オイゲノール (eugenol) はグアイアコールアリル基が置換した構造を持つ、フェニルプロパノイドの一種である。無色から淡黄色の油状液体で、クローブなどの精油に含まれている。水にはわずかに溶け、有機溶媒にはよく溶ける。刺激のある快い芳香を持つ。消防法に定める第4類危険物 第3石油類に該当する[1]

オイゲノール
構造式
識別情報
CAS登録番号 97-53-0
KEGG D04117
特性
化学式 C10H12O2
モル質量 164.20
外観 無色または淡黄色液体
密度 1.066, 液体
融点

−12 から −10

沸点

253

特記なき場合、データは常温 (25 °C)・常圧 (100 kPa) におけるものである。

存在

編集

天然にはクローブ(精油70–95%)、ピメント(精油60–90%)、ローリエ(精油50–60%)、シナモン(皮油5–10%、精油90%以上)などに含まれる。そのほかバジリコバナナナツメグにも含有される。これらの精油から5%水酸化カリウム溶液で抽出される。

用途

編集

香水、香料、精油、殺菌剤麻酔薬などの医薬品に用いられる。かつてはバニリンを合成する際の中間体であるイソオイゲノールの製造に用いられていたが、のちにバニリンはフェノールリグニンから作られるようになった。

酸化亜鉛と練和した酸化亜鉛ユージノール (zinc oxide eugenol, ZOE) は歯科領域で歯の仮封、歯髄の鎮痛消炎や補綴(ほてつ)に使われる。

オイゲノールを含むメトキシフェノールの誘導体は、香料や医薬品のほか、昆虫の誘引剤、紫外線吸収剤、殺生物剤、消毒薬、さらには合成樹脂やゴムの安定化剤・抗酸化剤の製造に利用される。クローブ油は熱帯魚用の麻酔薬としても使われるようになってきている。

オイゲノールはMDMAなどのフェネチルアミン類の密造にも使用される。また、クレテック(チョウジタバコ)の活性成分はオイゲノールとニコチンである。

毒性

編集

過剰に摂取すると、血尿・痙攣・下痢・吐き気・意識喪失・めまい・動悸などの症状があらわれる。皮膚に触れるとアレルギー反応により皮膚炎を起こすことがある[2]

参考文献

編集
  1. ^ 法規情報 (東京化成工業株式会社)
  2. ^ Eugenol Oil Overdose, New York Times Health Guide