い軟毛が生えるが後にほとんど無毛になり、裏面の葉脈上に軟毛が多い。花期には葉は完全に展開していない[2][3][4][5][6]。
花期は5月。花茎は高さ5-10cmになり、先端に1-3個の花を散形につけ、基部には開出した軟毛が生える。花茎の苞は披針形。萼片は長さ5-7mmになり、半ばまで5裂し、無毛。花冠は紫紅色で、花喉部は淡橙黄色、高杯状で径約2cm、先端は5裂して広く開き、裂片の先は約3分の1まで2裂する。花冠筒部の長さは萼片より長い。雄蕊は5個、雌蕊は1個で、雄蕊と雌蕊の長さは株により異なる。果実は蒴果で萼片より少し長い[2][3][4][5][6]。
分布と生育環境
編集日本固有種[4]。本州の秩父山地、八ヶ岳、南アルプス、富士山に分布し[2][3][4][5][6]、高山帯から亜高山帯の湿った岩壁に生育する[2][3][5]。
名前の由来
編集和名クモイコザクラは、「雲居小桜」の意で[2][3]、高地に生える小型のサクラソウの意味[2]。
種小名(種形容語)reinii は、ドイツ人地理学者のヨハネス・ユストゥス・ラインへの献名、変種名 kitadakensis は「北岳の」の意味[7]。タイプ標本の採集地は、南アルプスの鋸岳[1][3]。
種の保全状況評価等
編集絶滅危惧II類 (VU)(環境省レッドリスト)
(2020年、環境省)
ギャラリー
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花冠は紫紅色で、花喉部は淡橙黄色、高杯状で径約2cm、先端は5裂して広く開き、裂片の先は約3分の1まで2裂する。
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先端に1-3個の花を散形につける。花茎の苞は披針形。萼片は半ばまで5裂し、無毛。
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花茎の基部には開出した軟毛が生える。
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葉身は円形になり、基部は心形で、縁は基本種のコイワザクラより深く3分の1ほど裂けて掌状に7-9裂し、裂片に少数の粗い先がとがった鋸歯がある。
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葉には長い葉柄があり、白色の長い軟毛が密生する。裏面の葉脈上に軟毛が多い。
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生育環境。湿った岩壁に生育する。
基本種および変種
編集コイワザクラ
編集コイワザクラ Primula reinii Franch. et Sav. (1878) var. reinii[8] - クモイコザクラの分類上の基本種。多年草。花茎は高さ5-10cmになり、葉の両面に軟毛が生え、葉身は円形から腎円形で、径1.5-4cm、果時には径5-7cmと大きくなる。クモイコザクラより葉の切れ込みが浅く7-9裂し、裂片の先端はとがった小裂片に3-5浅裂する。花は紅紫色から淡紅色、花冠は径1.8-2.5cm、花冠筒部は長さ8-10mmになる。日本固有種で、本州の富士山周辺、箱根、丹沢山、御蔵島、紀伊半島に分布し、山地の岩場に生育する[2][3][4][5][6]。
絶滅危惧II類 (VU)(環境省レッドリスト)
(2020年、環境省)
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クモイコザクラより葉の切れ込みが浅い。
ミョウギコザクラ
編集ミョウギコザクラ Primula reinii Franch. et Sav. var. myogiensis H.Hara (1955)[9] - コイワザクラの変種。別名、ミョウギイワザクラ。多年草。基本種と比べ葉の切れ込みが少ない。葉はごく浅く裂け、歯牙はあまり目立たない。花時の葉の径は3cm、果時には径5cmになる。春先、葉が完全に展開する前に開花する。花は淡紅色で径約2cmになる。日本固有種で、群馬県妙義山周辺に分布し、岩場に生育する[4][5][6]。環境省および群馬県のレッドリストでは、「ミョウギイワザクラ」の名称で選定されている[5]。
絶滅危惧IA類 (CR)(環境省レッドリスト)
(2020年、環境省)
チチブイワザクラ
編集チチブイワザクラ Primula reinii Franch. et Sav. var. rhodotricha (Nakai et F.Maek.) T.Yamaz. (1993)[10] - コイワザクラの変種。多年草。花茎は高さ7-12cmになり、コイワザクラよりやや大型。葉柄や花茎の下部に暗赤色の毛がやや密に生える。葉の両面に軟毛が生え、遅くまで残る。葉身は卵形で、径3cm、果時には径5cmと大きくなる。葉の切れ込みはごく浅く掌状に裂け、裂片は円みをおびて不ぞろいの細かい鋸歯になる。葉の裏面や葉脈は赤みをおびる。花は紅紫色、花冠は径2-2.5cm、花冠筒部は長さ14-18mmになる。日本固有種、埼玉県秩父地方の武甲山特産で、石灰岩地の岩場のみに生育する[2][4][5][6]。変種名 rhodotricha は「淡紅色の毛のある」の意味[7]。同属のイワザクラ P. tosaensis の変種 P. tosaensis Yatabe var. rhodotricha (Nakai et F.Maek.) Ohwi (1954)[11]とされたこともある[6]。
絶滅危惧IA類 (CR)(環境省レッドリスト)
(2020年、環境省)
脚注
編集- ^ a b c クモイコザクラ 「BG Plants 和名-学名インデックス」(YList)
- ^ a b c d e f g h i j 新分類牧野, p. 915-916.
- ^ a b c d e f g h i 山溪ハンディ図鑑8, p. 258.
- ^ a b c d e f g h 日本の固有植物, p. 110.
- ^ a b c d e f g h i 井上健「コイワザクラ」「クモイコザクラ」「ミョウギイワザクラ」「チチブイワザクラ」(絶滅危惧植物図鑑, p. 186-188)
- ^ a b c d e f g h 日本の野生植物4, p. 199.
- ^ a b 新分類牧野, p. 1498,1510.
- ^ コイワザクラ 「BG Plants 和名-学名インデックス」(YList)
- ^ ミョウギコザクラ 「BG Plants 和名-学名インデックス」(YList)
- ^ チチブイワザクラ 「BG Plants 和名-学名インデックス」(YList)
- ^ チチブイワザクラ(シノニム) 「BG Plants 和名-学名インデックス」(YList)
参考文献
編集- 加藤雅啓, 海老原淳『日本の固有植物』11号、東海大学出版会〈国立科学博物館叢書〉、2011年。ISBN 9784486018971。 NCID BB05335652 。
- 永田芳男, 畔上能力, 門田裕一, 菱山忠三郎, 西田尚道『山に咲く花』(増補改訂新版)山と溪谷社〈山溪ハンディ図鑑 2〉、2013年。ISBN 9784635070218。 NCID BB1212727X 。
- 清水建美, 木原浩, 門田裕一『高山に咲く花 : 写真検索』(増補改訂新版 / 門田裕一改訂版監修)山と溪谷社〈山溪ハンディ図鑑 8〉、2014年。ISBN 9784635070300。 NCID BB1651224X 。
- 矢原徹一, 藤井伸二, 伊藤元己, 海老原淳, 永田芳男『レッドデータプランツ : 絶滅危惧植物図鑑 = Red data plants』(増補改訂新版)山と溪谷社、2015年。ISBN 9784635090452。 NCID BB18406640 。
- 大橋広好, 門田裕一, 邑田仁, 米倉浩司, 木原浩「第4巻 アオイ科~キョウチクトウ科、高橋英樹 (2017)「サクラソウ科」」『日本の野生植物』(改訂新版)平凡社、2015年。ISBN 9784582535341。 NCID BB20229435 。
- 牧野富太郎 原著, 邑田仁, 米倉浩司『新分類牧野日本植物図鑑』北隆館、2017年。ISBN 9784832610514。 NCID BB24068622 。
- 米倉浩司・梶田忠 (2003-)「BG Plants 和名-学名インデックス」(YList)
- 日本のレッドデータ検索システム