カズイスチカ
森鴎外の短編小説
あらすじ
編集医学士である花房は、かつて千住で開業医をしていた父親を手伝ったことがあった。つまらない老人にすぎないと思っていた父に、経験に培われた眼と、瑣末な日常のことにも全身全霊を打ち込む有道者の姿勢があることに気がついた彼は一転して父を尊敬するようになった。父の代診として診察した「落架風」(=顎関節脱臼)、「一枚板」(=破傷風)、「生理的腫瘍」の話が、季節の移り変わりとともに回顧される。
概論
編集1911年(明治44年)1月15日脱稿[1]。『三田文学』での発表から2年後の1913年(大正2年)に『分身』に収められて出版された。比較文学者の芳賀徹はこの作品が新井白石の『折たく柴の記』に対する感銘から生まれたと推測している[2]ほか、佐伯彰一も『日本人の自伝』中の新井白石の章で「『折たく柴の記』における、おどろくべく鮮明な父親像は、たとえば鷗外の短編「カズイスチカ」の老医、視点人物たる花房医学士の父の「翁」の扱い、描き方とほとんど重なり合うものである」[3]とした上で両者を比較し、共通のテーマを見出している。
脚注
編集- ^ 竹盛天雄 編『森鷗外必携』學燈社、1990年2月、199頁。ISBN 4-312-00528-1。
- ^ 島田謹二ほか 編『比較文学読本』研究社、1973年、194頁。全国書誌番号:75012886。
- ^ 佐伯彰一『日本人の自伝』講談社〈講談社学術文庫〉、1991年8月、153頁。ISBN 4-06-158984-9。
関連項目
編集外部リンク
編集- 『カズイスチカ』:新字新仮名 - 青空文庫
- 『分身』 - 国立国会図書館デジタルコレクション
- 鷗外文庫中の折たく柴の記写本 - 鷗外文庫書入本画像データベース
- 森鴎外と千住 - 足立区、2018年12月18日