シロツメクサ

マメ科シャジクソウ属の植物

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シロツメクサ(白詰草、学名:Trifolium repens)はマメ科シャジクソウ属多年草。別名、シロクローバー[1]

シロツメクサ
シロツメクサ
分類
: 植物界 Plantae
階級なし : 被子植物 angiosperms
階級なし : 真正双子葉類 eudicots
: マメ目 Fabales
: マメ科 Fabaceae
: シャジクソウ属 Trifolium
亜属 : Trifolium
: Trifoliastrum
: シロツメクサ T. repens
学名
Trifolium repens L.
英名
White clover

特徴

原産地はヨーロッパ[2]。現在、日本各地に帰化して自生する。人里・田畑から市街地まで幅広い環境に適応しているが、特に空き地や田畑まわり、芝生やグラウンドに多く生える[3]

匍匐茎および種子で殖える。茎は地面近くを這い、節から根を出して繁茂する[4]。葉は柔らかいが、踏みつけや刈り取りには強く、すみやかに再生してくる[5]。この性質により、雑草防止、土壌浸食防止[6]等に利用されることもある(後述)。

葉は長い柄を備え、立ち上がる。その先端に卵形または心臓形の3枚の小葉が付く(複葉)。小葉の両面に毛はなく[7]、上面には斑紋がある。時に4枚以上の小葉が付くことがある(「小葉の数は2 - 18枚」とする文献もある[8])。特に4小葉のものは「四つ葉のクローバー」として珍重される[5]。昼間は小葉を開き、夜間はV字状に閉じる(就眠運動)[9][10]

花は白色、またはわずかに桃色を帯びる。花茎(葉の柄よりやや長い)の途中に葉はない。萼裂片はそれぞれ長さが異なるが、いずれも萼筒と同程度かやや短い[4]。花期は春から夏[7]。10個から80個の花が集まって花茎の先端で球状をなす[1]。花は頭状花序となり、小さな花が集まって直径約1㎝の球形になる[11]

近縁種にモモイロシロツメクサ(モモイロツメクサ Trifolium repens f. roseum)、ムラサキツメクサ(アカツメクサ Trifolium pratense)、ベニバナツメクサ (Trifolium incarnatum)、タチオランダゲンゲ (Trifolium hybridum)、ツメクサダマシ (Trifolium fragiferum) などがある[12]

四つ葉以上のクローバー

 
ごく稀に五つ葉以上のクローバーも見つかる

前述のように、四つ葉のものが見つかることがある。さらに五つ葉、六つ葉、七つ葉[13]、八つ葉[14]なども例は少ないながら確認されている。

人との関わり

漢字表記は「白詰草」。江戸時代オランダから長崎に輸入されたガラス器を衝撃から守るため、乾燥したクローバーを緩衝材として使用していた。そこでクローバー全体を指す名称として「詰草」という日本語が生まれた。本種は白い花をつけることから白詰草と呼ばれる[15][16]

明治以降、あらためて牧草として導入され、繁殖力が旺盛なため全国各地に分布を広げた[17]。1938年の文献で、「日本國中至る處」繁殖しているという記述を確認できる[18]。地上部はタンパク質やミネラルに富み、イネ科牧草と混播の上利用される。葉の大きさによってラジノ型(大葉型)、コモン型(中葉型)、ワイルド型(小葉型)の3群に大別される[19]

根粒菌の作用により窒素を固定することから、地力が向上する植物として緑化資材にも用いられている[20]。ただし、芝生を台無しにするので一部園芸家は嫌悪する[4]

芝草や果樹園の下草、法面などの保護(法面緑化工)にも利用される[1]。その他、花の首飾りや花冠など、草遊びの材料として利用される[17]

濃厚な蜂蜜が得られる[3]。また、若葉は食用になる。橋本郁三によると、塩茹でして葉柄が柔らかくなったら冷水で手早く冷まし、胡麻和え・辛子和え・甘酢などでいただくのが良い。花はフライ・てんぷらにする[21]

聖パトリックが3枚の小葉を「信・望・愛」[22]にたとえ、4枚目の小葉を幸福と説いたと言われている。本種の花言葉の「幸福」はこの言い伝えに由来する[23]。五つ葉のものは金運、六つ葉のものは地位や名声を手に入れる幸運、七つ葉のものは九死に一生を得る幸運を表す[12]

薬用としても用いられる。全草を開花期に天日乾燥したものを煎じて使用する。の出血やストレスに用いる[24]

脚注

  1. ^ a b c 『世界大百科事典』 14巻、平凡社、2014年12月1日、204頁。 
  2. ^ 久志博信『「山野草の名前」1000がよくわかる図鑑』主婦と生活社、2010年、20頁。ISBN 978-4-391-13849-8 
  3. ^ a b 高村忠彦『色・大きさ・開花順で引ける季節の野草・山草図鑑』日本文芸社、2005年、87頁。ISBN 4-537-20367-6 
  4. ^ a b c 森昭彦 (10 September 2020). 帰化&外来植物見分け方マニュアル950種 (電子書籍). 秀和システム. p.234
  5. ^ a b シロツメクサ”. had0.big.ous.ac.jp. 岡山理科大学生物地球学部旧植物生態研究室. 2021年4月11日閲覧。
  6. ^ 亀田龍吉『雑草の呼び名事典』世界文化社、2012年2月20日、10頁。ISBN 978-4-418-12400-8 
  7. ^ a b 牧野富太郎『原色牧野植物大圖鑑』北隆館、1986年10月30日、242頁。ISBN 4-8326-0001-X 
  8. ^ 岩槻秀明『街でよく見かける雑草や野草がよーくわかる本』秀和システム、2006年11月5日、353頁。ISBN 4-7980-1485-0 
  9. ^ カタバミなどは逆V字状に閉じる
  10. ^ 鈴木昌友、丸山友一、長岡勝典「葉の開閉運動の教材化」『茨城大学教育実践研究』第13号、茨城大学教育学部附属教育実践研究指導センター、1994年、18-19頁、ISSN 1348-5792 
  11. ^ シロツメクサ - 植物ずかん.2022年4月4日閲覧
  12. ^ a b 『世界大百科事典』 8巻(改訂新版第6刷)、平凡社、2014年12月1日、343頁。 
  13. ^ ラッキーセブンだ、大喜び 七つ葉クローバー!”. kyoto-np.co.jp (2008年4月25日). 2008年6月1日閲覧。
  14. ^ 幸せも2倍 八つ葉のクローバー発見” (2008年4月23日). 2008年4月25日閲覧。
  15. ^ 吉本由美『みちくさの名前。 雑草図鑑』NHK出版、2011年4月15日、88-89頁。ISBN 978-4-14-040252-8 
  16. ^ 山下景子『花の日本語』幻冬舎、2007年3月25日、19頁。ISBN 978-4-344-01297-4 
  17. ^ a b 伊藤松雄 (2003). 里の植物観察記 (電子書籍). 春風社. ISBN 9784921146764 p.59-60
  18. ^ 保土ケ谷区郷土史刊行委員部 編『保土ケ谷区郷土史』 下巻、保土ケ谷区郷土史刊行委員部、1938年、1887-1888頁。doi:10.11501/1258049 
  19. ^ 飼料作物の主な草種と特徴”. nlbc.go.jp. 独立行政法人家畜改良センター (2017年5月25日). 2021年4月11日閲覧。
  20. ^ 遠藤明、加藤千尋、佐々木長市、伊藤大雄「施肥 ・無施肥リンゴ園土壌の無機態窒素の浸透流出挙動」『農業農村工学会論文集』第82巻第6号、2014年、423-431頁、doi:10.11408/jsidre.82.423 
  21. ^ 橋本郁三『食べられる野生植物大事典―草本・木本・シダ』柏書房、2003年7月15日、201頁。ISBN 4-7601-2389-X 
  22. ^ 「コリント人への手紙 第一」『聖書 新改訳』日本聖書刊行会、1994年4月20日、308頁。ISBN 4-264-01118-3。「(13:13)いつまでも残るものは信仰と希望と愛です。その中で一番すぐれているのは愛です。」 
  23. ^ 稲垣栄洋 (2017-07-28). 怖くて眠れなくなる植物学. PHPエディターズ・グループ. p. 142. ISBN 978-4-569-83664-5 
  24. ^ 平野隆久『薬草』(初版第5刷)山と渓谷社、2004年11月20日、73頁。ISBN 978-4-635-06224-4 

関連項目