オオコウモリ

翼手目の科、それに属する哺乳類の総称
オオコウモリ亜目から転送)

オオコウモリ(大蝙蝠、英語 megabat)は、コウモリ(コウモリ目、翼手目)の1グループである。大翼手類(だいよくしゅるい、Megachiroptera)。

オオコウモリ
生息年代: 漸新世現世
分類
ドメイン : 真核生物 Eukaryota
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
: 哺乳綱 Mammalia
: コウモリ目(翼手目) Chiroptera
亜目 : Yinpterochiroptera または
オオコウモリ亜目(大翼手亜目) Megachiroptera
上科 : オオコウモリ上科 Pteropodoidea
: オオコウモリ科 Pteropodidae
学名
Pteropodidae Gray1821
和名
オオコウモリ
英名
megabat
亜科

本文参照

オオコウモリ上科 (Pteropodoidea) オオコウモリ科 (Pteropodidae) の1上科1科を構成する。さらに伝統分類ではこの上科のみでオオコウモリ亜目(大翼手亜目)を構成してきたが、系統分類ではYinpterochiroptera亜目の一部となる。

特徴

編集

指の間に張った膜ので空を飛ぶ、いわゆるコウモリであるが、大型のものが多く、翼を広げると2m に達するものもある。コウモリといえばココウモリ類が頭に浮かぶが、翼以外の特徴はかなり異なる。

小型コウモリは反響定位によって飛行するため、は小さくがよく発達する。一方、オオコウモリ類は視覚に頼って飛行するため、目が大きく発達し、耳は小さい。一般的な哺乳類の顔に近いため、英名で Pteropus 属を flying fox 「空飛ぶキツネ」といわれている。

多くが熱帯に分布する。小型コウモリは昆虫など動物質の主食とするものが大半だが、オオコウモリ類は果実花蜜など植物質を主食としている。日本では琉球列島小笠原諸島に分布する。

分類学的位置づけ

編集

伝統分類では、コウモリはオオコウモリ亜目(大翼手亜目、オオコウモリ)とコウモリ亜目(小翼手亜目、ココウモリ)の2亜目に分けられた。

カール・フォン・リンネの時代以来、特にオオコウモリが霊長類に近いという意見があり、「ココウモリとオオコウモリでは、脳と視神経の接続の仕方がまったく異なり、オオコウモリのそれは霊長目および皮翼目(ヒヨケザル目)と同一で、他の哺乳類には見られない独特のものである」ことを根拠に、「ココウモリはトガリネズミ目から進化し、オオコウモリはそれより後に霊長目から進化した」という、コウモリ類2系統説が1986年に提唱された[1]

しかし2000年分子系統により、コウモリはやはり単系統で、なおかつコウモリ亜目は側系統だとわかった。またその系統に基づき、オオコウモリ亜目はコウモリ亜目の一部と共に新設亜目Yinpterochiropteraに分類しなおすことが提案された[2]

分類

編集
オオコウモリ科

Cynopterinae

Macroglossinae

Harpiyonycterinae

Rousettinae

Epomophorinae

Nyctimeninae

Pteropodinae

亜科間の系統関係[3]
 
メガネオオコウモリ
Pteropus conspicillatus

6亜科46属に分類される[4][5]。和名は川田ほか(2018)による[6]

オオコウモリ科 Pteropodidae


出典

編集
  1. ^ Pettigrew J.D.,"Flying primates? Megabats have the advanced pathway from eye to midbrain",Sceience,231,pp 1304-1306,(1986)
  2. ^ M.S. Springer et al. 2001. Integrated fossil and molecular data reconstruct bat echolocation. Proceedings of the National Academy of Sciences, USA 98 (11): 6241-6246. [1]
  3. ^ Agnarsson I, Zambrana-Torrelio CM, Flores-Saldana NP, May-Collado LJ. (2011). “A time-calibrated species-level phylogeny of bats (Chiroptera, Mammalia)”. PLoS Curr.. PMID 21327164. 
  4. ^ a b c d e f g h i j Almeida, F.; Giannini, N. P.; Simmons, N. B. (2016). “The Evolutionary History of the African Fruit Bats (Chiroptera: Pteropodidae)”. Acta Chiropterologica 18: 73–90. doi:10.3161/15081109ACC2016.18.1.003. https://www.researchgate.net/publication/303742900. 
  5. ^ a b c d e f g h i j k Almeida, F. C.; Giannini, N. P.; Desalle, R.; Simmons, N. B. (2011). “Evolutionary relationships of the old world fruit bats (Chiroptera, Pteropodidae): Another star phylogeny?”. BMC Evolutionary Biology 11: 281. doi:10.1186/1471-2148-11-281. PMC 3199269. PMID 21961908. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3199269/. 
  6. ^ 川田伸一郎他 「世界哺乳類標準和名目録」『哺乳類科学』第58巻 別冊、日本哺乳類学会、2018年、1 - 53頁。
  7. ^ Nesi, Nicolas; Tsagkogeorga, Georgia; Tsang, Susan M; Nicolas, Violaine; Lalis, Aude; Scanlon, Annette T; Riesle-Sbarbaro, Silke A; Wiantoro, Sigit et al. (2021-03-04). “Interrogating Phylogenetic Discordance Resolves Deep Splits in the Rapid Radiation of Old World Fruit Bats (Chiroptera: Pteropodidae)”. Systematic Biology 70 (6): 1077–1089. doi:10.1093/sysbio/syab013. ISSN 1063-5157. PMC 8513763. PMID 33693838. https://doi.org/10.1093/sysbio/syab013. 
  8. ^ Gunnell, Gregg F.; Manthi, Fredrick K. (April 2018). “Pliocene bats (Chiroptera) from Kanapoi, Turkana Basin, Kenya”. Journal of Human Evolution 140: 4. doi:10.1016/j.jhevol.2018.01.001. ISSN 0047-2484. PMID 29628118. 

関連項目

編集

外部リンク

編集