水戸市水道低区配水塔
水戸市水道低区配水塔（みとしすいどうていくはいすいとう）は、茨城県水戸市北見町126-14にある給水塔。管理者は水戸市。
| 水戸市水道低区配水塔 | |
|---|---|
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| 情報 | |
| 用途 | 給水塔 |
| 設計者 | 後藤鶴松 |
| 管理運営 | 水戸市 |
| 構造形式 | 鉄筋コンクリート造 |
| 高さ | 21.6m |
| 竣工 | 1932年 |
| 所在地 |
〒310-0061 茨城県水戸市北見町126-14 |
| 座標 | 北緯36度22分40.8秒 東経140度28分32.0秒 / 北緯36.378000度 東経140.475556度座標: 北緯36度22分40.8秒 東経140度28分32.0秒 / 北緯36.378000度 東経140.475556度 |
| 文化財 | 登録有形文化財 |
| 指定・登録等日 | 1996年12月20日 |
概要
高さ21.6メートル、直径11.2メートルの鉄筋コンクリート製給水塔である。水戸市下市地区の住民に安全な水道水を供給するため、水道技師の後藤鶴松の設計で完成した。後藤鶴松はこの作品に思い入れがあったようで、起工式の日に誕生した娘に塔美子と名付けている[1]。
歴史
創設前
水戸の町は、台地にある「上市」と低地にある「下市」に大きく分かれている。江戸期には、飲料水を確保するため、上市では深井戸と湧水を利用し、下市では徳川光圀が1663年(寛文3年)に造った笠原水道及び浅井戸を利用していた。明治期に入ると、笠原水道の老朽化と井戸の衛生上の問題、利用人口増加と流水量の減少により、水道の改築が必要とされた。水戸市の水道区会は1903年(明治36年)に近代的水道の布設を議決し、1910年(明治43年)に下市全域を給水区域とする下市水道が完成した[2]。
全市水道の完成
大正3年，6代目市長川田久喜は市内視察で都市に不可欠の水道が完備していないことを知り，衛生問題の改善と防火を目的とした全市水道の必要性を認めて，調査費を計上させた。下市の人口が増え水質や防火用水に不安があり，上市の井戸水が枯渇することがあったからである。
昭和3年に8代目市長鈴木文次郎は全市水道事業の検討を命じ，昭和5年7月に工事の認可が下りる。昭和5年11月に工事が開始し，昭和7年7月15日に竣工式を執り行った。これによって，浄水場，高区配水塔，低区配水塔，全市の配水管の整備が完了した。低区配水塔の工事は昭和6年7月6日に開始され，完成は昭和7年7月10日に完成した [3]。
低区配水塔を高区配水塔と区別してつくったのは，水戸の低地にあたる下市地区に対して別の配水塔が必要だったからである。設計と工事監督は後藤鶴松で，工事費51, 159円，施工は高砂鉄工株式会社だった。
運用後
水圧調整施設に役目を変えて活躍していたが、2000年（平成12年）3月、耐久性の問題から運用終了した[4]。
2005月9月から2006年2月末まで塗装工事を行い、それまでベージュだったが、建造当時の色に近い水色の塗料に塗り替えた[5]。
敷地は公園となっている。 隣接する三の丸緑地には、耐震型循環式飲料水貯水槽を備えており、東日本大震災時に給水を行った[6]。
構造
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高さ21.6メートル、直径11.2メートルの円筒型鉄筋コンクリート造の3階建ての塔である[7]。1階に入ると事務室として使われたスペースがある。中央には螺旋階段があり、2階に上がると天井に鉄製水槽(内径8メートル[7]、地上満水面までの高さ15メートル[8]、水深6.5メートル[7]、容量358立法メートル[7]の底面が天上をふさぐように広がる。水槽からは口径14インチの引入管と引出管、口径12インチの溢流管が付けられている。この水槽の特徴の1つとして、接合部がすべてリベット止めになっていることがあげられる。水槽の内部には水槽下部にある回廊から鉄製梯子を使って出入りが可能であった[9]。この水槽に浄水場からくみ上げた水を最大約360トン蓄えることができた[10]。これは一般的な家庭風呂桶およそ1200杯分にあたり[11]、この水槽の大きさを当時の水戸市水道実施設計目論見書では「給水人口3万人ニ対スル2時間半分ノ貯水量ヲ有ス」と規定している。[12]
意匠
配水塔の中央部にはバルコニー風の回廊があり、頂部には塔屋が設けられている[13]。入口の上部には尖塔アーチがある[13]。壁面には消防ホースを模したようなデザインのレリーフが飾られている[13]。2005年（平成17年）には水色とクリーム色の色合いに変更された[13]。
評価
- 国の「登録文化財」に選定
- 1996年（平成8年）12月20日、「文化材登録制度」に基づく登録文化材に認定された。文化材登録制度は、1996年10月より文部省が始動したものであり、茨城県内ではこのとき、茨城県立水戸商業高等学校旧本館玄関、二水会館(旧水海道町役場）とともに初めての登録文化財となった[15]。茨城県教育委員会は、文化財としての独自の特色として、レリーフや窓に特徴的に見られる洋風のデザインを挙げるとともに、そのデザインが建築家のみならず水道技師自らが手掛けたことを挙げている[16]。また文化財として登録された1996年当時は、まだ、水道施設として現役で稼働が行われていたことも評価されるべき点となっていた[17]。
交通アクセス
脚注
- ^ 茨城県教育庁文化課『茨城県の近代化遺産』茨城県教育委員会、2007年、214-215頁。
- ^ 水戸市水道部水道史編さん委員会ほか『水戸の水道史 第一巻歴史編』水戸市水道部、1984年、1-4頁。
- ^ 水戸市水道部水道史編さん委員会ほか『水戸の水道史 第一巻歴史編』水戸市水道部、1984年、4-5,426-432頁。
- ^ 「低区配水塔（建設Watching）」『みらいこくど関東』第33号、2003年。
- ^ “配水塔お色直し 水戸 茨城県”. 朝日新聞(茨城版). (2006年3月5日)
- ^ “19人死亡、負傷数百人に 東日本大震災 茨城県”. 朝日新聞(茨城版). (2011年3月13日)
- ^ a b c d 茨城県教育庁文化課『茨城県の近代化遺産』茨城県教育委員会、2007年、214頁
- ^ 水戸市水道部水道史編さん委員会・茨城歴史地理の会『水戸の水道史 第三巻施設図編』水戸市水道部、1984年、8頁
- ^ 水戸市役所『水戸市水道誌』水戸市役所、1934年、361ページ
- ^ 読売新聞「水の供給支えた優美な塔」、2022年6月17日、朝刊16ページ
- ^ 米山勇『日本近代建築大全東日本編』講談社、2010年、107ページ
- ^ 水戸市水道部水道史編さん委員会ほか『水戸の水道史 第二巻条例・文献編』水戸市水道部、1984年、211頁。
- ^ a b c d 大内田史郎『東京建築遺産さんぽ』エクスナレッジ、2019年、pp.156-157
- ^ 「近代水道100選：近代水道100年を記念して選定」『水道公論』第21巻第6号。
- ^ 「登録文化財一覧」『茨城の文化財』第36号。
- ^ 「登録文化財 水戸市低区配水塔 1棟」『茨城の文化財』第37号。
- ^ “2件が文化財登録建造物に：水戸商高の旧本館玄関と水戸市水道低区配水塔／茨城”. 毎日新聞. (1996年11月17日)
- ^ “ヘリテージング100選 県内から2件選出”. 毎日新聞. (2006年11月16日)
- ^ “江ノ電、「土木遺産」に 保存価値ある構造物、計22件”. 朝日新聞: p. 6. (2014年10月11日)
- ^ 「土木学会選奨土木遺産2014」『土木学会誌』第100巻第9号。
- ^ 土田芳孝『茨城の近代建築：東日本大震災後の状況と歴史』筑波書林、2013年8月3日、54頁。ISBN 9784860041014。
関連項目
外部リンク
- 水戸市水道低区配水塔 - 水戸市
- 水戸市水道低区配水塔 - 文化遺産オンライン（文化庁）